少し前に<楕円曲線(数学)解説のやまとことば>というのを書き始めたが、まとまるまでの1/10にもならずにほうり投げている。何度か読み返しているが、先へ進む気力がなかなか出てこない。最近何度か読みかえしてみたがはじめの方に
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楕円曲線は、代数幾何学的には、射影平面 P2 の中の三次の平面代数曲線として見ることもできる。より正確には、射影平面上、楕円曲線はヴァイエルシュトラス方程式あるいはヴァイエルシュトラスの標準形
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というのがある。
むずかしそうだが、この式と関連して<楕円曲線(数学)解説のやまとことば>の出だしで
<楕円曲線>はフェルマーの最終定理 (Simon Singh, 青木 薫訳、新潮文庫)のなかででてくるが、これがわからないとこの本の意味が半分くらい解らないと言っていい . . . .
と書いたが、フェルマーの最終定理 のなかでは楕円曲線の紹介として
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”楕円曲線” と言う名前は誤解をまねきやすい。というのも、それは楕円でもなければ、日常的な言葉の意味では曲線でもないからである。楕円曲線とは、次のような形をもつ方程式のことだ(訳注
有理数を係数とする変数変換をほどこしてこの形になればいい)。
y2 = x3+ ax2+ bx + c (a, b, c は任意の整数)
楕円曲線と言う名前は、かつてこの形の方程式が楕円の周や惑星軌道の長さなどを測るために使われたところからついたものである。しかし本書では誤解を避けるため、楕円曲線ではなく、”楕円方程式” と呼ぶことにする。
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というくだりある。
さて内容は今もよくわからないが、ここを引用したのはヴァイエルシュトラスという数学者がでてくるからだ。 ヴァイエルシュトラスは知る人ぞ知る大人物で、ここにあるように楕円曲線に深く関係しているが、これとは別に<一様収束>という収束概念を作りあげた人物のようだ。時々頭をかきかき四苦八苦しながら読んでいる The Calculus Gallery : Masterpieces from Newton to Lebesgue (William Dunham) という本の中ではCalculus (微積分)に関連してこの<一様収束 (uniform convergence)>は革命的なアイデアとして紹介されている。
さて<一様(uniform)>のやまとことばは何か?
これは<そろい>でいいだろう。
みなそろってxxする勢ぞろい
そろい踏(ぶ)み
おそろいの制服
と言った常用句がある。また上の例からすると<そろい>は形容詞にも名詞(体言)にもなる。副詞形<そろって>だ。収束を考えると
幼稚園児たちがそっろてひとところに集まる。幼稚園児たちがそっろて一列にならぶ。
様子が<一様収束>に似ている。したがって<そろい収束>になる。だがこれは正確にいうとヴァイエルシュトラスの<一様収束>ではなくその前の各点収束(pointwise convergence)になるだろう。どうも<そろい方>に違いがあるようだ。Wikiの<一様収束>の出だしは
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一様収束
数学の一分野である解析学において、一様収束(いちようしゅうそく、英: uniform convergence)とは、各点収束よりも強い収束概念である。関数列 (fn) が極限関数 f に一様収束する (converge uniformly) とは、fn(x) が f(x) へ収束する速さが x に依らないということである。
連続性やリーマン可積分性といった性質は、一様収束極限には引き継がれるが、各点収束極限に引き継がれるとは限らない。これは一様収束の重要性を浮かび上がらせている。
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となっており、正確には<fn(x) が f(x) へ収束する速さが x に依らないということである>のところをやまとことばに入れないといけないのだ。The Calculus Gallery ではこのところを簡単な一行の数式(不等式)と言葉(英語)でうまく、わかりやすく説明している。
次は<収束 (convergence)>のやまとことばは何か?
