Tuesday, January 19, 2016

名誉毀損のやまとことば、ほまれ


名誉毀損(めいよきそん)はときどき聞くが明らかに漢語由来だ。あえてやまとことばを探してみる。

名誉は<ほまれ(誉)>というのがある。毀損(きそん)は文字通り<毀(こわ)し損(そこ)なう>を選ぶと<ほまれこわしそこない>になり長すがすぎるので<ほまれこわし>、<ほまれそこない>としてもいい。ほかに毀損(きそん)から離れて<ほまれよごし>、<ほまれけがし>、<ほまれつぶし>が思い浮かぶ。<面目まるつぶれ>という言い方がある。<きずつける>といういいやまとことばがあるが<ほまれきずつけ>は長すぎる。

ところでこの<ほまれ>は<ほめる>、古くは<ほむ>の関連語だが、 <ほまれ>にはほぼ悪い意味がなく、変にこなれていないいいやまとことばだ。<ほまれ(誉)>には<名誉>の<名>が含まれてていない。<名>は表面的なものでよごしたり、けがしたり、つぶしたりできるが、<ほまれ>はこれがむずかしいようで、本質的にいいもの(こと)のようだ。

一方<ほめる>のほうは

ほめあげる (追従の意が加わるようだ)
ほめ過ぎる (体言は<ほめすぎ>)
ほめそやす  (必要以上に<ほめる>ことか?)
ほめたたえる
ほめ足りない
ほめちぎる

などの言い方があり、悪意が見え隠れする表現になるものがある。また<ほめる>自体かならずしも100%いいことではなさそう。<ほめる>の名詞(体言)形は<ほめ>で、これは連用形の名詞(体言)形で、<おほめ>というのもある。<おほめにあずかる>という言い方がある。

そもそも<ほめる>とはどういう意味か?これは評価、価値評価と関連があろう。いい(プラスの)価値評価、さらにはそれを表現することだが、少し、または大いに社会性をおびてるようだ。恋人を面と向かって<ほめる>ことはできるが、やや変だ。恋人を家族や友達、他人に<ほめる>のがことばとしては自然のようだ。

反対語は<けなす>だろう。 わるい(マイナスの)価値評価、さらにはそれを表現することことだ。こちらの方も意図が感じられる。

<うぬぼれ>、<うぬぼれる>という言い方がある。これは文字通りでは<自分自身にほれる、ほれている>の意だが<自分自身をほめる、ほめている>ことにもなりそう。 自画自賛だ。<ほれる>は<ほめる>の関連語か? だが<ほれる>は他人に対する、他人を意識した表現が伴わないので、社会性が薄い。<ほだす>という言葉もある。おもに<ほだされて>と受け身で使う。もともとは<ほめて>+<だす>の意だろが、<ほめて>+<だす>とはどういうことか?あるいは<火(ほ)出す>か? おそらく、<ほめて>+<xx させる>といったような意味だろう。<ほめる>、<ほれる>、<ほだす>は関連がありそう。<ほめる>、<ほだす>は他動詞だが<ほれる>は<xx にほれる>で自動詞扱いだ。

名誉の反対語はいろいろ考えられるが、代表は<恥(はじ)>だろう。<恥も外聞もなく>という言い方があるので、<恥>はこれまた相当他人を意識した、さらには社会性をおびた言葉だ。

名誉に近い意味の言葉はけっこうある。面子(めんつ)を重んじるのは中国人ということになっているが、日本人式にそこそこ面子を重んじている。すくなくとも言葉上は<それでは、面子がたたない>とよく言ったりする。面目(めんもく、めんぼく)というのもあり<面目ない>とよく言う。体裁(ていさい)、外聞(がいぶん)というのもあり<体裁が悪い>、<外聞が悪い>という。だがいずれも名誉にくらべると軽いようで、<面子毀損>、<面目毀損>、<体裁毀損>、<外聞毀損>とは言わない。これらはみな否定的に使われている例。<外聞が悪い>とやまとことばの<人聞きが悪い>は意味が違う。

面子を重んじる、面子を立てる、面子がある

は肯定ないし中立的な意味だが

面目を重んじる、面目を立てる、面目がある
体裁を重んじる、体裁を立てる、体裁がある
外聞を重んじる、(外聞をたてる)、外聞がある

は批判的な意味で使われる場合が多いようだ。



sptt

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