Wednesday, April 15, 2015

<広がり>について


<広(ひろ)がり>はいいやまとことばの一つだ。<末広がり>というやや俗っぽい言葉もあるが、<空間の広がり>、<時間の広がり>、<時空の広がり>は物理学で使うが、哲学的でもある。詩的でもある。

<広がり>は動詞<広がる>の連用形の体言(名詞)用法。<広がる>は自動詞で他動詞は<広げる>。<広げる>の連用形は<広げ>だが、こちらの方は連用形の体言(名詞)用法はあまり聞かない。<XXを広げすぎる>は<XXの広げがすぎる>といえそうだが、これはあまり聞かない。

<まるーめる>動詞として<広まる(自動詞)><広める(他動詞)>があるが、 物理的というよりは主に人為的なモノ、コトに使われる。<うわさが広まる>、<うわさを広める>。<広める>には連用形体言(名詞)<広め>があり、関連では<お披露目>の<ひろめ>があるが、あとで述べる形容詞<広い>の程度を示す<広め>(<どちらかというと広め>、<広めの方がいい>)として使う方が多いようだ。

<広がる>、<広げる>には<広い>という対応する形容詞がある。<広がり>を他の代表的な形容詞に応用してみる。

狭い --> 狭がり
暑い - 寒い  --> 暑がり(暑がる)寒がり(寒がる)
高い - 低い  --> 高がり、低がり
強い - 弱い   --> 強がり(強がる)、弱がり
速い - 遅い(のろい)   --> 速がり、遅がり(のろがり)
早い - 遅い    --> 早がり、、遅がり
大きい - 小さい   --> 大きがり、小さがり
暖(あたた)かい - 涼しい  --> 暖かがり、涼しがり
長い - 短い  --> 長がり、短がり
明るい - 暗い  --> 明るがり、暗がり(<暗がる>は聞かない)
良い - 悪い  --> 良(よ)がり、悪がり(悪がる)
遠い - 近い  --> 遠がり、近がり
重い - 軽い  --> 重がり、軽がり
古い - 新しい  --> 古がり、新しがり(新しがる)
深い - 浅い  --> 深がり、浅がり
粗(あら)い - 細かい  --> 粗がり、細かがり
太い - 細(ほそ)い   --> 太がり 、細がり
厚い - 薄い   --> 厚がり 、薄がり
多い - 少ない  --> 多がり、少さがり

<暗がり> (<暗がる>、<暗げる>という動詞はかなり特殊だ)が<広がり>にやや似ていいるが(やまとことばとしても悪くない)、<暗がる>、<暗げる>という動詞はかなり特殊だなので<くらがり>の<がり>由来が違うかもしれない。一方、暑がり、寒がり、強がり、悪がり、新しがり、は意味が違う方向に向いており、おもに人の性状をあらわす。

