漢語の<一 (いち) >に相当するやまとことばの<ひと>はやまとことばの宝庫だ。
<ひとつ、ふたつ、みっつ 、...... >は<いち、に、さん、...... >に追いやられているが、どっこい<ひとつ>の<ひと>は日常会話で大活躍している。思いついたものを<あ、い、う、え、お>順に並べてみる。主旨は<注>の方にあるので<注>だけ読んでもいいが、主旨は例文から抽出したもの。
ひと足 ひと足先に行っている <一歩先に行く>は意味が違う。
ひと味 (あじ) ひと味違う
ひと汗 ひと汗かく
ひと雨 日照り続きで、ひと雨ふったらいいのに
ひと歩き ひと歩きする
ひと泡 (あわ) ひと泡 (あわ) 吹 (ふ) かせる
ひと安心 これでひとまず、ひと安心
ひといき ひといきにやる
ひとえ (重) ひと重まぶた; ひとえ (単衣) という服装用語もある。
ひとえに これひとえにあなたの援助のおかげです
ひと押し もうひと押し
ひと思いに ひと思いに身投げでもするか、思い切って
ーーーーー
ひとかかえ
ひとかけら 良心のひとかけらもない
ひとかせぎ (稼ぎ) ひと稼ぎする
ひとかた (方) ひとかたならない、ひとかたならならず かた (方) はおもしろい語だ。
ひとかた (片) ひとかたもない <方>と<片>は違う
ひとかたづけ ひと片 (かた) づけしてから出かける
ひとかたまり
ひと皮 ひと皮むけば
ひとがんばり ひとがんばりする
ひときわ (際) ひときわ目立つ服装
ひと区切り ここらでひと区切りして、ひと休みしよう
ひとくさり いやみ (嫌味) をひとくさり
ひとくせ (癖) ひとくせもふたくせもあるやつだ
ひと口 ひと口で食べてしまう; ひと口のってみる
ひと工夫 ひと工夫ほしいところだ
ひと組 (くみ)
ひと苦労 ひと苦労したほうがいい、ひと苦労してみたらどうだ
ひとけた (桁) 数字がひと桁ちがっている
ひと声 ひと声かける
ひとこと おまえはいつもひとこと多い <こと>は言葉
ひとこま 感動的なひとこま
ひと頃 (ころ) ひと頃よりずっと人が少ない
ーーーーー
ひとさわぎ (騒ぎ) きのうここでひと騒ぎあったようだ
ひとしお これを見ると思いひとしおだ
ひとしきり 待つことひとしきり;<しきりに>は<頻繁に>、<ひどく>
ひとしずく ひとしずくの涙
ひと芝居(しばい) ひと芝居打つ
ひとすじ 以来これ ひとすじ、ひとすじ縄ではいかない
ひとそろい
ーーーーー
ひと束 (たば)
ひとたび ひと度 (たび) 旅に出るといつ帰るかわからない
ひと段落 一 (いち) 段落
ひとつ <ひとつ>は><イチ、一>、<イッコ、一個>のことだが、副詞的に <ひとつ間違えば>、<ここは、ひとつ、よろしくお願いします>のよう に使う。
ひと包み
ひと粒 (つぶ) ひと粒の米、ひと粒のキャラメル、ひとつぶ種 (だね)
ひととおり (通り) 書類にはひと通り目を通しておきました
ひととき (時) やすらぎのひととき、ひとときもじっとしていない;いっとき (一時、重箱読み) は別の意味になる。 聞く (問う) は一時の恥。だが<一時(いっとき、いちじ)のよう勢いがない、という言い方はある。
ひとところ (所) ひとところ、子供はひとっところにじっとしていない
ひととび、ひとっとび (飛び、跳ぶ) 高いビルディングもひとっ 飛び、スーパーマン
ーーーーー
ひとにぎり (握り) ひと握りの食べ物; 比喩的には<ひと握りの悪党>。本当の悪党は<ひと握り>に過ぎない。
ひとのみ (飲み、呑み) 大きな津波は海岸の村をひと呑みにした
ーーーーー
ひと走り、ひとっ走り
ひとはた (旗) ひと旗揚げる
ひと働 (はたら) き まだひと働きしてもらわないと
ひとはだ (肌) ひと肌脱ぐ
ひとはな (花) ひと花咲かせる
ひと晩 (ばん) ひと晩中、ひと晩泊まる
ひとひねり 物語のすじとしてはもうひとひねりあったほうがいい、あんな奴、ひとひねりで黙らしてやる
ひと吹き
ひと筆 ひと筆書き、<ひと筆で / に書く、描く>は意味がちがう。
ひとふり (振り)
ひと風呂 ひと風呂あびる
