Saturday, January 18, 2020

はたらき、しごと


前回のポストでやまとことばの<ちから>について書いたので(中途ハンパだが”<ちから>はポテンシャル>”というのが結論)、関連語の<はたらき>、<しごと>について考えて見る。関連というのはもちろん<ポテンシャル>に関連するものだ。

はたらきに行く
仕事に行く
つとめに行く

は大体同じような意味で<はたらき><仕事(しごと)>、<つとめ>はいずれもやまとことばだ。<仕事>は漢字でみると漢語のようだが<仕(し)>は変格活用の<する>由来だ。

し-ない
し-て(し-ます)
する
する-とき、ところ、こと
せ-よ

で<こと>は体言(名詞)なので連体形の<する>がついて<すること>になるはずだが、<連用形+体言(名詞)>の言い方はある。

連用形+体言(名詞)

読むとき - 読みどき
行くとき - 行きどき
行くところ - 行きどころ
寝るところ - 寝どころ
休むところ - 休みどころ
休むとき - 休みどき

まだまだあり、文法法則は一般化できるがここでは省略。これにならうと

すること - しごと

はともに文法法則違反ではない。意味はどうかというと<別のところで(sppt Notes on Grammar の方)書いた>のを思い出すと、<xxべきとき、ところ>の場合に<連用形+体言(名詞)>になることが多い。一方<連体形+体言(名詞)>は中立的な意味だ。

だが今回発見したが、<xx こと>の場合は様子が違う。

賭(か)けること - 賭けごと
作(つく)ること - つくりごと
なやむこと ‐なやみごと
こまる - こまること - こまりごと
ならうこと - ならっていること - ならいごと
秘(ひ)めること - 秘めごと
もめること - もめていること - もめごと
わらうこと - わらいごと (<わらいごと>ではない)

<ならいごと>を除くとなぜか<わるい、否定的>な意味だ。文法法則は一般化できるがここでは省略。これにならうと

だが<しごと>の場合は<すべきこと>の意でいいだろう。だが意識的には<しごと=すべきこと>がうすれてしまっている。

仕事がら
仕事口(ぐち)
仕事探し
仕事先
仕事中
仕事づくめ
仕事一筋
仕事の鬼
仕事にならない

<はたらき>は<はたらく>の連用形の体言(名詞)用法。<仕事>にくらべて純やまとことばの感じが強い。ふつうは自動詞だが他動詞用法もある。

はたらきがい(がある) <仕事がい>はダメだ。<しがい>はいい。
はたらき口(ぐち)
はたらき手
はたらき蜂(ばち)、はたらき蟻(あり)
ともばたらき

脳のはたらき
はたらき
はたらき
脳の、頭の、胃はたらきがいい、わるい

<はたらく>

やすみなくはたらく
一生懸命はたらく
はたらかぬもの食うべからず
花子はよくはたらく。
太郎はよくはたらかない。(これは何か変だ。)

なぜか基本的には<よい、肯定的>な意味だ

他動詞用法

盗(ぬす)みをはたらく
悪事をはたらく

これはなぜか<わるい、否定的>な意味だ

<はたらく>は英語の to work もそうだが、<効く>、<効果>があるの意がある。

英語の to work (it) out という表現がある。日本語にはないが、辞書では to solve, to resolve で<問題を解決する>といった意味になるが、実際には<結果、対策、答えを出す(out)とするために一生懸命はたらく>といった意味で、英語らしい表現の一つ。


<つとめ>は<つとめる>の連用形の体言(名詞)用法 。<つとめる>はいくつかちがった意味があるが、<すべきことをする>の意もある。

おつとめ(ごくろうさまです)
つとめ口(ぐち)
勤め先

さて前回のポスト<ちから>で冒頭で三省堂の辞書(新明解国語辞典、第6版)の解説を引用したが、ここでも<新明解国語辞典、第6版>の解説をみてみる。



<はたらき>


そのものがその能力をフルに使ってなにかをはたすこと。



<はたらく>


1)頭、体を使って仕事をする。
2)行動にかりたてるなんらかの精神作用が発現する。
3)そのものが他に影響を与える作用をする。


 

