Tuesday, July 29, 2014

<ひねり>、<ひずみ>、<ずれ>


前回のポスト<回転のやまとことば>で、<ひねる(ひねり)>も回転がらみだが、<ひずむ(ひずみ)>、<ひがむ(ひがみ)>など<ひ>がらみ言葉がおおいので別途検討予定、と書いたので検討してみる。


ひねる - to twist
ひねり - torsion

<ひねる>は物理的には、ふつう棒上のモノの両端を反対方向に回転させる動作だが、片方の端を固定させ、もう一方を回転させる動作も<ひねる>だ。また、<腰をひねる>は腰の下か上を固定させて上または下を回転させる動作だ。いずれにしても棒上のモノや腰は変形をうけるが、元に戻る場合もあれば、程度の差はあれ元に戻らず変形したままの場合もある。変形のやまとことば物理用語は<ひずみ>だ。<ひずみ>の英語は strain だが物理、力学用語で、stress があると普通 strain (ひずみ)が生じる。変形は deformation がよさそう。 constrain というのもあるが、これは漢語では制約、やまとことばでは<しめつけ>とか<しばりつけ>か。

<ひねる>については前々回のポスト”<ねる>動詞”で取り上げた。

うねる   u-neru
かねる       ka-neru
くねる         ku-neru
こねる       ko-neru
すねる       su-neru
つねる       tsu-neru
はねる       ha-neru
ひねる       hi-neru
まねる       ma-neru

<ひねる>や<ひずむ>の<ひ>は<引(ひ)く>と関連があろう。

反対方向に力を加える動作(ひねり-tortion)では<糸をよる>の<よる>という動詞や<縄をなう>の<なう>と言う動詞がある。現代人は<糸をよる>ことも<縄をなう>こともまずないが、<よる>は反対方向の回転というよりは、並行して反対方向に力を加えるようだ。二本以上の糸を両手に挟(はさ)んで並行して反対方向に力を加えると。二本以上の糸はらせん状にからみあって、一本の糸になる。糸の代わりに四角いモノの相(あい)対する両面を並行して反対方向に力を加える動作の<ずらす>がある。

英語の to shear はこの動作だが、物理用語は<(せん)断>で、やまとことばの<ずらす>、<ずらし>、自動詞の<ずれる>、<ずれ>はどういうわけか使われない。意味がやや違うようだ。<大きくずれる>という言い方があるが、これは<ずれる>が本来<小さくずれる>ことを意味しているようだ。<ずらす>、<ずれる>元の位置、本来在るべき位置から<少しはなす、離れる>ことを意味しているようだ。

一方<前にずれる、ずらす>、<うしろにずれる、ずらす>は間違いではないが、こうはあまりいわず、汎用的な動詞<動く>、<動かす>を使って<前に動く、動かす>、<うしろに動く、動かす>と言うようだ。一方<横、右、左>は<ずれる>、<ずらす>と相性がいい。<上、下>もまあいいようだ。<前、うしろ>と<横、右、左、上、下>はどこが違うかと言うと、少し離れたところを視点とすると、モノが動く(動かす)場合<前、うしろ>では角度は同じだが、<横、右、左、上、下>は角度が違ってくるのだ。<(せん)断>は四角いモノの相(あい)対する両面を並行して反対方向に力を加えた場合の角度の変化との関係を表わしているにで、<ずれ>でよさそうだ。<ずれ>があまり使われないのは、おそらく<ずれ>が本来あるべき位置から<少しはなす、離れる>と言う意味が強く、<角度が変わる>ことがあまり意識されないからだろう。

<ずれる>、<ずらす>は<ずる>由来だろう。<ずる>は五段活用のようだが<ずる>の複合動詞はごくわずかだ。

ずりおろす
駆(か)けずり回る
這(は)いずり回る
---
引きずる
引きずり回す 

<ずれる>は下一段活用だが、これも複合動詞はごくわずかだ。

ずれ込む

<ずる>は<する(擦る、刷る、掏る)>由来だろう。、<こする>は関連動詞だ。

<ずる>関連と思われるのに<じる>がある。

いじる、かじる、くじる-しくじる(し+くじる)、こじる(こじあける)、ねじる、ほじる、もじる(もじもじする)、よじる。

<じる>という動詞は現代語にはないが、昔はあったのだろう。上記の<じる>動詞は大まかにみると共通した意味がある。少し<ひねり>を加えて動かす動作だ。ねじる、ほじる、よじるは簡単な動作のようだが、前後、上下、斜めの直線運動に加えて回転運動が加わるのできわめて複雑な動作、動きだ。

ただし以下<じる>は現代語で、古語は<じる>と関係ない。

とじる - とず、とづ
なじる - なず、なづ
はじる - はず
まじる - まず、まづ
やじる - ?

 sptt





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