Monday, October 19, 2015

<Die Gedanken sind frei>のやまとことば


<Die Gedanken sind frei>というドイツの歌がある。直訳すれば<思想は自由>。ニュアンスが違ってくるが思いは自由>とも訳せる。<自由>のやまとことばはすぐには浮かばない。前回のポスト ”童謡<山の音楽家>のやまとことば” の<Ich bin eine Musikante>同じく古い歌で、500年くらい前までさかのぼれるらしい。

現在歌われるドイツ語とそのほぼ直訳英語は次の通り。

インターネットでいろいろ聞いてみた。メロディは比較的簡単でどれも同じだが(末尾参照)歌詞はバリエーションがある。


Die Gedanken sind frei, wer kann sie erraten,
sie fliegen vorbei wie nächtliche Schatten.
Kein Mensch kann sie wissen, kein Jäger erschießen
es bleibet dabei: Die Gedanken sind frei!

Ich denke was ich will und was mich beglücket,
doch alles in der Still', und wie es sich schicket.
Mein Wunsch und Begehren kann niemand verwehren,
es bleibet dabei: Die Gedanken sind frei!

Und sperrt man mich ein im finsteren Kerker,
das alles sind rein vergebliche Werke.
Denn meine Gedanken zerreißen die Schranken
und Mauern entzwei: Die Gedanken sind frei!

Drum will ich auf immer den Sorgen entsagen
und will mich auch nimmer mit Grillen mehr plagen.
Man kann ja im Herzen stets lachen und scherzen
und denken dabei: Die Gedanken sind frei!

Ich liebe den Wein, mein Mädchen vor allen,
sie tut mir allein am besten gefallen.
Ich sitz nicht alleine bei meinem Glas Weine,
mein Mädchen dabei: Die Gedanken sind frei!
Thoughts are free, who can guess them?
They fly by like nocturnal shadows.
No man can know them, no hunter can shoot them
with powder and lead: Thoughts are free!

I think what I want, and what delights me,
still always reticent, and as it is suitable.
My wish and desire, no one can deny me
and so it will always be: Thoughts are free!

And if I am thrown into the darkest dungeon,
all these are futile works,
because my thoughts tear all gates
and walls apart: Thoughts are free!

So I will renounce my sorrows forever,
and never again will torture myself with whimsies.
In one's heart, one can always laugh and joke
and think at the same time: Thoughts are free!

I love wine, and my girl even more,
Only her I like best of all.
I'm not alone with my glass of wine,
my girl is with me: Thoughts are free!

ドイツ語の方は脚韻を踏んでおり、聞いて耳に心地よい。

一方英語で歌われる場合は次のようになる。英語歌詞の方もいくつかバリエーションがある。

Die Gedanken Sind Frei (Thoughts Are Free)

Die Gedanken sind frei, wer kann sie erraten,
sie fliegen vorbei wie nächtliche Schatten.
Kein Mensch kann sie wissen, kein Jäger erschießen
mit Pulver und Blei: Die Gedanken sind frei!

Die Gedanken Sind Frei, my thoughts freely flower,
Die Gedanken Sind Frei, my thoughts give me power,
No Scholar can map them, no hunter can trap them,
No man can deny, Die Gedanken Sind Frei!


Ich denke was ich will und was mich beglücket,
doch alles in der Still', und wie es sich schicket.
Mein Wunsch und Begehren kann niemand mir wehren,
es bleibet dabei: Die Gedanken sind frei!

I think as I please and this gives me pleasure,
My conscience decrees this right I must treasure,
My thoughts will not cater to duke or dictator,
No man can deny, Die Gedanken Sind Frei!


Und sperrt man mich ein im finsteren Kerker,
das alles sind rein vergebliche Werke.
Denn meine Gedanken zerreißen die Schranken
und Mauern entzwei: Die Gedanken sind frei!

And should tyrants take me and throw me in prison,
My thoughts will burst free like blossoms in season,
Foundations will crumble and structures will tumble,
And free men will cry, Die Gedanken Sind Frei!


Drum will ich auf immer den Sorgen absagen
und will mich auch nimmer mit Grillen mehr plagen.
Man kann ja im Herzen stets lachen und scherzen
und denken dabei: Die Gedanken sind frei!

And now I renounce forever my sorrows,
And never again to fret my tomorrows,
I'll always have laughter and joy ever after,
For in my heart I'll sing, Die Gedanken Sind Frei!

