Sunday, November 30, 2014
かける, 掛ける、懸ける、 駆ける、賭ける、掻く、書く
このポストは大和言葉を<やまとことば>に換えた以外は sptt Notes on Grammar <かける, 掛ける、懸ける、 駆ける、賭ける、掻く、書く>(初回2012・11・19)のコピー。やまとことばの特徴をのべているのと文法事項がほとんどないのでこちらペイストした。
<かける>は相当にいろいろ違った意味があり、調べるとまるでワンダーランドにはいり込んでしまったような感覚になる。
1.<かける>の<け>に イントネーションがあるもの (東京アクセント)
1)掛ける
2)懸ける
3)駆ける
4)賭ける
---
5)掻く
6)書く
<掛ける>と<懸ける>が同類のようだが、他は関係なさそう。<掻く>と<書く>が同類であるのは前回のポストで次のように書いた。
”
線を<かく、書く、描く>という言い方もあるが、この<書く>は曲者で、漢字で<書く>と書くとなにか文明を感じさせるが、もとはといえば<引っかく>の <掻(か)く>で、<引き><掻く>だ。<書く>と<掻く>は同源だろう。したがって、字を<書く>のも基本的な動作は<引く>だ。大昔は<引っ掻いて> 線や、絵や、字を<かい>たのだ。
”
ただし、<掻く>も<書く> 上記の<掛ける>、<懸ける>、<駆ける>、<賭ける>とは関係なさそうだだが、本当は深い関係がある。やまとことばのおもしろいところだ。ただし、かなり込み入っている。
1)掛ける <to hook>、2)懸ける <to hang>
英語ではごく大雑把に <to hook>(掛ける) と <to hang>(懸ける)の区別があるようだ。
to hook - 何か(鉤のようなものが代表)に<かけて>引く動作。引っかける。自動詞であれば<かかる>、<引っかかる>。
to hang - 何か(鉤のようなものが代表)に<引っかけて>吊り下げる動作。自動詞ではれあば<かかる>、<吊り下がる>。<to hook>はなまって、あるいは耳で聞いた発音で日本語では名詞の<ホック>になっている。
<ホック>は鉤で<かぎ>と読むが、<かく>の関連語だ。鍵(かぎ)も関連語で<鍵をかける>という。においは鼻に<引っかかる>ので、<かぐ>も関連語か。
<吊り下げる>の反対語は<吊り上げる>だが、魚は<釣り上げる>だ。<吊る>も<釣る>も語源は同じで、何かに<引っ掛け>ないとできな作業、動作だ。これから見ても、<引っかける>さらには<かける>は極めて重要な動詞だ。
したがって、さらに大雑把に見れば、<to hook> も <to hang> も<かける>でよさそうだ。
例文はいくらでもある。
いすに腰を掛ける。 (座るでもよい)
橋を掛(懸)ける。 (座るではだめ。据えるならよさそうだ)
はしごを屋根に掛ける。
屋根を掛ける。
虹がかかる。 (虹は掛けるわけにはいかない。)
雲が山の上に掛かっている。 (雲も掛けるわけにはいかない。)
時計を壁に掛ける。 関連語:掛け時計。
(耳に)メガネを掛ける。関連語:掛けメガネ。
(鼻に)メガネを掛ける。関連語:鼻メガネ。
衣服をハンガーに掛(懸)ける。関連語:衣紋(えもん)掛(懸)け
<かけて(掛けて、懸けて)> 安定させる。 座り(すわり)をよくする。 to sit, to set, to place, to stabilize
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手を掛ける。手を(引っ)掛ける。関連語:手がける。手掛かり。<手をかける>と<手がかかる>とは別の意味。
足を掛ける。関連語: 内掛け、外掛け、足掛かり。
首を掛ける。首が掛かる。(慣用) <首を懸ける(吊るす)>、<首を賭ける>に近い意味にもなる。
命を掛ける。命が掛かる。 <命を懸ける(吊るす)>、<命を賭ける>に近い意味にもなる。
釣り針に魚を掛ける。 釣り針に魚を引っ掛ける。 釣り針に魚が掛かる。
目を掛ける。 (慣用)
お目に掛ける。 関連語: お目に掛かる。
xxを鼻に掛ける。(慣用)
思いを掛かける。 通常<思い掛けない>として使う。
<心を掛ける>はあまり聞かない。 xxを心に掛かける。 通常<心掛け>として使う。
<気を掛ける>もあまり聞かない。 xxを気に掛ける、xxが気に掛かる。 関連語:気掛かり
悪事 (ペテン、わな、いかさま、詐欺)にかける。ペテンにかける(かかる).
