風情は<ふぜい>読めるが、趣の一語で<おもむき>と読める人、読む人は多くないだろう。 風情も、趣(おもむき)も<意味を解説せよ>と言われても難しい。 風情と趣(おもむき)は一部は同義語になる。
この庭は風情がある。
この庭は趣(おもむき)がある。
大体同じような意味のようだ。 どのような意味かと言われても、これまた難しい。 風情は<ふぜい>と変な読み方をするが、漢語由来だろう。漢語に<風格>というのがあり、ごく大雑把には<好ましい、心がひかれる性格、さらには個性>とでもなるか。<風格がある>は褒め言葉だ。<風>がキーワードで風は目には見えないが感じることができる。また風には<向き>がある。<向き>はある特定の方向のことで個性につながる。<情>は感情のことでいいだろう。
趣(おもむき)はやまとことばで<思い向く>、<思いの向き>だ、と考えたが、手元の辞書で調べて見ると、これは"<おもむく、赴く>と同源で、<おもむく>は<面(おも)むく>。反対語に<背(そ)むく>" という解説がある。<そむく>には<顔をそむける>という言い方があるが<おもむく>には<顔をおもむける>という言い方はない。顔(かお)=面(おも)なので具合がわるいためか? さて、<思いの向き>があったとして
この庭は思いの向きがある。
では通じにくいし、まずこうは言わない。まずこうは言わないが、そこはやまとことばで、日本人ならなんとなくわかる。<思いの向き>は悪くない。<気が向く>の<気の向き>、<この庭は気の向きがある>ではダメだ。
この庭は特別な、独特の思いの向きがある。
とすると
この庭は風情がある。
に近くなる。さらには、あたりまえだがやまとことばの<おもむき>がある。<特別な、独特の>はやまとことばではないが、肝心なところで、風情や趣(おもむき)は千差万別、いろいろあるのだ。
だが実際には
xxの風情がある。
yy の趣(おもむき)
のように使われ、これは<xx、yy のようだ、の感じだ>の意味になる。
趣味は和製漢語で多分中国では通じない。Hobby の一般的な現代中国語はかなり hobby からずれるが<興趣>というのがある。だがこれは日本語の<興味>の意味にもなる。
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<賞花説園> という花と庭について書いた中国の本があり、始めの方に<花の美>について
色、香、姿、韻
の四語を取り上げて個々に説明している。<韻>はやや難しく、日本では頭韻、脚韻で使われるが、この本では<韻>は大体<趣(おもむき)>のような意味が根本にある。だがよく読んでみると<連想>の意に近い。だが、さらに少しよく考えて見ると、数千年の長い歴史がある中国文化と深く結びついた<固定観念(fixed idea)のようなもので<良し悪し(よしわるし)>だ。
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