今度は英語の方も脚韻を踏んでいる。ドイツ語のオリジナル版は古いせいか意味が曖昧、あるいはよく<筋が通らない>箇所があるが、英語版歌詞の方は新しくつくらたので筋が通っている。日本でも<筋が通らない>古い話おとぎ話や民話はめずらしくない。

初めの引用では最後に<ワインと女性が出てくる>一節があるが、二番目の引用のように歌われない場合があるようだ。私もそうだが、この一節の内容は<思想は自由>とはほとんど関係がないので<なくもがな>だ。長い歴史のなかで後から追加されたものだろう。

さて本題はこの歌の日本語版だ。ごく簡単に調べたかぎりでは見つからなかったのであえて試みる。<思想の自由>が基本的に許されていない中国だが、どういうわけか簡体字の中国語版はあり、次のようになっている。


思想是自由的
有谁可以猜测呢?
他们如夜间的影子飞翔
没有猎人可以射杀 
以火药及铅字子弹
思想是自由的

我想我爱的,想令我高兴的
但思想都是沉默
而它本来就是这样的
我的希望和愿望,而没人能阻止我
而它永远是这样的
思想是自由的

我爱酒,更爱我的女孩子
而只有我最爱她的
我并不孤单因有一杯酒
和我的女孩陪我
思想是自由的

如果我被关进最黑暗的大牢
但这一切都将是徒劳无工
以为我的思想能冲破牢门
和粉粹墙壁
思想是自由的

我将永远离我的悲伤
也再不想一些奇特的东西来折磨自己
在一个人的心内,总是可以大笑和开玩笑
并在同一时间来思想
思想是自由的

日本語の漢語から推測すれば大体意味は分かるのでないか。ただし意味不明なところがいくつかある。最初に取り上げたドイツ語(歌詞)-英語訳併記を並べてみる。


1)他们如夜间的影子飞翔 - They fly by like nocturnal shadows. (sie fliegen vorbei wie nächtliche Schatten.)
  
2)但思想都是沉默、而它本来就是这样的 - still always reticent, and as it is suitable. (doch alles in der Still', und wie es sich schicket.

3)而它永远是这样的 - and so it will always be. (es bleibet dabei)

4)并在同一时间来思想  - and think at the same time: (und denken dabei


1)他们如夜间的影子飞翔

Schatten を相良独和大辞典を調べてみると<影>とともに<闇(やみ)>の意があり、 nächtliche Schatten  は<夜の影>(nocturnal shadows、夜间的影子)というよりは<夜の闇>ではないか。
相良独和大辞典: die Shatten der Nacht で<夜の闇>となっている。Shatten はここで男性単数 der Shatten の複数形。ただし独英辞典(German-English Revrso)では闇の意が見当たらない。また<sie fliegen vorbei wie nächtliche Schatten.>の sie は die Gedenken のことでこれは複数形。 fliegen も複数形だ。英語は shadows と複数形になっているnächtliche Schatten は冠詞がないが形容詞の語尾変 nächtlicheからこれは複数形。中国語はここでは思想は<他们>と複数になってる。

他们如夜间的影子飞翔 - <思想は夜の影のように飛んでいく>は抽象詩のようでもあるが、何百年も前の歌詞としては抽象化度合いが高いので、意味不明と言えよう。<思想は夜の闇のように飛んでいく>であれば<とらえどころがない>のような意味になる。また Schatten には<まぼろし>、幻影(げんえい)の意もあり、これは影よりこの歌詞にふさわしい。この個所のもう一つの問題は vorbei で、英語では fly by で<飛び去る>、<飛び去って行く>感じだ。飞翔には<去る>の意はない。vorbei は<過ぎて>、<過ぎ去って>という意味の副詞だ。


2)<但思想都是沉默>はder Still が沉默の意であれば<都>には<べて>の意があるのでドイツ語の訳に近い。英語では reticent というやや改まった語がつかわれているが、この語は基本的に<沈黙の>、<沈黙を守りたがる>の意の形容詞だ。またドイツ語ではalles in der Still とあるが、この alles は必ずしも Gedenken (thoughts, 思想)とはかぎらない。したがって、少なくとも英語版はドイツ語の意味とかなり違う。