ひとふんばり
ーーーーー
ひと間 (ま) この一間を借りて住んでいます
ひとまず ひとまずここで終わりにする
ひとまたぎ (跨ぎ)
ひとまとめ ひとまとめにする、ひとまとまり
ひとめぐり ひとめぐりする
ひとまわり ひとまわりする、ひとまわりめ 、ひとまわり大きい
ひと昔 それはもうひと昔前の話だ
ひと目 ひと目でわかる、ひと目ぼれ
ひともうけ ひともうけする
ひともめ あの夫婦またひともめあったらしい
ひともんちゃく (悶着) あの夫婦またひと悶着あったようだ
ーーーーー
ひと役 ひと役買って出る
ひと休み ここでひと休みしよう
ひと山 ひと山いくら; ひと山当てる
ーーーーー
ひとわたり これで検査はひとわたり済んだ
ーーーーー
注1)
中国語でいう<量詞>に相当するもの
ひとそろい ー a full set of
ひと束 (たば) ー one bundle of というのもありそう
ひと包み
以上は集合量詞というようだ。以上の他、昔ながらの果物屋、八百屋、魚屋、肉屋などの店に行けば
ひと山、ひと皿、ひと束、ひと箱、ひと籠(かご)、ひと袋、ひと瓶、ひと缶、etc いくらで売っている。
おもしろいのはやまとことばの方で
ひと山、ふた山、これ以上はほとんど聞かない。
ひと皿、ふた皿、み皿、よ皿 / よん皿、ご皿、ろく皿、 . . . . .
ひと束、ふた束、み束 / さん束、よ束 / よん束、ご束、ろく束、 . . . . .
ひと皿、ふた皿、み皿 / さん皿、よ皿 / よん皿、ご皿、ろく皿、 . . . . .
ひと箱、ふた箱、み箱 / さん箱、よ箱 / よん箱、ご箱、ろく箱 / ろっ箱、. . . . .
ひと籠、ふた籠、み籠/ さん籠、よ籠 / よん籠、ご籠、ろく籠 / ろっ籠、. . . . .
ひと袋、ふた袋 / に袋、み袋 / さん袋、よ袋/ よん袋 / し袋、ご袋、ろく袋 . . . . .
ひと瓶、ふた瓶 / に瓶、み瓶/ さん瓶、よん瓶、ご瓶、ろく瓶、 . . . . .
ひと缶、ふた缶 / に缶、さん缶、よん缶、ご缶、ろっ缶、 . . . . .
で(個人差があろう)やまとことばと漢語の拮抗が見られる。なぜか<し、四>がない。<死>の連想からの忌み語あつかいになっているのか。
ひと粒 (つぶ)
一般の<量詞>は<いち (一) >が多い
一個、一本、一枚、一匹、一頭、一件、一軒 (の家) 、一杯 (の水)
注2)
<いち (一) >は数が少ないので<わずかな、すくない、<a few of>の意味がありそうだが、あまりない。
ひと雨 わずかな、少しの雨ではない
ひと思いに ひと思いに身投げでもするか、思い切って
これは決して<わずかな、小さい><思い>ではない。むしろ<大きな><思い (決断) >だ。
ひとかけら
<ひとかけら>は<小さいかけら、小片>だが、<良心のひとかけらもない>のように使い、<良心はひとかけらのように小さい>とはいわない。<良心のひとかけらもない>は<良心がひどく欠けている>といような意味だ。
<ひとかたまり>もけっして<小さいかたまり>とは限らない
ひとこと おまえはいつもひとこと多い <こと>は言葉
<ひとこと>もそうだが、二言 (ふたこと) 、三言 (みこと) も数が少ない。だが、これらも<わずかな、すくない>の意味は薄い。
ひとかせぎ、ひともうけ
も多くはないが、決してわずかな、少ない金ではない。
ひとさわぎ (騒ぎ) 、ひともめ
も<ささいなさわぎ>、<ちいさなもめごと>ではない。
これはどうしたことか? 辞書にあったてみると、この辺は曖昧だ。ネット辞典でチェックしてみた。簡単なのは
”
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E3%81%B2%E3%81%A8/
ひと【一】の解説
1 ひとつ。いち。
2 (名詞や動詞の連用形の上に付いて)
㋐一つ、または1回の意を表す。「—包み」「—勝負」
㋑不特定の一時期や大体の範囲などを表す。「—ころ」「—わたり」「—通り」
㋒ちょっとしたものであることを表す。「—かど」「—くせ」
