Sunday, November 30, 2014
かける, 掛ける、懸ける、 駆ける、賭ける、掻く、書く
このポストは大和言葉を<やまとことば>に換えた以外は sptt Notes on Grammar <かける, 掛ける、懸ける、 駆ける、賭ける、掻く、書く>(初回2012・11・19)のコピー。やまとことばの特徴をのべているのと文法事項がほとんどないのでこちらペイストした。
<かける>は相当にいろいろ違った意味があり、調べるとまるでワンダーランドにはいり込んでしまったような感覚になる。
1.<かける>の<け>に イントネーションがあるもの (東京アクセント)
1)掛ける
2)懸ける
3)駆ける
4)賭ける
---
5)掻く
6)書く
<掛ける>と<懸ける>が同類のようだが、他は関係なさそう。<掻く>と<書く>が同類であるのは前回のポストで次のように書いた。
”
線を<かく、書く、描く>という言い方もあるが、この<書く>は曲者で、漢字で<書く>と書くとなにか文明を感じさせるが、もとはといえば<引っかく>の <掻(か)く>で、<引き><掻く>だ。<書く>と<掻く>は同源だろう。したがって、字を<書く>のも基本的な動作は<引く>だ。大昔は<引っ掻いて> 線や、絵や、字を<かい>たのだ。
”
ただし、<掻く>も<書く> 上記の<掛ける>、<懸ける>、<駆ける>、<賭ける>とは関係なさそうだだが、本当は深い関係がある。やまとことばのおもしろいところだ。ただし、かなり込み入っている。
1)掛ける <to hook>、2)懸ける <to hang>
英語ではごく大雑把に <to hook>(掛ける) と <to hang>(懸ける)の区別があるようだ。
to hook - 何か(鉤のようなものが代表)に<かけて>引く動作。引っかける。自動詞であれば<かかる>、<引っかかる>。
to hang - 何か(鉤のようなものが代表)に<引っかけて>吊り下げる動作。自動詞ではれあば<かかる>、<吊り下がる>。<to hook>はなまって、あるいは耳で聞いた発音で日本語では名詞の<ホック>になっている。
<ホック>は鉤で<かぎ>と読むが、<かく>の関連語だ。鍵(かぎ)も関連語で<鍵をかける>という。においは鼻に<引っかかる>ので、<かぐ>も関連語か。
<吊り下げる>の反対語は<吊り上げる>だが、魚は<釣り上げる>だ。<吊る>も<釣る>も語源は同じで、何かに<引っ掛け>ないとできな作業、動作だ。これから見ても、<引っかける>さらには<かける>は極めて重要な動詞だ。
したがって、さらに大雑把に見れば、<to hook> も <to hang> も<かける>でよさそうだ。
例文はいくらでもある。
いすに腰を掛ける。 (座るでもよい)
橋を掛(懸)ける。 (座るではだめ。据えるならよさそうだ)
はしごを屋根に掛ける。
屋根を掛ける。
虹がかかる。 (虹は掛けるわけにはいかない。)
雲が山の上に掛かっている。 (雲も掛けるわけにはいかない。)
時計を壁に掛ける。 関連語:掛け時計。
(耳に)メガネを掛ける。関連語:掛けメガネ。
(鼻に)メガネを掛ける。関連語:鼻メガネ。
衣服をハンガーに掛(懸)ける。関連語:衣紋(えもん)掛(懸)け
<かけて(掛けて、懸けて)> 安定させる。 座り(すわり)をよくする。 to sit, to set, to place, to stabilize
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手を掛ける。手を(引っ)掛ける。関連語:手がける。手掛かり。<手をかける>と<手がかかる>とは別の意味。
足を掛ける。関連語: 内掛け、外掛け、足掛かり。
首を掛ける。首が掛かる。(慣用) <首を懸ける(吊るす)>、<首を賭ける>に近い意味にもなる。
命を掛ける。命が掛かる。 <命を懸ける(吊るす)>、<命を賭ける>に近い意味にもなる。
釣り針に魚を掛ける。 釣り針に魚を引っ掛ける。 釣り針に魚が掛かる。
目を掛ける。 (慣用)
お目に掛ける。 関連語: お目に掛かる。
xxを鼻に掛ける。(慣用)
思いを掛かける。 通常<思い掛けない>として使う。
<心を掛ける>はあまり聞かない。 xxを心に掛かける。 通常<心掛け>として使う。
<気を掛ける>もあまり聞かない。 xxを気に掛ける、xxが気に掛かる。 関連語:気掛かり
悪事 (ペテン、わな、いかさま、詐欺)にかける。ペテンにかける(かかる).
