<みちびく>はほとんどの場合<導く>と書かれ、発話する場合でもこの<導>の漢字が頭に浮かんできているのではないだろうか。少し考えれば<みちびく>は<道(みち)引く>がもとのやまとことばだろうと察しがつく。だが<道引く>、<道を引く>とはいったいどういうことか?<道を敷(し)く>ではないので(<ひく>と<しく>の区別がない地方がある)で<道をつくる>の意味ではない。したがって<道を引く>は<道にそって人々を引いて行く>、<道にそって人々を率(ひき)いてて行く>が語源だろう。いい言葉だと思うが、残念ながら、この意味で<みちびく>はあまり使われずリーダーを意味する<みちびき手>はさらにほとんど使われない。リーダーとか指導者を使うのが一般的だ。
<みちびく>が人気がないのはもとの意味の<道を引く>のイメージにあるようだ。<道を行く>の<行く>は自動詞だが<引く>は他動詞。したがって。<道を引く>は<道を(手前に)引く>、<道を(手前に)引っ張る>感じがするのだ。<道を引いて行く>とすれば<道にそって(前に)(人々を)引っ張って行く>の感じが少しはでるがこのイメージはわきにくい。
何か別のいいやまとことばはないか?
<ひきいる>、漢字で書くと<率いる>という動詞がある。手元の辞書(三省堂)を引くと次のような説明がある。
<引く>+引率の意の雅語<ゐる>(末尾参照)
<ゐる>の見出し語はこの現代語辞書にはない。引率の意の<ゐる>を知る人はごく限られているだろう。一般の人で<ゐる>で<引率の意>を連想する人はいない。<引く>自体に<引率の意>がないだろうか?
<いろはにほへと>
ところで<辞書をひく>の<ひく>といったいどういう意味(行為)か? 明らかに<to pull>や<to draw>や<to drag> の意味(行為)ではない。別途検討。<引く(ひく)>はおもしろい動詞だ。
末尾<いろはにほへと>
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせすん
色は匂へど 散りぬるを
我が世誰そ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせすん
色は匂へど 散りぬるを
我が世誰そ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず
昔は<い>と<ゐ>、<え>と<ゑ>、<お>と<を>の発音上(したがって、文字上)の区別があった。<あ>と<わ>の区別は今でもある。
sptt
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