㋓全体に及ぶさまを表す。全部。…中 (じゅう) 。「—皿たいらげる」「—夏を山荘で過ごす」
㋔(「ひと…する」の形で)軽くある動作を行う、あることをひととおりする意を表す。「—眠りする」「—風呂浴びる」
”
比較的詳しいものをこれもそのまま下に引用(コピー / ペイスト)する。
”
精選版 日本国語大辞典 「一」の意味・読み・例文・類語
ひと【一】
[1] 〘名〙 物の数を、声に出して順に唱えながら数えるときの一(いち)。ひい。ひ。
[2] 〘語素〙 (名詞・助数詞または動詞の連用形の上に付けて用いる)
① 物事の数がひとつであること、または一回分であることを表わす。「ひと足」「ひと冬」「ひと勝負」「ひと浜」など。
② ひとつのもの全体に満ちている、または、全体に及ぶ意を表わす。…にいっぱい。…全体。…じゅう。「ひと鍋」「ひとかかえ」「ひと晩」など。
③ 不特定のある一点を漠然とさして表わす。ある。
④ 一応その範疇にはいる意、またちょっとしたものである意を表わす。ひとかどの。いちおうの。
⑤ (「ひと…(…)する」の形で) その動作を一応する、一通りする意を表わす。ちょっとの。また、ひとしきりの。「ひと苦労する」「ひと泡ふかす」「ひと旗あげる」「ひとかせぎする」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
⑥ (「ひと…に…する」の形で) その動作が一回だけで終わる、一回だけで完全に行なわれる意を表わす。一回だけの。一度だけの。また、いっきの。ひといきの。「ひと筆に書く」「ひと打ちに打ちのめす」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
”
(sptt注)
「ひと足」「ひと冬」は
①物事の数がひとつであること、または一回分であること、ではない。
<ひと足先に行く>は慣用表現で<先に行く>。<ひと足>は<少し、ちょっと>の意味で<足>、<一歩>の意はない。
「ひと冬」は
② ひとつのもの全体に満ちている、または、全体に及ぶ意 、の方だろう。
<無視することができないなにか>は some significant になるが、<ひとつ>は one であるので some significant one を表わす、となる。<ひときわ (際) >には significantly の意味がある。
さて。もとに戻って、該当するのは
㋒ちょっとしたものであることを表す。「—かど」「—くせ」
だが、この<ちょっと>、<ちょっとした>は<ひと、ひとつ>と同じくクセモノで <すこしの、わずかな、とるにたらない>の意ではなく、むしろ<そこそこの、かなりの / な>の意だ。
④ 一応その範疇にはいる意、またちょっとしたものである意を表わす。ひとかどの。いちおうの。
これまた<ちょっとしたもの> だ。
⑤ (「ひと…(…)する」の形で) その動作を一応する、一通りする意を表わす。ちょっとの。また、ひとしきりの。「ひと苦労する」「ひと泡ふかす」「ひと旗あげる」「ひとかせぎする」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
例文の「ひと苦労する」「ひと泡ふかす」「ひと旗あげる」「ひとかせぎする」はわたしにリストにもあるが、けっして<その動作を一応する、一通りする意>はない。むしろ<ちょっとの>、すなわち<そこそこの、かなりな>の意だ。
上のような例文の<ひと>、<ちょっと>は一種の反語、レトリックといえる。一種の強調表現なのだ。もっとあきらかなのは否定語とともに使われる場合で
ひとつもない
だれひとり来ない
ひとかけらもない
ひとかた (方) ならない、ひとかたならならず
ひとかた (片) もない
ひとこともない
ひとしずくの涙もない 一滴 (いってき) の涙もない
ひとすじ縄ではいかない
ひと粒の米も残っていない
の強調表現。
注3
今回のチェックで発見したのは(上の解説にあるので、新発見ではないが)
㋔(「ひと…する」の形で)軽くある動作を行う、あることをひととおりする意を表す。「—眠りする」「—風呂浴びる」
