Monday, October 30, 2017

<身につまされる>と<ゆとり>の語源


<身につまされる>と<ゆとり>は一見関係なさそうだが、まとめて語源を探(さぐ)ってみる。

<身につまされる>は<身(み)>がつく表現をいろいろ探している時に手もと辞書にある慣用表現のなかで見つけたもの。<身につまされる話>は聞いたことはあるが、実際自分で使った記憶はない。多分意味が解っていなかったためだろう。

手もとの辞書、インターネット辞典も大体同じで

他人の不幸などが、自分の境遇・立場と思い合わさって切実に感じられる。

  1. [共通する意味]
      ★人の気持ち、立場などにひきつけられて、自分も同じように感じてしまう。
  1. 類語
  1. [英]
となっている。類語が<ほだされる>、英語が to be moved なのは新発見だ。

<身に>は別のところで<再帰動詞表現>にからんでいろいろ調べたが、

1)体(からだ) (身をのりだす、身をくねらす)
2)中身 (身も蓋(ふた)もない)
そして
)自分自身
さらには頻度はさほど多くはないが
4)命(いのち) (身をささげる)

となる。この分類は明確に分かれるのではなく、いくつかの意味が掛詞のようにからまっている場合が少なくない

問題は動詞の<つまされる>で、受身形のようだが、能動形はなにか?<ほだされる>の能動形は<ほだす>なので、<つまされる>の能動形は<つます>だろう。だが、このような意味で(身につます)<つます>は聞いたことがない。

<つます>は<つむ>(他動詞)の使役形だ。<(誰々に)つます>

<つむ>はコンピュータワープロでは摘む、積む、詰む、と出てくる。<摘む>関連では<つまむ>というのもある。<身につまされる>の<つまされる>の<つむ>は<心をつまれる、つままれる>で<摘む>のようだ。<積む>は関係なさそう。だが表現は<つます>でこれは<摘む>使役形。<身につまされる>の能動形は<誰々に(何なに)(自分の)身摘ます>に意味がなければならない。<身摘ます>ではない。どうも泥沼に入ってしまったようだ。

一方<詰む>は古語で、現代語は<詰める>。 自動詞は<詰まる>。<詰める>は

1.容器などをいっぱいにする
2.空間、すき間を埋める。 <席を詰める>。
2.水の漏(も)れ、流れなどを栓(詰め物)などをしてふさぐ。(ドブがつまる、息がつまる)

慣用表現としては<つまらない>(おもしろくない)、<つまるところ、つまり>がある。<満たされない>の意か。将棋では<王将を詰める、詰め将棋>というのがある。

このような意味の古語<詰む>とその使役形<詰ます>を<身に詰ます>に応用すると、

( 順調に流れている(進んでいる))身詰め物などをしてふさがせる、となる。これを<受け身>にすると

身に(何かを)詰まされ(て、順調に流れない)、となる。

ここでは<誰々>、<何なに>がないが、不特定の誰か、何かでいい(これは重要)。

これだと、英語の to be moved と逆になってしまうが、<流れている(動いている)モノが止まる>のと<止まっているモノが動く>のは<変化>という意味では同じことだ。物理の変化率を思い起こせばいい。 モノの動きの変化率は<力のもと>だ。ここがポイント。<身につまされる>とは<心が変化させられる>ことなのだ。

なにか、まやかし、ごまかし、詐欺のような説明だが、 <to be moved>につて調べてみる。 <to be moved>は感動的な映画を見た観客が<I was moved.>というのをよく聞く。中国人も<很感動>、日本人も<大変感動した>という。<感動>は<感情が動く>で自動詞表現だろう。実際はそうかも知れないが<XXが(私の)感情を動かした>とは考えないだろう。中国語は語順が極めて重要で<感動>は<感が動く>とは限らない。<下雨>は<雨が降る>。まあ、この詮索はここではしない。

<感情が動く>、<感情を動かした>は翻訳調で

心が動く、心が動かされる
魂(たましい)が動く、魂が動かされる

とやまとことばを使うと俄然<to be moved>に近づく。

<to be moved>と似た言い方に<to be excited, to get excited>という受け身表現がある。日本語では<そうエキサイトするな>で否定的(冷静を失うといった意味)に使われるが、英語母国語人なら<to be moved>の代わりに使うことがある。基本的には<to be moved>も<to be excited>も<冷静を失う>ことなのだ。<冷静>を<順調で ”つまらない”>状態とすると、<つまらせて、つまさせて>変化を起こすことは肯定的になる。