病気(風邪、心臓病、etc )にかかる。特別な場合を除き、<病気(風邪、心臓病、etc )にかける>とは言わない。<病気(風邪、心臓病、etc )になる>とも言う。
<かけて(掛けて、懸けて)>、(通常の、正常な)動きを止める、止めようとする。<かけ(掛け、懸け)>られて動きが止まる。いづれにしても、何かを<引っかける>、何かに<引っかかる>感じだ。
<医者にかかる>は少し違う。
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声を掛ける。
気合を掛ける。
号令を掛ける。
気合を掛ける。 <気合を入れる>ではない。
口を掛ける。 (慣用)
目を掛ける。 (慣用)
息を(吹き)掛ける。 <息が掛かる>は慣用もある。
不意打ちを掛ける。
魔法を掛ける。
網を掛ける。 <網にかかる>とは違う。
紐(ひも)を掛ける。 (これは場合によっては、ものがばらばらにならないように<しばる>意がある)
縄(なわ)をかける。
ワナを掛ける。(ワナを<し掛ける>とも言う)
賞金を掛ける。
問題を会議に掛ける。
ふるいに掛ける。
はかりに掛ける。
願をか掛ける。
望みを掛ける。
磨きを掛ける。
よりを掛ける。
<かけて(掛けて、懸けて)>何かの効果を得ようとする。 さらに例を挙げて検討を続けてみる。
税金をかける。税金がかかる。
負担をかける。負担がかかる。
重さをかける。重さがかかる。(加わる)
力をかける。力がかかる。
圧力をかける。圧力がかかる。
電圧(電気)をかける。電圧(電気)がかる。
鍵をかける。鍵がかかる。
パーマをかける。 パーマがかかる。
ブレーキをかける。ブレーキがかかる。
エンジンをかける。エンジンがかかる。
電話をかける。電話がかかる。
ラジオ(テレビ)をかける。 ラジオ(テレビ)がかかる。
脅(おど)しをかける。 脅(おど)しがかかる。
上記の<かかる>は状況によって可能とも受身とも自発ともとれる。
効果を得るために何かすることだ。<何かする>とは対象に<働きかける> ことだ。ここが重要なポイント。英語を使えば、最重要動詞は <to apply> だ。 <する>だから<to do>や<to make> でもよさそうだが、<to apply>が適している。作用から効果を得るまでの過程がある。ここがやや複雑なところ。 しつこいようだが、次のようになる。
<魔法をかける>は<魔法にかける>という言い方もある。<かける>の使い方のいい例だ。 英語には to spell という動詞がある。
前述の<医者に掛かる>は<医者に掛ける>ではないが、これだろう。いい効果を期待するのだ。
力をかけると --> 変位(移動)、変形が生じる。
鍵をかけると --> 戸締りが厳重になる。
パーマをかけると --> 髪が波打つ(美的)効果がでる。その他の効用もあるようだ。
ブレーキをかけると --> 車が止まる。
エンジンをかけると --> 車が始動する。
電話をかけると --> 離れていても連絡がつく。
ラジオ(テレビ)をかけると --> 番組が聴ける(見られる)。
相手に脅(おど)しをかけると --> やってもらえる。
ある人に魔法を掛けると --> その人をコントロールできる。
次のように見ることも出来る。
力をかける --> 力を用いる(使う) --> 変位(移動)、変形が生じる。
鍵をかける --> 鍵を用いる(使う) --> 戸締りが厳重になる。
パーマをかける --> パーマを用いる(使う)--> 髪が波打つ(美的)効果がでる。
ブレーキをかける --> ブレーキを用いる(使う)--> 車が止まる。
エンジンをかける --> エンジンを用いる(使う)--> 車が始動する。
電話をかける --> 電話を用いる(使う)--> 離れていても連絡がつく。
ラジオ(テレビ)をかけと --> ラジオ(テレビ)を用いる(使う)--> 番組が聴ける(見られる)。
相手に脅(おど)しをかけと --> 相手に脅しを用いる(使う) --> やってもらえる。
ある人に魔法を掛けると --> 魔法を用いる(使う) --> 人をコントロールできる。
用いる(使う)は英語の to use, to utilize, to apply (適用する) が相当する。これは<かける>のかなりの一般化だ。
さらに、ますますしつこいようだが、 次のように見ることも出来る。
力がかからない --> 力が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
鍵がかからない --> 鍵が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
パーマがかからない --> パーマが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
ブレーキがかからない --> ブレーキが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
エンジンがかからない --> エンジンが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
