Friday, September 26, 2014
<笑いつける>と<微笑みかける>
前回のポスト ”<こじつける>について” で、<むりやり xx する>、さらに進めて<一方的に xx する>、さらには<相手の立場、意向に関係なく、一方的に xx する>という意味の<つける>の例をあげた。繰り返しになるが、主な動詞には
売りつける
送りつける
押しつける
おどしつける
がなりつける
しかりつける
どなりつける
なぐりつける
投げつける
なすりつける
申しつける
呼びつける
がある。
一方<つける>関連の動詞でに<かける>があり、同じような表現がある。
追いかける (この<かける>は<走る>の<駆ける>のようだが、<駆けて(走って)追いかける>ともいえる)
押しかける
なぐりかかる(<なぐりかける>は<なぐりかけそうになる>のように使い意味が違う)
投げかける
呼びかける
<押しつける>と<押しかける>は違う。<押しかけ女房>という言葉はあるが<押しつけ女房>というのはない。<押しつける>より<押しかける>の方が、同じ<相手につく、近づく>にしてもソフトなのだ。<つける>は直線的、<かける>は英語の <xx(動詞) over to yy>に相当し、投げたボールが放物線を描いて相手に<近づく>感じなのだ。<投げつける>、<投げかける>の違いもあきらかだ。
この意味で<言いかける>はなく<語りかける>、<話しかける>になる。<言いつける>はまた別の意味だ。<言いつける>以外にも、まえに別のポストで取り上げたが(sptt Notes on Grammar、<言う>のマイナスイメージ)、<言う>はいい意味ではあまり使われない。
言い合う --> 言い合い
言い争(あらそ)う
言い返す
言いかかる --> 言いがかり
言いくるめる
言い込める
言い過ぎる --> 言い過ぎ
言いすくめる
言い捨てる --> 言い捨てならぬ>
言い立てる
言い散らす
言い繕(つくろ)う
言いつける
言い抜ける
言い逃(のが)れる --> 言いのがれ
言い囃(はや)す
言いふらす
言い紛(まぎ)らす、いい紛らわす
言いまくる
言いふらす
<呼びつける>と<呼びかける>もあきらかに意味が違う。
さて、<笑いかける>はどうか。悪くはない。しかし、
<醜女に笑いつけられる>と<美女にほほえみかけられる>とでは雲泥の差だ。醜女、美女は差別用語ではないだろう。
sptt
<こじつけ>の効用
<こじつけ>という言葉はいい意味ではほとんど使われない。また<こじつける>という動詞は名詞(体言)の<こじつけ>ほどには使われない。<こじる>もほとんど聞かないが<ねじ込む>ような動作のようだ。したがって<こじつける>は<ねじ込んで付ける>という意味にないりそうだ。<こじつける>の<つける>は<AをBに関連づける>の<つける>で漢字を使えば<付ける>が適当だろう。
さて、<ねじ込んで付ける>は物理的にこうする場合もあろうが、ほとんどは比喩的に用いられ、<むりやり(AをBに)関連づける>といった意味だ。<むりやり>は<無理やり>と書くが、いわば<道理が通らないようなやりかたで>という動詞(動作)の様態を示す副詞だ。<つける>は多義語だが、最もよく使われるの<付ける、着ける>の意味でだ。<xx(動詞の連用形)+つける>は複合動詞になり、次のような例がある。
(あいうえお順)
当てつける、当てつけ
言いつける、先生に言いつける、おまえに言いつけておく、言いつけを守る
行きつける、1)よく(頻繁に)行く、行きつけの店 2)行きつく(行き着く)、の可能 xx に行きつける、< xx を行きつける>はダメ
痛めつける
植えつける
受けつける
打ちつける
う(生、産)みつける
売りつける
送りつける
押しつける
落ちつける、落ちつかす
おどしつける
買いつける
かかりつける、かかりつけの医者 <xx をかかりつける>はダメ
かがりつける
嗅(か)ぎつける
書きつける
駆(か)けつける
かこつける (適当な漢字はないようだ)
飾りつける
貸しつける
片づける
がなりつける
通いつける、通いつけの塾 <xx を通いつける>はダメ
聞きつける
切(斬)りつける
くくりつける
食いつける(食べつける)、食い(食べ)つけたxx屋のラーメン、食い(食べ)なれた
くっつける
蹴りつける、けりをつける
こぎつける、 <-- こぎつく、の可能 <xx をこぎつける>はダメ
こすりつける
しかりつける
しつける
しばりつける
締めつける
吸いつける、1)<-- 吸いつく 、の可能、2)たばこを吸いつける
住みつける、住みつけた家、住みなれた
擦(す)りつける
染めつける、染付け
た(炊、焚)きつける
