カタツムリとトンボは対照的だ。
カタツムリ - きわめてノロノロ動く。敵から身を守るために殻(家)の中にに体をすっぽり隠してしまう。体の体積を少なく(縮めることが)できるのだ。地面を這(は)い、飛ぶことはおろか跳(と)びはねるともできない。気がつきにくいが、下記の説明にあるとおりカタツムリは虫(あるいは動物全般)としては珍しく体が左右対称でないのだ。
トンボ - 飛びの名人。特に空中で止まったり(Hovering)、見たことはないが<とんぼ返り>の特技がある。きわめて敏捷。素早い動きを目で追えない時がある。突然目前からいなくなるのだ。これは敵から身を守るための行動としては有効。目は複眼で体に比べて大きく270度ぐるりと見えるそうだ。餌を見つけたり、これまた敵から身を守るのに有効。
1) カタツムリの語源
カタツムリの語源は何か?Japan-wiki は<カタツムリ>の解説の最後の方に
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カタツムリ Japan-wiki
名称
日本語における名称としてはカタツムリの他に、デンデンムシ、マイマイ、蝸牛(かぎゅう)などがある。語源については諸説がある。- カタツムリ
- 笠つぶり説、潟つぶり説、片角振り説など諸説ある。なお、「つぶり」は古語の「つび(海螺)」で巻貝を意味する。
- デンデンムシ
- 子供たちが殻から出ろ出ろとはやし立てた「出ん出ん虫」(「出ん」は出ようの意)であるとの説がある。
- マイマイ
- 「デンデンムシ」と同様に子供たちが舞え舞えとはやし立てたことに由来するとの説がある
- 蝸牛
- 語源については動作や頭の角がウシを連想させたためとみる説がある。
という説明がある。蝸牛は現代中国語。さてカタツムリだが、つまりは語源に諸説ある、ということで、もう一つ加えることにする。
Japan-wiki は<カタツムリ>の解説は英語版と似ているが、日本人向けに特化されていいる箇所が少なくない。日本語版、英語版とも解剖図で体をかなり詳しく説明しているが、下記にの部分が日本語版にはない(2017年8月現在)。 英語版は snail の項目ではなく gasgtropoda(学名か?)の項目(Snail is a common name loosely applied to shelled gastropods. "gastropod" by derivation from the Ancient Greek words γαστήρ (gastér) "stomach", and ποδὸς (podòs) "foot".)
Anatomy
前略
The principal characteristic of the Gastropoda is the asymmetry of their
principal organs. The essential feature of this asymmetry is that the
anus generally lies to one side of the median plane.; The ctenidium (gill-combs), the osphradium (olfactory organs), the hypobranchial gland (or pallial mucous gland), and the auricle
of the heart are single or at least are more developed on one side of
the body than the other ; Furthermore, there is only one genital
orifice, which lies on the same side of the body as the anus.
医学用語が並んでいるので細かいことはすぐにはわかりにくいが、要は主要臓器が非対称(asymmetry)だということだ。人間や他の動物の内臓もよくみると基本的には非対称なので(心臓、胃、肝臓、すい臓と一つしかなく、しかも中心軸にあるわけではない)、カタツムリの場合はこれが目立つということか。しかし殻(家)つきのカタツムリは外見から、人間や他の動物にくらべて前後左右明らかに非対称が目立つ。
カタツムリの<カタ>はこの非対称に由来している可能性が高い。差別用語になるかも知れないが
かたわ
かたちんば
というのがある。
カタツムリの<つむり>は<、「つぶり」は古語の「つび(海螺)」で巻貝を意味する。>が事実とすれば妥当か。だが<つむり(つぶり)>には
つぶる: 目をつぶる(つむる)
がある。さらに
おつむ: 頭の幼児語で<お>を」とれば<つむ>になる。 カタツムリの頭はきわめて特徴的だ。
でんでんムシムシ ......だせ、 ......だせ、<あたま出せ>
カンムリ: も頭関連の語。頭(かぶり)を振る、というのもある、連想から<つむ>+<り>、<つむり>で頭の別称となってもおかしくない。
<つむじ>というのがある。<つむじ風>は<旋風>。<つむじ曲がり>は頭の<つむじ>が少し曲がっていることだ(ひと)だ。カタツムリの殻は<つむじ>を連想させるが、どちらかというと<かた向いて>いる。