電話をがかからない --> 電話が働かない(効かない)--> 効果が得られない。
ラジオ(テレビ)がかからない --> ラジオ(テレビ)が働かない(効かない)--> 効果が得られない。
相手に脅(おど)しがかからない --> 相手が働かない) --> 効果が得られない。
魔法がかからない --> 魔法が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
少しおかしなところもあるが、これまたかなりな一般化だ。
英語の例
a) <エンジンがかからない>は英語では <The engine does not work.> だ。
b) to apply cream
これは<軟膏(cream )を塗る> こと。目に見えるのは<塗る>ことだが、目的は皮膚の不具合を治すことだ。治るまでには時間がかかる。
to apply (force, etc) to get work, function; to make something work
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手をかける。手がかかる。
手数をかける。手数がかかる。
手間をかける。手間がかかる。
時間をかける。 時間がかかる。
てまひまをかける。 てまひがかかる。
金をかける。金がかかる。
以上は<掛ける>、<懸ける>と関係なさそうだが、やはり何らかの成果、効果を得るために時間や手間を使うことだ。<無駄に時間をかける>、<かけた手間が無駄になる>ことはあるが、目的があってこその表現だ。上記のやや長い説明参照。
to use (time, effort) to get something
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水をかける。 水がかかる。雨がかかる。
粉を(ふり)かける。
布団をかける。
カバーをかける。
汁をかける。 かけそば。
税金をかける。税金がかかる。(こういう見方もある)
(人に)魔法をかける。 魔法がかかる。(こういう見方もある)。
迷惑をかける。迷惑がかかる。
疑いをかける。疑いがかかる。
ほこりがかかる。
上記の<かかる>の場合は受身(被害)だ。
以上の例はこれまた<掛ける>、<懸ける>と関係なさそうだ。むしろ、to cover (おおう、覆う)とか<かぶせる>いった感じだ。しかし、上記の悪事や病気からの連想ができないか。
<かけて(掛けて、懸けて)>、通常な、正常な動き、状態を止める。-- >状態を変える。-- >効果を得る。
<かけ(掛け、懸け)>られて通常な、正常な動き、状態をがとまる。-- >状態がかわる。-- >効果を得られる。
いい効果と悪い効果がある。
また、見方を少しかえると、<何かの目標の向かって、何かの効果を期待して、何かをする>。これまたいい効果と悪い効果がある。このばあい、大げさになるが to cover (おおう、覆う)というよりは、<空間>を越えて, 通して何かをして効果を得ることだ。
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この事件の解決はあなたにかかっている。
<xxによる>とは<xxによりかかって>いることだ。 to depend on, to rely on
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あなたはこの事件に(と)かかわっている。
関わる、関連するとは何かに<引っかかって>いることだ。 to related with
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掛け算
英 語は multiplication。動詞は<to multiply>。日本では<九九>があり、あまり考えずに計算してしまうが、わりと複雑な計算だ。 この <to multi-ply> に <to ap-ply> の <-ply> があり、ある意味では同根。
興味と時間のある人は下記参照
http://spttejd.blogspot.hk/2012/11/elementary-algebra-in-japanese.html
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かけるの複合動詞
複合動詞を調べてみる。
a) xxかける
た だし<行きかける>、<言いかける>、<やりかける>の<かける>などの<xxし始める>、もっと正確には<xxし始めようとする>(まだ始まっていな い、行きかける)と<xxし始めて、現在進行中>(もう始まっている、やりかける->やりかけの)の意の<xxかける>は除く。
浴びせかける
うなずきかける
押しかける
切りかける
仕かける 関連語: 仕掛け (ワナを)仕掛ける。
突きかける
詰めかける
取りかける 関連語:取っ掛かり
投げかける
働きかける
走りかける <走り><駆ける>ではない 。<走り寄る>に近いが<走り掛ける>はスピードがあるようだ。
