Friday, July 5, 2024

おじゃまする

 

<お邪魔>は<じゃま、邪魔>に丁寧語の接頭辞<お>がついたもの。

おじゃまします。おじゃましました。

はよく聞き、よく使う。

<じゃま、邪魔>だけだと障害 (物) 。

じゃまになる。
じゃまだ、どけ。
じゃまだ、どけろ。

などと使う。

<お>のない<じゃまする>だと< 障害になる><阻害する>だが、<お>がついた

おじゃまします。おじゃましました。

だと、文字通りでは

おじゃまします =  お障害になります、お阻害します
おじゃましました =  お障害になりました、お阻害しました

になるが、こうはいわない。だが、<お>のない

障害になります、阻害します
障害になりました、阻害しました 

の意の<丁寧>表現といえる。ネットで調べてみると

おじゃまします。おじゃましました。

謙譲表現、謙遜表現、つまりは<ヘリくだり表現>としているものがある。 だがどうも<ヘリくだり表現>ではないようだが、<ヘリくだり表現>とすると

実際は、<じゃま>をする、したわけではないが、一歩(一段)下がって

じゃまをします。じゃまをしました。

以上の<お>または同じような丁寧語の<ご>に働きははパターン化ができるようで


じゃまする ー おじゃまする
世話になる ー お世話になります
めんどうをかける ー ごめんどうをおかけします
苦労をかける ー ご苦労をおかけします
やっかいになる ー ごやっかいになります

で<お>、<ご>が謙譲表現、謙遜表現に変えている。さらには<おじゃまさま>、<お世話さま>、<ごめんどうさま>、<ご苦労さまです>と<さま>をつけた言い方もある。

だが謙譲表現、謙遜表現、<ヘリくだり表現>というのは普通


小生=私のこと(男の場合),古語だが<拙者>も謙譲表現、謙遜表現。拙者=つたない者。
つまらないものですが、(粗末なものですが)お収めください。
へたな作品ですが、ご覧ください。

というような言い方だ。

 

英語では to disturb が同じような使われ方をする。I am sorry to disturb you, but please help me to move this desk.

I am sorry to disturb your study, but please tell me what this English word means.

同じような言葉では

どうぞおかまいなく、おかまいもせず 

というのがある。<お>のない<かまい>は<かまう>の連用形名詞用法で

<かまう>はネット辞書 (小学館)では


多く打消し表現伴って用いる)その事柄や存在を気にかけて、規制された状態になる。

㋐気にする。気をつかう。「時間に—・わず押しかけて来る」「私に—・わないで先に行ってください」「なりふり—・わず働く」

㋑他の事とかかわって差し支え生じる。「費用かかっても—・いませんか

世話焼いたり、相手をしたりする。「私のことなんか誰も—・ってくれない

自分より弱い者や動物などを、相手にしてふざける。からかう。「を—・う」


とある。こちらの方は英語では to care が相当するが、

どうぞおかまいなく Please do not care   ダメ。Pleas do not care much about me. で何とかなるか。

 おかまいもせず    I am sorry I did not care much, (enough) とでもなるが、いまいち。

<かまい>に丁寧語の<お>がついた<おかまい>を使うと謙譲表現、謙遜表現になる。

 

さて、このポストを書き始めたのは、今精読中の中国の大小説<紅楼夢>で次のような表現に出くわしたからだ。第八回

 他二人道了擾

前後を加えると

寶玉道:「我們倒等著他們!有丫頭們跟著就是了。」薛姨媽不放心,吩咐兩個女人送了他兄妹們去。他二人道了擾,一徑回至賈母房中。

 紅楼夢は難しい。

 <擾>が<じゃま>、<じゃまする>相当。発音は rǎo で 簡体字は<扰>。日本語でも死語に近いが擾乱 (じょうらん) と言う漢語がある。

⒈ 攪亂:擾亂。擾害。擾攘(騷亂,紛亂,如“干戈擾擾”)。干擾。
⒉ 增添麻煩:打擾(客氣話,表示給別人添了麻煩)。困擾。叨擾。庸人自擾。
 
1.は<じゃまする>だが
2.は<おじゃまする>相当の使われかた。<打擾>ともいい

“当我们走进屋的时候,走的时候,或借用东西的时候,我们总是很客气地说:‘打扰你们’,或者‘麻烦你们’。” 

当我们走进屋的时候,走的时候,或借用东西的时候 ー 他人の家に入るとき、去るとき、ものを借りるときに<很客气地=謙譲的に、謙遜的に>言う時に使う。

日常会話では<麻烦>は<打擾>以上によく使われる。<麻烦>は<じゃま、じゃまする>というよりは<めんどう、めんどうをかける>。特に<お>相当の語がつくわけではない。

さて紅楼夢にもっどて<>が出てくる

他二人道了擾

だが、一読目は何のことだかわからなかった。さらに何度か読んでもわからなかった。チェック方法を変えて、<道擾>で調べてると

道擾

說了叨擾他人的客氣話。《紅樓夢》第八回:「他二人道了擾,一逕回至賈母房中。」

 でそのものが例文として出て来る解説がでてきた。叨擾 tāo rǎo=打擾。

他二人道了擾 はつまり

” 彼ら二人は<おじゃましました>と言って ”

という意味になる。<道>は<説>の古語、文章語。<彼ら二人>というのはここでは贾宝と黛玉のこと。

上で很客气地=謙譲的に、謙遜的に>と書いたが、中国語には客气客套话 kè tào huà というのがある。だがこれは英語で polite greetings と訳されているように<あらたまった、丁寧なあいさつの決まり文句>で謙譲的、謙遜的とは限らない。だが<打擾>、<麻烦>は謙譲的、謙遜的な表現とは意識されず、客气客套话、つまり<あらたまった、丁寧なあいさつの決まり文句>扱いになっている。



sptt


 


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