よく調べたわけではないので自信はないが、香港の広東語と本場広州の広東語の違いの一つに軟音と硬音の差があるようだ。香港と広州ラジオのアナウン
サーの発音を聞く限り、香港のアナウンサーの場合は軟音と硬音が入り混じっている。これは個人差が大きい。すなわち軟音が圧倒的に多いアナウンサーと硬音
が圧倒的に多いアナウンサー(こちらのほうが多いようだ)。広州では硬音が圧倒的に多い。軟音と硬音の差は何か? 例をあげよう。
灣仔(湾仔)(香港にある地名)はどう発音されているか。
軟音では湾仔は Wanchai 発音される。カタカナでは<ワンチャイ>だ。
地下鉄の駅があり、英語表示は Wan Chai となっているので、香港政府は軟音派ということになる。
硬音では湾仔は Wancai (c は北京語ピンインの c)またはWanzai または Wantsai と表記される。カタカナでは<ワンツァイ>だ。
日本語の<あ、い、う、え、を ......>では <チャ、チュ、チョ>で<チャ>はあるが(小学生の時に発音させられるが)<ツァ>はない。
政府関係の人たちを含め、私の見るところ(聞くところ)香港人は軟音、硬音半々だ。若い日人たちは軟音が多いような気がする。
こう書いたが、香港政府は軟音派と言うのはおそらく間違いだろう。
香港に沙田と言う場所がある。駅があり、英語表示は Sha Tin だ。カタカナでは<シャーティン>だろう。しかしこれは湾仔(Wanchai)と違って、香港人であれば100% Satin (サーティン)と発音する。Shatin(シャーティン)ではないのだ。これはどういうことか?香港政府は硬音派か?
もう一つ例をあげよう。
香港に太古城と言う場所がある。日本人住民が比較的多い地区。ここにも地下鉄の駅があり、英語表示は Tai Koo Shing だ。<Koo>は<クー>と発音する。問題は最後の<Shing>の発音だ。これはカタカナでは<シン>ではなく<セン>となる。ただし<ン>は<ng>なので鼻音(鼻にかかった<ン>)になる。日本語では<n>と<ng>の書き分けがなくなっているので注意。さて<Shing>の<Shi>の方は沙田(Sha Tin)の<Sha>と同じく、香港人であれば100% <セン>と発音する。<shi>を軟音とするとこれに対応する硬音は<si>だ。この<si>のカタカナ表記は難しい、というかないのだ。<スィ>ではない。これは香港広東語の英語表示のルールで
kin - キン
king - ケン
sin - スィン(swin)ではなく、syntax の syn だ。
shing (sing はないようだ) - セン
tin - ティン
ting - テン
nin - ニン
ning - ネン
hin - ヒン
hing - ヘン
min - ミン
ming - メン
yin - イン
ying - イェン (イェはイエではなく短く発音する。yen の ye に近い)。これには例外がある。英国だ。英国の香港で英語つづりは見たことがないが、おそらく ying kok だろう。したがって<イェンコク>になるはずだが、ほぼ100%<インコク>と発音されている。ほかにも例外がありそう。
lin - リン (注)参照
ling - レン Fanling (紛嶺)
win - ウィン
wing - これはウェン
(注)
1) -ng は鼻音。
2) 広東語では<l>と<r>の区別がない。だいたい<l>で英語やスペイン語の<r>の発音はない、また信じ難いが<l><n>の区別がない。
さて Tai Koo Shing の<Shing>にもどるが、<セン>の発音なら<Sing>でもよさそうなところを<Shing>としているのいはなぜか。こらはShatin が Satin (サーティン)と発音するされるのと関連がある。<h>は結局のところ硬音をあらわすのだ。したがって、香港政府は硬音派で、湾仔 Wanchai は香港政府指導によれば軟音<ワンチャイ>ではなく硬音の<ワンツァイ>と発音されるべきなのだ。おそらく、湾仔 Wanchai は漢字が読めない(発音できない)外国人が多く、したがってWanchai の字を見て発音される機会が多く、この場合英語の字面(じづら)から<ワンツァイ>ではなく<ワンチャイ>と発音されるのが多くなったという次第だろう。
<たちつてと>の秘密
ここから話がようやく<やまとことば>になる。
<たちつてと>をローマ字であらあしてみる。
Ta
Chi
Tsu
Te
To
英語のただしい発音を勉強させられた人なら、つぎの発音はそれほど難しくない。
Ta
Ti
Tu
Te
To
カタカナでもなんとか表示できる。
Ta (タ)
Ti (ティ)
Tu (トゥ)
Te (テ)
To (ト)
Ta、Ti、Tu、Te、To はすべて硬音で統一されている。<たちつてと>ではわかりにくいが、Chi(ち)とTsu(つ)は硬音ではなさそうなのだ。Chi(チ)グループ<たちつてと>は
Chya (チャ)
Chi (チ)
Chyu (チュ)
Chye (チェ)
Chyo (チョ)
で、<チャ、チュ、チョ>に<チェ>が加わっている。これまでの論議から軟音グループといえる。耳で感じる音は軟(soft)だ。一方Tsu(つ)グループの<たちつてと>は
Tsa (ツァ)
Tsi (ツィ)
Tsu (ツ)
Tse (ツェ)
Tso (ツォ)
だ。 このTsu(つ)グループは軟音ではなく耳で感じる音は硬(hard)だ。 Wanchai の<ワンチャイ>ではなく<ワンツァイ>の方だ。
今回はとりあえず、これまで。
つづく予定。
ーーーーー
続き(2022年)
地下鉄の駅名表示は変化がある。
調景嶺は Tiu Keng Leng と表示されている。調景嶺の広東語の発音は<ティウ ケン レン>。本来ならば Tiu King Ling だが香港人以外だとこれを読んで発音すると大体は<ティウ キン リン>となり<ティウ ケン レン>とは発音しないだろう。中国本土の人は調景嶺を中国語で読み発音するので Tiu Keng Leng の表示はいらないだろう。したがって中国人以外の外人対象の表示ということになる。
この変化(配慮)は<調景嶺は Tiu Keng Leng>だけではなさそうだが、この表示方法がふえてくると従来表示も残るので混乱になる。
sptt
No comments:
Post a Comment