さて、<ゆとり>だが、語源はよくわからない。<ゆったり>、<ゆっくり>、の擬態語が関連ありそう。手もとの辞書によると<ゆくり>は上代語で<突然>の意。したがって、<ゆくりなく>は<ゆっくり>と関連する。<ゆとり>と似たような言葉に<落ち着き>がある。これは<落ち着く>由来。<落ち着く>も変化の過程を示しており、<動いていたものが止まる>こと。 to become not moved (moving)、to become not excited (exciting) だ。

なぜ<ゆとり>を持ち出したかというと、<ゆとり>は冷静と関連する。

そうカッカするな(Don't be so excited)。もっとゆとりを持て。

と同時に<ゆとり>は<停滞的で ”つまらない”>状態とも関連するのだ。これで、

そうカッカするな(Don't be so excited)



The game (baseball, etc) was so excited.

が両立するのだ。


あまりまとまりがないが、なぜこのような話をしたかというと、最近のイタリア語再勉強中に伊英辞典の中で

motivare (他動詞) to excite, to motivate

motivarsi (再帰動詞) to be moved, to be excited, to be motivated

に遭遇したからだ。 再帰動詞では<自分自身を動かす、感動させる、動機づけする(to motivate のよく見る日本語訳)>で、英語では受身形(感動させられる)。日本語では、他動詞->自動詞変化になり、<感動する>のようになるが上述の

心が動く
魂(たましい)が動く

がいい。しつこいようだが、こういう状態では<ゆとり>がなくなるのだ。どちらがいいとも言えない。バランスの問題だ。


sptt



Sunday, October 29, 2017

<身に覚えがある>


このポストは文法重視のsptt Notes on Grammar の ”身に覚えがある>の文法分析” ほかの<身に覚えがある>特集のやまとことば重視ポスト。

<身に覚えがある>は慣用表現で、すべてやまとことばの表現。やまとことばでの表現は日本人なら<身にしみる>ので、刑事が容疑者に

自分自身に覚えがあるだろう?

より

身に覚えがあるだろう?

の方が容疑者が自供する可能性が高いだろう。

おのれに覚えがあるだろう?

でもいいが、 <身に覚えがあるだろう?>には及ばないようだ。<おのれ>には漢語由来の自分自身と同じく<身(み)>が持つ(内包する)<からだ>や<中身の身>の意味を欠いているのだ。

<身に覚えがある>と同じような慣用表現はほかにもありそうだが、私は折を見て探している。だがこれまでほとんど見つかっていない。

身にキズがる。 これは<心に(深い、消えない)キズがある>が適当のようだ。
身にいつわりがある。- うそをついている。正直(しょうじき)でない。素直(すなお)でない。
身にたくらみがある。- 狡猾だ。
身にわだかまりがある。- 消極的だ。
身に重りがある(ついている)。- 不活発だ。
(追加予定)

sptt Notes on Grammar の ”身に覚えがある>の文法分析” の方でこの<特殊な>言い方を文法分析しているので参照。

sptt

Saturday, October 21, 2017

発展、進展、展開のやまとことば


誇っていいことだと思うが、日本はかなり前にアジアで一番先に発展済み国(a developed country)になったようだ。だが何が基準でこうなったのかは知らない。発展の英語は development だ。関連語としては経済発展がある。政治発展はあまり聞かない。政治に発展はないようだ。文化発展も何かおかしい。

さて発展のやまとことばだが、いろいろ探してみたが適当なのがない。

発展の<発>は相当の多義語。何らかの基準で分けると

発病、発生、発覚 (出る、出てくる)
発射、発車、発進、発信、発動 (出す)
発表、発言、発話、発行 (出す)
発散 (出る、出す)
発電 (作る) 
発明、発見  (始めてxx なる、する)
発育 (大きくなる、する)
発達

<出る>関連が多いが、<発>が後にくるものでは <出発>が代表か。先発、後発、爆発、突発 、乱発は広義では<出る>関連だ。やまとことばについてなので<発>熟語はこれくらいにしておく。

経済発展の発展の意味では発育と発達が発展に一番近いようだ。

<展>の字は(長く)<伸びる><伸ばす>と言うよりは<ひろがる><ひろげる>だ。

さてやまとことばだが、

<大きくなる>の一語のやまとことば体言(名詞)がない。

広げ、広がり - 上記のように<展>の字は<伸びる><伸ばす>と言うよりは<ひろげる><ひろがる>だが<広げ><広がり>はどうも発展としっくり結びつかない。 

盛り - これは少し幅のあるピークで、発展済みに近い。またその後の下降、おとろえが示唆される。

伸び - これが一番適当と思うが、盛(さか)りと合わせた<伸び盛り>や<ひろげ>と合わせた伸展<伸び広げ>があるが<伸び>だけの方がよさそう。

ところで、英語の to develop、development を使い慣れたひとなら、

Any development ?

