かなり前のポスト<集合のやまとことば>の最後に次のように書いた。
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抽象数学では set、group 以外に category というのがあり、これはなじみの薄い<圏(けん)>が用いられ、圏論(Category Theory)というのがある。 環(かん)、環論(Ring Theory)、体(たい)、体論(Field Theory) というのもある。体(たい)と Field は結びつかないが、これは英語ではなくフランス語の Corp、ドイツ語の Korp の訳だからだ。物理ではField =<場(ば)>というやまとことばを採用しているのであえて避けたのだろう。Category はラテン語系だが Ring, Field は純英語(注)。抽象数学はIQ度と学ぶ時間に比例して理解が進むのだろうが、群論、圏論、環論、体論がわかりにくいのはその抽象性とばかりはいえないようだ。
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Category は普通<範疇>と訳され、<xxの範疇に入れる>などと使われ、Set、Group のやまとことば<集まり>、仲間(なかま)と同じような意味で、<範疇>は難しい漢字以外に特別の意味はなく、Category の訳語として使われたのだろう。とすればそれ程古い漢語の日本語ではない。<xxの範疇に入れる>の意では英語を半分残した<カテごる>はどうか。<範>は<範囲>の<範>でいいとして<疇>のほうは意味がよく分からない。直接関係はないが躊躇(ちゅうちょ)とか搾取(さくしゅ)の使われ方に似ている。
Category Theory は<範疇論>でよさそうで、<圏論>よりはイメージがわく。だが。圏論は<カテごる>ことの論議ではない。<圏論>の<圏>は連想があまり働かない。大気圏の<圏>のようなもので、規模の大きい、包容性がある<ある種のかなりルーズなまとまり>といったところか。もっとも抽象が具体的なモノのメージと結びついてしまうのはよくない、ということもある。圏論(Category Theory)は一般の人にはなじみがないだろう。少し勉強してみた限りでは抽象度が高く、抽象数学者の遊びみたいなもののようだが、<遊び>にはルールがあるとともにそこそこ自由がないと面白くない。これまたWiki-Japan 版からの引用になる。これは英語版の翻訳ではなく、日本語の説明として独立したもの。まずは出だし(説明内容の概要)
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<「カテゴリー論」はこの項目へ転送されています。>とあるので「カテゴリー論」というのも使われていることになる。 |
圏論(けんろん、category theory)は、数学的構造とその間の関係を抽象的に扱う数学理論の 1 つである。 考えている種類の「構造」を持った対象とその構造を反映するような対象間の射の集まりからなる圏が基本的な考察の対象になる。
数学の多くの分野、また計算機科学や数理物理学のいくつかの分野で導入される一連の対象は、しばしば適当な圏の対象たちだと考えることができる。圏論的な定式化によって同種のほかの対象たちとの、内部の構造に言及しないような形式的な関係性や、別の種類の数学的な対象への関連づけなどが統一的に記述される。
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ということで何をいっているのかはなんとなくわかるが、いくつか抽象数学用語があり、内容の理解は限られる。
数学的構造
これ自体<圏>の概念とともに作られてきたモノのようでけっこう複雑。Japan-wiki <数学的構造>は英語版 wiki の<mathematical structure>の訳ではなく、英語版より長く詳しい解説となっている。日本で<数学的構造>研究は相当進んでいるとみる。
Japan-wiki <数学的構造>の冒頭
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数学における構造(こうぞう、mathematical structure)とは、ブルバキによって全数学を統一的に少数の概念によって記述するために導入された概念である。集合に、あるいは圏の対象に構造を決めることで、その構造に対する準同型が構造を保つ写像として定義される。数学の扱う対象は、基本的には全て構造として表すことができる。
”
これもわかりにくいがこのポストを最後まで読めば少しはわかりやすくなると思う。この冒頭のあとに少し詳しい歴史が述べられている。引用が長くなるので、<末尾>参照。
英語版 wiki の<mathematical structure>の冒頭。
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In mathematics, a structure on a set is an additional mathematical object that, in some manner, attaches (or relates) to that set to endow it with some additional meaning or significance.
A partial list of possible structures are measures, algebraic structures (groups, fields, etc.), topologies, metric structures (geometries), orders, events, equivalence relations, differential structures, and categories.
Sometimes, a set is endowed with more than one structure simultaneously; this enables mathematicians to study it more richly. For example, an ordering imposes a rigid form, shape, or topology on the set. As another example, if a set has both a topology and is a group, and these two structures are related in a certain way, the set becomes a topological group.
Mappings between sets which preserve structures (so that structures in the source or domain are mapped to equivalent structures in the destination or codomain) are of special interest in many fields of mathematics. Examples are homomorphisms, which preserve algebraic structures; homeomorphisms, which preserve topological structures; and diffeomorphisms, which preserve differential structures.
