Tuesday, November 4, 2014

<めまい>(眩暈、目眩)について


以前のポストで<見舞い>の語源に挑戦したが、今回は<めまい>の語源を検討してみる。<めまい>はコンピュータワープロでは眩暈、目眩と難しい漢字がでてくる。<めまい>の<め>はほぼ間違いなく<目>だ。したがって眩暈はめくらめっぽうの当て字で、<めまい>と読める人はあまりいないだろう。目眩も目の字はあるがこれまた<めまい>と読める人はあまりいないだろう。漢字をどうしても使いたければ半分妥協して<目まい>がいいようだ。<目舞>も目が舞を舞うわけではないのでダメだろう。ではこの<まい>はいったい何だ?

<見舞い>には<見舞う>という動詞形があるが<めまい>には<めまう>という動詞形はない。この<まい>のモトは<まわる>、<まわす>だろう。<めまい>と同じじような意味で<目がまわる>というのがある。実際かなりひどい<めまい>を経験した人なら<目がまわる>がどういうことかわかるだろうが経験のない人は想像するしかない。<目がまわるほど忙(いそが)しい>では<目がまわる>は体験できない。同じような表現に<目をまわす>というのがある。<花子は忙しくて目を回している>といえる。<まわす>は他動詞で、<目を>なので目は直接目的語だ。しかし意識的に自分の目をまわしているわけではない。これは、別のポストで幾度か書いたが、次のように解釈できる。日本語ではまずこうは言わないが、

忙しさが花子の目をまわしている。(花子は自分で目をまわしてはいない)
忙しさが花子に目をまわさしている。 (目を回すのは花子だが、使役形で花子の意思ではない)
誰か / 何かが忙しさで花子の目をまわしている。(花子は自分で目をまわしてはいない)
誰か / 何かが忙しさで花子に目をまわさしている。(目を回すのは花子だが、使役形で花子の意思ではない)

<まわる>、<まわす>以外では<まく>がある。<まく>は普通の<巻く>と<種を蒔く、播く>の<まく>がある。関係なさそうだが、<種を蒔く、播く>動作を思いうかべてみれば関連なくはない。半回りほど<巻く>動作は<蒔く、播く>動作に近い。もっとも一回転以上<蒔く、播く>動作も可能だ。

<目舞>の可能性も100%否定はできない。 <舞う>は、<見舞い>の語源でも書いたが、<おどり>、<おどる>という純やまとことばがあることから、漢語の舞(wu とか mo と発音する、した)の輸入とも考えられるが ma-u、 ma-ku、 ma-wa-ru (su) は似かよっている。 ma-wa-ru (su)は3音節だが、大昔は2音節の ma-wu、ma-u だった可能性がある。

一方<眩暈、目眩>に関連するやまとことばは<まどう>、<まどわす>、<まぎる(古語)>、<まぎれる>、<まぎらわす>でこれまた ma- がつく。さらには<まぐ(曲ぐ)、古語>、<まがる>、<まげる>、<むく>、<むける>もその動き、動作からして<巻く>関連動詞だ。<目くるめく>というのがある。<目がくるくるめくる>の意か。<まばゆい>と言うのもあるが、これははもともとどういう意味か? <ま>は<まなこ>、<まばたく>、<またたく間(ま)>と同じで目(め>のなまりだろう。

<巻く>は<まわす、まわる>と並んで回転関連の基本動詞といえるが、おもしろいのは<巻く>の反義語だ。<ほどく>、<ほごす>(古語は<ほぐ>か)などが考えられるが、<まく(ma-ku)> に似た発音の <めくる(me-ku-ru)>、<まくる(me-ku-ru)>が<巻く>の反義語に近いのだ。<太郎は布団に巻きついて寝る>、<布団をめくって(まくって)太郎をおこす>。これはどうしたわけか?

英語では to fold - to unfold、to roll - to unroll、to wind - to unwind となるが un- は何か<取って付けた>感じがする。 一方ドイツ語では wickeln - entwickeln が代表と思われるが entwickeln は元来の意味から発展して<発展する>の意味がある。entwickeln は他動詞で正確には<発展させる>の意で、自動詞形は再帰動詞の sich entwickeln となる。個人的な意見だがこの ent- は英語の un - 違って<取って付けた>感じはなく、むしろ wickeln と強く結びついている感じがする。


sptt

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