<ちから>は世の中の<動きのもと>(原動力)、世の中を動かすおおもと、みなもとで、やまとことばの最重要語のひとつだろう。手もとの三省堂の辞書(新明解国語辞典、第6版)では
”
それ自身のいとなみとしてそのものが持続したり、変化したりする(そのものが他のものに影響や変化を与える)作用を可能にしている根源だと考えられているのもの。
”
という日本語離れした解説だ。苦心のすえの解説だと思うので批判はしないことにする。
<ちから>の熟語、慣用句を思いつくまま並べてみよう。
ちからいっぱい
ちからおよばず
ちからくらべ
ちからしごと
ちからずく(づく)
(お)ちからぞえ
ちからだめし
ちからつきて
ちからづよい
ちからなし(に)
ちからまかせに
ちから水(すもう)
ちからもち
くそぢから
そこぢから
バカぢから
ちからのかぎり
愛のちから
カネのちから
ことばのちから
ちからをあわせる
ちからを入(い)れる
ちからをおよぼす
ちからをかける
ちからをかす(貸す)
ちから をくじく
ちからをこめる
ちからをそぐ
ちからをそそぐ
ちからを出す、出しおしむ
ちからをためる
ちからをつくす
ちからをつける
ちからをひめる
ちからをふるう (ちからを発揮する)
ちからを見せる、見せつける
ちからがあまる(ちからあまって、ちからのあまり)
ちからがある、ない
ちからがたりない
ちからが出る、出ない
ちからがぬける
ちからがわく
ちからになる、ならない
ちからにまかせて (ちからまかせに)
(追加予定)
熟語、慣用句の方はかなりこなれた日本語だ。意味内容で分けられると思うが、ここではとりあえず省略。
<ちから>は英語では force が一番近い。純英語のようだが、イタリア語では forza というのでラテン語由来だろう。自然界を動かす根源である force の正体を
F = ma (質量x加速度)
と分析したのはニュートンで、人類の歴史上の最大の発見の一つだろう。加速度は速度の変化率のことで、速度は(m が動いた(F が m を動かした))距離を時間で割ったもの。<ちから>は漢語では<力>で、動力(これはありそうであまりきかない)、電力、水力、火力というが、これらは英語では force ではなく power だ。
<パワーがある>とも<力(ちから)がある>ともいうが使い分けがあるようだ。漢語になってしまうが<電力、水力、火力>のついでに
力学、流体力学、熱力学
電力 / 水力、火力、原子力、風力(発電)、磁力(線)
重力、引力、圧力、弾力、応力
体力、眼力、聴力、抵抗力、回復力
知力、観察力、理解力、分析力、統合力
総合力
経済力、政治力、権力、勢力
軍事力、暴力、防衛力、守備力
統率力(リーダーシップ)
実行力、行動力
努力
活力、生命力
反発力、吸収力
耐久力、持続力
実行力
<力>は<りき>とい言い方もある。
自力(じりき)、地力(じりき)
力士(りきし)
(追加予定)
いくらでもありそうで、物理学、自然、経済、政治、社会、生活と多岐にわたって<力>が使われている。したがって<力>がわかれば(理解を深めれば、見方を多様化すれば)世の中がよく見えてくることになる。残念ながら以上の<力>は漢語で<ちから>ではなく<りょく>と読み発音する。また以上の<xx力>を英語に訳すと、xx force、xx power になるとは限らない。おもしろいが英語の話はここでは深入りしない。使われ方をみると、やまとことばの<ちから>は漢語の<力(りょく)>に比べかなり劣勢だ。
<能力>は<できる力>だ。英語では ability とか capability に相当。上の辞書の解説に<作用を可能にしている根源>とある。
運動能力、探知能力、発電能力
これもいくらでもありそう。
英語の power も何だかよくわからない。 電力は水力(水のちから)、火力(火のちから、これは正確には蒸気発電、蒸気のちからか)、風力(風のちから)とは違う。電力発電はナンセンス。電力は<電気のちから>だが Electrical Force ではなく Electrical Power (略号:P)となる。電気のちから(電力)でモータを回して回転力(回しぢから)を得ることができる。英語では Electrical Power ではめんどうなので状況で誤解をまねかなければ Power だけで電力になる。電力は<電気のちから>でもいいようだが<電気のちから>という言い方は使われ方はかぎられている。
何だかよくわからない power (パワー)だが、ラテン語系のイタリア語が参考になる。 Power の語源は調べていないがはラテン語系統ではないだろう。
Collins English-Italian Reverso Dictionary
power
b (ability, capacity) capacità f inv , potere m , (faculty) facoltà f inv
mental powers capacità fpl mentali
c (Pol, authority) potere m , autorità f inv
つまりは power を power という言葉を使わないで説明していることになるわけだが、
a) ちから、エネルギー、ポテンシャル、強さ、電気
b) 能力(できること)
c) 権力
