Monday, April 28, 2025

<つる>のいろいろ

 

前々回のポスト ”<魚を釣る>の<釣る>の語源 ” で<<魚を釣る>は<餌で魚を連 (つ) る>ではないか、と書いたが、<つる>にはいろいろある。

足 (ふくらはぎ) がつる  自動詞

魚をつる

衣服をハンガーにつる
首をつる (これは慣用的な言い方)
風鈴をつる、つるす

<吊る>の<つる>だが、<つり下げる>場合は to hang 相当。<つるす>とも言う。 だが<つり上げる>場合もあり、これは to hang にならない。to hang はもっぱら<つり下げる>だ。to hang up は普通<電話を切る>の意だ。

<価格をつり上げる>は<吊り上げる>、<釣り上げる>は変で<価格を連り上げる>ではないか?

この<連り、つる>は

たくみな言葉、見た目で消費者をつる
まわりの人が笑うので、つられて(つれて) 笑ってしまった
xxにつれて

関連語 (派生語) に

連 (つ) れる  他動詞

連れて行く
連れて来る

はよく使う。

だが複合動詞は意外と少ない。

連れ歩く
連れ込む 
連れ添う
連れ立 (だ) つ
連れ出す
連れ戻す

二人づれ、三人づれ

連 (つら) なる 自動詞 ー 連ねる 他動詞

 山がつらなる

がある。<つながっている>イメージだ。

つるむ

良くない意味だが<つながっている>イメージだ。

 

名詞の<つる>では

植物のつる、つる性植物
弓のつる

糸状、紐 (ひも) 状。何かを<吊る>、<吊るす>す場合は糸や紐を使うことが多い。

 

sptt


Saturday, April 26, 2025

引きずる、引きづる

 

<引きずる>はけっこうよく使う。多義語のようで、ネットでチェックしてみると

 出典:デジタル大辞泉(小学館)


ひき‐ず・る【引き×摺る】の解説

地面などをすって引いて行く。「下駄を—・って歩く」
2 長い物を垂らして地面などに触れさせる。「裾を—・る」
無理に連れて行く。「交番に—・って行く」
故意に長引かせる。「回答を月末まで—・る」
5 捨てきれずに今なおもちつづける。いつまでも忘れないでいる。「失恋痛手を—・る」6 (普通「ひきずられる」の形で用いる)他人の行動や考えを引っ張る。影響を与える。「雰囲気に—・られてつい承諾してしまった」


 <引く>は類語というよりは<引きずる>の構成原動詞だ。<引く>が一般的に瞬間的、一時的な動作であるのに対して<引きずる>は継続的な動作、動きだ。

<引きずる>には<擦る、する>由来の<ずる>が<引く>に続いているので<引きずる>でよさそうだが、上のネット辞典の三番目

無理に連れて行く。「交番に—・って行く」  

の<連れる>は<つれる>だ。<ずるずる>と<引きずって>いる感じがあれば<交番に引きずって行く>でいいが、<引き連れて行く>であれば<引きづって行く>だろう。だが、普通は<引き連れて行く>と言うだろう。

<擦 (す) れる>と<連 (つ) れる>は全く違う。

故意に長引かせる。「回答を月末まで—・る」 

では<擦れる>の派生語<ズレる>がある。 

5 捨てきれずに今なおもちつづける。いつまでも忘れないでいる。「失恋痛手を—・る」

も<ずるずると><引きずる> の意だ。

6 (普通「ひきずられる」の形で用いる)他人の行動や考えを引っ張る。影響を与える。「雰囲気に—・られてつい承諾してしまった」

は<連れる、連れられる>の意だ。

「雰囲気に引き連 (づ) られてつい承諾してしまった」


sptt

 

 

Friday, April 25, 2025

<魚を釣る>の<釣る>の語源

 

 <魚を釣る>の<釣る>の語源はなにか?

