Wednesday, December 20, 2023

人(ひと)の使われ方

 

すこし前ののポスト "<ひと (いち) >はやまとことばの宝庫 " で<ひと> (イチ、一) の慣用的な言い方を辞書で調べてページをめっくていると<人 (ひと) >の慣用的な言い方が紛れ込んでくる。<人 (ひと)>の使われ方もおもしろい。

日本語の独立して使われる、または頭にくる<人>は多分に<他人>のことだ。これはやまとことばの特徴ではないか。ここでは辞書のように<あ、い、う、え、お>に並べないが、ある程度の区別をつけて、思いつくままに書き出すと

人を見たら泥棒と思え。(渡る世間に鬼はなし、というのもあるので、そう悲観することはない、世間=世間の人々とすると、正確には<渡る世間に鬼はいず、いない>となる)

人のふり見てわがふり直せ。
人のふんどしで相撲をとる。  
人様のものには手を出すな。

人の金に手をつける。.
人のうわさを気にすることはない。人の言うことを気にすることはない。
人の言うことをよく聞け。  この場合の<人>は往々にして話し手のこと。
人の手を借りる。
人は人、自分は自分。
人を人とも思わない。  初めの<人>が他人で、二番目の<人>は<人扱いされる標準的な人>。
人には親切にするものだ。

人聞きが悪い
人目をはばかる
人前もはばからず
人の目を盗んで
人の顔に泥を塗る。

人の口にのぼる
人並み

人まね

ーーーーー
合成語

 合成語というのは私が勝手につけた名前で、<人+動詞の連用形>のパターンでこれが名詞句となっているもの。そしてこの過程で、下記の太字で示した助詞が消えてしまうのだ。このポストの一つのポイント。これは<ひと (いち) >はやまとことばの宝庫 " のポストの最後で大発見としてやっていることとほぼ同じ。やまとことばのおもしろさ、かくれた文法性と言えるのではないか。


人聞きが悪い  人聞く ―>聞き
人ずれした(人ずれする)  人すれる ー>ずれ
人慣れした (人慣れする) 人慣れる ー>慣れ
人嫌い    人嫌う   嫌う ー>嫌い
人思い    人思う   思う ー>思い
人まかせ  人まかせる    まかせる ー>まかせ
人頼り(だより)   人頼る   頼る ー>頼り
人騒がせな   人騒がせる   騒がせる ー>騒がせ
人見知りする、しない  人見知る   見知る ー>見知り 

<見知る>は<見て知る>が原意だが、<人見知りする>は<子供が、見知らぬに対して、恥ずかしがったり嫌ったりすること>というかなりひねくれた意味になっている。<人怖じする>と似たような意味なので<人を怖じる>と同じく<人を見知る>でいいと思うが、これだとすると<見知る>を<見て、怖じる>の意に解さないといけない。機会があれば別途検討。

人好きがする (人に好まれる、か)  人好く  好くー>好き
人あたりがいい  人あたる  あたる ー>あたり
人あしらいがうまい (必ずしもほめ言葉ではない) 人あしらう  あしらう ー>あしらい
人使いが荒い   人使う  使う ー>使い
人怖 (お) じする、しない  人怖じる、 怖じる ー>怖じ
人助け (人だすけ) する   人助ける   助ける ー>助け

 

 ーーーーー

かならずしも他人ではない、一般的な人。微妙なところがあるものがある。

人殺し、人さらい、人買い、人込み、人け (気)、人影 (ひとかげ)、人手 (ひとで)、人違い、人並み

<人殺し、人さらい、人買い、人込み、人違い>は上の

<人+動詞の連用形>のパターンでこれが名詞句となっている。そしてこの過程で、下記の太字で示した助詞が消える。

が適用できる。

人殺し  人殺す  ころす ー>殺し
人さらい  人さらう  さらう ー>さらし
人買い  人買う  買う ー>買い
人混み  人混む  混む ー>混み
人違い  人違う  違う ー>違い