たたきつける
立てつける、立てつけが悪い
突きつける
照りつける
どなりつける
取りつける
なぐりつける
投げつける
なすりつける
なでつける
舐(なめ)つける
煮つける、煮付け
縫いつける
塗りつける
寝かしつける
飲みつける、飲みつけた、飲みなれた
乗りつける
はさみつける
はねつける
嵌(は)めつける
貼りつける
ひきつける (引く、牽く、弾く、轢く、挽く、惹く、曳く、退く)
ひっつける
吹きつける
ぶつける (ぶっつける)
踏(ふ)みつける
振りつける、振り付け
巻きつける
見つける
結びつける
申しつける
燃(も)やしつける、火をつける、
盛りつける、盛り付け
焼きつける
やっつける
やりつける、やりつけた仕事
寄せつける
呼びつける
読みつける、読みつけた xx 新聞、読みなれた
上記例のうち意味の取り方にもよるが<こじつける> グループに入るものは
言いつける、先生に言いつける、おまえに言いつけておく、言いつけを守る
痛めつける
植えつける - 比喩的な言い方の場合
う(生、産)みつける
売りつける
送りつける
押しつける
おどしつける
がなりつける
切(斬)りつける
蹴りつける
こすりつける
しかりつける
しばりつける
締めつける
擦(す)りつける
た(炊、焚)きつける - 比喩的な言い方の場合
突きつける
照りつける
どなりつける
なぐりつける
投げつける
なすりつける
なでつける
塗りつける
はさみつける
はねつける
嵌(は)めつける
貼りつける
吹きつける - 比喩的な言い方の場合
踏(ふ)みつける - 比喩的な言い方の場合
巻きつける
申しつける
呼びつける
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物理的には
こすりつける
擦(す)りつける
なすりつける
嵌(は)めつける
貼りつける
が<こじつける>に近いが、<むりやり xx する>、さらに進めて<一方的に xx する>、さらには<相手の立場、意向に関係なく、一方的に xx する>という意味では
痛めつける
植えつける - 比喩的な言い方の場合 (危険な思想を植えつける)
う(生、産)みつける
売りつける
送りつける
押しつける
おどしつける
がなりつける
しかりつける
た(炊、焚)きつける - 比喩的な言い方の場合
照りつける (容赦なく照りつける)
どなりつける
なぐりつける
投げつける
なすりつける
はねつける (<撥ねつける>は<付ける>動作でなく、反対の<はなす、放す、離す> 動作で、この場合、<つける>に<付ける>の意味はなく、<相手の立場、意向に関係なく、一方的に xx する>の意になっている。
踏(ふ)みつける - 比喩的な言い方の場合
申しつける
呼びつける
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<こじつけ>、<こじつける>がいい意味ではほとんど使われないのは、売りつける、押しつける、なすりつける、のように、<相手の立場、意向に関係なく、一方的に xx する>の意があるからだろう。しかしながら、<むりやり(AをBに)関連づける>の意味を善意に解釈すると、常識にとらわれた見方を打ち破る(打破する、break through する)方法でもある。すなわち、常識ではAとBは関連がないが、<むりやりにAとBを、AをBに関連づける> -> <AとBを、AをBに、こじつけると>、常識では見えない関係が見えてくる。
sptt
Monday, September 15, 2014
<めざめる>目覚まし時計
認識関連の大和言葉で、<さとる>ほど哲学的ではないが、大和言葉らしいのに<めざめる>がある。関連語(表現)に<目が覚(さ)める>があるが、主語-動詞の組み合わせで一語の動詞ではない。他動詞を使うとは<目を覚ます>となる。これまた一語の動詞ではない。この<目をさます>はやや複雑で、他人の目をさます場合と自分の目をさます場合がありそうだが、他人の目をさます場合は<おまえ、そろそろ目をさましらどうだ>というが、発話者が相手の目をさまさせるわけではない。<相手の目をさまさせる>は<目をさまさせてやろう>と使役形になる。<目をさます>は結局のところ<自分の目をさます>ことで、これはまた結局のところ<目がさめる>ことになる。<目をさます>は英語は I wake up. だが、この to wake は自動詞で<(わたしは)目がさめる>に近いので、<目をさます>にはならない。では<目をさます>はどういうかと言うと、非人称主語(It rains. の it) it + 他動詞 to wake を使っておそらく It wakes me(you, him, her, tem) up. だろうが、イマイチだ。 It がなんだかはっきりしないのだ。The alarm clock makes me up every morning. ならいい。<私は、毎朝7時に、目をさます>は普通の日本語だが、<私は、毎朝7時に、目がさめる>とは明らかに違う。目覚まし時計を使ったとしても<毎朝7時に、自分で自分の目をさます>ことは出来ない。こう考えると、<目をさます>は特異な表現だ。
