Monday, September 15, 2014

<めざめる>目覚まし時計


認識関連の大和言葉で、<さとる>ほど哲学的ではないが、大和言葉らしいのに<めざめる>がある。関連語(表現)に<目が覚(さ)める>があるが、主語-動詞の組み合わせで一語の動詞ではない。他動詞を使うとは<目を覚ます>となる。これまた一語の動詞ではない。この<目をさます>はやや複雑で、他人の目をさます場合と自分の目をさます場合がありそうだが、他人の目をさます場合は<おまえ、そろそろ目をさましらどうだ>というが、発話者が相手の目をさまさせるわけではない。<相手の目をさまさせる>は<目をさまさせてやろう>と使役形になる。<目をさます>は結局のところ<自分の目をさます>ことで、これはまた結局のところ<目がさめる>ことになる。<目をさます>は英語は I wake up. だが、この to wake は自動詞で<(わたしは)目がさめる>に近いので、<目をさます>にはならない。では<目をさます>はどういうかと言うと、非人称主語(It rains. の it) it + 他動詞 to wake を使っておそらく It wakes me(you, him, her, tem) up. だろうが、イマイチだ。 It がなんだかはっきりしないのだ。The alarm clock makes me up every morning. ならいい。<私は、毎朝7時に、目をさます>は普通の日本語だが、<私は、毎朝7時に、目がさめる>とは明らかに違う。目覚まし時計を使ったとしても<毎朝7時に、自分で自分の目をさます>ことは出来ない。こう考えると、<目をさます>は特異な表現だ。

目覚まし時計というにがあるが、認識させるの意での<めざます>はあまり聞かない(手元の辞書には<良心をめざます>という例がある)。目覚まし時計と<さとり>は結びつかない。<悟りをひ開かす>ZEN時計があったら売れるかも知れない。

人にもよるだろうが、<めざめる> は me-za-me-ru で耳で聞いていいことばだ。ざわめき(za-wa-me-ki)も響きのいい大和言葉だ。目障り(me-za-wa-ri)、耳障り(mi-mi-za-wa-ri) も漢字で書くと、良くない印象をあたえるが、耳で聞けばいい響きだ。これは、ざ(za)音と m 音の組み合わせから来ているのだろう。

ところで<目をさます>の<さます>とはどういう意味か?<さます>は他動詞で、よく使われるのは<スープをさます>、<熱をさます>などで、<温度を下げる>意味だ。自動詞は<さめる><スープがさめる>、<熱がさめる>と対応する。これらはコンピュータワープロでは<冷ます>、<冷める>と出てくる。

<目をさます>、<目がさめる>の方はワープロでは<目を覚ます>、<目が覚める>と出てくる。これは覚醒の<醒>を使って<目を醒ます>、<目が醒める>でもよさそうだ。<覚醒>自体<覚>と<醒>並べた熟語だ。

<温度を下げる>、<温度を下げる>の意の<さます>、<さめる>と覚醒の方の<さます>、<さめる>は関連語か? さらには語源は同じか?<さめた見方>は<冷めた(クールな)見方>とも<覚(醒)めた見方>ともとれそうだ。<熱い視線をおくる>というのもある。

 <冷(さ)ます>、<冷(さ)める>は<寒(さむ)い>と関連があろう。<目を覚(醒)ます>、<目が覚(醒)める>は<澄(す)む>、<澄す)ます>が関連か。澄んだ目で見る。耳を澄ます。よく寝たあとの目覚めは澄んだ感じがないだろうか。


sptt

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