Tuesday, October 10, 2017

かかし(案山子)の語源


かかし(案山子)の語源は手もとの辞典(三省堂)やインターネット語源辞典、Japan-wikiでは

かかしは、古くは髪の毛や魚の頭などを焼き、串にさして田畑に立てたものであった。 悪臭で鳥や獣を追い払っていたことから、これを「嗅がし(かがし)」と呼び、清音化されて「かかし」となった。(インターネット語源辞典)

「かかし」の直接の語源は「嗅がし」ではないかとも言われる。鳥獣を避けるため獣肉を焼き焦がし串に通し、地に立てたものもカカシと呼ばれるためである 。これは嗅覚による方法であり、これが本来の案山子の形であったと考えられる。また、「カガシ」とも呼ばれ、日葡辞書にもこちらで掲載されている。 (Japan-wiki)

何事も鵜呑みにせず疑った方がいいのだが、上記の説明は日葡辞書も引き合にでてきて(わたしは調べたわけではない)かなり説得力がある。だがかなり意外な語源だ。<かがす>の連用形の体言(名詞)用法<かがし>が本当に日葡辞書に取り上げられるほど使われていたのか?さらにいつごろ、どうして<清音化されて「かかし」となった>のか?いくつか疑問は残る。

かかし(案山子)の語源を調べたわけは、おどろかす、おびやかす、ばかす、ごまかす、 たぶらかす等<かす>がつく動詞を調べている時に、<かかし>も関連があるのではないかと思ったからだ。語源をチェックした結果は上記のようにわたしにとっては意外であった。明らかに

おどろかす(おどかす)
おびやかす
ばかす
だまかす (だます)
ごまかす
たぶらかす

は<かかし>の内容(目的、効用)は関連があるが、上記の語源(かがす)とはまったく関係がない。

上記の<カカシ>(目的、効用)関連の動詞のうち

<おどろかす>は 自動詞<おどろく>の他動詞、または使役形(太郎は次郎に花子をおどろかすように頼んだ)。<おどろかし>という体言(名詞)はあまり聞かない。
<おどかす>は<おどす>が他動詞で使役形は<太郎は次郎に花子をおどかすように頼んだ>になる。<おどろかす>と<おどかす>は意味がやや違う。<おどかす>は<おどす>の派生語で<かす>動詞といえないか?体言(名詞)の<おどし>はよく聞く。<おどかし>も聞くが<かかし>と意味、語呂とも密接に関連している。一方それ以外は

おびやかす - おびやく  (おびやかし)
ばかす - ばく  (ばかし)
だまかす - だまく  (だまかし)
ごまかす - ごまく  (ごまかし)
たぶらかす - たぶらく  (たぶらかし)
(まやかす) - まやく (まやかし) <まやかす>は手もの辞書にあるが聞いたことはない。

で右側の自動詞形がない。したがって純<かす>動詞仲間といえよう。カッコ内の体言(名詞)はは<おびやかし>以外よく聞く。

<おびやかす>は<おびえる>という自動詞があり、昔は<おびゆ>だったと思われるので<おびや>+<かす>となる。<おびやく>ではないので<かす>に使役の意味があることになる。

<ばかす>は<ばける>と言う関連動詞がある。また<馬鹿(ばか)す>は語呂は合うのでまぎらわしいが、<馬鹿(ばか>が<ばかす>由来と見た方がいい。

<だます>は他動詞で、<だまかす>は<だます>の<かす>派生語。

<ごまかす>は漢字でかくと<誤魔化す>とでてくる。したがって<誤魔>+<化す>となるが<化す>は半分漢語だ(化の部分)。<誤魔>も漢語由来だとするとかなりややこしい。もとはやまとことばだろう。

<たぶらかす>は<たぶらく>も<たぶる>という動詞もないが、語呂が似た<なぶる>(からかう)という動詞がある。

<かかし>(目的、効用)とは関連がやや薄くなるが、<かす>動詞では

そそのかす - (そそのく?)  (そそのかし)
ひやかす - 冷やす(冷える)  (ひやかし) 
みせびらかす - (----)   (みせびらかし)
ひけらかす - (----)    (ひけらかし)

というのもある。

以上はおもしろいやまとことば動詞で 

<そそのかす>は<そそのかして xx させる>のように使うが<そそのかす>には<だまして(だまかして)あることを本当のように思わせる>のようなプロセスがある。
 <ひやかす>も<店員をひやかす>のようにも使うが、これもだますほどではないが<買う気があるように思わせる>のようなプロセスがある。


さて<かがし>が)どうして<清音化されて「かかし」となった>のか?の疑問については、以上の<かす>動詞、<かし>体言(名詞)がかなり有力な語源説明になる。

意味は違ってくるが、意味上一つのグループとなる動詞群に

ちらかす - ちらかる  (ちらかし)
ほったらかす - (ほったらかる?) (ほったらかし)
ほっぽらかす(ほっぽる) -  (----)  (ほっぽらかし) - 関東方言
すっぽかす  - (----)    (すっぽかし)

右側の自動詞形がないものが多い。


<かがし>説を無視すれば

もともと一番有力な<おどろかし>、<おどかし>、あるいは上記の同じような意味を持つ<xxかし>動詞群の体言(名詞)形が語源で、長すぎるので前半を省略し(これはよくあること)、

1-a)語呂合わせの接頭辞<か>を加えて<かかし>となった。

1-b)仮(か)り>の意の<仮(か)>を前に加えて<かかし>となった。

2 <ばかし>が語源(あるいは語源の一つ)で、これが<かかし>となった。 

3.<だまし->だまかし>が語源で、<だまかし>が長いので<かかし>となった。<かかし>は一種の<子どもだまし>だ。
 

意味が少しズレるが関連動詞としては、<かす>動詞ではないが

おそれる (おそれ) - おそれさす
おののく (おののき) - おののかす (これは<おどろく>と同じでカ行活用の他動詞化、または使役の<かす>)
まごつく (まごつき) - まごつかせる

擬態語に近いが

どぎまぎする - どぎまぎさせる
おろおろする - おろおろさせる

がある。

(付録)

案山子(かかし)について

案山子はもちろん漢語由来。かなりペダンチックなので、興味のある方は下記のJapan-wiki参照。

ttps://ja.wikipedia.org/wiki/かかし



sptt






 

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