病気(風邪、心臓病、etc )にかかる。特別な場合を除き、<病気(風邪、心臓病、etc )にかける>とは言わない。<病気(風邪、心臓病、etc )になる>とも言う。
<かけて(掛けて、懸けて)>、(通常の、正常な)動きを止める、止めようとする。<かけ(掛け、懸け)>られて動きが止まる。いづれにしても、何かを<引っかける>、何かに<引っかかる>感じだ。
<医者にかかる>は少し違う。
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声を掛ける。
気合を掛ける。
号令を掛ける。
気合を掛ける。 <気合を入れる>ではない。
口を掛ける。 (慣用)
目を掛ける。 (慣用)
息を(吹き)掛ける。 <息が掛かる>は慣用もある。
不意打ちを掛ける。
魔法を掛ける。
網を掛ける。 <網にかかる>とは違う。
紐(ひも)を掛ける。 (これは場合によっては、ものがばらばらにならないように<しばる>意がある)
縄(なわ)をかける。
ワナを掛ける。(ワナを<し掛ける>とも言う)
賞金を掛ける。
問題を会議に掛ける。
ふるいに掛ける。
はかりに掛ける。
願をか掛ける。
望みを掛ける。
磨きを掛ける。
よりを掛ける。
<かけて(掛けて、懸けて)>何かの効果を得ようとする。 さらに例を挙げて検討を続けてみる。
税金をかける。税金がかかる。
負担をかける。負担がかかる。
重さをかける。重さがかかる。(加わる)
力をかける。力がかかる。
圧力をかける。圧力がかかる。
電圧(電気)をかける。電圧(電気)がかる。
鍵をかける。鍵がかかる。
パーマをかける。 パーマがかかる。
ブレーキをかける。ブレーキがかかる。
エンジンをかける。エンジンがかかる。
電話をかける。電話がかかる。
ラジオ(テレビ)をかける。 ラジオ(テレビ)がかかる。
脅(おど)しをかける。 脅(おど)しがかかる。
上記の<かかる>は状況によって可能とも受身とも自発ともとれる。
効果を得るために何かすることだ。<何かする>とは対象に<働きかける> ことだ。ここが重要なポイント。英語を使えば、最重要動詞は <to apply> だ。 <する>だから<to do>や<to make> でもよさそうだが、<to apply>が適している。作用から効果を得るまでの過程がある。ここがやや複雑なところ。 しつこいようだが、次のようになる。
<魔法をかける>は<魔法にかける>という言い方もある。<かける>の使い方のいい例だ。 英語には to spell という動詞がある。
前述の<医者に掛かる>は<医者に掛ける>ではないが、これだろう。いい効果を期待するのだ。
力をかけると --> 変位(移動)、変形が生じる。
鍵をかけると --> 戸締りが厳重になる。
パーマをかけると --> 髪が波打つ(美的)効果がでる。その他の効用もあるようだ。
ブレーキをかけると --> 車が止まる。
エンジンをかけると --> 車が始動する。
電話をかけると --> 離れていても連絡がつく。
ラジオ(テレビ)をかけると --> 番組が聴ける(見られる)。
相手に脅(おど)しをかけると --> やってもらえる。
ある人に魔法を掛けると --> その人をコントロールできる。
次のように見ることも出来る。
力をかける --> 力を用いる(使う) --> 変位(移動)、変形が生じる。
鍵をかける --> 鍵を用いる(使う) --> 戸締りが厳重になる。
パーマをかける --> パーマを用いる(使う)--> 髪が波打つ(美的)効果がでる。
ブレーキをかける --> ブレーキを用いる(使う)--> 車が止まる。
エンジンをかける --> エンジンを用いる(使う)--> 車が始動する。
電話をかける --> 電話を用いる(使う)--> 離れていても連絡がつく。
ラジオ(テレビ)をかけと --> ラジオ(テレビ)を用いる(使う)--> 番組が聴ける(見られる)。
相手に脅(おど)しをかけと --> 相手に脅しを用いる(使う) --> やってもらえる。
ある人に魔法を掛けると --> 魔法を用いる(使う) --> 人をコントロールできる。
用いる(使う)は英語の to use, to utilize, to apply (適用する) が相当する。これは<かける>のかなりの一般化だ。
さらに、ますますしつこいようだが、 次のように見ることも出来る。
力がかからない --> 力が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
鍵がかからない --> 鍵が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
パーマがかからない --> パーマが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
ブレーキがかからない --> ブレーキが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
エンジンがかからない --> エンジンが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
電話をがかからない --> 電話が働かない(効かない)--> 効果が得られない。
ラジオ(テレビ)がかからない --> ラジオ(テレビ)が働かない(効かない)--> 効果が得られない。
相手に脅(おど)しがかからない --> 相手が働かない) --> 効果が得られない。
魔法がかからない --> 魔法が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
少しおかしなところもあるが、これまたかなりな一般化だ。
英語の例
a) <エンジンがかからない>は英語では <The engine does not work.> だ。
b) to apply cream
これは<軟膏(cream )を塗る> こと。目に見えるのは<塗る>ことだが、目的は皮膚の不具合を治すことだ。治るまでには時間がかかる。
to apply (force, etc) to get work, function; to make something work
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手をかける。手がかかる。
手数をかける。手数がかかる。
手間をかける。手間がかかる。
時間をかける。 時間がかかる。
てまひまをかける。 てまひがかかる。
金をかける。金がかかる。
以上は<掛ける>、<懸ける>と関係なさそうだが、やはり何らかの成果、効果を得るために時間や手間を使うことだ。<無駄に時間をかける>、<かけた手間が無駄になる>ことはあるが、目的があってこその表現だ。上記のやや長い説明参照。
