前回のポスト<恩に着る>の最後で
”
恩をあだで返す
という言い方がある。この<あだ>もやっかいな言葉で、次回のポストで取り上げる。
”
と書いたので、忘れないうちに書いておく。<あだ、仇>が出て来る歌に武田節というのがある。
Wiki
”
武田節(たけだぶし)は、1961年に作られた民謡調歌曲。作詞は米山愛紫、作曲は明本京静。本来は三橋美智也が歌唱する民謡調流行歌または新民謡と呼ばれるジャンルの曲であるが、山梨県の民謡が少ないこともあり、現在は山梨県の民謡とみなされることがある。
歌詞
甲斐の山々 陽に映えて
われ出陣に うれいなし
おのおの馬は 飼いたるや
妻子につつが あらざるや あらざるや
祖霊まします この山河
敵にふませて なるものか
人は石垣 人は城
情けは味方 仇は敵 仇は敵
”
この歌詞、出だしの
甲斐の山々 陽に映えて
われ出陣に うれいなし
は耳で聞いてわかるが、次の
おのおの馬は 飼いたるや
妻子につつが あらざるや あらざるや
は説明が必要。
<飼いたるや>の<飼う>は馬に<飼葉、かいば>を与えることだろう。< 動物に食べ物・水を与える>の意味では、古語ようだ。
つつが あらざるや
ごくまれだが、今でも使うのが<恙 (つつ) ない> の否定形。<恙>自体は
で、<恙>自体では古語だ。
人は石垣 人は城
https://www.rosei.jp/readers/article/57711
これは、「風林火山」の軍旗で有名な戦国時代きっての名武将、武田信玄(1521~1573年)の言葉です。 この言葉にはいくつかの解釈がありますが「人は、石垣や城と同じくらい、戦(いくさ)の勝敗を決するのに大切だ」という意味です。
情けは味方 仇は敵
これがこのポストの題目<恩をあだで返す >と関連する箇所。
仇 (あだ) = 敵、テキ、カタキ
でもあるので、おかしなことになる。この箇所<あだはてき>と歌われている。
仇を討つ、打つ(うつ)
という言い方がある。 この仇は<かたき>の意。これは<敵 (テキ) 討つ、打つ>ではない。
デジタル大辞泉 「仇」の意味・読み・例文・類語
あだ【×仇/×寇】 《室町時代までは「あた」》
1 仕返しをしようと思う相手。敵。かたき。「親の―を討つ」
2 恨みに思って仕返しをすること。また、その恨み。「恩を―で返す」
3 害をなすもの。危害。「親切のつもりが―となる」
4 攻めてくる敵兵。侵入してくる外敵。
「しらぬひ
デジタル大辞泉 「敵」の意味・読み・例文・類語
てき【敵】
[用法]”
ここで、このポストの題目「恩をあだで返す」が出てくる。
情けは味方 仇は敵
の歌詞は<あだはてき>と歌われている。前半の<情けは味方>を考慮すると後半の<仇は敵>は上の<あだ>の解説
1 仕返しをしようと思う相手。敵。かたき。「親の―を討つ」2 恨みに思って仕返しをすること。また、その恨み。「恩を―で返す」
3 害をなすもの。危害。「親切のつもりが―となる」
4 攻めてくる敵兵。侵入してくる外敵。
では説明がつかない。しいて言えば
2 恨みに思って仕返しをすること。また、その恨み。「恩を―で返す」
ここでも表題の「恩をあだで返す」が出てくる。
恩をあだで返す
この<あだ>は、意味からすると、上記の解説、例文から
2 恨みに思って仕返しをすること。また、その恨み。「恩を―で返す」
だが
3 害をなすもの。危害。「親切のつもりが―となる」
でもいいだろう。
< 恩をあだで返す >自体、とんでもないことなのだが、まれに実際におこることから生まれた言い方だろう。幸い私は直接見聞きした記憶がない。<恩>、<あだ>と並んで<なさけ>、<情>がある。
<あだ>、<なさけ>はやまとことば。<恩、おん>、<情、じょう>は漢語由来だ。
<恩>のやまとことばは何か? ネットでチェックしてみると
恵み。情け
めぐみ。いつくしみ。情け
他の人から与えられた恵み。
だが、恩=めぐみ、ではないだろう。<いつくしみ>、<いつくしむ>もかなり恩とは違う。恩=なさけ、でもないだろう。
めぐみ、いつくしみ、なさけ
は心情的。<心、こころ>のはたらきの表れ。一方<恩>は理知的。<頭、あたま>のはたらきの表れ。この違いが<恩>に関しては、前回のポスト<恩に着る>で取り上げた、否定的な<恩>の使い方が出てきたのだろう。
恩に着せる恩着せがましい
恩を売っておく
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追記
三橋美智也の歌は、他のポストでも書いている。
月光仮面、ハリマオ、少年探偵団の主題歌 - Nov 9, 2024
うれしがらせて - Jul 31, 2021
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