前回の<濡れ衣を着せられる>のポストで
<難癖をつける>という相応する言葉があり、<難>をのぞけばやまとことばだ。<難癖をつける>、自体おもしろい表現だが、ここでは深入りをせず、別途検討の予定。
と書いたので、忘れないうちに検討しておく。<難>は<難しい>の意でではなく<非難>の<難>。中国語の解説(http://xh.5156edu.com/html3/20737.html)では次のようになっている。
1.难 (難) nán
不容易,做起来费事:难处。难度。难点。难关。难熬。难耐。难产。难堪。难题。难以。难于。困难。畏难。急人之难。
不大可能办到,使人感到困难:难免。难为。难保。难怪。难倒(dǎo )。难道。难能可贵。
不好:难听。难看。
2.难 (難) nàn
灾祸,困苦:难民。灾难。遇难。逃难。殉难。患难。遭难。避难。排扰解难。
仇怨:排难解纷。
诘责,质问:发难。非难。责难。
1 と 2 では四声が違うので、中国人であればこの区別は明確だろう。1 と 2 が全く違うかといえばそうではなく、1は<困難(な)で、2の一番目は災難といえる。2の二番目の<仇;怨>は日本語では<あだ、かたき; うらみ>だが何のことか? 仇怨:例として<排難解紛>とあるので、<排難>で<仇、怨みを晴らす>の意だろう。<仇(あだ)>は<仇うち>の<仇>だが、日本語では<仇>だけではあまり用いられない。仇は<かたき>という読み方もあり、仇は<仇をうつ>で<仇(かたき)>だけでも用いられる。いづれにしても中国(語)では<難>に<あだ、かたき、うらみ>の意もあるのだ。これはおもしろいことで、検討の余地があるが、横道にそれるので、詳しくは別途検討とする。ちなみに小型の中-中辞典(小型とはいっても情報量の多い漢字だけの解説なのでバカにできない)、中型の中-英を調べてみたが、この意味の解説がぬけていりので、あまり一般的ではないのだろう。降りかかって来た災難が、とくに人的な場合には、<あだ、かたき; うらみ>の意になるのは不思議ではない。
2 の三番目が<非難>の<難>に相当する。<人を難しい状況に置く>のが<(非)難>だ。そしてこれは
a)無意識で行われる場合、<知らずに人を難しい状況に置く>場合
と
b)意識的に行われる場合、<わざわざ人を難しい状況に落とし入れる>場合
とがある。
<非>は<非常(常ならず)>の否定の<非(ならず)>ではなく<是非(良い悪い)>の<非>、つまり<悪い(こと)>の意だ。
さて<難癖をつける>にもどると、<癖の非難をつける>ということになる。<癖の非難>とはどういうことか?そこで、次に<癖>を検討する。
<癖>は簡単に<習慣のこと>とは言えない。習慣は良い習慣もあれば悪い習慣もあり、習慣自体は中立なのだ。一方<癖>の方は<良い癖をつける>という言い方は可能であるが、<良い癖がつく>は少しおかしい。<悪い癖がつく>はごく自然な言い方だ<癖のある人>、<太郎の書く字は曲がる癖がある>は良いことではない。一般的に<癖>は悪い習慣、好ましくない習慣の意を内包する。<癖のある人>の<癖>は悪い、好ましくない繰り返される言動というよりは悪い、好ましくない人に付着した性質を暗示している。
こうすると、 <難癖>は
<悪い習慣、好ましくない習慣>を非難する、あるいは
<悪い、好ましくない繰り返される言動>を非難する、あるいは
<人に付着した悪い、好ましくない性質>を非難する
ということになり、なんとか意味が通じる。通じるがまだ<難癖をつける>の本来の意味には遠い。<難癖をつける>は言い換えると<(わざわざ)(ある悪意をもって、あるいはある悪い目的をもって)ある人の(実際にはたいして悪くもない)言動を悪い、好ましくない習慣としてを非難すること>となる。言葉によるイジメはこの類か?
<いいがかりをつける>は大体<難癖をつける>と同じような意味だが、こちらの方は純やまとことば。また<いいがかり>だけでもつかえる。<それは難癖というものだ>でもまちがいではないが、<それはいいがかりというものだ>が普通だろう。<いいがかり>についてはイソップ寓話のなかに<狼と子羊>というとんでもない<いいがかり>の話があり、別のポストで論じた。下記参照。
https://www.blogger.com/blogger.g?blogID=4865020567027254732#editor/target=post;postID=8926526023441002470;onPublishedMenu=allposts;onClosedMenu=allposts;postNum=1;src=link
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