to use (time, effort) to get something
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水をかける。 水がかかる。雨がかかる。
粉を(ふり)かける。
布団をかける。
カバーをかける。
汁をかける。 かけそば。
税金をかける。税金がかかる。(こういう見方もある)
(人に)魔法をかける。 魔法がかかる。(こういう見方もある)。
迷惑をかける。迷惑がかかる。
疑いをかける。疑いがかかる。
ほこりがかかる。
上記の<かかる>の場合は受身(被害)だ。
以上の例はこれまた<掛ける>、<懸ける>と関係なさそうだ。むしろ、to cover (おおう、覆う)とか<かぶせる>いった感じだ。しかし、上記の悪事や病気からの連想ができないか。
<かけて(掛けて、懸けて)>、通常な、正常な動き、状態を止める。-- >状態を変える。-- >効果を得る。
<かけ(掛け、懸け)>られて通常な、正常な動き、状態をがとまる。-- >状態がかわる。-- >効果を得られる。
いい効果と悪い効果がある。
また、見方を少しかえると、<何かの目標の向かって、何かの効果を期待して、何かをする>。これまたいい効果と悪い効果がある。このばあい、大げさになるが to cover (おおう、覆う)というよりは、<空間>を越えて, 通して何かをして効果を得ることだ。
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この事件の解決はあなたにかかっている。
<xxによる>とは<xxによりかかって>いることだ。 to depend on, to rely on
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あなたはこの事件に(と)かかわっている。
関わる、関連するとは何かに<引っかかって>いることだ。 to related with
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掛け算
英 語は multiplication。動詞は<to multiply>。日本では<九九>があり、あまり考えずに計算してしまうが、わりと複雑な計算だ。 この <to multi-ply> に <to ap-ply> の <-ply> があり、ある意味では同根。
興味と時間のある人は下記参照
http://spttejd.blogspot.hk/2012/11/elementary-algebra-in-japanese.html
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かけるの複合動詞
複合動詞を調べてみる。
a) xxかける
た だし<行きかける>、<言いかける>、<やりかける>の<かける>などの<xxし始める>、もっと正確には<xxし始めようとする>(まだ始まっていな い、行きかける)と<xxし始めて、現在進行中>(もう始まっている、やりかける->やりかけの)の意の<xxかける>は除く。
浴びせかける
うなずきかける
押しかける
切りかける
仕かける 関連語: 仕掛け (ワナを)仕掛ける。
突きかける
詰めかける
取りかける 関連語:取っ掛かり
投げかける
働きかける
走りかける <走り><駆ける>ではない 。<走り寄る>に近いが<走り掛ける>はスピードがあるようだ。
話しかける <言いかける>は普通<言い始める>の意。
吹きかける
振りかける 関連語: ふりかけ
ほほえみかける
見かける
笑いかける
以 上は<引っ掛ける>感じの強いもの(取りかける、見かける)や、<近づく、寄せる>の感じの強いもの(押しかける、切りかける 、突きかける、走りかける )もあるが、総じて、対象に何らかの影響を与える、さらには影響を与えて、さらに何かの効果を得ようとする動き、動作、しぐさだ。
少し前 に、<このばあい、大げさになるが to cover (おおう、覆う)というよりは、<空間>を越えて, 通して何かをすて効果を得ることだ。>と述べたが、これと関連する。一昔前の<エーテルを通して力、声、電気、電波>が伝わるような表現が多い。うなずき かける、投げかける、働きかける、話しかける、吹きかける、笑いかけ。特に、<働きかける>はその代表だ。
立てかける
もたせかける
以上は<かけて>安定させるような意味だ。
b) xxかかる
襲いかかる
切りかかる
のしかかる。
飛び(跳び)かかる
降りかかる
以上は<かかる>は対象に急いで、<近づく、寄せる>動き、動作、しぐさだ。
もたれかかる
寄りかかる
以上は<かかって>安定させるような意味だ。
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3)駆ける
<駆 ける>は<走る>で大体(おおむね)代替できるが、<駆ける>の語源は<掛ける>、<引っ掛ける>だ。足を地面に<引っ掛け>て前に進むのだ。車も同じ。 タイヤが地面を<引っ掛け>て前に進む。英語で<トラクション>と言うがトラクターの<トラク>、すなわち<牽く、引く>だ。
小さなボートは櫂(かい)で水を<引っ掛け>て前に進む。アヒルは<水かき>で水を<引っ掛け>て前に進む。近代の大きな船はスクリュウで進む。
鳥は空気を<引っ掛け>て前に進むので<空を翔(かけ)る>のだ。ジェット機以前の飛行機はプロペラで空気を<引っ掛け>て前に進む。
いずれの場合にも、 何かに<引っ掛け>て引くことによって生じる力を利用して前に進むのだ。推(お)して進む推進力というよりは引進力、<引っ掛け>進力だ。
<引っ掛ける>は<掻く>と深い関係がある。 5)<掻く>で述べる。
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4)賭ける
金を< 賭ける>場合、その目的は金を増やすことだ。これは<てこの原理>と同じで、労せずして大きな力を得ることと大差はない。<てこの原理>は物理法則で間違いなくはたらくが、金を< 賭ける>場合は原則として<てこの原理>は働かない。物理法則ではないのだ。
命を< 賭ける>場合、その目的は何かを、特に大きな、または困難なことを成し遂げることだ。効果を得るため、または効用を引き出すために何かすることには<かける>のひとつの用法。力(鍵、エンジン、電話、etc )をかける。
5)掻く
<掻く>という運動、動作、しぐさ。英語は to scratch が一部相当するが、やまとことばの動詞<かく>は上の<駆ける>で述べたが、極めて重要な働きがある。
<掻く>はふつう
かゆいところを掻く
あたまを掻く
鼻(鼻の頭)を掻く。
雪を掻く。 雪かき。 屋根に掛かった雪を掻き下ろす。
水を掻く。 水かき。