目覚まし時計というにがあるが、認識させるの意での<めざます>はあまり聞かない(手元の辞書には<良心をめざます>という例がある)。目覚まし時計と<さとり>は結びつかない。<悟りをひ開かす>ZEN時計があったら売れるかも知れない。
人にもよるだろうが、<めざめる> は me-za-me-ru で耳で聞いていいことばだ。ざわめき(za-wa-me-ki)も響きのいい大和言葉だ。目障り(me-za-wa-ri)、耳障り(mi-mi-za-wa-ri) も漢字で書くと、良くない印象をあたえるが、耳で聞けばいい響きだ。これは、ざ(za)音と m 音の組み合わせから来ているのだろう。
ところで<目をさます>の<さます>とはどういう意味か?<さます>は他動詞で、よく使われるのは<スープをさます>、<熱をさます>などで、<温度を下げる>意味だ。自動詞は<さめる><スープがさめる>、<熱がさめる>と対応する。これらはコンピュータワープロでは<冷ます>、<冷める>と出てくる。
<目をさます>、<目がさめる>の方はワープロでは<目を覚ます>、<目が覚める>と出てくる。これは覚醒の<醒>を使って<目を醒ます>、<目が醒める>でもよさそうだ。<覚醒>自体<覚>と<醒>並べた熟語だ。
<温度を下げる>、<温度を下げる>の意の<さます>、<さめる>と覚醒の方の<さます>、<さめる>は関連語か? さらには語源は同じか?<さめた見方>は<冷めた(クールな)見方>とも<覚(醒)めた見方>ともとれそうだ。<熱い視線をおくる>というのもある。
<冷(さ)ます>、<冷(さ)める>は<寒(さむ)い>と関連があろう。<目を覚(醒)ます>、<目が覚(醒)める>は<澄(す)む>、<澄す)ます>が関連か。澄んだ目で見る。耳を澄ます。よく寝たあとの目覚めは澄んだ感じがないだろうか。
sptt
Friday, September 12, 2014
<並(なら)ぶ>に見る<横並び思考>
<並(なら)ぶ>は面白い動詞だ。いくつかの意味があるが、英語の to line up(英国英語は to queue up)の訳語では<列に加わる>という原語に近い訳もあるが、日本語(大和言葉)らしいのは<ならぶ>だ。手もとの辞書によると<均(な)らすと同源か>という解説がある。
<ならぶ>と<ならす>はどこが同源か。
<ならす>は漢字では<馴らす>、<慣らす>、<均(な)らす>がある。<鳴らす>はイントネーションが違い意味もほんどまったく違う。<馴らす>、<慣らす>、<均らす>は意味が違うように見えるがいづれももっと一般化した<ならす>で、同源、同根と言うよりは同じ意味だ。それでは、もっと一般化した<ならす>とは何か。一般化した<ならす>は<あるモノ、ある人を通常は大きく支配的(一般的)な集団の特性に合わせる>といった意味で、社会性をおびている。
英語の to line up が<ならぶ>で訳されると、意味合いが違ってくる。 to line up や<列に加わる>ではあまり集団は意識されず、個人の行動に目が向いている。一方<並(なら)ぶ>は集団が意識されているようだ。<並(なら)ぶ>( to line up)のに、縦も横も斜めもないが、<横並び>という表現がある。<どれもこれもほぼ同じ>といった意味だ。<横並び思考(指向か)>は<集団に属していて、目立たないようにする>といった意味で使われる。
一方他動詞は<並べる>で、これまたいくつかの意味があるが、だいたい<比較的たくさんのモノや人を列状に置く>といった意味だ。<適当に並べておけ>では必ずしも<列状>である必要はなく、英語の to arrange がこれに相当するか?
<な(馴、慣、均)らす>関連では<習(なら)う>という動詞がある。人や動物を<な(馴、慣)らす>ためには<習わせる>必要がある。<ならわし>は集団思考(指向)の関連語。人の場合は自主的に<習う>こともある。
別途検討が必要だが、日本語の基本動詞の一つ<なる>も関連語だろう。
なる、なれる、ならす、ならう、ならわす、ならぶ、ならべる
sptt
Thursday, September 4, 2014
<でこぼこ>は何(なに)詞か?
