Sunday, July 31, 2016

付く、着く、離れる


<Sunday, November 4, 2012>に書いたようなのだが、なくなっているので再度取り上げる。一部修正。


<離れる>は<着く、付く>の反対語だが、<着く、付く>が一般化しているのに反して<離れる>関連の動詞はそれこそ山のようにある。

ある場所から離れるのを、去る、とも言う。<立ち去る>の<立つ>(<発つ>とも書かれる)も<東京をたつ>というから<さる>の意に近い。反対語は<着く>。<xx を去る>は他動詞、<xx から去る>は自動詞なのだが、<去る>の感覚的には自動詞だ。一方<取り去る>の<去る>は感覚的に他動詞。<去る>はかなり一般化(高度化)した動詞だ。

的(まと)から離れてしまうのを、それる、はずれる、たがう(当たらない)、とも言う。反対語は<近づく>、<当たる>。自動詞。

的(まと)から離れようとするのを、避ける、逃(のが)れる、とも言う。反対語は<近づける>。他動詞。

付着していたものが離れるのを、抜ける、脱げる、とれる、落ちる、はずれる、はげる、はがれる、とも言う。反対語は<付く>。自動詞。

付着していたものを離すのを、抜く、脱ぐ、取る、落とす、はずす、はぐ、はがす、そぐ、もぐ、剃(そ)る、刈る、除(のぞ)く、ぬぐう、掃(は)く、払う、のける、とも言う。反対語はおおむね<付ける>。他動詞。

ひとつの物を二つ以上に離すのを、切る、断(た)つ、裂(さ)く、割(さ)く 、割(わ)る、やぶる、分ける、散らす、削(けず)る、とも言う。これらも反対語はおおむね<付ける>でいいが、<寄せる>、<合わせる>もある。他動詞。

<近づく>の反対語は<離れる>でもよいが、近(ちか)+付く(着く)とすると、<離れる>よりも<遠のく>、<遠ざかる>がいい。自動詞。

のく - 関連語:のける、のがれる
さかる - 関連語:避(さ)ける、裂(さ)く

調べていないが<かる>と言う古語は<離れる>の意があったようで、そうすると<さ>は接頭語でいいだろう。

sptt

Thursday, July 14, 2016

<たのむ>、<たよる>について


<たのむ>はよく使うやまとことばだ。コンピュータワープロでは<頼む>が一番目に出てくるが<頼む>だけではまに合わない場合がある。

1)花子に来てくれるように頼む(頼んだ、頼もう)。

2)花子、頼むから来てくれ。

1)は<頼む>でよさそうだが、2)の<頼む>はややおかしい。文字にするとこの違いが出てくるが、言ったり、聞いたりする場合は<たのむ>だ。1)はあまり感情がはいっていない。2)は感情がはいっているだけでなく、<頭を下げている>様子が想像され、さらに<頼む>と言う漢字はそぐわないような気がする。

名詞(体言)の<頼み(たのみ)>はどうか?

1)頼みがある。
2)頼みの綱

これまた1)は<頼み>でいいが、2)は<頼み>という漢字はそぐわないような気がする。また、これまた文字にするとこの違いが出てくるが、言ったり、聞いたりする場合は<たのむ>だ。


コンピュータワープロでは二番目に<恃む(たのむ>が出てくるが、使う人はごく少ないだろう。侍(さむらい)と勘違いしそうだ。こちらの方は、漢語を使うことになるが、<依頼する>というよりは<依存する>。<依存する>は<よりかかる>といううやまとことばがある。<たのもしい>という形容詞は<よりかかれる>といった意味だ。さらには<よりかかる>は<よる>+<かかる>だが、<よる>関連では<たよる>というこれまたよく使うやまとことばがある。<たのもしい>は<たよれる>でもある。

たのむ
たよる

と二つならべて、さらに

た のむ
た よる

としてみる。

<た よる>は接頭辞<た>+よりかかるの<よる>で語源が説明できそう。一方これを<た のむ>に応用すると接頭辞<た>+ 飲むの<のむ>になる。<のむ>には<うけいれる>と言った意味もある。こじつけのようだが、これが<たのむ>の語源ではないか?


はじめのほうで<花子、頼むから来てくれ>は<頭を下げている>様子が想像され、と書いたが、これはイタリア語勉強中 supplicare と言う動詞に遭遇して書いたもの。supplicare は<たのむ>に似た意味がある。辞書をしらべると英語にも、聞いたこと、見たことはないが、to supplicate という動詞がある。supplicare はラテン語分析すると、sub + plico で、sub は<下へ(に)>(subway, submarine)、 plico は<折る、曲げる>だ。連想がよくはたらく人は英語の to complicate が思い浮かぶのではないか。<下へ(に)><折る、曲げる>は<頭を下げている>様子が想像される。

英語には to beg という動詞がある。I beg your pardon. は聞き返すときの常套句になってしまっているが、少しゆっくり、感情をいれて言えば、頭を下げて許しを請うときにもつかえる。

ところで、中国語はどうか?<依頼>という漢語があるので、<たのむ>に相当する動詞がありそうだが、日常の口語では<助ける>に相当する<帮(手)>がきわめてよく使われるが、頭を下げるほどではない。


<たのむ>は手元の辞書の第一義は


相手を信用して、力を貸してくれる(自分のかわりに何かをしてくれる)ように申し入れる。



となっており、けっこう複雑な内容。<たのまれる>ということ信用されているということだ。ひとは<たのまれているうちが花>と言えそう。


sptt