のようにつかわれるが、<掻く>に関連した複合動詞を見てみよう。
かき上げる (髪)
かき揚げる (てんぷら)
かき集める (落ち葉、ごみ)
かき入れ時
かき切る --> かっ切る (口語) (のどをかっ切る)
かき曇(くも)る
かき消す
かき込む (ご飯)
かきさらう --> かっさらう (口語)
かき捨てる (ごみ、恥)
かき出す (雪、かまどの中の灰、耳垢)
かき立てる (意欲をかき立てる)
かきのける (ひと)
まきはらう --> かっぱらう (口語)
かき混ぜる
かき回す かきたまご -scratched eggs ではなく scrambled eggs
かき乱す
かきむしる (髪)
かき寄せる ((落ち葉、ごみ)
かき分ける (人ごみ)
一回の<掻く>動作、2-3回の<掻く>動作、速く連続した<掻く>動作がある。
その他では次のような表現がある。
いびきをかく。
汗をかく。
恥をかく。
べそをかく。
欲をかく。 (欠くではない)
以上はすばやい運動、動作、しぐさではなく、直接<掻く>とは関係なさそう。別途検討。
さらには、
敵の裏をかく ?
あぐらをかく ?
嘘(うそ)をかく。 普通は<嘘をつく>、嘘つき、<嘘を言う>か。?
---
6)書く
<掻く>との関係ははじめの方に書いた。
2.<かける>イントネーションがとくにないもの。(東京アクセント)
<欠ける>は<ない>、<たりない>(不十分)、一部がこわれてない(ガラスがかける)の意だ。xx に欠ける。xx が欠けるの用に使う。自動詞。他動詞は<欠く>だ。 1.の<かける>、<かく>とは根本的に違うような気がする。
<かくす>、<かくれる>は同源だろう。
sptt
Monday, November 17, 2014
<どく>、<どける>、<のく>、<のける>について
<どく>、<どかす>、<どける>は関東方言で標準語は<のく>、<のける>だろう。<そこのけ、そこのけ、お馬が通る>と言う童謡らしいのがある。<取りのける>は聞くし言うが、<取りどける>聞かないし言わない。
<どく>は
ある場所をにある人(動物)が、その場所をあけるために移動する。
<どかす>、<どける>は
ある場所をにある人(動物)、モノを その場所をあけるために移動させる。
とでもなるか。いづれにしても単に人が動く(<どく>)、人、モノを動かす(<どかす>、<どける>)だけではない。 <場所をあけるため>という意味が2音節、3音節の中にあるのだ。
英語では<どく>は to give way (道をゆづる)か。<どかす>、<どける>は to put a thing away, to push a thing away, to pull a thing away, 脇へずらすような場合は to put (to push, to pull) a thing aside とでもなるか。英語の場合<その場所をあけるため>という意味は動詞にはなく away, aside の方に内包されている。
以上はドイツ語の einräumen という動詞に遭遇して考えたもの。
German - English Collins Dictionary - Reveso
einräumen
ein+räu•men vt sep
a [Wäsche, Bücher etc] to put away
[Schrank, Regal etc] to fill
[Wohnung, Zimmer] to arrange
[Möbel] to move in (in +acc -to)
Bücher ins Regal/in den Schrank einräumen to put books on the shelf/in the cupboard
er war mir beim Einräumen behilflich he helped me sort things out, (der Wohnung) he helped me move in
[Schrank, Regal etc] to fill
[Wohnung, Zimmer] to arrange
[Möbel] to move in (in +acc -to)
Bücher ins Regal/in den Schrank einräumen to put books on the shelf/in the cupboard
er war mir beim Einräumen behilflich he helped me sort things out, (der Wohnung) he helped me move in
b
(=zugestehen) to concede, to admit
[Freiheiten etc] to allow
[Frist, Kredit] to give, to grant, to allow
jdm das Recht einräumen, etw zu tun to give or grant sb the right to do sth, to allow sb to do sth
einräumende Konjunktion concessive conjunction
[Freiheiten etc] to allow
[Frist, Kredit] to give, to grant, to allow
jdm das Recht einräumen, etw zu tun to give or grant sb the right to do sth, to allow sb to do sth
einräumende Konjunktion concessive conjunction
Translation German - English Collins Dictionary
追加
以前に<ぬく、ぬける、、ぬぐ、ぬげる、にげる、のける、のこる>という題のポストを書いたが、<どく>、<どかす>、<どける>に相当する標準語の<のく>、<のける>は、やまとことばの特徴だが、芋づる式に関連動詞が出てくる。
(なにぬねの順)
凪(な)ぐ 自動詞、<風が凪ぐ>
逃(に)げる 自動詞、xx から逃る、xx に逃る; 他動詞、xx を(うまく)逃る。
抜(ぬ)く 他動詞 - 抜ける 自動詞 <髪の毛が抜ける>、可能形でもある。<この釘は簡単にぬける>。
脱(ぬ)ぐ 他動詞 - 脱げる 自動詞、<靴が脱げる>、可能形でもある。小さい子が<自分で脱げる>と言う。
拭(ぬぐ)う 他動詞
逃(のが)れる 自動詞、xx から逃(のが)れる; 他動詞、xx を逃(のが)れる。
---
以下も関連ありそう。
除(のぞ)く 他動詞
凌(しの)ぐ 他動詞 - これは<凌ぐ >と書くと見えなくなるが、<する>の連用形<し>+<のぐ(のく)>だろう。