<でこぼこ>は何(なに)詞か。
平らだ(OK)
でこぼこだ (OK)
平ら道(ダメ)、平らな道(OK)
でこぼこ道(OK)、でこぼこの道(OK)、でこぼこな道(これもOKのようだ)
平らがある(ダメ)
でこぼこがある(OK)
<平らな>で形容動詞といえるが(静かな、静かだ、静かで)、<でこぼこ>はいったい何(なに)詞なのだ?
sptt
Tuesday, September 2, 2014
図形のやまとことば - 2、次元
このポストは前々回のポスト ”図形のやまとことば -1、 うつる、うつす” と前回のポスト ”<きわだつ>、<きわだたせる>” の続編。前々回のポストの冒頭で
"
I must admit that the geometrical world in ancient Japanese (say more than 1,500 yeas ago) were very poor as compared with the Chinese and Western worlds.
(中略)0) 0D - point Chinese 点 Native Japanese め(me; 目 or eye)
1) 1D - line Chinese 線 Native Japanese すじ(su-ji; 筋 or stripes in muscles, veins)
2) 2D - surface or area Chinese 面 Native Japanese おもて(o-mo-te; 面 or face)
3) 3D - solid or volume Chinese 体(立体) Native Japanese かたまり(ka-ta-ma-ri; 塊 or lump)
いわば大和言葉の幾何用語は貧弱なのだが、 ......
”
と書いたが、もう少し検討してみる。幾何学上、<点>は<大きさ>がなく、<線>は<はば(幅)>がなく、<面>は<厚み>がないことになっているが、ゼロ(0)もそうだが、これはまさに画期的なコンセプトで、言い換えればとんでもない世界。このコンセプトがない世界の方が普通だろう。大和言葉の幾何用語は貧弱さはこれに関係する。
点 - め(目)には当然ながら<大きさ>がある。<大きさ>はあるが(目に見える)が小さいものに、芥子粒(けしつぶ)がある。粒子とか素粒子というのもがあるが、この目で見たことがないのでわからないが、極限に近い小ささのようだ。小さくても大きさのある点を並べると線になる(0次元-->1次元変換)。
線 - すじ<筋>には当然ながら<はば(幅)>がある。
前回のポストでは次のように書いた。
”
<端(はし)> のやまとことばの関連語はかなりあり、なぜこうも多いのか自体おもしろい調査対象だ。
きわ(際)、へり(縁)、ふち(縁、めがねの縁、<淵>は意味が違うが、まったく関連がないとも言えないようだ)、がかなり<端(はし)>の意に近いが、さらに範囲を広げれば、すみ(隅)、かど(角)、はて(果て)、さかい(境)もある。
”
<はば(幅)>がある線を考えると、へり(縁)、ふち(縁)、さかい(境)が該当しよう。さかい(境)は特別で、二つの異なったモノ、場所が線状に合うところで、あえて線を引かなければ、線がなくても存在する(見える、見えるように感じる)。輪郭(outline)もこの仲間だ。<がっけぷち>の<ふち(縁)>は<さかい(境)>に似て、幅がない線と言えそう。細い線や糸は幅があまり意識されない。純粋の線は幅がないので横のいくら並べても面にならない、細いとはいえ幅のある糸は横にたくさん並べると面にはなる(1次元-->2次元変換)。
面 - おもて(面)は<当然ながら厚みがある>というわけではなさそう。
面は英語では area よりは surface, face, plane (発音が同じ plain も仲間だろう)が適当。中国語の<面>も face の意がある。 大和言葉の<おもて>は多義語で、顔(かお)以外に裏表(うらおもて)の<おもて(表)>の意がある。表面は<おもておもて>、裏面は<うらおもて>になってしまうが、このような意味で使われるのは聞いたことがない。<水面(みなも)>の<も>は手もとの辞書では<おもて>の略という解説があるが、<お>も<て>も接辞で、はさまれた<も>が<おもて>特に<面>の意があったのではないか。顔の縦に長いの馬面(うまづら)とも面長(おもなが)とも言う。紙は厚紙以外はうすく、裏面(うらおもて)は意識されるが、厚みはあまり意識されない。しかし、薄くても紙はたくさん重ねると立体になる(2次元-->3次元変換)。