と言うのが口から出てくるだろう。直訳では

<何か発展はありますか?>だが

<何か進展はありますか?>の意だ。

これは<伸び>や<伸び盛り>とほとんど関係がない。発展済み国の代表であるアメリカでは development を日常この意味で使うのが多いだろう。この意味の似た言葉に進展、展開というのがある。

<何か進展はありますか?> これはよく聞く。これは<進展>でも<伸展>でもよさそう。

<何か展開はありますか?>とはあまり言わないが

<何かあたらしい展開はありますか?>は可能。ほぼ<何か進展はありますか?>とほぼ同じ意味だ。

発展、進展、伸展、展開はどこがちがうのか?

発展のやまとことばはとりあえず<伸び>として、進展、伸展、展開のやまとことばを考えてみる。

進展はも文字通りでは<進め広げ><進め広がり>。すぐには<発展>の意にならない。

伸展は耳で聞いただけでは<進展>と同じ。文字通りでは<伸ばし広げる>(他動詞)。<伸ばし広げ>、自動詞を含めた<伸び広げ><伸ばし広がり><伸び広がり>。<伸ばし広げ>や<伸び広がり>は悪くはないがすぐには<発展>の意にならない。ここでも<伸ばし><伸び>が効いているようだ。

展開は文字通りでは<広げ開き><広がり開き>だ。<ひらく>は自動詞、他動詞両刀使い。英語の to open もそうだ。The door automatically opened. / Please open the door.

何かあたらしい開きがありますか?

はおかしいが、この意味で

何かあたらしい広がりがありますか?

は聞いたことはないが、変ではなく、やまとことばらしい。したがって展開のやまとことばは<ひろがり>がよさそう。<広げ>はダメだ。<ひろげ>(<広げる>に連用形の体言、名詞化)というのはあまり聞かないが、たとえば、体操などで<脚(あし)の<広げ>がまだ足りない>と言う。<開き>の方は<まだひらき(差)がある>のように使われる。

探偵小説、推理小説などで、翻訳調になるが、もとの development が影響して

この事件は意外な発展をみせた。

は日本語になっている。もっとも

 この事件は意外な展開をみせた。

が日本語らしい。碁や将棋、野球などのゲームは<意外な展開>がおもしろいので、これは<意外な発展>ではダメだろう。

以上で以上、マル(終わりの意)。

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さて、なぜこのポストを書こうと思ったかだが、それはイタリア語(現在別のブログ sptt Notes on Grammar の方でイタリア語文法シリーズを書いている)の sviluppare という<s->接頭辞の動詞に出会ったからだ。以下は sptt Notes on Grammar のイタリア語<s->接頭辞からのコピーに一部削除、追加、修正。

sviluppare (to develop)  -  名詞 viluppo (=tangle) (Reverso)。 tangle は<こんがらかり>で、sviluppare は<こんがらかりを解く>となる。 したがって派生と言うほどのことはないが、よく使われる否定的な意味が多い<s->接頭語では肯定的な意味をもっている。3)<離脱>(英語の away, offでもいいが、派生としておく。肯定的な意味は英語の to develop の影響があるではないか?

Corriere Della Sera Dictionary では

viluppo

1 Groviglio di fili, capelli e sim.: v. di sterpi; estens. ammasso confuso di cose: un v. di corpi 
2 fig. Intrico, enorme confusione: v. di argomenti

Groviglio は tangle。したがって、もとは<糸や頭の髪などがこんがらかっている状態、こんがらかり>のことだが、比喩、誇張されて<大きな混乱>の意もある。そしてこれから抜け出すのが sviluppare なのだ。ただの発展ではない。

英語の to develop は見た目は似ているが





1650s, "unroll, unfold," from French développer, replacing English disvelop (1590s, from Middle French desveloper), both from Old French desveloper "unwrap, unfurl, unveil; reveal the meaning of, explain," from des- "undo" + veloper "wrap up," of uncertain origin, possibly Celtic or Germanic. Modern figurative use is 18c. The photographic sense is from 1845; the real estate sense is from 1890. (Dictionary.com)


