以前に<たくさん>の語源(語源不詳)を考えて書いたことがあるが、<たくさん>と似ておおいに非なる言葉に<たいへん>がある。<たいへん>の語源は語源というほどのことまもなく漢語の<大変>でほぼ間違いないだろう。<大変(たいへん)は漢語の意味を意識しないでたいへんよく使っていて、やまとことばと言えるくらいだ。
1)大変(たいへん)失礼しました。
この<大変(たいへん)>はもうやまとことばだろう。この大変(たいへん)は動詞<失礼する>にかかかる副詞で程度、大きな程度をあらわしている。英語では very much, so much に相当する。
大変(たいへん)ありがとう(ございます)。
も同じようだが、何にかかるのか? 大変<ございます>はおかしく、<ございます>はなてくもいいので<ありがとう>にかかることになる。<ありがとう>は<ありがたい(ありがたし)>で形容詞だ。副詞は形容詞も修飾するので文法的には問題ない。最近は変な日本語が公式の場やネット上で使われているが
うれしいです。悲しいです。
大変(たいへん)ありがたいです。
は聞きずらい。
大変(たいへん)ありがとうです。
はもちろんダメだ。
<です>はいらない。だがなぜか<ございます>ならいい。
うれしゅうございます。
悲しゅうございます。
大変(たいへん)ありがとうございます。
2) これからが大変だ。
この<大変>もほぼやまとことばになっている。だが1)の大変(たいへん)とは違う。副詞としてかかるべき動詞や形容詞がなく、問題はあるが断定の助動詞といわれている<だ>で断定されているので
体言(名詞)の<大変>。言い換えると<大変であること>、<大変なこと>になるが
これからが大変であることだ。
はおおいにおかしい。
これからが大変なことだ。
もまだおかしい。
そうすると、この<大変>はなにか。考えられるのは<たいへんなxx>の<xx>が省略されているとみて、この大変は1)の<程度、大きな程度をあらわす>大変(たいへん)とする。すうすると、省略されている<xx>は何かということになる。
<xx>はおそらく、問題、困難(こまりごと)、障害(さまたげごと)、難儀(つらいこと)、苦労(くるしいこと)。実質的には同じだが、最近は見方を変えた挑む(いど)むべき、立ち向かうべき<挑戦>とい言葉がはやっている。なぜか<問題>の適当なやまとことばがみつからない。この<問題>は question ではなく problem だ。question も problem も解決すべきものなのだが、question は解(と)いたり、答えたりできるが problem は解いたり、答えたりできないところに違いがある。 question は質問とも訳される。質問と問題ではおおいにことなる。質問は<たずねごと>、<問い合わせ>というやまとことばがある。
問題のやまとことば候補
a)こまりごと <こまった、こまった>といって頭をかく。
人生相談所の看板には<こまりごと、やまみごと相談>とある。
b)よわりごと <つよい>の方は<<つよる>という動詞がない。<よわった、よわった>といって頭をかく。また<よわりめにたたりめ〉という言い方がある。<たたりごと>は問題というよりは天災か。
c)さまたげ
3)大変なことになった。 (関西では<えらいことになった>というか?)
この<大変>はまだ漢語の意味<大変=大きな変化>がまだ残っているようだ。変化はモノゴトが順調に、問題なく進んでいるのを妨(さまた)げる。大きな変化は大きく妨げることになる。これが大変のもとの意味だろう。2)に関連するが
大変なことになった。
は
大変な問題になった。
でもよさそうだが<こと>ほどの凡用性はない。 <大変な問題>は<大きな問題>より<さらに、もっと大きい問題>のように聞こえる。これまた見方を変えると、<変化>はモノゴトが順調に、問題なく進んでいるのを妨(さまた)げるが、失敗と同じく<改善、進歩の>母だ。したがって<大変なこと>はたいして恐れるとことはない。
ところで、以上の文では意識して<おおいに>というやまとこばを使っている。関西版の<えらく>でもいいだろう。
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