体(立体) - 目、すじ(筋)にならうと、大和言葉のかたまり(塊)には必ず3方向(たて、よこ、かさ(高さ)、あるいは厚み)以外の大きさがある、ということになるが、これだと<第4次元目>を考えなくてはならないが、これはいわゆる常識的には存在しないのだ。しかたなく、進行方向を反対にして、立体を切る(切断)すると、面があらわれ、大和言葉では<きりくち、切り口>という。この<切り口>、元来は<切り口>の面のまわり(周囲、へり、ふち)を <くち、口>のようだと見たためだろう。だが、現在は<切り口>は立体を<切った>後の面といえる。これは<3次元-->2次元変換>と言える。かたまり(塊)は solid を連想させるが、液体でも入れ物(立体)に入れると立体になる。厚み以外に<かさばる>という動詞(自動詞、連体詞、かさばる本)がり立体と結びついている。体言(名詞)の<かさ>は<川の水かさが増す>というので、いわば<深さ>だ。立方体(直方体)でもいいがの二つの面が合うところは線になる(線がみえる)。これは大和言葉では<へり>が使われるようだ。この場合は<へり>でも <はば(幅)>がないといえ、<へり>か幾何学上の線にあたるが、面上に<へりを引く>とは言わない。一般性で線に及ばない。
動詞
線は<伸びる、伸ばす>、<ちぢむ、ちぢまる、ちぢめる>、面は<広がる、広げる>、<せばまる、せばめる>、立体は<ふくらむ、ふくれる、ふくらます、ふくらす>、<すぼむ、すぼめる>、<かさばる>と言う動詞が使われる。 名詞(体言)を調べてみる。
線 - 伸(の)び、ちぢみ
面 - 広(ひろ)がり、せばまり
立体 - ふくらみ、ふくろ(袋)、すぼまり、かさばり
線、面、立体のそれぞれに名詞があるが線、面、立体の代替はできない。
形容詞、形容動詞を調べてみる。
線 - 長い、短い、(まっ)すぐな(形容動詞)、曲(まが)がった(英語の過去分詞ガタ形容詞)
面 - 広い、せまい(狭い)、たいらな(形容動詞)、でこぼこな((形容動詞)。<たいら>、<でこぼこ>。<でこぼこ>は何(なに)詞か。平ら道(ダメ)、でこぼこ道(OK)。たいらがある(ダメ)、でこぼこがある(OK)。(次回検討予定)
立体 - 大きい、小さい、固(かた)い(solid)、かさばる(形容詞 / 連体詞、かさばる本)
以上の名詞(体言)を調べてみる。
線 - 長さ、(まっ)すぐさ、曲(ま)がり、曲(ま)げ (curve)
面 - 広さ、たいらさ、でこぼこ(さ)
立体 - 大きさ、固(かた)さ、かさ
<さ>は形容の度合いを示してしまうので、線、面、立体の代替はできない。<さ>をとってみる。
線 - 長(なが)、(まっ)すぐ、曲(ま)がり、曲(ま)げ
面 - 広(ひろ)、たいら、でこぼこ
立体 - 大き、固(かた)、か
線、面、立体に代替でき出来そうな語はない。
やはり線、面、立体は画期的なコンセプトなのだ。人によっては次元にかかわる大問題だ。言葉の上で、気がつきにくいが、おもししろいのは<さ>と<み>の違いだ。
点関連
大きい - 大きさ - 大(おお)み(ダメ) - 古代にはあったか?
小さい - 小ささ - 小(ちい)み(ダメ)
線関連
長い - 長さ - 長(なが)み(ダメ)
短い - 短さ -短(みじか)み(ダメ)
線に幅があったとして
太い - 太さ - 太(ふと)み(ダメ)
細い - 細さ - 細み(ダメ)
主に面関連
広い - 広さ - 広(ひろ)み(ダメ) - 古代にはあったか?
狭い - 狭さ - 狭(せま)み (ダメ)
面に<厚み>があったとして
厚い - 厚さ - 厚み
たいら - たいらな(形容動詞) - たいらみ (ダメ)
主に立体関連
高い - 高さ - 高(たか)み(ダメ)- 古代にはあったか?
