Monday, May 4, 2015

<偽善者>のやまとことば


<偽善者>と<偽善>という言葉は翻訳モノだけでなくテレビドラマでも時々耳にするが、イマイチなじみがわかない。<偽善者>のやまとことばを探してみる。

偽善 - <善をするふりをすること>は長すぎる。善ぶり、正義ぶり

偽善者 - <(習慣的に)善をするふりをする人>も長すぎる。善人ぶる人、正義ぶる人

<偽善者>は<善人がる人>ではなく<善人ぶる人> がよさそう。

<善>、<善人>、<正義>はやまとことばではなく、相当するやまとことばは長くなる。

善 - よきこと
善人 - <よき人>はだめで、<心よき、行(おこな)いよき人>とでもなるが長すぎる。
正義 - まこと、正しきこと


以前別のポストで<がる>と、ついでに<ぶる>についてかなりしつこく調べたことがある。<がる>と<ぶる>の手もとの辞書の解説は次の通り。

<xx がる>

第一義

いかにもそのような状況にあるという印象を与えるような言動をする。

第二義

いかにもそうであるかのようにふるまう。

<xx ぶる>

第一義

自五(自動詞、五段活用)
誇るべきものを持っているという様子を人に見せつける。

第二義

造語、五型
そういう素質をもっていることを人に見せつけるようにふるまう。


<偽善者>は上記の解説からすると<善人がる人>でもよさそうだが、<善人ぶる人>の方がいい。<善人がりや>、<正義がりや>はすくなくとも<善人になりたい>というマジメな意図が感じられるので偽善者とは違う。<がる>と<ぶる>の違いがここにありそう。

一方<偽善>は<善ぶり>、<正義ぶり>が連用形の体言(名詞)化になるが、<善ぶる>、<正義ぶる>の方がよさそう。ただしこの場合<善ぶるのは(が)>とか<正義ぶるのは(が)>にしないといけない。<善がり>、<正義がり>、<善がる>、<正義がる>もほとんど聞いたことはないが、上と同じく<善人にになりたい>というマジメな意図が感じられる。

<がる>、<ぶる>は<xx のようにふるまう、みせつける>で、いわば偽(にせ)なのだ。<にせ>は<にせる>由来。<にせる>は<にる>の作為動詞(使役形とは違う)。この<にせ>を使って

偽善 - にせ善
偽善者 - にせ善人、にせもの善人 (少し長いが、長すぎることはない)
<にせ善>はイマイチだが、<にせ善人>はよさそう。にせ医者、にせ警官、にせ弁護士、は比較的よく聞く。医者、警官、弁護士は基本的に善人だ。またこれらの<にせxx>には批判的な意がある。

<にせ>に似た<えせ>というのがある。語源は<にせ>と関連がありそうだが、漢語系かもしれない。偽、擬、欺、似は今の漢字の読み方では<ギ>、<ジ>となるが<イ>が母音であり<エ>に変わった可能性がある。

偽善 - えせ善
偽善者 - えせ善人

<にせ(もの)>では<まがい(もの)>というのがある。これを使うと

善まがい
善人まがい

となるが、これは意図、積極性が薄いようだ。


結論) <偽善者>のやまとことば - 1)にせ善人、2)にせもの善人、3)えせ善人、4)善人ぶる人、善人ぶり人。善人もやまとことばにすると、4)<心よき、行いよき人>となるが長すぎて実用的でない。


sptt




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