Sunday, December 2, 2012

<ばか>、<まぬけ>、<おろか者>


<ばか>は日常会話の中で最もよく使われる日本語体言のひとつだろう。<ばか>は<馬鹿>と漢字で書かれるが、馬も鹿も発音以外はまったく関係ない。むしろ関係があるのは狐(きつね)と狸(たぬき)だ。狐は人を<ばか>し、狸は自分が<ばける>。<ばかす><ばける>は 漢字では<化かす><化ける>と書く。<ばかす>と<ばける>の関係はやや複雑。

<ばける>は自分が<ばける>(変身、姿を変える)ことなで、ひとに<ばけ>させる使役形は<ばけさす>、受身形はなく<ばけれる>は可能の意になる。
<ばかす>は対象に働きかける行為(だます、間違わせる)なので使役形はなく、受身形は<ばかされる>で、可能形は<ばかせる>、<ばかせれる>だが<ばかすことができる>が普通だろう。
<ばか(馬鹿)>は<ばかされ>やすい人のことだ。<ばかされる>は受身形なので、能動者がおり、これが<ばかす>のだ。能動者は人でも、狐でも、魔法使いでもいい。

バカの例いくらでもあるが、よく耳にするバカの用例。

バカバカしい話だ。
バカげた話だ。
バカもほどほどにしろ。
きみのバカさ加減(かげん)にはあきれる。
バカも休み休み言え。
バカに付ける薬はない。
バカを見るぞ。
バカにするのか。
バカにするな。
バカやろう 。
バカたれ。
あなたってバカね。(女性版)
(追加予定)

上記の例の意味を考えるとバカの意味範囲はけっこう広い。

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<まぬけ>は漢字で<間抜け>と書き<間が抜けている>、<間>は<肝心な時間、タイミング>で、これが<抜けている>から<間抜け>などとまことしやかに説明される。このもっともらしい説明と関連なくはないが、<まぬけ>は<まぬかれる>のもと<まぬく>由来だろう。<まぬく>は現在使われず、その受身形、 自発形、可能形とおぼしき<まぬかれる>は使われている。

<まぬく>の可能形は<まぬける>。これは<間を抜く>ことができることだ。一方、<まぬかれる>は受身形ともとれるが(最近は<まぬけれる>でもいいようだ)、これも<まぬく>の可能形とみることができる。しかし、この<間>とはいったい何か。<肝心な時間、タイミング>だろうか?

<まぬく>とは何らかのよくないこと(災害、迷惑)から<逃(のが)れる>ことだ。可能形<まぬける>、<まぬかれる>、<まぬけれる>であれば(災害、迷惑)から<逃(のが)れる>ことができ るだ。この<のがれる>も込み入った動詞で、もとは<のぐ>で、<しのぐ>の<のぐ>だ。 <ぬぐ(脱ぐ)>も親戚だろう。<のぐ>とは、<なんとか抜け出る>こと、さらにはそれによって、何らかのよくないこと(災害、迷惑)を<避(さ)ける>ことだ。この<さける>のもとは <裂く、割く>で<避ける、割ける>と間ができる。どうどうめぐりなのだが、最終的には、この <間>を<抜けて出る>と災害、迷惑から<逃(のが)れられる>、<逃(のが)れる>ことができる。<まぬける>、<まぬかれる><まぬけれる>とは災害、迷惑から<間>を<抜いて>出て、安心できる状態になることだ。

では、災害、迷惑から<間>を<抜いて>出る、<間抜ける>と<まぬけ>はどういう関係か?
ほとんど関係なさそうだ。

1) 明らかにこじつけのようだが、たとえば床板かなにかがの何かの原因でこわれ、隙(すき)間ができ人がその間から下に抜け落ちてしまう、あるいはすでに <間>が出来ていてそれに気がつかずに、人がその間から下に落ちてしまう。これは不幸な出来事だが、ある意味では不注意による<間が抜けた>あるいは<間を抜けた>バカな行為、出来事だ。

 2)もっともっともらしいのは<間>を接辞の<ま>とみることだ。接辞<ま>の用例は多い。接辞<ま>の働きは<程度><ほど>の強調なので、形容詞につくのが多い。

形容詞につく<ま>

まっ白いな、まっ黒な、まっ赤な 、まっ青な
まっ正直な、

体言化された動詞の連用形とおぼしきものにつく<ま>

まっ直(す)ぐな (<直ぐな>はほとんど使われない) <-- 動詞<直ぐ>。髪をすくの<すく>と同根だろう。
まじめ (ま締める?) <-- 動詞<締める?>


<少し抜けている>はいいが、<少し間抜けている>はおかしい。<ま>は<程度><ほど>の強調、ほぼ100%の<抜け>の意で、少し(20-30%)と相性が悪い。


<間抜け>の用例は<ばか>の用例ほど多くはない。比較的よく耳にする<間抜け>は

間抜けた話だ。
この間抜け者め。


(注) 文法説明上の<強調>について

なお、よく<強調の接辞>という表現が使われるが、これは文法の説明としてはアイマイだ。中国語文法には<強調の語気助詞>という説明が多いが、これだけでは説明不足で、どのように使い、使われているのかを詳しく説明しないと文法の説明にならない。

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<おろか者>は古語になりつつある。<おろか>は<おろかな>という形容動詞の語幹で、連体形は<おろかな>なので、文法的には<おろかな者>となるが、 <な>を省略。<おろか>を名詞(体言)と見れないことはない。この場合、名詞+名詞になる。前の名詞はあとの名詞を修飾し、形容詞用法だ。<おろかさ> は<おろか(であること)>のて程度、具合、ほど。 <おろかな>の関連語は<おろそか(な)>。
<劣(おと)る><劣った>は<落ちる>と関連がありそうだが、<おろか(な)>や<おろそか(な)>との関連はどうか。<劣(おと)る><劣った>は<劣る>の連体形。

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 <ばか>と<まぬけ>には<に(する、して>、<だ>、<な(こと、ひと)>がつき形容動詞になるが、<おろか者>は<おろか>にしないと形容動詞にならない。<に(なる、する、して>、<だ>、<な(こと、ひと)>。


sptt


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