このポストは前々回のポスト ”図形のやまとことば -1、 うつる、うつす” と前回のポスト ”<きわだつ>、<きわだたせる>” の続編。前々回のポストの冒頭で
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I must admit that the geometrical world in ancient Japanese (say more than 1,500 yeas ago) were very poor as compared with the Chinese and Western worlds.
(中略)0) 0D - point Chinese 点 Native Japanese め(me; 目 or eye)
1) 1D - line Chinese 線 Native Japanese すじ(su-ji; 筋 or stripes in muscles, veins)
2) 2D - surface or area Chinese 面 Native Japanese おもて(o-mo-te; 面 or face)
3) 3D - solid or volume Chinese 体(立体) Native Japanese かたまり(ka-ta-ma-ri; 塊 or lump)
いわば大和言葉の幾何用語は貧弱なのだが、 ......
”
と書いたが、もう少し検討してみる。幾何学上、<点>は<大きさ>がなく、<線>は<はば(幅)>がなく、<面>は<厚み>がないことになっているが、ゼロ(0)もそうだが、これはまさに画期的なコンセプトで、言い換えればとんでもない世界。このコンセプトがない世界の方が普通だろう。大和言葉の幾何用語は貧弱さはこれに関係する。
点 - め(目)には当然ながら<大きさ>がある。<大きさ>はあるが(目に見える)が小さいものに、芥子粒(けしつぶ)がある。粒子とか素粒子というのもがあるが、この目で見たことがないのでわからないが、極限に近い小ささのようだ。小さくても大きさのある点を並べると線になる(0次元-->1次元変換)。
線 - すじ<筋>には当然ながら<はば(幅)>がある。
前回のポストでは次のように書いた。
”
<端(はし)> のやまとことばの関連語はかなりあり、なぜこうも多いのか自体おもしろい調査対象だ。
きわ(際)、へり(縁)、ふち(縁、めがねの縁、<淵>は意味が違うが、まったく関連がないとも言えないようだ)、がかなり<端(はし)>の意に近いが、さらに範囲を広げれば、すみ(隅)、かど(角)、はて(果て)、さかい(境)もある。
”
<はば(幅)>がある線を考えると、へり(縁)、ふち(縁)、さかい(境)が該当しよう。さかい(境)は特別で、二つの異なったモノ、場所が線状に合うところで、あえて線を引かなければ、線がなくても存在する(見える、見えるように感じる)。輪郭(outline)もこの仲間だ。<がっけぷち>の<ふち(縁)>は<さかい(境)>に似て、幅がない線と言えそう。細い線や糸は幅があまり意識されない。純粋の線は幅がないので横のいくら並べても面にならない、細いとはいえ幅のある糸は横にたくさん並べると面にはなる(1次元-->2次元変換)。
面 - おもて(面)は<当然ながら厚みがある>というわけではなさそう。
面は英語では area よりは surface, face, plane (発音が同じ plain も仲間だろう)が適当。中国語の<面>も face の意がある。 大和言葉の<おもて>は多義語で、顔(かお)以外に裏表(うらおもて)の<おもて(表)>の意がある。表面は<おもておもて>、裏面は<うらおもて>になってしまうが、このような意味で使われるのは聞いたことがない。<水面(みなも)>の<も>は手もとの辞書では<おもて>の略という解説があるが、<お>も<て>も接辞で、はさまれた<も>が<おもて>特に<面>の意があったのではないか。顔の縦に長いの馬面(うまづら)とも面長(おもなが)とも言う。紙は厚紙以外はうすく、裏面(うらおもて)は意識されるが、厚みはあまり意識されない。しかし、薄くても紙はたくさん重ねると立体になる(2次元-->3次元変換)。
体(立体) - 目、すじ(筋)にならうと、大和言葉のかたまり(塊)には必ず3方向(たて、よこ、かさ(高さ)、あるいは厚み)以外の大きさがある、ということになるが、これだと<第4次元目>を考えなくてはならないが、これはいわゆる常識的には存在しないのだ。しかたなく、進行方向を反対にして、立体を切る(切断)すると、面があらわれ、大和言葉では<きりくち、切り口>という。この<切り口>、元来は<切り口>の面のまわり(周囲、へり、ふち)を <くち、口>のようだと見たためだろう。だが、現在は<切り口>は立体を<切った>後の面といえる。これは<3次元-->2次元変換>と言える。かたまり(塊)は solid を連想させるが、液体でも入れ物(立体)に入れると立体になる。厚み以外に<かさばる>という動詞(自動詞、連体詞、かさばる本)がり立体と結びついている。体言(名詞)の<かさ>は<川の水かさが増す>というので、いわば<深さ>だ。立方体(直方体)でもいいがの二つの面が合うところは線になる(線がみえる)。これは大和言葉では<へり>が使われるようだ。この場合は<へり>でも <はば(幅)>がないといえ、<へり>か幾何学上の線にあたるが、面上に<へりを引く>とは言わない。一般性で線に及ばない。
