<せつない>は<切ない>と書く。 別の目的で<アカシアの雨がやむとき>という歌の歌詞を少し詳しく調べていたら<せつない胸はわかるまい>というのが2番にでてきた。この歌は演歌と言いきれないないところがあるが<せつない胸はわかるまい>は演歌調だ。念のため<切ない>の意味を手もとの辞書(三省堂新明解、6版)で調べてみると、なんと解説の始めに
もと<切なる>
とある。だがこの語源(由来)についてそれ以上の説明はない。
<切なる>は
切なるお願
で<心からのお願い>
切にお願いします
という言い方もある。これも<心からお願いします>の意だ。この<切なる>から演歌でよく出て来る<切ない>への意味に変化、移行はどのようにおこったのか?
演歌でよく出て来る<切ない>は
せつない思い
で、さらに言い換えると、私の解釈では<やりきれない思い>。したがって、大体
せつない = やりきれない
<やりきれない>は<遣り切れない>で<こころ、思いの遣りどころが(はっきりとは)ない>でここに<切る>がでてくる。<せつない、切ない>はこの<やり切れない>の連想がはたらいものか。
<せつなる>は<うそ、みせかけ>でない<まことの、こころからの>という意味だ。これが<やりきれない>に変わっていた経緯は
<まことの、こころからの>は概して相手に伝わらない。
伝わらないと
<やり切れない>気持ちになる。
そして<せつない>となった。
とすると意外と簡単だ。
だが<せつ>は漢字で<切>と書くがやまとことば。<きる>も漢字で<切る>とは書くが、これもやまとことば。そして<せつ>と<きる>は直接関係はない。
さて上で<せつ(切)>はやまとことばと書いたが、疑問がある。
親切の切(せつ>だ 。<せつ(切)>がやまとことばとすると親切は重箱読みになる。親切は中国語のようだが、ほとんど聞かない、見ない。ネットで調べてみると
https://www.zdic.net/hant/%E8%A6%AA%E5%88%87
”
◎ 親切 qīnqiè
(1) [cordial;kind]∶形容人態度親愛和善
態度親切
(2) [intimate]∶親密;親近
(3) [cordial]∶熱情關切
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國語辭典
親切
和善熱誠。如:「對人要親切。」反冷淡,冷漠 1.凶暴 2.隔膜,疏遠
親近、親密。《紅樓夢.第五八回》:「儼似同胞共出,較諸人更似親切。」近親密,親暱,親近,親熱
-
仔細、準確。《三國演義.第一八回》:「暗地拈弓搭箭,覷得親切,一箭射去,正中夏侯惇左目。」《老殘遊記.第一回》:「章伯看得親切,不禁狂叫。」
”
で(1)は古典からの例文がない。日本からの逆輸入ではないか?
<切>の一字だと
https://www.zdic.net/hant/%E5%88%87
”
● 切
qiē
◎ 用刀從上往下用力:~菜。~除。~磋(本義是把骨角玉石加工製成器物,引申爲在業務、思想各方面互相吸取長處,糾正缺點,如“~~琢磨”)。
其它字義
● 切
qiè
- 密合,貼近:~當(dàng )。~膚(切身)。~己。親~。
- 緊急:急~。迫~。
- 實在:~忌。懇~。
”
で四声の違いで二つの意味がある。
以上の<せつ(切)>は発音は違うが中国語由来だ。qiè (チエ)が<せつ>に変わる(変わった)可能性はある。
せっかく - 折角
くっせつ - 屈折
中国語の<折 >はやっかいで
zhē、zhé、zhé があるが主には
zhé
断,弄断:折断。折桂(喻科举及第)。折戟沉沙(形容惨重的失败)。
幼年死亡:夭折。
弯转,屈曲:曲折。转折。周折。折中(对不同意见采取调和态度。亦作“折衷”)。
返转,回转:折返。
损失:损兵折将。
挫辱:折磨。挫折。百折不挠。
减少:折寿(减少寿命)。折扣。
(以下略)
折る-折れる、切る-切れるの意味がある。
せっきん - 接近
<接>は
jiē
连成一体:接合。接骨。接壤。衔接。
继续,连续:接力。接替。接班。接二连三。再接再厉。
靠近,挨上:接近。邻接。接吻。
承受,收取:接受。接收。接纳。接管。
迎:接风。接生。接待。
で発音は切(jie)と同じだ。 その他では
説 は shuō
節 は jié
設 は shè
摂 は shè
拙 は zhuō
she の発音は練習が必要。<シュー>に近い。<せつ>や<せっ>にはなりにくい。
以上から推測すると
意味は<切>の
qiè
- 密合,貼近:~當(dàng )。~膚(切身)。~己。親~。
- 緊急:急~。迫~。
- 實在:~忌。懇~。
発音はqièが<せつ><せっ>になったというよりは日本にこの字と意味で輸入されたときには<せつ><せっ>に近い、日本人の耳には<せつ><せっ>に聞こえる発音だったのだろう。ちなみに古い中国語の発音を残しているといわれる広東語では<切>は jit (ちっ)と発音される。想像するに輸入されたときには qiet、siet などと発音されていた、聞こえたのではないか?
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追記
”
もと<切なる>
とある。だがこの語源(由来)についてそれ以上の説明はない。
”
の再考。 この辞書でたまたま<あぶない>を調べたが、<あぶない>の<ない>は形容詞をつくる接辞いてある。これだと、<せつない>の解説はごく簡単で説明が要らないくらいだ。
<あぶない>の変化の順序は
あやふい(あやうい) -> あふなし (<なし>は形容詞接辞) -> あぶない
ところでこの形容詞接辞の<なし>は<なす>由来ではないか。<なす>は
借金をなす(返す) 関東方言か?
(この場を)とりなす
おりなす
(追加予定)
の<なす>と関連があろう。だが<なす>は自動詞<なる>とコンビの他動詞で、動詞化の接辞ならわかるが、形容詞接辞にはなりにくい。これも再考予定。
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