Envelop は封筒で、説明するまでもなく、手紙などを中に入れて(en-)"wrap up" するのが使い方だ。

したがって、詳しくは調べていないが、viluppo とは違う系列だ。似て非なるものといえよう。

"(to) unroll, unfold," はカーペットや紙、扇子のようなものをまるめたり、折りたたんだモノを広げる、と言う意味だ。これが発展や展開や進展(伸展)の意になるわけだが、漢字の字ずらから伸展、そしてそのやまとことばへの直訳<伸び広がる、伸び広げる>が相当する。

svolgere

調べてみると、上記の英語 to develop の歴史的説明にある(to unwrap, )to unroll, to unwind が伊英辞書の第一義英語訳だが、比喩的用法では to develop があり、イタリア人の development (発展)の見方を示しているようだ。発展というよりは展開だ。もっとも上で取り上げたように英語の to develop もこの意味でよく使われるが、上記のように語源がやや違う。

  
1       vt(他動詞)     (rotolo)    to unroll  ,   (gomitolo)    to unwind   (fig)     (argomento, tema)    to discuss, develop,   (piano, programma)    to carry out
svolgere un tema      to write an essay  
che attività svolge?      what does she do?  
quale professione svolge?      what is your occupation?  
2    svolgersi      vip(代名詞付き自動詞)  
  (filo)   
to unwind  ,   (rotolo)    to unroll   (fig)     (vita, eventi, procedere)    to go on,   (aver luogo, scena, film)    to be set, take place (起こる)
come si sono svolti veramente i fatti?      how did it actually happen?  
ecco come si sono svolti i fatti      this was the sequence of events  
tutto si è svolto secondo i piani      everything went according to plan

もとの語は volgere で基本動詞の一つ。

volgere
1       vi, (aus avere)自動詞
a    volgere a        (piegare verso)    to turn to o towards, bend round to o towards  
la strada volge a destra      the road bends round to the right  
b      (avvicinarsi a)    volgere al peggio      to take a turn for the worse  
volgere al termine      to draw to an end  
le vacanze volgono al termine      the holidays are coming to an end  
il giorno volge al termine      the day is drawing to its close  
il tempo volge al brutto/al bello      the weather is breaking/is setting fair  
la situazione volge al peggio      the situation is deteriorating  


単語としての英語訳がないが<xx 向く>、 to turn (to be) <xx になる>で、sviluppare と重なるところがある。この意は展開、伸展(進展)にはなるが、発展は少し違う。’
2       vt  他動詞
a      (voltare)    to turn  
volgere le spalle a qn        (anche)      (fig)   to turn one's back on sb  
b      (trasformare)    to turn  
volge sempre tutto in tragedia      he always turns everything into a tragedy  
3    volgersi      vr   to turn  
si volse e mi guardò      he turned round and looked at me  
si volse verso di lui      he turned to o towards him  
la sua ira si volse contro di noi      he turned his anger on us 

volgere は<向く、向ける、曲がる、曲げる、戻る、戻す>の意で、基本動詞。


sptt

Tuesday, October 10, 2017

かかし(案山子)の語源


かかし(案山子)の語源は手もとの辞典(三省堂)やインターネット語源辞典、Japan-wikiでは

かかしは、古くは髪の毛や魚の頭などを焼き、串にさして田畑に立てたものであった。 悪臭で鳥や獣を追い払っていたことから、これを「嗅がし(かがし)」と呼び、清音化されて「かかし」となった。(インターネット語源辞典)

「かかし」の直接の語源は「嗅がし」ではないかとも言われる。鳥獣を避けるため獣肉を焼き焦がし串に通し、地に立てたものもカカシと呼ばれるためである 。これは嗅覚による方法であり、これが本来の案山子の形であったと考えられる。また、「カガシ」とも呼ばれ、日葡辞書にもこちらで掲載されている。 (Japan-wiki)

何事も鵜呑みにせず疑った方がいいのだが、上記の説明は日葡辞書も引き合にでてきて(わたしは調べたわけではない)かなり説得力がある。だがかなり意外な語源だ。<かがす>の連用形の体言(名詞)用法<かがし>が本当に日葡辞書に取り上げられるほど使われていたのか?さらにいつごろ、どうして<清音化されて「かかし」となった>のか?いくつか疑問は残る。

かかし(案山子)の語源を調べたわけは、おどろかす、おびやかす、ばかす、ごまかす、 たぶらかす等<かす>がつく動詞を調べている時に、<かかし>も関連があるのではないかと思ったからだ。語源をチェックした結果は上記のようにわたしにとっては意外であった。明らかに