<どく>、<どかす>、<どける>関連では
<とく> 解く、溶く、説く、髪を梳(と)く、と書くと意味が違うように見えるが基本的な意味は同じ。
<とける> 解ける、溶ける
<とかす> 解かす、溶かす、髪を梳(と)かす
sptt
Monday, November 10, 2014
シューベルトの<菩提樹>
シューベルトの<菩提樹>と言う歌曲がある。学校の音楽の教科書にあるので誰もが知ってるだろう。また、私のように音痴でも歌わされたはずだ。原詩(Wilhelm Müller)と日本語訳(近藤朔風)は次の通り。
Am Brunnen vor dem Tore
Da steht ein Lindenbaum;
Ich träumt in seinem Schatten
So manchen süßen Traum.
Ich schnitt in seine Rinde
So manches liebe Wort;
Es zog in Freud und Leide
Zu ihm mich immer fort.
泉に添いて 茂る菩提樹
したいゆきては うまし夢見つ
みきには彫(え)りぬ ゆかし言葉
うれし悲しに いとしそのかげ
Ich mußt auch heute wandern
Vorbei in tiefer Nacht,
Da hab ich noch im Dunkel
Die Augen zugemacht.
Und seine Zweige rauschten,
Als riefen sie mir zu:
Komm her zu mir, Geselle,
Hier findst du deine Ruh!
今日もよぎりぬ 暗きさよなか
まやみに立ちて まなこ閉ずれば
枝はそよぎて 語るごとし
来よいとし友 此処に幸(さち)あり
Die kalten Winde bliesen
Mir grad ins Angesicht,
Der Hut flog mir vom Kopfe,
Ich wendete mich nicht.
Nun bin ich manche Stunde
Entfernt von jenem Ort
Und immer hör ichs rauschen:
Du fändest Ruhe dort!
おもをかすめて 吹く風寒く
笠は飛べども 捨てて急ぎぬ
はるかさかりて たたずまえば
なおもきこゆる 此処に幸あり
此処に幸あり
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この詞は日本語訳のように四行詩で、その方が脚韻がわかりやすい。
Am Brunnen vor dem Tore Da steht ein Lindenbaum;
Ich träumt in seinem Schatten So manchen süßen Traum.
Ich schnitt in seine Rinde So manches liebe Wort;
Es zog in Freud und Leide Zu ihm mich immer fort.
Ich mußt auch heute wandern Vorbei in tiefer Nacht,
Da hab ich noch im Dunkel Die Augen zugemacht.
Und seine Zweige rauschten, Als riefen sie mir zu:
Komm her zu mir, Geselle, Hier findst du deine Ruh!
Die kalten Winde bliesen Mir grad ins Angesicht,
Der Hut flog mir vom Kopfe, Ich wendete mich nicht.
Nun bin ich manche Stunde Entfernt von jenem Ort
Und immer hör ichs rauschen: Du fändest Ruhe dort!
この日本語の歌詞は音楽の教科書にあり、これを聴(き)いたり、歌ったり、歌わされたりするわけだが、<古い>言葉が多いのと、歌の歌詞のためやむをえないのだろうが、原詩のかなりの部分をはしょっており、おそらく意味がよくわからないのではないか? 私も<泉に添いて 茂る菩提樹>とあるので<菩提樹がたくさんある>と思っていた。原詩は ein Lindenbaum とあるので一本の菩提樹の木なのだ。<添いて>よりは<寄りて>、<茂る>よりは<立てる>、さらには時制を気にしなければ<立ちぬ>の方がソフトでいいだろう。この部分をかえてみると<泉に寄りて 立ちぬ菩提樹>で一本ので菩提樹の感じが出る。
<彫(え)りぬ>は<彫(ほ)りぬ>でも大きな影響はなさそう。<さよなか>は(やや早めの)<よなか>のことか。また<まやみ>は<まっくらやみ>のことだが、<さよなか>や<まやみ>は<耳で聞いたり<ひらがな>でよんだだけではすぐにはピンとこないだろう。
だが最大の問題は<此処に幸(さち)あり>ありだろう。 繰り返されるので印象が深く刻(きざ)まれる。Ruhe はこの詩の内容からしてけっしてに幸(さち)ではない。やまとことばとしては<やすらぎ>がいいようだ。<いこい>というのもあるが、少し軽い。幸(さち)は2音節、<やすらぎ>は4音節もあるので、そのまま置き換えはきかない。<ここにやすらぎあり>は字余り、音節合わせでは簡単に<ここにやすらぎ>でいいのだが残念ながら<ここに幸(さち)あり>にかなわない。
sptt
Friday, November 7, 2014
beauty のやまとことば
英語の beauty に相当するドイツ語の(die) Schönheit がでてくる詩に出くわした。日本語訳からやまとことば訳を試みたが、英語の beauty に相当するやまとことばをしばらく探しているがみつからない。漢語の美(び)は高度に抽象化されており beauty に近い。やまとことばの<うつくしい>は形容詞で英語では beautiful が相当する。<美しさ>という語が思いうかぶが<美しい>の度合、程度を示す名詞(体言)のようで、抽象化の方向がやや違うようだ。
http://franzpeter.cocolog-nifty.com/
Freundliche Vision, op. 48, no. 1
好ましい幻影
Nicht im Schlafe hab' ich das geträumt,
Hell am Tage sah ich's schön vor mir:
Eine Wiese voller Margeriten;
Tief ein weißes Haus in grünen Büschen;
Götterbilder leuchten aus dem Laube.