<釣る>は<つる>だが、漢字を使うと意味が極めて似た<吊る、吊るす>がある。水の中の生きた魚は<釣る>だが、とった(獲った) 魚を糸やひもで<つる、つるす>場合は<吊る、吊るす>だ。漢字で書くとこの区別があるが、口で言う場合、耳で聞く場合はこの区別はない。生きた魚は<釣り上げる>、獲った魚の場合は<吊り下げる>。もっとも、生きた魚も<釣り上げた>後は<吊り下がって>いる。

<釣る>の語源は<つる>動作の一般的な<吊る> だろう。いづれにしてもやまとことばとしての元は<つる>だ。

ところで、<魚を釣る>を英語ではどう言うか ?

ネットでは

to catch (a) fish

と出てくくるが、手や網で魚をとる (獲る、捕る) 感じだ。動詞の to fish の一語で<魚を釣る>だ。 to fish a fish とは言わない。また fish の複数形は fish で、a lot of fishes とは言わない。

さらにところで、以下はこじつけなのだが、<連れる、つれる>は関係ないか?

<連れる>は高頻度使用語。

連れて行く
連れて来る

引き連れる

はよく使う。 

だが複合動詞は意外と少ない。

連れ歩く
連れ込む  いまは Love Hotel というようだが、昔は<連れ込むみホテル>と言っていた。
連れ添う
連れ立つ
連れ出す
連れ戻す

さらに関係、相関関係を示す

xxにつれてyyになる

という重要表現がある。

現代語では

連れない (これはほとんど聞かない)
連れて
連れる
連れること、連れる時 (これはほとんど聞かない)
連れれば (仮定形)(これはほとんど聞かない)

と下一段活用だが、昔は下二段活用で (終止形<連る>)

連れず
連れて
連る
連るること、
連るる時 
連るれば (已然形)

<連れる>の意味は

デジタル大辞泉

読み方:つれる

一緒について来させる。ともなう。同行する。「を—・れて散歩出かける

一方状況変化するとともに他方状況変化する。「年をとるに—・れ忘れっぽくなる

1は英語で to accompany という動詞があるが、<同行する>の意で<連れて行く>、<連れて来る>には使えない。

  1. go somewhere with (someone) as a companion or escort.
  2. be present or occur at the same time as (something else).

2は日本語解説の2に似ている。

漢字の<>は<金ヘン>で針、hook>が関係しているのではないか? 調べてみると

似たような字の<钩>が to hook で、<魚>は<魚を釣る、to fish、fishing>の意で、<島>は<うおつりじま>と訳されている。もともとは中国領だろう。中国語版 Google の Baike-baidu では

 diào 以钩饵取鱼。
 用饵诱鱼上钩:钓鱼。钓饵。垂钓。钓具。

という解説で、<>、<>、<>が出てくる。

このように、<魚を釣る>には餌を使うが、魚は餌に<られて>くる。られる>は古語<連る>の受身形になるが、られる>を派生動詞と見てもいい。れる>の受身形は<れられる>。

また<餌で魚をつる>は<餌で魚を連る>。実際<魚をつっている>場面をを想像すると<魚を餌で水から連れ出している>感じがないでもない。


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Thursday, April 24, 2025

<失望する>のやまとこば

<失望する>のやまとこばは大方<がっかりする>だろう。だが<がっかりする>は擬態語の<がっかり>に<する>がついたもので、感覚的にはこれでもいいが、文章にする場合には少し気がひける。

英語では他動詞の disappoint というのがあり、 

to be disappointed

が<がっかりする>に相当する。頭に dis- があって<当てが外 (はず) された>といった感じで、わるくない。私はよく使う。<(当てが外 (はず) されて)残念だ>の意味にもなる。

<当てが外れる>だけでは<失望する>にならない。ここが肝心。

<失望する>は文字通りでは<望みを失う>のようだが、細かく言うと<望みを失った時の感情の表現>ともいえる。<絶望する>はもっとシリアスで<まったく望みを失った時の感情>で、心は<空虚>になる。これに比べると<期待外れ (になる) >はそれほどシリアスではない。

その他では

気が抜ける
気落ちする だが、自分のことの場合はあまり使わないようだ。私は気落ちしている。(X) 太郎は気落ちしているようだ。
<気が落ちる>でもよさそうだが、ほとんど聞かない。
<気を落とす>も自分のことの場合はあまり使わないようだ。私は気を落としている。(X) 花子は気を落としているようだ。 