と説明している。a) は分類しないといけない。
power = forza (ちから)
<パワー>と<ちから>は同じではないのでイタリア語でも混乱しているというか、区別はあいまいなようだ。<エネルギー>はこれまたなんだかよくわからない。
potenza がよくわからないが、potenza は動詞 potere の名詞形だ。 potere は英語の助動詞 can に近い。ただし potere は名詞としてもつかわれる。(末尾参照)
intensità はほぼ intensity の意で
(gen, Fis) intensity , (del vento) force, strength(つよさ)
日本語では<ちから>と<強さ(strength)>の区別があるが、中国語では<強さ(strength)>も<力>であらわすようだ。たとえば紙袋、ロープ、さらにはヒトなどの耐久力は<強い、弱い>ではなく<力がある、力がない>であらわす。また power は中国語では<功率>という。訪問先の中国工場で電源製品の規格書で<功率>が出てきて、日本語の効率で解釈してわけが分からなくなった経験がある。そして相手に言わせればトンチンカン ”この<功率>とはなのか?” という質問をしたが回答、説明はなかった。トンチンカンなやつ、変な日本人だと思ったのだろう。中国語の<功率>とはどういうことか?
Wiki中国語版
”
功率(英語:Power)定義為能量轉換或使用的速率,以單位時間的能量大小來表示,
”
能量はエネルギーのこと。Power は Energy の時間微分(極限微小時間ごと変化率)で、エネルギーの使用効率ではなく<エネルギーの使用速率>と理解しておく。
elettricità はほぼ electricity の意。日本語では<電気>に相当が、上記のように英語では Power は電力になる。
末尾に例句があるがイタリア語では、場合により current (corrente) 電流が power 電力の意になるようだ。
to cut off the power (Elec) togliere la corrente
the power's off la corrente è staccata
正確さは別として、水の流れを連想すると、目に見えない power 電力よりも具体的だ。
日本語の例でも
(お)ちからぞえ
ちからをかす(貸す)
ちからになる
などの表現があるが、これは<助け>に相当する。末尾の英語例文では
it is beyond his power to save her non può far nulla per salvarla
to do all in one's power to help sb fare tutto quello che si può per aiutare qn
という言い方がある。
さてやまとことばの<ちから>にもどって<ちから>は
ちからもち
ちからを出す、出しおしむ
ちからをためる
で言葉上は<もつこと>、<出すこと>、<出さないこと>、<ためること>ができるしろものなのだ。一方
ちからを出す(他動詞)
とも
ちからが出る(自動詞)
ともいう。
これはよくわからない<ちからの正体>をかいま見させる。
ちからを出そうとしても ちからがで出ない。
という方があるので、<ちから>はコントロールできないしろもののようだ。 また基本的には<ちから>は<でる>、<でてくる>もののようだ。
では何が<ちからを出させるのか?>、何が<ちからが出るように>にするのか?冒頭の辞書の解説のように<ちから>は<動きのもと、おおもと、みなもとで>なので、この問いは<動きのもとのちからのもとは何か>という問いになる。パワー、エネルギーという言葉を使うと
ちからのもとはパワー。そしてパワーのもとはエネルギー。
具体的には
腹が(極端に)へるとちからが出ない。
のは事実だ。これは
腹が(極端に)へるとちからを出すパワーがない。
とも言えそうで、これはさらに
腹が(極端に)へるとエネルギー不足で、パワーがないので、ちからが出ない。
で何となくよさそうだが、パワーもエネルギーもやまとことばではない。また
ちから = パワー(power) = エネルギー (上記の英語-イタリア語ネット辞典)
とすると
<ちから>のもとは<ちから>で、そして<そのちから>のもとは<ちから>だ。
となってナンセンスだ。
さて
P = V(電圧) x I(電流)
という公式、等式がある。この式は理解しにくいところがある。実はこのポスト<ちから>を書きはじめたのはこのためだ。したがて、これまでは前置きで、これからが本番。繰り返しになるが<作用を可能にしている根源>が参考になる。
V(電圧)はポテンシャルで、<作用>ではなく<作用を可能にしている根源>ともいえる。 I(電流)の方はわかりにくく、<根源>にさかのぼると
Wikiの解説
”
定常的に流れる電流 I は次のように計算できる。
より一般的に表すと、ごくごく短い時間 dt に流れる電荷量を dQ とすると次のように表される。
”
(sptt注<電荷 Q は電流計によって電流量を測定した区間を流れた電荷の量を表し>は< Q は電流計によって電流量を測定した区間を流れた電荷の量を表し>とすべきだろう。もっともこの説明自体よくわからない。英語版は<More generally, electric current can be represented as the rate at which charge flows through a given surface>で電流計も区間も出てこない。)