人がいい  これは特別な意味もある
人が悪い  これも特別な意味がある

人は考える動物である。  考える人
人は死ぬものである。
人は見かけによらぬものだ。

ーーーーー

<xxする人>の意で人が後にくるもの。この慣用表現はなぜか意外と、と言うか異常に少ない。このポストのポイント。

恋人 (こいびと)  残したいいいやまとことばの上位にくりだろう。今のところ消えそうににない。
小人 (こびと)
旅人 (たびびと)   いいやまとことばだが、古語の近い。旅行者
罪 (つみ) びと
村人 (むらびと) 
ぬすびと (盗人)  これも古語に近い。
世捨て人  これも古語に近い。
読み人 (知らず) これも古語に近い。

その他は<ひと>がなまったもので

あきんど 商人
おちゅうど 落人
かりゅうど 狩人
助っ人 (すけっと)
ぬすっと  盗人

その他では、あまり使わないが

待ち人 (びと)(きたらず)   これは<待つ人>ではなく<待たれている人>。
たずね人 (びと)     
これも<たずねる人>ではなく<たずねられている人>。

下記参照

人(ひと)は動詞。形容詞、形容詞の連体形につくのが普通で、意味は一般的なものにと止まっている。

行く人、来る人、歩くひと、走るひと、する人、作るひと、食べる人、働く人、遊ぶ人、考える人、etc
いい人、悪い人、美しい人、etc  <
いい人>、<悪い人>は慣用的な意味の場合もある。静かなひと 、etc

これはある意味では大きな特徴と言える。 そしてこの<ひと>は独立して冒頭などに使われれ、冒頭にはこない<者 (もの)>などとの大きな違いだ。

一方、おもしろいのは<者 (もの) >で、ちょっと調べれば、<あ、い、う、え、お>に並べられるほどある。


あぶれ者
あらくれ者

あわて者
あらくれ者
いたずら者
いなか者
うかつ者
うかれ者
うっかり者
うつけ者
うらぎり者
おたずね者
おろか者

ーーーーー
駆け出し (者)  初心者
かたぎ者  堅気者
きらわれ者
こわ者

ーーーーー 
さらし者  晒し者
しっかり者
忍びの者
しゃれ者
しれ者 (痴れ者)
好き者

ーーーーー
だて者
たわけ者
つまみ者
とらわれ者

ーーーーー
流れ者
なまけ者
ならず者
にくまれ者
のけ者

ーーーーー
ばか者
はぐれ者
はたらき者 (働き者)
鼻つまみ者
はみだし者
ひかげ者  日陰者
ひかれ者 (の小唄)
ひとり者
ひねくれ者
ふしだら者
ふとどき者

ーーーーー
まぬけ (者)
まわし者

ーーーーー
やくざ者
よそ者
よた者

ーーーーー
若者 (わかもの)
笑い者
わる者


なぜか悪い、好ましくない者 (ひと) が多い。漢語+<者>もこの傾向があるようだ。

邪魔 (じゃま) 者
正直 (しょうじき) 者
粗忽 (そこつ) 者
道楽 (どうらく) 者
半端 (はんぱ) 者


人を意味する<手 (て) >も少なくない。ピアノ、ギターなどの弾き手  英語でも pianist, guitarist, violinist などと言う。
歌い手  singer  (英語の<xxする人>はほとんど<xx-er, or>で済ましている。
おどり手 dancer

ある種のペア

送りて、渡し手 ー 受け手、取り手
あげ手 ー もらい手
教え手 ー 習い手
読み手、語り手、話し手 ー 聴き手 、聞き手
売り手 ー 買い手

その他
稼 (かせ) ぎ手
漕 (こ) ぎ手 、泳ぎ手、潜 (もぐ) りて、走り手
作り手
担 (にな) い手
やり手    やり手ばあさん



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