⑤ (「ひと…(…)する」の形で) その動作を一応する、一通りする意を表わす。ちょっとの。また、ひとしきりの。「ひと苦労する」「ひと泡ふかす」「ひと旗あげる」「ひとかせぎする」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
のパターン表現だ。意味を正しくとらえていないのは今述べたが、 パターン化はまちがいない
「—眠りする」「—風呂浴びる」
「ひと苦労する」「ひと泡ふかす」「ひと旗あげる」「ひとかせぎする」
以外にわたしのリストでは
ひと味違うひと汗かく
ひと雨ふる
ひと歩きする
もうひと押しする
ひとかたづけ
ひとがんばりする
ひと区切りする
ひと声かける
ひとさわぎ (騒ぎ) ある / する
ひと芝居打つ / する
ひととび、ひとっとび (飛び、跳ぶ)
ひとのみ (飲み、呑み)( に)する
ひと走り、ひとっ走りする
ひと旗揚げる
ひと働 (はたら) きする
ひと肌脱ぐ
ひと花咲かせる
ひとひねりする
ひと吹きする
ひとふり (振り) する
ひと風呂あびる
ひとふんばりする
ひとまたぎ (跨ぎ) する
ひとまとめにする
ひとめぐりする
ひとまわりする
ひともうけする
ひと役買う
ひと休みする
これは汎用性があって、たとえば
ひとかたづけする
は<そうじ>関連だが
ひと掃 (は) きする、ひとたきする、ひと拭 (ふ) きする、などもある。
意味的には、上で取り上げたが、重要なので繰り返すが、三省堂辞書の解説
「ひと…する」の形だが、<する>はかならずしも<する>でなくていい。一般の動詞でもいい。<…>の部分は、文法的なパターン化があり、名詞また名詞相当語でないといけない。
歩き、押し、がんばり、区切り、さわぎ (騒ぎ)、のみ (飲み、呑み)、走り、働 (はたら) き、ひねり、吹き、ふり (振り)、ふんばり、またぎ (跨ぎ)、まとめ、めぐり、まわり、もうけ、休み
は動詞の連用形の名詞用法。
注4
⑥ (「ひと…に…する」の形で) その動作が一回だけで終わる、一回だけで完全に行なわれる意を表わす。一回だけの。一度だけの。また、いっきの。ひといきの。「ひと筆に書く」「ひと打ちに打ちのめす」など。なお、この後半を略して「ひと…」の形だけでいうことも多い。
注3でとりあげているのもあるが
ひといき ひといきにやる
ひととび、ひとっとび (飛び、跳ぶ)
ひとのみ (飲み、呑み)( に)する
ひと吹き
ひと筆 <ひと筆で / に書く、描く>
ひとふり (振り)
は<一気に> の意が強い。物騒だが、ひとを殺す場合
ナイフひと突きで
かたなひと振りで
バットひとたたきで
一気にやることになろう。また<一気飲み>というのがる。
注5
順序が前後するが
㋓全体に及ぶさまを表す。全部。…中 (じゅう) 。「—皿たいらげる」「—夏を山荘で過ごす」
② ひとつのもの全体に満ちている、または、全体に及ぶ意を表わす。…にいっぱい。…全体。…じゅう。「ひと鍋」「ひとかかえ」「ひと晩」など。
一つ(一、いち)は2以上の数字を分数にすると、1/2以下は分数、部分になろ。一方<ひとつ (一、いち) >は全体 whole になる。
「ひと晩」はやや曖昧だが<ひと夏>は whole summer だ。
注6
㋑不特定の一時期や大体の範囲などを表す。「—ころ」「—わたり」「—通り」
<不特定の一時期>と<大体の範囲>はまったく違うので分けた方がいい。
二番目のネット辞典では
② ひとつのもの全体に満ちている、または、全体に及ぶ意を表わす。…にいっぱい。…全体。…じゅう。「ひと鍋」「ひとかかえ」「ひと晩」など。
③ 不特定のある一点を漠然とさして表わす。ある。
と分けているが、 ③の解説はよくわからないが、意味ありげだ。<ある>と同義、または<ある>の類似語ということか。
<不特定のある一点を漠然とさして表わす。>とはどういうことか。
一番の目のネット辞典では<不特定の一時期、ひところ>と時間関連しかとりあげていない。
<ひととき>は<あるとき>にならない。だが<あるとき>はまさしく<不特定の時を漠然とさして表わ>している。その他の<不特定のある一点を漠然とさして表わす>をさがしてみる。