一方形容詞につき程度を示す<さ>と<どちらかと言うと xx >と言う意味ある<め>はきわめて法則的だ。まず<さ>については法則性を英語と比べてみる。

<さ> - 程度を示す

暑い (hot) - 寒い (cold)  --> 暑さ (hotness ? heat)、寒さ (coldness)
高い (high) - 低い (low)  --> 高さ (height, highness)、低さ (lowness)
強い (strong) - 弱い (weak)  --> 強さ (strength、strongness ?)、弱さ (weakness)
速い (fast, rapid) - 遅い(のろい) (slow)   --> 速さ (rapidness, rapidity)、遅さ(のろさ)(slowness)
早い (early) - 遅い (late)   --> ?    遅い (lateness ?)
大きい (big, large) - 小さい (small, little)  --> 大きさ (largeness ?)、小ささ (smallness ?)
暖(あたた)かい (warm) - 涼しい (cool) --> 暖かさ (warmness)、涼しさ (coolness)
広い (wide, spacious) - 狭い (narrow, ?) --> 広さ (width, wideness ?)、狭さ (narrowness ?)
長い (long)  - 短い (short)  --> 長さ (length, longness ? longevity)、短さ (shortness)
明るい (bright) - 暗い (dark)  --> 明るさ (brightness)、暗さ (darkness)
良い (good) - 悪い (bad)  --> 良さ (goodness)、悪さ (badness ?)
遠い (far) - 近い (near, close) --> 遠さ (farness ?) 、近さ (nearness ?)
重い (heavy)  - 軽い (light)   --> 重さ (heavyness ? weight)、軽さ (lightness)
古い (old) - 新しい (new)  --> 古さ (oldness, age)、新しさ (newness)
深い (deep) - 浅い (shallow) --> 深さ (depth)、浅さ(shallowness)
粗い (rough) - 細(こま)かい(fine)  --> 粗さ (roughness)、細さ (fineness)
太い (thick) - 細(ほそ)い (thin)  --> 太み(thickness) 、細み(thinness)
厚い (thick) - 薄い (thin)   --> 厚み (thickness) 、薄み (thinness)
多い (many) - 少ない (a few, few)  --> 多さ (quantity, manyness ?)、少なさ (fewness ?)

コ ンピュータのスペル(リング)チェックでは strongness、longness、farness、manyness は間違い。総じて、xx ness は、日本語では<xx こと>(熱いこと、etc)に相当し、<xx さ>は抽象化が進んだ height、strength、width, depth が相当する。heat、weight、quantity はさらに抽象化が進んでいるが、もとの形容詞とは系統が違う語だ。ここで抽象化とは<高い (high)-低い (low)>などの程度の差を越え、ある特定の形容全体をとらえた表現ということである。日本語の<さ>は見事な対応に加えて、heat、weight、 quantity ほどではないが抽象化がすすんでいるといえる。

次に<め>について

暑い --> 暑め - 寒い --> 寒め (可能) 
高い --> 高め - 低い --> 低め
強い --> 強め - 弱い --> 弱め
速い --> 速め - おそい --> おそめ、のろい --> のろめ
大きい --> 大きめ - 小さい --> 小さめ
長い --> 長め - 短い --> 短め
明るい --> 明るいめ(あまり聞かないが可能) - 暗い --> 暗め
よい --> よいめ (あまり聞かないが可能) - 悪い --> 悪め
遠い --> 遠め - 近い --> 近め
重い --> 重め - 軽い --> 軽め
古い --> 古め - 新しい --> 新(あたら)し目、新(あらた)め)
粗(あら)い --> 粗め - 細い --> 細かめ
太い --> 太め - 細(ほそ)い --> 細め
厚い --> 厚め - 薄い --> 薄め
多い --> 多め - 少ない --> 少なめ

<め>は<xx める>由来かどうかわからないが、<さ>と同じく見事な対応で、すべて<め>でいい。この<め>は<どちらかと言うと xx >と言う意味の体言(名詞)だ。比較の意識がある。

<み>がつく場合もあるが、これは<がり>と同じく少数派だ。

強い - 強さ、強み、強め
弱み - 弱さ、弱み、弱め
暖かい - 暖かさ、暖かみ、暖かめ
重い - 重さ、重み、重め
軽い  - 軽さ、軽み、軽め (文学用語)
深い - 深さ、深み、深め
厚い - 厚さ、厚み、厚め
明るい - 明るさ、明るみ、明るめ

以上の<xx み>もいいやまとことばだ。もとの意味から発展して人の性格をあらわすのがある。暖かみ、重み、深み、厚み。<広み>があってもよさそうだが、<広がり>が普通だ。


味覚関係の形容詞
うまい - うまさ、うまみ、うまめ
甘い - 甘さ、甘み、甘め
辛い  - 辛さ、辛み、辛め
渋い  - 渋さ、渋み、渋め
くさい - くささ、くさみ、くさめ

この<み>は味覚の味(み)と混同しそうだ。


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