動詞
線は<伸びる、伸ばす>、<ちぢむ、ちぢまる、ちぢめる>、面は<広がる、広げる>、<せばまる、せばめる>、立体は<ふくらむ、ふくれる、ふくらます、ふくらす>、<すぼむ、すぼめる>、<かさばる>と言う動詞が使われる。 名詞(体言)を調べてみる。
線 - 伸(の)び、ちぢみ
面 - 広(ひろ)がり、せばまり
立体 - ふくらみ、ふくろ(袋)、すぼまり、かさばり
線、面、立体のそれぞれに名詞があるが線、面、立体の代替はできない。
形容詞、形容動詞を調べてみる。
線 - 長い、短い、(まっ)すぐな(形容動詞)、曲(まが)がった(英語の過去分詞ガタ形容詞)
面 - 広い、せまい(狭い)、たいらな(形容動詞)、でこぼこな((形容動詞)。<たいら>、<でこぼこ>。<でこぼこ>は何(なに)詞か。平ら道(ダメ)、でこぼこ道(OK)。たいらがある(ダメ)、でこぼこがある(OK)。(次回検討予定)
立体 - 大きい、小さい、固(かた)い(solid)、かさばる(形容詞 / 連体詞、かさばる本)
以上の名詞(体言)を調べてみる。
線 - 長さ、(まっ)すぐさ、曲(ま)がり、曲(ま)げ (curve)
面 - 広さ、たいらさ、でこぼこ(さ)
立体 - 大きさ、固(かた)さ、かさ
<さ>は形容の度合いを示してしまうので、線、面、立体の代替はできない。<さ>をとってみる。
線 - 長(なが)、(まっ)すぐ、曲(ま)がり、曲(ま)げ
面 - 広(ひろ)、たいら、でこぼこ
立体 - 大き、固(かた)、か
線、面、立体に代替でき出来そうな語はない。
やはり線、面、立体は画期的なコンセプトなのだ。人によっては次元にかかわる大問題だ。言葉の上で、気がつきにくいが、おもししろいのは<さ>と<み>の違いだ。
点関連
大きい - 大きさ - 大(おお)み(ダメ) - 古代にはあったか?
小さい - 小ささ - 小(ちい)み(ダメ)
線関連
長い - 長さ - 長(なが)み(ダメ)
短い - 短さ -短(みじか)み(ダメ)
線に幅があったとして
太い - 太さ - 太(ふと)み(ダメ)
細い - 細さ - 細み(ダメ)
主に面関連
広い - 広さ - 広(ひろ)み(ダメ) - 古代にはあったか?
狭い - 狭さ - 狭(せま)み (ダメ)
面に<厚み>があったとして
厚い - 厚さ - 厚み
たいら - たいらな(形容動詞) - たいらみ (ダメ)
主に立体関連
高い - 高さ - 高(たか)み(ダメ)- 古代にはあったか?
深い - 深さ - 深(ふか)み
動詞関連の<xxみ>は連用形の体言化で、たまたま<み>が現れる。
ふくらむ(ふくらんだ) - ふくらみ
縮む(縮んだ) -縮(ちぢ)み
形容詞関連では<さ>で名詞化するが、<さ>は形容<程度>を表わし、純抽象化されていない。例外は<あつみ>と<ふかみ>で、この二つは<厚さ>、<深さ>より抽象化されている。そして関連がある。類推すると<たかみ(高み)>が古代にはあったかもしれない。これはまた、面 - おもて(面)は<当然ながら厚みがある>というわけではなさそう、と関連があるかもしれない。
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以下、暇のある人は読み続けてください。
繰り返しのようになるが、
点 -
線 - 大和言葉の<すじ>、<へり>、<ふち> には基本的に<はば(幅)>がある、<はば(幅)>をなくした極限の線と同等にはならない。糸、ひも、つな(綱)は線状だがモノから離れていない。線を切ると二つの大きさのある点になり、1次元-->0次元の関係がある。だが、この二つの点に注目する人は少ない。
面 - おもて(面)には<当然ながら厚みがあるという>わけではなさそう。厚さにもよるが、ある程度厚くなると立体になってしまう。二つの厚みのない面がある角度で交差するところは線だ。また面を切ると、切断したところに二つの線がみえる。2次元-->1次元の関係がある。だが、この二つの線に注目する人は少ない。また面を二つにおると線ができる(見える)。 厚みがある二つの面がある角度で交差すると線ではなく面になる。
体(立体) - かたまり(塊)には必ず3方向(たて、よこ、かさ(高さ))の大きさがある。面を積み重ねると立体になりそうだが、厚みのない<おもて>や面(めん)いくらら重ねても立体にはならない。厚みのある面を積み重ねると立体になる。一方立体を切る(切断)すると、面があらわれる。3次元<-->2次元の関係がある。
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