<定常的に流れる>とは<一定(不変)>とういうことで、こまかいことをいえば実際には起こりにくい。二番目の式は<微分(方程)(等)式>で<より一般的に表すと>こうなる。つまりは、実際には起こりにくい<一定(不変)>ではなく、常に変わる場合にも適用できる。<一定(不変)>でもいいので一般化が進んでいることになる。二番目の式はダイナミックな変化状態をあらわせるのだ。微分もニュートンが発明(発見か)したことになっているので、ニュートンの偉大さがわかる。F = ma も<a(加速度)>は<速度の微分>なので<微分(方程)(等)式>なのだ。さて I(電流)にもどると
Q(チャージ、電荷)を時間(t)で割ったもので、時間が関係している。ゼロでは割れないので、時間が経過しないと(t = 0) I(電流)はナンセンスになる。一方<微分(方程)(等)式>の方はナンセンスではなく、微分は値(この場合はQ)に変化がないと結果はゼロになるので I(電流)はゼロといえる。
よくわからないが、 I(電流)は、ポテンシャルなV(電圧)にくらべ、実行、実施(to carry out という英語表現は<電荷を運んでいる>感じがある)、作用に関連しているようだ。最初の式にもどって
P = V(電圧) x I(電流)
この式は本来<P と V と I の関係式>なのだが、直観的に電圧がないと電流はない、出てこない、と言えそう。そして逆の場合の<電流がないと電圧がない、出てこない>は考えにくい(注)。 数学では、トリッキーだが、等式は<xxというわけでという理由や原因はなく、こういう関係にあると定義する>場合が少なくない。この等式もそう考えた方がよさそう。電圧と電流の単位は違うのだ。V(電圧)の単位はV(ボルト)で、
Voltage = Energy / Charge
という関係がある。
一方 I(電流)の方は単位はA(アンペア)で上述のように
Current = Charge / time
という関係がある。
したがって
P(電力)= V(電圧) x I(電流) =(Energy / Charge)x(Charge / time)
P =Energy / time
となる。 P(電力)とエネルギーの関係等式だ。Wikiの Electric power の解説
Definition (定義であることに注意)
Electric power, like mechanical power, is the rate of doing work, measured in watts, and represented by the letter P. The term wattage is used colloquially to mean "electric power in watts." The electric power in watts produced by an electric current I consisting of a charge of Q coulombs every t seconds passing through an electric potential (voltage) difference of V is
- Q is electric charge in coulombs
- t is time in seconds
- I is electric current in amperes
- V is electric potential or voltage in volts
おそらく work (仕事、物理用語)が何だかよくわからないだろうが、こういう定義(VQ)なのだ。
P =Energy / time
この式は
P(電力)はエネルギーとみなしていい。違いはP(電力)は時間当たりのエネルギー量で、時間が実際に経過しないとエネルギーにならないのだ。ある意味ではポテンシャルと言える。したがって、P(電力)はまだ出ていな、出していない<ちから>。一方エネルギーの方も時間に関係しているが
Energy = Power x time
で Power すなわち<ちから>に変わりはない。違いはエネルギーは出そうとすれば Power という時間(あたりの)割合(time rate)で出てくる<ちから>を<足し合わせた><ちから>なのだ。<出そうとすれば>は肝心で、ださなければ、エネルギーもポテンシャルなのだ。
以上から
ちから、パワー、エネルギー ともすべてポテンシャル。
ということができる。 このことから
腹がへるとちからが出ない。
腹がへるとパワーが出ない。
腹がへるとエネルギーが出ない。
は同じことをいっていることになる。パワーやエネルギーという外来語がなくても<ちから>でまにあうだろう。上に<実行力>を書いたが、<実行力>も実行しないうちはポテンシャルにとどまる。その他の<xx力>、<xx能力>もみなポテンシャルだ。
ところで食べ物にはカロリーがある。カロリーはエネルギーの単位で
1 cal = 4.184 J
ヒト(動物)の<ちから>のもとは<熱エネルギー>か?