Und ich geh' mit Einer, die mich lieb hat,
Ruhigen Gemütes in die Kühle
Dieses weißen Hauses, in den Frieden,
Der voll Schönheit wartet, daß wir kommen.
[Und ich geh' mit Einer, die mich lieb hat,
in den Frieden, voll Schönheit]
眠りの中で私はそれを夢に見たのではなかった。
明るい昼間に私の目の前に美しいそれを見たのだ。
フランスギクでいっぱいの草原。
緑の茂みの奥深くにある白い家。
神像が木の葉の間から輝いている。
そしてぼくは、ぼくを愛してくれる女(ひと)と行く、
穏やかな心で
この白い家の冷気の中へ、
美にあふれて、ぼくらが来ることを待ちわびていた平和の中へ。
[そしてぼくは、ぼくを愛してくれる女(ひと)と行く、
平和の中へ、美にあふれて。]
詩:Otto Julius Bierbaum (1865 - 1910)
曲:Richard Georg Strauss (1864 - 1949)
<sptt やまとことば訳>
”
素晴らしいまぼろし
眠りの中、夢に見たのではないのだ。
昼間の光の中、目の前で確かに見たのだ。
雛菊咲き乱れる牧場(まきば)。
緑の木々の中に見える白い館(やかた)。
木の葉の中から輝く神々の姿。
そして僕は行く、僕に恋してくれてる乙女(おとめ)とともに、
満ち足りた思いで、この白い館のすがすがしさの中へ、
僕らが来るのを待っていた美しさに満ちたやすらぎの中へ。
( 僕は行く、僕に恋してくれている乙女とともに、美しさに満ちたやすらぎの中へ。)
”
Der voll Schönheit(the full beauty) の箇所で苦心した。まず文法的にこれが2格だか3格だかよくわからない。この場合の漢語の<美(び)>に相当するやまとことばがみつからないのだ。あとで示すように全方向的(あるいは求心的)な抽象化語尾の<み>をつけた<うつくしみ>というやまとこばがないのだ。
純形容詞の場合
赤い - 赤さ、赤み、<赤め>とは言うが意味がずれる(以下同じ)
青い - 青さ、青み、青め
白い - 白さ、<しろみ>は<白みがかる>と言う言い方があるが、普通は卵の<白身(み)>の意だ。白め
黒い - 黒さ、<黒み>は<黒みがかる>。黒め
大きい - 大きさ、<大きみ>は聞かない。大きめ
小さい - 小ささ、<小さみ>は聞かない。小さめ
近い - 近さ、<近み>は可能のようだが、ほとんど聞かない。近め
遠い - 遠さ、<遠み>は昔はあったようだ今は使わない。<遠め>はあまり聞いたことがないが可能。
速い - 速さ、<速み>は聞かない。速め
<はやい>には<まだ早い>の<早い>があり、この意の<早さ>はあまり聞かない。<早いこと>は、<遠い>の度合、程度というよりは<早い>ことそのものを表わしているようで、抽象化度合いが高いといえる。<早み>は聞かない。早め
遅い - 遅さ、<遅み>は聞かない。遅め
のろい - のろさ、<のろみ>は聞かない。のろめ
熱い - 熱さ、<熱み>は聞かない。熱め
冷たい - 冷さ、<冷み>は聞かないがよさそう。冷め
暑い - 暑さ、<暑み>は聞かない。<暑め>もダメ
寒い - 寒さ、<寒み>は聞かない。<寒め>もダメ
明るい - 明るさ、明るみ、明るめ
暗い - 暗さ、<暗み>は聞かない。暗め
うまい - うまさ、<うまみ>はやや特殊か、独立化しているが名詞(体言)、<うまめ>はあまり聞かない。慣用用法がある。
まずい - まずさ、<まずみ>はない。<まずめ>もあまり聞かない。慣用用法がある。
厚い - 厚さ、厚み(抽象度が進んでいる)、厚め
薄い - 薄さ、<暗み>は聞かない。薄くても<厚み>なのだ。薄め
難(むずか)しい - 難しさ、<難しみ>は聞かない。難しめ
易(やさ)しい - 易しさ、<易しみ>は聞かない。易しめ
優(やさ)しい - 優しさ、優しみはよさそうだあまり聞かない。優しめ
(まだまだあるが、キリはなさそうなので以上でやめる)
以上の純形容詞は動詞化しようとすると<形容詞の連用形>+<に>+<なる>(自動詞の場合)、+<する>(他動詞のばあい)
赤い - 赤くなる、する
大きい - 大きくなる、する
近い - 近くなる、する (あまり聞かないが、間違いではない。普通は<近づける>)
速い - 速くなる、する
早い - 早くなる、する (普通は<早める>)
遅い - 遅くなる、する
のろい - のろくなる、する
熱い - 熱くなる、する
冷たい - 冷たくなる、する
暑い - 暑くなる、<暑する>基本的にダメ
寒い - 寒くなる、<寒くする>基本的にダメ明るくなる - 明るくなる、する
暗くなる - 暗く なる、する
うまくなる - うまくなる、する 慣用用法がある。
まずくなる - まずくなる、する 慣用用法がある。
厚い - 厚くなる、する
薄い - 薄くなる、する
難(むずか)しい - 難しくなる、する
易(やさ)しい - やさしくなる、する
優(やさ)しい - やさしくなる、する
かなり文法的に法則化しているといえる。