而它本来就是这样的>の<>は思想のことだろうが<>は単数だ。複数は上記の他们。意味は and as it is suitable よりはドイツ語の und wie es sich schicket に近い。この es は特に意味のない es で英語(it)もそうだがドイツ語も主語がないと文が成り立たないので使われる es だ。<es sich schicket>は慣用句で<就是这样的(こんなものだ)、なるようにになる>といった意味だ。これも中国語はドイツ語に近い。英語の and as it is suitable は何のことだかよくわからない。<思想は沈黙を守りたがるが、その方がいい>といった意味か。

3)<并在同一时间来思想>は英語の and so it will always be の訳だ。ドイツes bleibet dabei は一番目の歌詞では第一節と第二節の繰り返し出てくる。第一節の英語版は with powder and lead で、これは二番目ドイツ語歌詞で mit Pulver und Blei となっている。だがこの mit Pulver und Blei はその前の kein Jäger erschießen と相応するがややとってつけた観があり、後代の変更だろう。es bleibet dabei の方が<繰り返し(リフレイン)>効果もあり歌詞らしい。さて es bleibet dabei の意味は難しい。英語では and so it will always be となっている。bleiben dabei をそのままの意味で<そこらあたりにとどまっている>とすれば and so it will always beでもいいが、それでは意味が曖昧だ。bleiben は<とどまる>が原意だが、相良独和大辞典によると<es bleibet dabei.>は慣用句で<それでよし、そう決めた>といった意味で、このほうが筋が通る。

4)<并在同一时间来思想>は英語の and think at the same time に近い。ドイツ語は und denken dabei でまた dabei がでてくる。 しいて訳せば<そしてそれについて思う>だが、これでは何のことだかわからない。

さて、これからやまとことば化を試みるのだが、その前にまだ講釈が少しある。まず問題は

die Gedanken - thoughts - 思想

の違いだ。die Gedanken は形からして denken という動詞の意味が強く残っている。die Gedanken は sind が続くことから複数形。英語の動詞 to think の過去形、過去分詞形は thought だが thoughts と複数形になっていることもあって名詞の感じが強い。<思想>は名詞形で、中国語の柔軟性からして動詞にもなるだろうが、現代中国語では動詞は>の一語だ。またこれまた中国語の柔軟性からして<思想是自由的>ではなく<想是自由的>ともいえるだろう。もちろん意味はズレてくる。やまとことばでは<考える>、<考え>があるが、歌詞として長すぎる。また別のところで書いたが、純やまとことばではなさそう。歌詞としては<思う>、<思い>が適当だろう。ただし日本語の<思う>、<思い>は純思想的な、哲学的意味になれない。<われ思う、故にわれあり>は悪くないと思うが、思想臭、哲学臭が薄いというか、なにか軽いのだ。

spttやまとことば訳

思いに囲いはない

思いに囲いはない。これはだれも拒(こば)めない。 
思いは飛び去って行く。夜(よる)の闇のように。
思いはつかめない。狩人(かりうど)も撃ち落とせない。
それでいいのだ。 思いに囲いはない。

われは好きなように思う。楽しくなることを思う。
ものみな静かだ。なるようになるのだ。
わが望みと願いは誰も拒めない。
それでいいのだ。 思いに囲いはない。

誰かがわれを岩のほろ穴に閉じ込めようと 
それはまったく空しい仕事だ。
わが思いは岩をも真っ二(ぷた)つに打ち砕(くだ)く。
思いに囲いはない。

われは悩みからとこしえに解き放(はな)たれた。
もうくだらぬことに苦しむことはない。
そこで、心から笑い、遊び楽しむのだ。
そして思いを馳(は)せる。
思いに囲いはない。

以上はほぼ直訳。歌にあわせた歌詞も試みてみる。


思いは馳(は)せる

思いは飛び去る。空(そら)飛ぶ鳥のよ(う)に。
空(そら)に囲はない。 思いに囲いはない。
だれもつかまえられない。かりうどさえも
撃ち落とせない。 思いは飛び去る

思いは跳びまわる。野走るウサギのよ(う)に。
野原に囲はない。 思いに囲いはない。
だれもつかまえられない。かりうどさえも
撃ち取れない。 思いは跳びまわる

思いは気まま。大空の雲のよ(う)に。
形(かたち)はない。 思いに形はない
だれもつかまえられない。お日様さえも
つかまえられない思いは気まま。

思いはゆれる。振り子のよ(う)に。
思いはくだける。ガラスのよ(う)に。
でもあきらめない。願いと望(のぞ)みと
夢あるかぎり。 思いは続く



末尾


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sptt

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