”
この冒頭以下の解説はごく短い。
<構造>は圏論のなかではキーワードの一つだ。ここで<構造>のやまとことばを考えてみる。
<構造>は文字通りでは<構(かま)え><造(つく)る>。<構えを造る>というよりは<構え(る)造る>だろう。<構える>は<門を構える(門構え)>、剣道の<上段に構える(上段の構え)> 、<変に構えた態度>などと使う。さらには<服装にはかまわない>、<何をいわれようとかまわない>など派生的な意味もあるが、基本的には<あるカタチをつくる>といった意味のようだ。<カタチをつくる>で構造と結びつくが、それほど一般的ではない。一般的なのは
組む -> 組み
組み立てる -> 組み立て
だ。<組>は上でのべた<Group のやまとことばの組(くみ)、仲間(なかま)>の<組>でもあるんがおもしろい。
仕組み
<からくり>というのがあるが<仕組み>の意に近い。動詞の<仕組む>は一般的、中立的な構造から意味がずれるが名詞の<仕組み>は構造に近いが少し人為的なニュアンスがある。<からくり>というのがあるが<仕組み>は、後から出てくるが
A -(だから)->B、 B-(だから)->C、 C-(だから)->D
といった段取り(sequence)が連想されるので論理学、さらには抽象数学と関連づけられそう。上記栄文wiki で数学的構造(候補)の中に Orders (順序)がある。
次に<. . . . . 対象とその構造を反映するような対象間の射の集まりからなる圏が基本的な考察の対象になる。 >の<射>の意味が解らないので内容がつかめない。
<対象たち>は<対象>の複数形だろうが、変な日本語だ。複数形にこだわるとやたらに<たち>がでてくることになる。
上記の解説から<数学的構造>と<射(しゃ)>がわかれば<圏>が大体わかることになりそうだが、Wiki-Japan の<圏論>の中には<数学的構造>についても<射>についても詳しい説明がない。しかし Wiki-Japan には独立した<射(圏論)>というのがあり、かなり詳しい説明がある。
Wiki-Japan の<圏論>とは違って、この<射(圏論)>は英語版 Wiki <Morphism>の日本語訳。
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数学の多くの分野において、型射あるいは射(しゃ、英: morphism; モルフィズム)は、ある数学的構造を持つ数学的対象から別の数学的対象への「構造を保つ」写像の意味で用いられる(準同型)。この意味での射の概念は現代的な数学のあらゆる場所で繰り返し生じてくる。例えば集合論における射は写像であり、線型代数学における線型写像、群論における群準同型、位相空間論における連続写像、… といったようなものなどがそうである。
圏論における射はこのような概念を広く推し進め、しかしより抽象的に扱うものである。考える数学的対象は集合である必要はないし、それらの間の関係性である射は写像よりももっと一般の何ものかでありうる。
射の、そして射がその上で定義される構造(対象)を調べることは圏論の中核を成す。射に関する用語法の多くは、その直観的背景でもある具体圏(対象が単に付加構造を備えた集合で、射がその構造を保つ写像であるような圏)に由来するものとなっている。また圏論において、圏を図式と呼ばれる有向グラフによって見る立場から、射は有向辺あるいは矢印 (arrow) と呼ばれることもある。
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以上は<射>の概要の説明だが、<例えば集合論における射は写像であり、線型代数学における線型写像、群論における群準同型、位相空間論における連続写像>などの数学の知識がないと難解だ(なにをいっているのかわからない)。もとの英語は morphism だが、最後に<あるいは矢印 (arrow) と呼ばれることもある>とあり、これが<射>の由来だろう。
<射>は射撃、射程、発射(発車と同じ発音になる)のように二語漢字の用法が多く<射(しゃ)>の一字の用法はないといっていい。ここが命名のミソともいえるが連想が働きにくい。やまとことばは<射(い)る>で<射(い)>が連用形の名詞用法になるが、この用法もないといっていい。名詞形は簡素な<射(い)>ではなく<射ること>になる。したがって、<射>は<い>と読む人は少なく、大方<しゃ>と読むになる。一方<矢印>は<やじるし>でやまとことばだ。もちろん<矢(や)>も<印(しるし)>もやまとことばだ。これをいかせないものか?<矢(や)>は名詞で<矢を射る>というのが普通で<射(しゃ)>には動詞性がある。
圏論の中の<射>の例として、Wiki-Japan には独立した<射(圏論)>の中に
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定義
. . . . . . . . . . 。任意の射に対して、始域(ドメインあるいはソース)および終域(コドメインあるいはターゲット)と呼ばれる二つの演算が定義される。射 f が始域 X と終域 Y を持つとき、これを f: X → Y で表す。つまり、射は始域から終域へ向かう「矢印」として表される。