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動詞がモトと考えられる形容詞とその名詞(体言)。感情表現が多い。
動詞 - 形容詞 - 名詞(体言)
かなしむ - かなしい - かなしさ、かなしみ
くるしむ - くるしい - くるしさ、くるしみ
たのしむ - たのしい - たのしさ、たのしみ
ほほいえむ - ほほえましい - ほほえみ、ほほえましさ
よろこぶ - よろこばしい - よろこび、よろこばしさ
めざます(めざめる) - めざましい - めざめ、めざましさ
わずらわす - わずらわしい - わずらい、わずらわしさ
なげく - なげかわしい - なげき、なげかわしさ
おどろく - (おどろおどろしい) - おどろき
形容詞の動詞化(形容詞がモトと考えられる)
形容詞 - 動詞 - 名詞(体言)
おそろしい - おそろしがる - おそろしさ
こわい - こわがる - こわさ
はずかしい - はずかしがる - はずかしさ
おもしろい - おもしろがる - おもしろさ、おもしろみ
(以上追加予定)
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さて、美(び)の話にもどる。
上のチェック方法を<美しい>に当てはめてみる。
美しい - () - 美しさ
<美しがる>という言い方は可能だが、一般的ではない。<美しみ>とい言い方はありそうで、ない。
この古い壷には美しさがある。
この絵の美しさの本質は色彩にあるのではなく構図にある。
この二つの例はよさそう。むしろ<この古い壷には美(び)がある>よりいい。この<美しさ>には度合、程度を示しているようでもあるが、さらに進んだ抽象化が感じられる。
それでは上記の詩のsptt訳
僕らが来るのを待っていた美しさに満ちたやすらぎの中へ
はどうか? これは<美(び)に満ちた>にかなわないのだ。 漢語の<美(び)>の方がさらに抽象化が進んでいるといえる。<うつくしさ>は抽象化が足りないのだ。<うつくしさ>を<うつくしみ>に変えてみる。
僕らが来るのを待っていた美しみに満ちたやすらぎの中へ
(追加)
最近(2015年4月)、同じような問題に出くわした。
Walt Disney のヒット映画Frozen (2014)のヒット曲<Let It Go、ありのままで>のドイツ語版。
Ich spüre diese Kraft, sie ist ein Teil von mir.
Sie fließt in meiner Seele und in all der Schönheit hier.
Nur ein Gedanke und die Welt wird ganz aus Eis.
Ich gehe nie mehr zurück, das ist Vergangenheit.
(訳)
力を感じるわ その力は私の体の 一部なの
その力は私の心とここにあるすべ ての美しさの中に流れ込む
想いだけで 世界がすべて氷でで きあがる
二度と後戻りはしないわ それは 過去のことなのよ
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<ここにあるすべ ての美しさの中に>はいかにも翻訳調で日本語らしくない。
元の英語と日本語版(訳というか大意訳だ)(どちらもドイツ語版とは相当違っている)
My power flurries through the air into the ground
My soul is spiraling in frozen fractals all around
And one thought crystallizes like an icy blast
I'm never going back,
The past is in the past
冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる 想い描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい もう決めたの
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日本語版は、<Let it go>を<ありのままで>と訳すなど大成功だと思うが、
上記の<結晶>と<自由> の二つの漢語がぎこちない。 <世界>、<自分>、<大地>、<二度>、<信じ>は発音からしてもそのままでまあいいだろう。<自由>の方は<思いのにまま>で置き換えられそうだが<結晶>は適当なやまとことばがみつからない。<結晶>の前の<氷(こおり)>は響きのいいやまとことばだ。 もっとも英語版の<crystallizes>も字あまりの感じだ。高く舞い上がる 想い描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい もう決めたの
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日本語版全文
Let It Go ~ありのままで~ (エンドソング)
[Heartful ver.]
