<鶴の恩返し>という話がある。内容はよく知られているので、詳しくはくりかえさない。この話は<罠にかかった鶴が、助けてもっらたことを恩とし、その恩に報いる>というもの。<恩に報いる>のは一般的には善行だ。意識的、無意識的に<恩に報いない>場合も少なくないのだが
恩知らず
恩に着る
恩に着せる
恩着せがましい
恩をあだで返す
といった言い方があり、時々耳にする。 <恩知らず>は直接的で意味は明確だが、その他は解説が必要か。
<恩に着る>は、恩をかけけてもらったことへの言葉の上の感謝の表示。実際、私も含めて<言葉の上>だけで、鶴と違って恩返しは忘れがちだ。
<恩を着る>ではなく<恩に着る>だが、意味としては<恩を着る>だろう。だがなぜ<恩に着る>というのか? この説明は難しい。ネットで調べてみた。
朝日新聞デジタル
恩を受けてありがたく思うことを「恩に着る」といい、この丁寧形は「恩にきます(着ます)」となります。
自分の身に受けるという意味の「着る」が使われます。 罪をその身に引き受けるという「罪を着る」も同じように「着る」を使います。
ーーーー
<
自分の身に受けるという意味>はいいとして、「罪に着る」ではないので、「恩に着る」の説明としてはイマイチ。
<着る>は<衣服を自分の身につける>が原意。<衣服を着る>で他動詞。したがって文法的にはく恩を着る>が正しく<恩に着る>は間違い。ではく恩に着る>のく着る>は自動詞か? く恩に着る>の場合
恩に着せる
の<着せる>はこれも<恩に>だが、他動詞っぽい。使役形は
xxに恩に着させる
こうなると、わけがわからなくなる。
朝日新聞デジタルの解説は。もう少し丁寧に
自分の身に受けるという意味の「着る」が使われます
ー>
<恩に着る>は <恩を自分の身につける(着る)という意味>で、<自分の身>, あるいは<自分自身の身>は英語の簡単な oneself とは違って長いので、往往にして言葉に出てこない。<身>だけでも通じる。だが<に>は必要で<身につける(着る)>ー><身に着る>。<恩>が主題で<恩身に着る>。これが変化して<恩に着る>。
笠に着る
も同じように
笠を自分の身につける(着る)ーー>笠身に着る ーー>笠に着る
< 恩に着せる>の意味としては
ネット辞典では
”
恩を施したことについて、ことさらにありがたく思わせようとする。
imidas,jp
親切めかしたことをして、相手が自分に対して恩を感じざるをえないように仕向ける。
”
とかなり露骨、辛辣な解説だ。
恩を売っておく ‐ 恩返しを期待して恩を施しておく。
一回きりの場合もあるが、小さな恩を継続してほどこしておく。<置く>にこの継続の意がある。
ところで、以上のほかに
恩をあだで返す
という言い方がある。この<あだ>もやっかいな言葉で、次回のポストで取り上げる。
sptt
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