おどろかす(おどかす)
おびやかす
ばかす
だまかす (だます)
ごまかす
たぶらかす

は<かかし>の内容(目的、効用)は関連があるが、上記の語源(かがす)とはまったく関係がない。

上記の<カカシ>(目的、効用)関連の動詞のうち

<おどろかす>は 自動詞<おどろく>の他動詞、または使役形(太郎は次郎に花子をおどろかすように頼んだ)。<おどろかし>という体言(名詞)はあまり聞かない。
<おどかす>は<おどす>が他動詞で使役形は<太郎は次郎に花子をおどかすように頼んだ>になる。<おどろかす>と<おどかす>は意味がやや違う。<おどかす>は<おどす>の派生語で<かす>動詞といえないか?体言(名詞)の<おどし>はよく聞く。<おどかし>も聞くが<かかし>と意味、語呂とも密接に関連している。一方それ以外は

おびやかす - おびやく  (おびやかし)
ばかす - ばく  (ばかし)
だまかす - だまく  (だまかし)
ごまかす - ごまく  (ごまかし)
たぶらかす - たぶらく  (たぶらかし)
(まやかす) - まやく (まやかし) <まやかす>は手もの辞書にあるが聞いたことはない。

で右側の自動詞形がない。したがって純<かす>動詞仲間といえよう。カッコ内の体言(名詞)はは<おびやかし>以外よく聞く。

<おびやかす>は<おびえる>という自動詞があり、昔は<おびゆ>だったと思われるので<おびや>+<かす>となる。<おびやく>ではないので<かす>に使役の意味があることになる。

<ばかす>は<ばける>と言う関連動詞がある。また<馬鹿(ばか)す>は語呂は合うのでまぎらわしいが、<馬鹿(ばか>が<ばかす>由来と見た方がいい。

<だます>は他動詞で、<だまかす>は<だます>の<かす>派生語。

<ごまかす>は漢字でかくと<誤魔化す>とでてくる。したがって<誤魔>+<化す>となるが<化す>は半分漢語だ(化の部分)。<誤魔>も漢語由来だとするとかなりややこしい。もとはやまとことばだろう。

<たぶらかす>は<たぶらく>も<たぶる>という動詞もないが、語呂が似た<なぶる>(からかう)という動詞がある。

<かかし>(目的、効用)とは関連がやや薄くなるが、<かす>動詞では

そそのかす - (そそのく?)  (そそのかし)
ひやかす - 冷やす(冷える)  (ひやかし) 
みせびらかす - (----)   (みせびらかし)
ひけらかす - (----)    (ひけらかし)

というのもある。

以上はおもしろいやまとことば動詞で 

<そそのかす>は<そそのかして xx させる>のように使うが<そそのかす>には<だまして(だまかして)あることを本当のように思わせる>のようなプロセスがある。
 <ひやかす>も<店員をひやかす>のようにも使うが、これもだますほどではないが<買う気があるように思わせる>のようなプロセスがある。


さて<かがし>が)どうして<清音化されて「かかし」となった>のか?の疑問については、以上の<かす>動詞、<かし>体言(名詞)がかなり有力な語源説明になる。

意味は違ってくるが、意味上一つのグループとなる動詞群に

ちらかす - ちらかる  (ちらかし)
ほったらかす - (ほったらかる?) (ほったらかし)
ほっぽらかす(ほっぽる) -  (----)  (ほっぽらかし) - 関東方言
すっぽかす  - (----)    (すっぽかし)

右側の自動詞形がないものが多い。


<かがし>説を無視すれば

もともと一番有力な<おどろかし>、<おどかし>、あるいは上記の同じような意味を持つ<xxかし>動詞群の体言(名詞)形が語源で、長すぎるので前半を省略し(これはよくあること)、

1-a)語呂合わせの接頭辞<か>を加えて<かかし>となった。

1-b)仮(か)り>の意の<仮(か)>を前に加えて<かかし>となった。

2 <ばかし>が語源(あるいは語源の一つ)で、これが<かかし>となった。 

3.<だまし->だまかし>が語源で、<だまかし>が長いので<かかし>となった。<かかし>は一種の<子どもだまし>だ。
 

意味が少しズレるが関連動詞としては、<かす>動詞ではないが

おそれる (おそれ) - おそれさす
おののく (おののき) - おののかす (これは<おどろく>と同じでカ行活用の他動詞化、または使役の<かす>)
まごつく (まごつき) - まごつかせる

擬態語に近いが

どぎまぎする - どぎまぎさせる
おろおろする - おろおろさせる

がある。

(付録)

案山子(かかし)について

案山子はもちろん漢語由来。かなりペダンチックなので、興味のある方は下記のJapan-wiki参照。

ttps://ja.wikipedia.org/wiki/かかし



sptt