殻(から)のないカタツムリはナメクジで、こちなの方もかなり動きがのろい。むかしはナメクジラといっていたようで、大きさは違うが形はクジラにている。防御用の殻がなくても長い歴史を生きてぬいてきたので、なにか特別な生存方法があるのか。カタツムリもナメクジも動きはのろいがなまけモノの感じはない。
英語では
カタツムリ - snailで snail mail というのがある。
ナメクジ - slug
といい、sluggish とう形容詞がある。
2) トンボの語源
トンボの語源は何か?Japan-wiki の解説はかなり長い。
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日本語名称
日本では古くトンボを秋津(アキツ、アキヅ)と呼び、親しんできた。古くは日本の国土を指して秋津島(あきつしま)とする異名があり、 『日本書紀』によれば、山頂から国見をした神武天皇が感嘆をもって「あきつの臀呫(となめ)の如し」(トンボの交尾のよう(な形)だ)と述べたといい、そこから「秋津洲」の名を得たとしている。 また『古事記』には、雄略天皇の腕にたかったアブを食い殺したトンボのエピソードがあり、やはり「倭の国を蜻蛉島(あきつしま)と」呼んだとしている。中略(末尾参照)
方言においては、「あきつ」「あきず」「あけず」「あけす」「あけーじょ」「はけーじゃ」、「とんぷ」、などの語形が東北から南西諸島に至る各地で見られる。
トンボの語源については諸説あり、たとえば以下のようなものがある。
- 「飛羽」>トビハ>トンバウ>トンボ
- 「飛ぶ穂」>トブホ>トンボ
- 「飛ぶ棒」>トンボウ>トンボ
- 湿地や沼を意味するダンブリ、ドンブ、タンブ>トンボ
- 秋津島が東方にある地であることからトウホウ>トンボ
- 高いところから落下して宙返りのツブリ、トブリ>トンボ
日本語ではトンボが身近な生物であったため、さまざまな事物に「トンボ」の名がつけられている。
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以上のようにトンボの語源はこれまた諸説ある。
耳で聞く現代中国語のトンボは蜻蛉ではなく蜻蜓だが、<蜻蛉俗称蜻蜓>という解説がある。
やまとことばで<アキツ、アキヅ>とう由緒正しい立派な名前がある。<トンボ>は口語、さらには幼児語だろう。簡単には<トン>は<飛ぶ(トブ)>由来。実際の発音は<ボ>につられて<トムボ>となる。<ボ>は幼児語の接尾語だろう。接尾語でも意味があると思うが、ここは<ちゃん>のような愛称接尾語か?これでは簡単すぎるので調査継続予定。さすが新井白石の分析はいい。
調査継続 - 結果
トンボとなじみがある場所の<田んぼ>がある。手もとの辞書では
田んぼ - 田の口語、とあり<んぼ>の説明がない。
同じようなところに生息するアメンボの語源は次の通り。
語源由来辞典(トンボの語源の説明もある)
アメンボの「アメ」は「雨」ではなく「飴」の意味で、「ボ」は「坊」の意味、「ん」は助詞「の」が転じたもので、「飴の坊(飴ん坊)」が語源となる。 アメンボは、体の中央にある臭腺から飴のような甘い臭気を発するため、この名がつけられた。
Japan- wiki
本来の意味は「飴棒」で、「飴」は、臭腺から発する飴のような臭い、「棒」は体が細長いことから。
「雨」と関連付けるのは民間語源である。
これにならうとトンボは
飛ぶ+の+坊 --> トンボ
棒は漢字音でやまと言葉ではない。 坊も漢字音だがやまとことばのようななじみがある。<木偶(でく)の坊>は<木偶(でく)の棒>でもよさそう。坊と棒は混乱というか融合があるようだ。
赤ん坊
甘えん坊
きかん坊
くろんぼ(う) - 黒人の差別用語か
立ちんぼ(う) (これは棒も連想される)
つんぼ - 耳の聞こえない人
おしんぼ(う) - 口のきけない人
問題はトンボ(トン坊)も含めて(<ぼう>が漢字の<坊>かどうかだ。坊主は漢語だ。日本では仏教が中国以上に広まった歴史があり、<坊主>という言葉はいろいろ活躍する。特に男の子供は<坊主>だ。もとは<小坊主>か。<坊主刈り>というのがあるが、江戸時代にあったか?いづれにしても<坊主>は愛称ともみなせる。したがって<坊>は<坊主>由来の愛称である可能性が高い。したがって、純粋の幼児語(幼児がまたは幼児に向かって使う言葉)ではないが これが最ももっともらしい。しかしながら
子どもの遊びに
かくれんぼ
とうせんぼ
というのがあるが幼児語と言うよりは児童語だが、これは<坊主>の<坊>では説明できない。上の<田んぼ>の<(ん)ぼ>も同じく棒や坊とは考えにくい。同じ。また前半は少し長いやまとことばなので最後の<ぼ>もやまとことばだろう。このよくわからない<ぼ>がトンボの<ボ>である可能性もある。言葉遊びに近い接尾語だろう。
江戸弁では<べらぼう(め)>と言うのがある。江戸生まれの夏目漱石の吾輩は猫であるでは<トチメンボー>というあやしげなフランス料理名が出てくる。
<末尾> やまとことば学習
み吉野の 袁牟漏が岳に 猪鹿(しし)伏すと 誰ぞ 大前に奏(まを)す
やすみしし 我が大君の 猪鹿(しし)待つと 呉座にいまし
白栲(しろたへ)の 衣手着そなふ 手腓(たこむら)に 虻かきつき
その虻を 蜻蛉早咋ひ かくの如 名に負はむと
そらみつ 倭の国を 蜻蛉島とふ
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