Tuesday, February 3, 2026

<すごい>と<すさましい>

<すごい>、あるいは、もっとくだけて<すげー>は良く使う。程度がはなはだしい様子におどろいたた時に使うようだ。

これはすごい。
それはすげー。
すごい奴だ (すげー奴だ )

で形容詞。副詞は<すごく>。すごくいい。さらには<ものすごく>というのもある。

関連する語に<すごむ>、<すごみ>があるが、比較的新しい語だろう。

<すごい>の古語形は<すごし>。

 学研全訳古語辞典  

すご・し 【凄し】

形容詞ク活用

① 気味が悪い。

出典源氏物語 若紫

「霰(あられ)降り荒れてすごき夜のさまなり」

[訳] あられが荒々しく降り、気味が悪い夜のようすである。

② もの寂しい。ぞっとするほど寂しい。

出典更級日記 かどで

「日の入りぎはの、いとすごくきりわたりたるに」

[訳] ちょうど日の入りのときで、たいそうもの寂しく、霧が一面にたちこめているときに。

③ 殺風景だ。冷ややかだ。

出典紫式部日記 消息文

「艶(えん)になりぬる人は、いとすごうすずろなるをりも、もののあはれにすすみ」

[訳] 情趣本位が身についてしまった人は、ひどく殺風景でなんということのないときも、しみじみとした情趣をもとめ。◇「すごう」はウ音便。

④ ぞっとするほどすばらしい。

出典源氏物語 若菜下

「おどろおどろしからぬも、なまめかしく、すごくおもしろく」

[訳] (太鼓が入らず)仰々しくないのも、優雅で、ぞっとするほどすばらしく趣があり。

 

 「日の入りぎはの、いとすごくきりわたりたるに」

「艶(えん)になりぬる人は、いとすごうすずろなるをりも、もののあはれにすすみ」

 は感心するほど素晴らしい日本語だ。

 

いかにもやまとことばらしいのに<すさまじい>がある。 これはれっきとした古語<すさまじ>由来で、この<すさまじ>意味の変遷は複雑だ。

学研全訳古語辞典 

すさま・じ 【凄じ】

形容詞シク活用

① おもしろくない。興ざめだ。しらけている。

出典枕草子 木の花は

「梨(なし)の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず」

[訳] 梨の花は、まったくおもしろくないものとして、身近には取り扱わない。

② 寒々としている。殺風景だ。情趣がない。

出典徒然草 一九

「すさまじきものにして見る人もなき月の」

[訳] 殺風景なものとして見る人もない(冬の)月が。

③ 冷たい。寒い。

出典平家物語 六・紅葉

「風すさまじかりける朝(あした)なれば」

[訳] 風が冷たかった朝なので。

④ ものすごい。激しい。ひどい。

出典保元物語 中

「すさまじき者の固めたる門へ寄せ当たりぬるものかな」

[訳] ものすごい者が守っている門に攻めてきてしまったものだな。

 

さて現代語の<すごい>と<すさましい>だが、<すごい>は言葉が短いこともあって<驚き>が優先するようだ。いいことにも悪いことにも使われる。

すごくいい、すごく悪い

が普通の言い方だが

<すごい、いい>、<すごい、悪い>とも言う。こちらの方が強調度が強いか? この場合<強調>の副詞になっている。

<ひどい>も<すごい>に似たところがる。

ひどい
ひでー
ひどく

それはひどい、ひでー
ひどい奴だ。ひでー奴だ

今の状況はひどく悪い。

はいいが、

今の状況はひどくいい

はまだだめにようだ。だがそのうち、<すごく>のように、中立的な強調>の副詞になるかもしれない。

英語では  

terrible が terror (恐れ) 由来で、本来は<恐ろしい>だが、意味は拡張して<すごい>、<ひどい>、terribly<すごく>、<ひどく>で強調>の形容詞、副詞なっている。普通は否定的な内容だが、肯定的な意味でも使われることもある。

terrific も terror (恐れ) 由来だが、こちらの方は肯定的な意味で使われる場合が多い。<すばらしい>。

His music performance was terrific.

 

中国語では<厉害>が <すごい>、<ひどい>に相当。<>の字があるが、わるい場合だけでなく、いい場合にも使われる、<すばらしい>。

 

広東語では<犀利>(sai1 lei6) という。これも肯定的な内容でも否定的な内容でも使われる。



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