Monday, October 22, 2012

<らしさ>と<確率>について


確率は数学、統計用語で probability の訳。 Japan wiki の説明は次のとおり (抜粋)。
Probability なる単語に対して「確率」という訳案が出されたのは、1908年(明治41年)だが、この語の他にも「蓋然」「公算」「適遇」「近真」「確からしさ」「多分さ」等の候補が有り、「確率」という訳語が定着したのは、1919年(大正8年)頃である[1]首都大学東京経営科学を専門とする中塚利直教授は、藤澤利喜太郎の訳語であると推定している[2]中国語では「概率」と訳している。
 

大和言葉派としては「確からしさ」「多分さ」でいいと思うが、「確からしさ」は「確率」に比べて長すぎ、「多分さ」は口語的すぎるようだ。

私の提案は Probability の訳語として<らしさ>はどうかということである。

ドイツ語は Wahrscheinlichkeit (Probabilität という英語系もあるようだが) で「確からしさ」に近い。

Wahr -確かな
scheinlich -らしい
keit - さ

一方<可能性>という言葉もある。これは英語の Possibility に当たる。専門用語ではないので訳語という意味合いは薄い。

Possibility のドイツ語は Möglichkeit (Possibilität という英語系もあるようだが)。

Möglich -可能な
keit - 性 または上記の<さ> 

したがって Möglichkeit は<可能さ>となる。

Möglich は動詞の mögen の形容詞形。mögen は英語の may に相当。


さて、<らしさ>を<らし>と<さ>に分けて調べてみる。

1) <らし>の用法、意味

古語では<らし>は動詞の後に付いて推定を表す助動詞。現代語では<らしい>となるが、動詞にも、形容詞にも、名詞にも付く。何詞か?

a) 動詞に付く場合

来るらしい
在るらしい

推定、推測の意味。

b) 形容詞、形容動詞(というもの) 付く場合

大きいらしい
静からしい

推定、推測の意味。

 c) 名詞に付く場合

男らしい
女らしい
まことらしい
本当らしい

 <男らしい>、<女らしい>は推定ではなく<ふさわしい><本来の属性をもっている>のような意味になっている。英語の like 。manlike, womanlike 。

<まことらしい><本当らしい>には推定、推測の意味がある。

総じて、<らし>の用法、意味では推定、推測の意味がある。


2)<さ>の用法、意味

a)形容詞や形容動詞(というもの)に付いて名詞化する。または程度(和語:ほど)、度合い、を表す。

形容詞

美しい --> 美しさ
みにくい --> みにくさ
大きい --> 大きさ
広い --> 広さ
深い --> 深さ

形容動詞(というもの)

静かな  --> 静かさ
綺麗な --> 綺麗さ
大きな --> 大きさ
確かな --> 確からしさ

b)名詞に付いて

程度(和語:ほど)、度合い、を表す。

男らしさ
女らしさ
まことらしさ
本当らしさ

<さ>の用法、意味のなかには程度(和語:ほど)、度合いがあり、 これは「確率」を示している。


 結論

1) <らし>の用法、意味では推定、推測の意味がある。

2) <さ>の用法、意味のなかには程度(和語:ほど)、度合いがあり、 これは「確率」を示している。

したがって、 <らしさ>は probability のやまとことば訳にふさわしく、「確からしさ」よりも短く、発音も容易。

さらに一般化すれば<可能性>(並行して<蓋然性>というほとんど使われない語も現れる)も<らしさ>でいいのではないか。


sptt









Wednesday, October 17, 2012

<割り当て>と<分布>について

分布は統計用語だ。さほど頻繁ではないが厳格な意味を意識しないで一般的にも使われる。純中国語か和製中国語かわからないが、和製中国語のような気がする。

1)中国語は<分>は分けるで、<布>は<ぬの>ではなく動詞で公布、布告で使われる<ちらす><まきちらす>の意。
(注)中国語は名詞、動詞の形態上の変化はなく、意味上も名詞、動詞どちらとも解釈できる場合があり、曖昧といいうか融通むげなところがある。

2) 英語は distribution で dis+tribution 。<dis>は discover、dishonest の dis ではなく、disperse、disturb、dispense の dis で<布>に似て<ちらす><まきちらす>の意。tribution の語源はラテン語の tribuo で、辞書によると、to allot、to assign、さらに一般的には to give の意。したがって、 distribution は<まきちらして>+<あたえる>の意。

3)さて純日本語、やまとことばだが、中国語や英語よりも意味をもっとよく表しているものがある。

<分け与える>でもいいが、翻訳調であり。<連用形の体言化><分け与え>はほとんど使わない。もっといいのは<割り当てる>の体言化<割り当て>だろう。<配(くば)る>は<分け与える>に近いが一語だけに意味が、<与える>ほどではないが、一般化しすぎてしている。

a)  分け与え

ある事象の分布を調べるには得られたデータをなんらかの基準にしたがって分ける必要がある(通常グループ化)。各グループに対して分けられたデータ量(数字)が全体の分布を示すが、これを図にすると分布が見やすい。グループ化自体<分ける>作業だが、分布を知るには分けた各グループになんらかの基準で分けたデータを<与える>作業がある。説明は少しややこしいが、作業は単純作業。単純作業だが、得られた結果(分布)は意味がある。


b) 割り当て

ややこしい説明を繰り返すことになるが、<割 り当て>をするためには<分ける>必要がある。<分けた>データは各グループに割り当てられる。よく考えてみれば、<割る>という作業は<分ける>こ とである。このことにはかなり深い意味があり、興味と時間のあるひとは考えてみるとおもしろい。<当てる>は<的に当てる>の行動、作業の意は残っている が、英語の to allot、to assign の意にやや変化している。<振り当てる><振り当て>という言葉もある。

c) <分け与え>と<割り当て>の違い

<分け与え>は各メンバーに同じように分けて与える(等分)印象があるのに対して<割り当て>は何らかの基準にしたがって各メンバーに不等分に分けて与える印象がある。このことからも distribution の大和言葉訳は<割り当て>がいい。

-----

<割り当て>は統計学的な分布のことはほとんど考えずによく使われており、残したいいいやまとことばだ。


sptt

導出について


導出はあまり聞きなれない語だが、<導出>の定義(数学)以外では日本語Wikiの英語の物理関係の方程式の解説で Derivation の訳語としてよく使われている。一方 Derivation を英-中辞典でしらべてみると、訳語は由来、起原などとなっている。導出は<導き出す>で、和製中国語のようだ。Derivation  の動詞形は to derive (from) なので由来(よってきたるところ)が適当のようだ。こういう使い方も Derivation にはある。しかし物理関係の方程式の解説での Derivation の訳語としは、解説内容からは由来は不適当で<論証>が適当のようだ。<論証>の起原は分からないが、中国語になっている。科学関係の漢字は日本語由来の漢 字が多い。 導出はいまいちで大和言葉の<導き出し>もいまいち。論証に相当するなにかいい大和言葉はないものか?


sptt