収束は文字通りでは<収(おさ)め束(たば)ねる>で<取り集めて(まとめて)束ねる>、<束ね収める>とすると<束ねてひとつにまとめる(集める)>とでもなるか。あとの方が<収束>に近い。また収束(しゅうそく)は同じ発音で似たような意味に<終息>がある。終息は突然終わる(息のねが止まる)ではなく段々終わっていく、終わりに近づいていく(息のねが弱くなっていく)といった感じで収束の意に似てている。収束は場合によっては<収れん、収斂>と言ったり書いたりする。<斂>の字は中国系ネット辞書では
《說文》:「斂,收也。从攴僉聲。」
となっており、<斂=收>でくわしい説明になっていない。
領収書
集金 - 収金でもよさそう
収集 - これは<斂=收>と同じく<集=收>になるだろう。
<一か所に集(あつ)まる>あるいは<一か所に収(おさ)まる>は<収束>に近い。数学用語で<近似する>というのがあるが、これも<収束>に近い。
< おさまる>をコンピュータワープロでは
収まる、納まる、治まる、修まる
と出てくる。違った漢字を使って区分するようだが、区分は明確ではない。もともとは平仮名で書けば、あるいは実際言ったり聞いたりする時はやまとことば<おさまる>の一語だ。慣用的な言い方を拾い出すと
落ちつくところにおさまるこれですべて丸くおさまる。
たくさんあるがひと箱におさまる。
風がおさまる。
騒ぎがおさまる。
混乱がおさまる。
腹の虫がおさまらない。
それではおさまりがつかないだろう。
さいわい今日は腰の痛みがおさまっている。
この国はいまは問題が山積しているが昔はよくおさまっていた。
国王(社長)の座におさまる。
このようにいろいろな意味で使われると言葉の意味に反して<おさまる>は<おさまりがつかない>ようだが、共通項は見つけられそうだ(別途検討にしておく)
<納まる>は<納入される>で<税金、年貢(ねんぐ)を納める>の他動詞<納める>にくらべると使用頻度は少ない。
国が<治まる>は国がひとつにまとまる。<国を治める>のように他動詞で使うのが多そうだ。
<痛みがおさまる>は治療の字からは<治(おさ)まる>でもよさそうだが<終息(終わる)>でもよさそう。<風が、騒ぎが、混乱がおさまる>も<終息(終わる)>でもよさそう。
<修まる>も他動詞<修める>が主に使われ、<学業を修める>で<身につける>。今はあまりはやらない<身を修める>というのがあるが、これはいかえると<修身>で中国(哲学)由来で意味は<道徳的に合格になる>といったところだ。
さいわい自動詞の<納まる>、<修まる>がほとんどつかわれないので自動詞<収まる>はあまり意味が広がらずに<ひとところにあつまる>、<ひとところにまとまる>と言った意味にかなり限定される。
落ちつくところにおさまる
たくさんあるがひと箱におさまる
という言い方はかなり<収束>の意味を表わしている。 <丸くおさまる>、<おさまりがつかない>はおもしろい表現だがこれも別途検討。
<集(あつ)まり>は集合のやまとことばどしてすでに使っている。<束(たば)ねる>は<ひとつにまとめる>に近い。これは他動詞。<束ねる>の自動詞はないようで<束になる>といった表現になる。<束になってかかってこい>という慣用表現がある。<束になる>は<まとまる>に近い。
以上から収束のやまとことば候補として
収束 =まとまり
上で < 一様収束><そろい収束>としたので<一様収束>のやまとことば候補として
一様収束 = そろいおさまり(第二候補:そろい近づき。第三候補:そろいまとまり)
としておく。
<そろい>をつかわないと、ここでは説明しないが
まるめおさまり (まるめ=まるめて)まとめおさまり (まとめ=まとめて)
が考えられるが、<一様>の感じがでない。
少し古いが<なべて>という言葉がある。<おおよそみな、すべて>と言った意味だ。<おしなべて>は<ならすと>、<平均すると>と言った意味だ。これを使うと
なべおさまり、おしなべおさまり
だがこれも<一様>の感じがでない。
<追加> 一様ノルム
<一様収束(数学)>に関連して<一様ノルム(uniform norm)>を取り上げる。
数学や物理になじみがない人にはノルム(norm)は聞きなれないかもしれないが、ごく大雑把に言って<ノルム>とは<距離>のことだ。数学では考え方、そして決め方で<距離>にもいろいろある(相当常識離れしたものが多い)。
Wikiの<一様ノルム(uniform norm)>の解説は日本語版の方が少し長く、最後の部分をの除けば日本語版のほうが丁寧な解説だ。だが以下に引用する最後の部分は日本語版の部分はほぼ英語版の翻訳で、なじみの少ない翻訳語が多くわかりにくい。
日本語版
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一様構造 (この語は英語伴にない)
二変数関数
が成り立つことである。この距離位相について閉集合および閉包を定めることが出来る; 一様ノルムについての閉集合は一様閉と呼ばれ、同様に閉包は一様閉包と呼ばれる。関数からなる集合 A の一様閉包は、A 上の一様収束する関数列により近似されるようなすべての関数からなる集合である。例えば、ストーン=ワイエルシュトラスの定理の主張を「区間 [a, b] 上のすべての連続関数からなる集合は、[a, b] 上の多項式すべてからなる集合の一様閉包である」という形に述べることができる。
”
わずらわしくなるが英語版(末尾参照)の英語をカッコ内にいれると
二変数関数(binary function)
は、ある特定の定義域(a particular domain)上のすべての有界関数(bounded functions)からなる空間(space)(および、その任意の部分集合=and,