もっとも日本では<失望する>も自分のことの場合はあまり使わないようだ。

私は失望している。
私は花子が返事をくれないのに失望している。

なにか他人ごとのようだ。

私は花子が返事をくれないのにがっかりしている。
私は花子が返事をくれないのでがっかりしている。 

が自然で、これが<がっかりする>が使われる理由だろう。

ところで、香港では、広東語では

我好失望 sat mong。

といって問題なく、よく耳にする。

また中国ネットで<失望>をチェックしていたら、<希望落空>という語が出てきた。中国語だが悪くない表現だ。心が<空虚>になるのだ。

 

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Sunday, April 20, 2025

ご苦労さまです。ねぎらいの言葉

 

<ご苦労さまです>はよく使うが、<苦労>に<ご><さま>がついた変な言い方だ。

 これは、元は<あなたに苦労をかけた>。これが

あなたに苦労をかけさせて申し訳ない。

場合によっては

あなたに苦労をかけさせて申し訳ないが、これで助かった。ありがたい。

感謝を示す、または<ねぎらい>示すのであれば<苦労>に<ご>、<さま>がついてもおかしくはない。最近は純やまとことばの<お疲れさまです>が多く使われるようだ。これまた<ご>と<さま>がついている。

<ねぎらい>、<ねぎらう>は古いやまとことばだ。語源をチェックしてみると

” 

https://wordorigin.seesaa.net/article/201607article_40.html

これらの 3 つのことばのもとになっている語は 「ねぐ」 という動詞です。

「ねぐ」 は, 「祈ぐ」 「請ぐ」 「労ぐ」 と書かれます。

このうち, 「祈ぐ」 「請ぐ」 と書く場合は, 〈自分の望むことがかなうように神仏に祈る〉 ことを意味します。その 「ねぐ」 が 「ねがふ」 になりました。

また,〈願いがかなえられるように努力してくれた神仏に対して,その心を安めて,神仏の加護を祈る〉 ことが 「ねぎらふ」 ということばになりました。

神社の神職としての 「禰宜 (ねぎ) 」 は,その 「ねぎらう」 ことを代行してくれる人ということになります。

というのがみつかった。だが、ここで気になるのは 意味の違いを漢字を使って説明していることだ。実際口に出して言う時はこの漢字での区別はない。つまり<ねぐ、negu>で、場合によっては

1) 〈自分の望むことがかなうように神仏に祈る〉 ことを意味します。その 「ねぐ」 が 「ねがふ」 になりました。

2) 〈願いがかなえられるように努力してくれた神仏に対して,その心を安めて,神仏の加護を祈る〉 ことが 「ねぎらふ」 ということばになりました。

 

さて、現在では<ねぎらう>は

Wiktionary

相手苦労慰める。苦労に謝意を示す。 

の意で使う。

さて、これで終わりではない。問題は感謝の表現に<苦労>がつかわれていることだ。苦労>は和製漢語で、本家の中国では、他にもあるが、<辛苦>が第一番の相当語。

一方<苦労>に相当する適当な英語はない。ざっとチェックしてみると

difficulty; hardship; trouble

がでてくる。hardship がやや近いが<実行が難しいこと、つらいこと>で、hardship を<乗り超える ( to overcome ) >過程が<苦労>、<苦労する>だ。

difficulty は 困難
troubleは 問題。障害 

to do hard work、to work hard は過程なので<苦労>に近い。

一方中国語の辛苦>は、Baike‐baidu (中国版Wiki) の解説では

辛苦 xīn kǔ,原指味道辛辣而苦,比喻艰难困苦,很疲倦的感觉。现多指工作和劳作的感受。辛劳苦累,付出艰辛,用于烦劳别人时表示客气、慰问。 

で最後に、おもしろいことに

<用于烦劳别人时表示客气、慰问>とあり、<ご苦労さまです>に近い用法があることだ。

你辛苦了。または

辛苦你了。

有什么区别?那意思差不多了,你辛苦了,只是对你客气的说你很辛苦了,那辛苦你了,但又包含了一些愧疚和不好意思,还有很感谢你的意思,差别就在这点。

 で後半の説明は

愧疚和不好意思 ー 申し訳ない、

さらには感謝の意になる (很感谢你的意思)。 


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