末尾
Collins English - Italian Reverso
power
1 n
a (physical strength, also)
(fig) forza , (energy)
energia, (force, of engine, blow, explosion)
potenza, (of sun)
intensità, (electricity)
elettricità
to cut off the power (Elec) togliere la corrente
the power's off la corrente è staccata
the ship returned under its own power la nave è tornata con i propri mezzi
more power to your elbow! fam dacci dentro!
nuclear power energia nucleare
solar power energia solare
to cut off the power (Elec) togliere la corrente
the power's off la corrente è staccata
the ship returned under its own power la nave è tornata con i propri mezzi
more power to your elbow! fam dacci dentro!
nuclear power energia nucleare
solar power energia solare
b (ability, capacity)
capacità f inv , potere m , (faculty)
facoltà f inv
mental powers capacità fpl mentali
it is beyond his power to save her non può far nulla per salvarla
to do all in one's power to help sb fare tutto quello che si può per aiutare qn
the power of speech la facoltà or l'uso della parola
powers of persuasion/imagination forza di persuasione/immaginazione
mental powers capacità fpl mentali
it is beyond his power to save her non può far nulla per salvarla
to do all in one's power to help sb fare tutto quello che si può per aiutare qn
the power of speech la facoltà or l'uso della parola
powers of persuasion/imagination forza di persuasione/immaginazione
c (Pol, authority) potere m , autorità f inv
the power of the Church l'autorità della Chiesa
that is beyond my power(s) questo è al di là dei miei poteri
to have power over sb aver potere su qn
to have sb in one's power avere qn in proprio potere
to be in sb's power essere in potere di qn
to be in power essere al potere
the Tories were in power for 18 years i conservatori sono stati al potere per diciotto anni
to come to power salire al potere
the power behind the throne l'eminenza grigia
the world powers le grandi potenze
the powers that be le autorità costituite
the powers of darkness or evil le forze del male
the power of the Church l'autorità della Chiesa
that is beyond my power(s) questo è al di là dei miei poteri
to have power over sb aver potere su qn
to have sb in one's power avere qn in proprio potere
to be in sb's power essere in potere di qn
to be in power essere al potere
the Tories were in power for 18 years i conservatori sono stati al potere per diciotto anni
to come to power salire al potere
the power behind the throne l'eminenza grigia
the world powers le grandi potenze
the powers that be le autorità costituite
the powers of darkness or evil le forze del male
d (Math) potenza
7 to the power (of) 3 7 al cubo or alla terza
7 to the power (of) 3 7 al cubo or alla terza
e fam, a lot of it did me a power of good mi ha fatto un bene enorme
2 vt azionare
plane powered by 4 jets aereo azionato da 4 motori a reazione
nuclear-powered submarine sottomarino a propulsione atomica
plane powered by 4 jets aereo azionato da 4 motori a reazione
nuclear-powered submarine sottomarino a propulsione atomica
3 adj (saw, also, Elec, cable)
elettrico (-a) , (supply, consumption)
di energia elettrica
(注)<電流がないと電圧がない、出てこない>は考えにくい。直観的にはこうだが、電気回路で二つ以上の抵抗による電圧分割(Voltage Divider)というのがあり、これは電流がないと起こらない。
sptt
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