作詞:Tweet
作詞:Kristen Anderson-Lopez・Robert Lopez
日本語詞:高橋知伽江
作曲:Kristen Anderson-Lopez・Robert Lopez
降り始めた雪は 足跡消して
真っ白な世界に ひとりのわたし
風が心にささやくの
このままじゃ ダメなんだと
とまどい 傷つき
誰にも 打ち明けずに 悩んでた
それももう やめよう
ありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるの
何も怖くない 風よ吹け
少しも寒くないわ
悩んでたことが うそみたいね
だってもう自由よ なんでもできる
どこまでやれるか
自分を試したいの
そうよ変わるのよ わたし
ありのままで 空へ風に乗って
ありのままで 飛び出してみるの
二度と 涙は流さないわ
冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる 想い描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい もう決めたの
これでいいの 自分を好きになって
これでいいの 自分信じて
光あびながら 歩きだそう
少しも寒くないわ
sptt
Tuesday, November 4, 2014
<めまい>(眩暈、目眩)について
以前のポストで<見舞い>の語源に挑戦したが、今回は<めまい>の語源を検討してみる。<めまい>はコンピュータワープロでは眩暈、目眩と難しい漢字がでてくる。<めまい>の<め>はほぼ間違いなく<目>だ。したがって眩暈はめくらめっぽうの当て字で、<めまい>と読める人はあまりいないだろう。目眩も目の字はあるがこれまた<めまい>と読める人はあまりいないだろう。漢字をどうしても使いたければ半分妥協して<目まい>がいいようだ。<目舞>も目が舞を舞うわけではないのでダメだろう。ではこの<まい>はいったい何だ?
<見舞い>には<見舞う>という動詞形があるが<めまい>には<めまう>という動詞形はない。この<まい>のモトは<まわる>、<まわす>だろう。<めまい>と同じじような意味で<目がまわる>というのがある。実際かなりひどい<めまい>を経験した人なら<目がまわる>がどういうことかわかるだろうが経験のない人は想像するしかない。<目がまわるほど忙(いそが)しい>では<目がまわる>は体験できない。同じような表現に<目をまわす>というのがある。<花子は忙しくて目を回している>といえる。<まわす>は他動詞で、<目を>なので目は直接目的語だ。しかし意識的に自分の目をまわしているわけではない。これは、別のポストで幾度か書いたが、次のように解釈できる。日本語ではまずこうは言わないが、
忙しさが花子の目をまわしている。(花子は自分で目をまわしてはいない)
忙しさが花子に目をまわさしている。 (目を回すのは花子だが、使役形で花子の意思ではない)
誰か / 何かが忙しさで花子の目をまわしている。(花子は自分で目をまわしてはいない)
誰か / 何かが忙しさで花子に目をまわさしている。(目を回すのは花子だが、使役形で花子の意思ではない)
<まわる>、<まわす>以外では<まく>がある。<まく>は普通の<巻く>と<種を蒔く、播く>の<まく>がある。関係なさそうだが、<種を蒔く、播く>動作を思いうかべてみれば関連なくはない。半回りほど<巻く>動作は<蒔く、播く>動作に近い。もっとも一回転以上<蒔く、播く>動作も可能だ。
<目舞>の可能性も100%否定はできない。 <舞う>は、<見舞い>の語源でも書いたが、<おどり>、<おどる>という純やまとことばがあることから、漢語の舞(wu とか mo と発音する、した)の輸入とも考えられるが ma-u、 ma-ku、 ma-wa-ru (su) は似かよっている。 ma-wa-ru (su)は3音節だが、大昔は2音節の ma-wu、ma-u だった可能性がある。
一方<眩暈、目眩>に関連するやまとことばは<まどう>、<まどわす>、<まぎる(古語)>、<まぎれる>、<まぎらわす>でこれまた ma- がつく。さらには<まぐ(曲ぐ)、古語>、<まがる>、<まげる>、<むく>、<むける>もその動き、動作からして<巻く>関連動詞だ。<目くるめく>というのがある。<目がくるくるめくる>の意か。<まばゆい>と言うのもあるが、これははもともとどういう意味か? <ま>は<まなこ>、<まばたく>、<またたく間(ま)>と同じで目(め>のなまりだろう。
<巻く>は<まわす、まわる>と並んで回転関連の基本動詞といえるが、おもしろいのは<巻く>の反義語だ。<ほどく>、<ほごす>(古語は<ほぐ>か)などが考えられるが、<まく(ma-ku)> に似た発音の <めくる(me-ku-ru)>、<まくる(me-ku-ru)>が<巻く>の反義語に近いのだ。<太郎は布団に巻きついて寝る>、<布団をめくって(まくって)太郎をおこす>。これはどうしたわけか?
英語では to fold - to unfold、to roll - to unroll、to wind - to unwind となるが un- は何か<取って付けた>感じがする。 一方ドイツ語では wickeln - entwickeln が代表と思われるが entwickeln は元来の意味から発展して<発展する>の意味がある。entwickeln は他動詞で正確には<発展させる>の意で、自動詞形は再帰動詞の sich entwickeln となる。個人的な意見だがこの ent- は英語の un - 違って<取って付けた>感じはなく、むしろ wickeln と強く結びついている感じがする。
sptt
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