深い - 深さ - 深(ふか)み
動詞関連の<xxみ>は連用形の体言化で、たまたま<み>が現れる。
ふくらむ(ふくらんだ) - ふくらみ
縮む(縮んだ) -縮(ちぢ)み
形容詞関連では<さ>で名詞化するが、<さ>は形容<程度>を表わし、純抽象化されていない。例外は<あつみ>と<ふかみ>で、この二つは<厚さ>、<深さ>より抽象化されている。そして関連がある。類推すると<たかみ(高み)>が古代にはあったかもしれない。これはまた、面 - おもて(面)は<当然ながら厚みがある>というわけではなさそう、と関連があるかもしれない。
-----
以下、暇のある人は読み続けてください。
繰り返しのようになるが、
点 -
線 - 大和言葉の<すじ>、<へり>、<ふち> には基本的に<はば(幅)>がある、<はば(幅)>をなくした極限の線と同等にはならない。糸、ひも、つな(綱)は線状だがモノから離れていない。線を切ると二つの大きさのある点になり、1次元-->0次元の関係がある。だが、この二つの点に注目する人は少ない。
面 - おもて(面)には<当然ながら厚みがあるという>わけではなさそう。厚さにもよるが、ある程度厚くなると立体になってしまう。二つの厚みのない面がある角度で交差するところは線だ。また面を切ると、切断したところに二つの線がみえる。2次元-->1次元の関係がある。だが、この二つの線に注目する人は少ない。また面を二つにおると線ができる(見える)。 厚みがある二つの面がある角度で交差すると線ではなく面になる。
体(立体) - かたまり(塊)には必ず3方向(たて、よこ、かさ(高さ))の大きさがある。面を積み重ねると立体になりそうだが、厚みのない<おもて>や面(めん)いくらら重ねても立体にはならない。厚みのある面を積み重ねると立体になる。一方立体を切る(切断)すると、面があらわれる。3次元<-->2次元の関係がある。
sptt
Monday, September 1, 2014
<きわだつ>、<きわだたせる>
このポストは前々回のポスト ”<言葉(ことば)>の<葉)>とは何か?” の続編-2で<はし>に関連した話だ。<端(はし)> のやまとことばの関連語はかなりあり、なぜこうも多いのか自体おもしろい調査対象だ。
きわ(際)、へり(縁)、ふち(縁、めがねの縁、<淵>は意味が違う)、がかなり<端(はし)>の意に近いが、さらに範囲を広げれば、すみ(隅)、かど(角)、はて(果て)、さかい(境)もある。
<きわ(際)>は応用範囲がひろい。
場所 - 窓ぎわ
時間 - まぎわ、帰りぎわ、死にぎわ
複合語 - きわだつ(自)-きわだたせる(他)、きわまる(自)-きわめる(他)、きわめて(副詞)、きわどい(形容詞)
<きわ、ki-wa>は<かわ(皮、側、川)、ka-wa>と関連があろう。窓ぎわ-窓がわ
<きわだつ、ki-wa-da-tsu>、<きわだたせる, ki-wa-da-ta-se-ru>は意味だけではなく、<-a>音が多く、聞いてもいいやまとことばだ。<きわだつ>の意味は文字通り<きわ(際)>が<たつ(立つ)>で、<目立つ>の意に近いがニュアンスがちがう。英語に outstanding という形容詞があるが(動詞は to stand out)、これはどちらかというと<目立つ>で<きわだつ>には及ばない。もっとも英語の outstanding は90%方良い意味で使われるが、日本語の<目立つ>は90%方悪い意味で使われるようだ。<きわ>は outline といえそうで outline を<目立たす>、<目だ立たせる> と<きわだつ>ことになりそうだが、少し違うようだ。個人的な意見だが、<きわだつ>はいいが<きわだたせる>は意図が感じられて<きわだつ>ほどはよくない。自然と、おのずから<きわだつ>のがいいようだ。そしてこれは努力なしで得ることは難しいようだ。
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きわだちの一品
際立ちをきわめた一品
香りがきわだつ xx コーヒー
目立たずに際立つ xx アイシャドウ、口紅(化粧品)
かすかに際立つ xx ワイン(吟醸)の香り
などはどうか?
話は大和言葉から離れてしまうが、英語も<へり>関連の語が多い。ドイツ語はあまり分化が進んでいないようで、(das)Rand が<へり>関連の代表語で、独英辞典では
Rand: edge, rim, brim, margin, ring, verge (on the verge of xx), brink, outskirt
となっている。最後のoutskirt の skirt は女性がはくスカートとおなじで、男性はショートスカートの<へり>に目が行く。英語では以上の他に、frill, fringe というのもある。
ちなみに相良独和大辞典では
Rand: ふち、へり、きわ、はし、(Ecke)すみ、 かど、(Ende)きわみ、はて, が冒頭に記載されている。
sptt