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という解説がある。<f: X → Y>があるので<射>は矢印に関連するが、この矢印の意味、働きはそう単純ではなく複雑というか多用なのだ。この複雑さ多用さが圏論の複雑さ、わかりにくい抽象性にかかわっている。半面<自由>もある。
一方英文 morphism は metamorphosis (変身)、amorphous (非結晶(構造))などでなじみがあるが容詞 morphous <形(かたち)を持った>の(抽象)名詞形。意味は morphism と arrow は意味上直接には結びつかない。
<射>あるいは morphism は簡単に、一義的にあらわせないようだが、上記の説明からすると少なくとも
1)写像(像を写すこと)
2)関係性(関係があること、関係をつくることではない)
のことのようだ。別のところでは function とも言っている(function に限らないとも言っている)。
function 関数
relation 関係
のやまとことばを探してみる。
(関係づける)
むすびつける (むすびびつき)
が適当のようだが、<xxつける>は豊富で
あてつける (あてつけ)
おしつける (おしつけ)
こじつける (こじつけ)
とりつける (取ってつける)(とりつけ)
ひきつける
わりつける
(関係づける -> 対応させる)
あわせる (あわせ)
しめしあわせる
つきあわせる (つきあわせ)
となりあわせる
とりあわせる (とりあわせ)
ならべあわせる
引きあわせる
向きあわせる
結び合わせる (<結合>は数学用語になり、圏論では重要な内容だ。)
あてる(当てる)
引き当てる
割り当てる
写像は、動詞としては
うつす (写す、映す、移す) (うつし)
があり、やまとことばの基本動詞の特徴で<写す、映す、移す>は関連語で、見方を変えればひらがなの、口頭の<うつす>は抽象度が高いことになる。
ひきうつす
あわす>と<うつす>を組み合わせた(合成した)
うつしあわす(うつしあわせ)
あわせうつす(あわせうつし)
は聞かないが<射>の訳語として悪くない。かなり長くなるが<つける>を加えて<うつしあわせつける(うつしあわせつけ)>、<あわせうつしつける(あわしうつしつけ)>も候補だ。
話が込み入ってややこしくなるが圏論では<関手(かんしゅ)>(Functor の訳語)というのがある。
”
関手
一方で、圏そのものもある種の数学的構造であるため、圏の構造を保存する対応関係も考えることができる。このような対応関係は関手と呼ばれる。関手は、ある圏の中の全ての対象を、別の圏の対象に、一方が持つ全ての射をもう一方の射に関連づける。圏と関手を調べることで、ある類における数学的構造とその間の射だけでなく、「数学的構造を持つ様々な類の間の関係」をも追求することができる。 (Wiki-Japan 圏論)
”
<類>は class の訳語。
<関手>が<うつしあわせつけ)>、<あわしうつしつけ>に相当するか。
<関手>が<圏そのものもある種の数学的構造であるため、圏の構造を保存する対応関係も考えることができる。このような対応関係は関手と呼ばれる。>であれば同じ様に
<関手>そのものもある種の数学的構造であるため、関手の構造を保存する対応関係も考えることができる。このような対応関係はxxと呼ばれる。>で際限がない。
<末尾>
Japan-wiki <数学的構造>
構造における歴史
ブルバキ以前
数学史において、現代的および革新的な新しい概念であるはずのものが、しかしその痕跡と言えるものが遡って古代においてすでに認められるというようなことはよくあることである。そのような事例として、17世紀にライプニッツとニュートンによって考え出された微分法および積分法は、素朴で未発達な形ではエウドクソスやアルキメデスが既に用いていた。このことは数学的構造の概念の発明にしてもそうであり、利用は最初の明示的な定式化に先行するのである。従って、数学史において構造の概念について定義して言及した最初のものを特定するのは容易であるが、そのような説明なしに用いた最初を特定するのは困難である。
合同算術において構造の概念はガウス Disquisitiones Arithmeticae (1801) の手法に実際に現れる。ガウスはユークリッド除法の剰余について、構造的な観点から研究を行った。これは群論の起源のひとつでもある。
ガロワ理論において、ガロワの対称性を用いた手法、ジョルダンの群論、クロネッカーの体論などの手法は本質的に構造的である。
線型代数学において構造の概念は二段階に現れる。ユークリッド幾何学における公理的手法は最終的に厳密な形で確立された(ヒルベルトの公理参照)。その後、ベクトル空間の定式化にはグラスマンやペアノが取り組み、最終的にバナッハとブルバキによって形となった。
多様体の構造の概念はベルンハルト・リーマンの手法において現れた。
sptt
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