obviously, any of its subsets)上の距離(a metric)となる。関数列(sequence) {fn : n = 1, 2, 3, …} がある関数 f に一様収束する( converges uniformly)ための必要十分条件(if and only if
)は
が成り立つことである。この距離位相(this metric topology)について閉集合(closed sets)および閉包(closures of sets)を定めることが出来る; 一様ノルムについての閉集合(closed sets in the uniform norm)は一様閉(uniformly closed)と呼ばれ、同様に閉包は一様閉包(uniform closures)と呼ばれる。関数からなる集合 A の一様閉包(The uniform closure of a set of functions A)は、A 上の一様収束する関数列により(by a sequence of uniformly-converging functions on A)近似されるような(can be approximated)すべての関数からなる集合((the space of all functions)である。例えば、ストーン=ワイエルシュトラスの定理の主張を「区間 [a, b] 上のすべての連続関数からなる集合(the set of all continuous functions on )は、[a, b] 上の多項式すべてからなる集合(the set of polynomials)の一様閉包 the uniform closure )である」という形に述べることができる。
なじみのない日本語
定義域-domain
空間(および、その任意の部分集合)-数学上の<空間>は往々にして集合のことだ。
および、その任意の部分集合=and, obviously, any of its subsets
は英語を参考にすれば<(したがって、その任意の部分集合も)>となる。
閉包(へいぽう)-closures of sets。日本語の方には sets が抜けている。正確にはここは<集合(複数)の閉包> で、こうしない意味がとれない。閉包(closure)の語はまだ認知されていないだろう。だから意味がとれない。閉包は文字通りでは<閉じ包む>でこれまた何のことだかわからない、<畳み込み>という用語があり、これは convolution の訳語。これは<畳み込む>作業のことで<畳み込まれた>結果ではない。一方閉包(closures(of sets))は<閉包された>結果の状態だろう。 閉包のやまとことばは<包み閉じられた、込まれた状態>になりそうだが、言葉としては変なので<包み閉じ>、<包み込み>としたらどうか。
<一様ノルムについての閉集合>も正確には< 一様ノルム内の閉集合>としないといけない。<閉集合>は<一様ノルム>集合の中にあるのだ。
すべての関数からなる集合((the space of all
functions) - ここはspace が集合と訳されている。
最後の最後の部分
”
例えば、ストーン=ワイエルシュトラスの定理の主張を「区間 [a, b] 上のすべての連続関数からなる集合は、[a, b] 上の多項式すべてからなる集合の一様閉包である」という形に述べることができる。
”
がおもしろそうなところだが、ここでまたヴァイエルシュトラスが登場してくる。大人物のわりにヴァイエルシュトラスがなじみがないのは名前が長すぎるからだろう。縮めて<ヴァイシュト>としたらどうか?こうしてもドイツ人らしい名前はたもたれる。<XX-ヴァイシュトの定理>となり、言いやすくなる。
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末尾
英語版
The binary function
is then a metric on the space of all bounded functions (and, obviously, any of its subsets) on a particular domain. A sequence { fn : n = 1, 2, 3, ... } converges uniformly to a function f if and only if
We can define closed sets and closures of sets with respect to this
metric topology; closed sets in the uniform norm are sometimes called uniformly closed and closures uniform closures.
The uniform closure of a set of functions A is the space of all
functions that can be approximated by a sequence of uniformly-converging
functions on A. For instance, one restatement of the Stone–Weierstrass theorem is that the set of all continuous functions on is the uniform closure of the set of polynomials on .
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