<そのものがその能力をフルに使ってなにかをはたすこと。>は細かいこと言うと<はたすこと>は微妙で<はたしたこと>ではない。だが<する、行(おこな)う>よりは<期待している、されている結果>に重点が置かれている見ることができる。これが<はたらく>は<なぜか基本的には<よい、肯定的>な意味だ>と関連がある。


物理用語の<仕事>。

やまとことばの仕事(しごと)は物理用語にある。理解しても記憶からすぐなくなるので印象がうすい。 Wikiの解説をコピーすると、


物体に力 F が作用し、その位置が Δx だけ変化したとき、力 F がこの物体に対してした仕事 W
W={\boldsymbol  {F}}\cdot \Delta {\boldsymbol  {x}}
によって定義される。力 F と変位 Δxベクトル量であり、仕事はその内積で与えられるスカラー量である


とある。よくわからないというか、記憶にに残らないのはこれが<定義>だからだろう。また<力 F>と<変位 Δx>がわかっていないといけない。さらには物理用語でない、上で書いたような日常生活の<仕事>とほとんど関係がないからか。 推測だが、英語の物理用語 Work も同じような状況(よくわからないというか、記憶にに残らない)ではないだろうか。<変位>は英語で Displacement というが移動の意味合いが残っている。Wikiによると中国語では<移位>または<>というようで、これまた移動の意味合いが残っている。文字通りでは<位置の移動>だ。<位置の移動>をやまとことばにすると<いどころ移り>とでもなるか。

力(ちから) -> 動(うご)き -> 変位(Displacement)

直観的には

あるモノに力が<はたらいて>動くと(<動き>が生じると)、そのモノの位置(いどころ)は移る。

たとえばA点からB点へ移る。AとBの間が距離だ。重要なのは、当たり前のことだが、時間が経過していることだ。力があっても時間が経過しないとこの距離は出てこない。 問題は<動き>で、これを速度(大きさと向きをもったベクトル量)とすると、速度は距離の時間微分なので、これまた時間が経過しないとゼロ(0)。速度がゼロだと距離は出てこない。もっとも F = ma なので、右から左をえると、速度がゼロだと加速度もゼロなので<ちから>が出てこないことになる。

 F = ma

時間で積分すると

F (ちから)の時間積分結果 = mv  (v は速度)

という関係がある。これは Momentum (運動量)という。

速度は距離の時間微分だが、細かく言うと上の<変位>の時間微分。

繰り返しになるが


物体に力 F が作用し、その位置が Δx だけ変化したとき、力 F がこの物体に対してした仕事 W
W={\boldsymbol  {F}}\cdot \Delta {\boldsymbol  {x}}
によって定義される。力 F と変位



で、言い換えると物理の<仕事>はF(ちから)と距離(変位)をかけたものだ。(これまた正確に言うと<x>はドット積(ベクトル用語、距離に方向を加味したともの)。

仕事 = 力 x 距離

<力仕事(ちからしごと)をすれは距離が出る>ならなんとなくわかるが、この式を変えると

 仕事
--- = 距離
 力

で仕事を力で割ると距離がでる、というこになる。これでますますわからなくなる。

さらに数式をつかうと


仕事 = 力(m x 速度の時間微分 x 距離(変位=速度の時間

    = (m x 速度の時間微分) x 速度の時間

積分は微分の逆の操作なので、

仕事 = m x 速度

で運動量(Momentum)になる。仕事と運動量の違いは運動量はポテンシャル、仕事は時間が経過し<ちから>を使った結果、ということか?

   
<ちから>に続いてこれまた中途ハンパだが、次回のポストでやまとことばの<うごき>について考えてみる。



 sptt

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