話しかける <言いかける>は普通<言い始める>の意。
吹きかける
振りかける 関連語: ふりかけ
ほほえみかける
見かける
笑いかける
以 上は<引っ掛ける>感じの強いもの(取りかける、見かける)や、<近づく、寄せる>の感じの強いもの(押しかける、切りかける 、突きかける、走りかける )もあるが、総じて、対象に何らかの影響を与える、さらには影響を与えて、さらに何かの効果を得ようとする動き、動作、しぐさだ。
少し前 に、<このばあい、大げさになるが to cover (おおう、覆う)というよりは、<空間>を越えて, 通して何かをすて効果を得ることだ。>と述べたが、これと関連する。一昔前の<エーテルを通して力、声、電気、電波>が伝わるような表現が多い。うなずき かける、投げかける、働きかける、話しかける、吹きかける、笑いかけ。特に、<働きかける>はその代表だ。
立てかける
もたせかける
以上は<かけて>安定させるような意味だ。
b) xxかかる
襲いかかる
切りかかる
のしかかる。
飛び(跳び)かかる
降りかかる
以上は<かかる>は対象に急いで、<近づく、寄せる>動き、動作、しぐさだ。
もたれかかる
寄りかかる
以上は<かかって>安定させるような意味だ。
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3)駆ける
<駆 ける>は<走る>で大体(おおむね)代替できるが、<駆ける>の語源は<掛ける>、<引っ掛ける>だ。足を地面に<引っ掛け>て前に進むのだ。車も同じ。 タイヤが地面を<引っ掛け>て前に進む。英語で<トラクション>と言うがトラクターの<トラク>、すなわち<牽く、引く>だ。
小さなボートは櫂(かい)で水を<引っ掛け>て前に進む。アヒルは<水かき>で水を<引っ掛け>て前に進む。近代の大きな船はスクリュウで進む。
鳥は空気を<引っ掛け>て前に進むので<空を翔(かけ)る>のだ。ジェット機以前の飛行機はプロペラで空気を<引っ掛け>て前に進む。
いずれの場合にも、 何かに<引っ掛け>て引くことによって生じる力を利用して前に進むのだ。推(お)して進む推進力というよりは引進力、<引っ掛け>進力だ。
<引っ掛ける>は<掻く>と深い関係がある。 5)<掻く>で述べる。
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4)賭ける
金を< 賭ける>場合、その目的は金を増やすことだ。これは<てこの原理>と同じで、労せずして大きな力を得ることと大差はない。<てこの原理>は物理法則で間違いなくはたらくが、金を< 賭ける>場合は原則として<てこの原理>は働かない。物理法則ではないのだ。
命を< 賭ける>場合、その目的は何かを、特に大きな、または困難なことを成し遂げることだ。効果を得るため、または効用を引き出すために何かすることには<かける>のひとつの用法。力(鍵、エンジン、電話、etc )をかける。
5)掻く
<掻く>という運動、動作、しぐさ。英語は to scratch が一部相当するが、やまとことばの動詞<かく>は上の<駆ける>で述べたが、極めて重要な働きがある。
<掻く>はふつう
かゆいところを掻く
あたまを掻く
鼻(鼻の頭)を掻く。
雪を掻く。 雪かき。 屋根に掛かった雪を掻き下ろす。
水を掻く。 水かき。
のようにつかわれるが、<掻く>に関連した複合動詞を見てみよう。
かき上げる (髪)
かき揚げる (てんぷら)
かき集める (落ち葉、ごみ)
かき入れ時
かき切る --> かっ切る (口語) (のどをかっ切る)
かき曇(くも)る
かき消す
かき込む (ご飯)
かきさらう --> かっさらう (口語)
かき捨てる (ごみ、恥)
かき出す (雪、かまどの中の灰、耳垢)
かき立てる (意欲をかき立てる)
かきのける (ひと)
まきはらう --> かっぱらう (口語)
かき混ぜる
かき回す かきたまご -scratched eggs ではなく scrambled eggs
かき乱す
かきむしる (髪)
かき寄せる ((落ち葉、ごみ)
かき分ける (人ごみ)
一回の<掻く>動作、2-3回の<掻く>動作、速く連続した<掻く>動作がある。
その他では次のような表現がある。
いびきをかく。
汗をかく。
恥をかく。
べそをかく。
欲をかく。 (欠くではない)
以上はすばやい運動、動作、しぐさではなく、直接<掻く>とは関係なさそう。別途検討。
さらには、
敵の裏をかく ?
あぐらをかく ?
嘘(うそ)をかく。 普通は<嘘をつく>、嘘つき、<嘘を言う>か。?
---
6)書く
<掻く>との関係ははじめの方に書いた。
2.<かける>イントネーションがとくにないもの。(東京アクセント)
<欠ける>は<ない>、<たりない>(不十分)、一部がこわれてない(ガラスがかける)の意だ。xx に欠ける。xx が欠けるの用に使う。自動詞。他動詞は<欠く>だ。 1.の<かける>、<かく>とは根本的に違うような気がする。
<かくす>、<かくれる>は同源だろう。
sptt
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