<顔を出す>は慣用表現で<(すでに知っている)人に会う、会いに行く、来る>といった意味だ。<顔>を使った慣用表現は少なくない。
すごみを効かせて、
ちょっと顔を出してもらおうじゃないか。
といわれると、行くのがためらわれる。
顔を見せる
(ウソを言っているのが)顔に出る、(不満を、怒りを)顔に出す
ウソというのが顔にかいてある。
小さな子供だと本当だと思うだろう。<真顔(まがお)になる>という言い方があるので、顔はふだんはウソをかいているのことになるのか。さらには、<ウソでかためた顔>もありそうだが、こわれやすいか?
顔を合わせる、合わせる顔がない(出す顔をがない、見せる顔がない、はあまり聞かない)、顔合わせ。顔見せ。
その他
顔から火が出る顔に泥を塗る (顔に墨を塗る)
したり顔
顔見知り
顔を貸してもらう
顔が丸つぶれ
英語では
face to face (これはそのまま日本語になっている) 日本語は<顔をつきあわせて>か?to lose face
というのがある。to lose face は慣用表現だ。
<顔>意外に<つら(面)>というのがある。
つらを汚(よご)す、つら汚し
つらの皮が厚い
こんなバカなまねをし奴(やつ)のつらが見たい
<面>は音読みの<めん>も使われる。<お面>はまた別だ。
面と向かって
面食い
さらには
<おもて(面)>をあげる
というのもある。
冒頭の<顔を出す>にもどると、<顔を見せる>、<姿を見せる>も同じような意味だが<姿を出す> という言い方はない。また<顔を出す>はもとの意味で<窓から顔出す>と言うが<窓から顔を見せる、姿を出す、姿を見せる>とはあまり言わない。
さて、このような重箱の隅をつつくような話をしているかというと、イタリア語の affacciare の再帰形の affacciarsi という語に出くわしたからだ。どこで出くわしたかというと、イタリア語の童話<ピノキオ(の冒険)>だ。イタリア語の affacciarsi の英訳は to come to、to appear という一般的な動詞を使っている。イタリア語と英語を並べると、
http://ercoleguidi.altervista.org/pinocchio/
第6章
Allora Pinocchio, preso dalla disperazione e dalla fame, si attaccò al campanello d'una casa, e cominciò a sonare a distesa, dicendo dentro di sé:
"Qualcuno si affaccerà".
Difatti si affacciò un vecchino, col berretto da notte in capo, il quale gridò tutto stizzito:
"Che cosa volete a quest'ora?"
At this point Pinocchio, seized by desperation and hunger, laid hold of the bell of a house and began to ring it without interruption, saying to himself:
"Someone will come to the window."
In fact there appeared a little old man, with a nightcap on his head, who called down angrily:
"What do you want at this hour?"
調べてみると、affacciarsi の文法的分解はややこしい。affacciarsi の<faccia>は顔という意味で、英語の face だ。これに接頭辞の<a->がつき、動詞語尾の<-are>がついたもの。原形は affacciare だが、このままではほとんど使われない。affacciare は他動詞。接頭語の<a->は名詞や形容詞を他動詞化)する働きがある。無理に訳せば<顔を出させる、見せる>。これだと他人の顔も対象になる。再帰の代代名詞 si は<自分自身を>の意なので、affacciarsi は<自分自身を、顔を出させる、見せる>で結果的には、他人のではなく自分自身の顔を出す、見せる>。さらには英語のように to appear の意になる。直訳すれば、イタリア語では face が動詞のなかに組み込まれてしまっているが、英語では再帰語法はほとんど使われないので、to show one's own face になる。こう考えると affacciarsi はかなりの省力化動詞だ。
イタリア語では faccia のほかに viso というのがあり、使い分けられているようだ。
sptt
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