太郎はあるコトを隠している。 ひとコトを隠している。- ダメ
太郎はあるモノを隠している。 ひとモノを隠している。- ダメ
ダメだが<ひとつのコト><ひとつのモノ>なら問題ない。
<ある点>も<ひと点>で<一個の点>になってダメだ。<ある人>は<ひとひと>になって具合が悪い。
だが
太郎はひとつの点を隠している。
ならなんとかなる。
ひと箇所間違っている ー これは特定ではないが不特定でもない。話者は知っているが (特定)、聴き手はしらない (不特定) 。
子供はひとところにじっとしていない ー これは<不特定のある一点を漠然とさして表わ>しているように見える。
だが、英語を参考にすると
子供はひとところにじっとしていない
Children do not stay at one place.
子供はあるところにじっとしていない
直訳では
Children do not stay at a certain place. になるが
Children do not stay at certain one place.
Children do not stay at one certain place.
とも言える。逆に日本語に訳し返すと
子供はあるひとところにじっとしていない
となる。
<ある>は certain 相当。<あること>、<あるもの>は a certain thing になる。ここで注意すべきところは
certain - a particular thing without mentioning any more details
で<不特定のある一点を漠然とさして表わす>ではなく<特定のある一点を差してているが、詳しいことは意図的に言わず、漠然とさして表わす>と言うことだ。これは大きな違いだ。したがって<ひと>は<ある>の同義語、類似語ではないのだ。
さて、長くなってきたので、これで終わりにしようと思っていたが、<ひと>と<ある>の例文を並べてチェックしているうちに大発見をした。これは、これまでネットや辞書で<ひと>を調べているが、だれも言及していない。
ひと味 (あじ) ひと味が違う
ひと汗 ひと汗をかく
ひと雨 日照り続きで、ひと雨がふったらいいのに
ひと歩き ひと歩きをする
ひと泡 (あわ) ひと泡 (あわ)を吹 (ふ) かせる
ひと押し もうひと押しをする
ーーーーー
ひとかせぎ (稼ぎ) ひと稼ぎをする
ひとかたづけ ひと片 (かた) づけをしてから出かける
ひとがんばり ひとがんばりをする
ひと工夫 ひと工夫がほしいところだ
ひと苦労 ひと苦労をしてみたらどうだ
ひと声 ひと声をかける
ひとこと おまえはいつもひとことが多い
ーーーーー
ひとさわぎ (騒ぎ) きのうここでひと騒ぎがあったようだ
ひと芝居(しばい) ひと芝居を打つ
ーーーーー
ひと走りをする、ひとっ走りをする
ひとはた (旗) ひと旗を揚げる
ひと働 (はたら) き まだひと働きをしてもらわないと
ひとはだ (肌) ひと肌を脱ぐ
ひとひねり 物語のすじとしてはもうひとひねりがあったほうがいい
ひと風呂 ひと風呂をあびる
ひとふんばりをする
ーーーーー
ひとめぐり ひとめぐりをする
ひとまわり ひとまわりをする
ひともうけ ひともうけをする
ひともめ あの夫婦またひともめがあったらしい
ひともんちゃく (悶着) あの夫婦またひと悶着があったようだ
ーーーーー
ひと役 ひと役を買って出る
ひと休み ここでひと休みをしよう
ひと山 ひと山を当てる
以上太字部の<が>、<を>は言わない。言ってもいいのもあるが、口語のやまとことばらしくなくなる。おそらくこれは、
1)もともとに日本語では、特別の場合を除き、 格助詞の<が>、<を>はそう頻繁には使わなかった。
2)以上の例文の<ひと>は一種のレトリック、強調で、<が>、<を>を使うと叙述的になってレトリック、強調の味がでない。
sptt
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