Friday, January 24, 2025

<しかる>、<なじる>の語源

<しかる>は<叱る>と書くが、語源が見つからない。叱咤激励の<叱咤 (しった) >、叱責 (しっせき) の<叱>が関連ありそう。

現代北京語では<叱责>はほとんど聞かない、使われない書面語だろう。

叱责>の<叱>は chì と発音するが、 同じ chì の発音で<>の字があり、こちらの方は<斥责>という言葉があり。これはそこそこ使われているようだ。<斥责>の baike-baidu の解説は
 
斥责 chì zé。指用严厉语言指责别人的错误或罪行,偏重于严辞指责,不同于“叱责”。
 
で最後に<叱责> が出てくる>。 baike-baidu の叱责>の解説は
 
叱责 chì zé 偏重于大声喝叱,强调声音大。例如“你对他要有点耐心,不要总是大声叱责。”“即使他做错了,也不应该那样高声叱责,那太伤人了。”
 
斥责>は簡容ネット中英辞典では
 
to scold 
 
と出てくる。 
 
一方、古い発音を残しているといわれる広東語では<叱责>の>、 <斥责>のはいづれも綴りでは chik, cik となるが、実際の発音は <six シックス>の<最後の<ス>がない、促音の<シック>が近い。これから
 
シック ー> シックある ー> シッかある ー> しかる
 
の線が出てくる。 だが、これはかなり無理がある。純やまとことばからでは

<しかあれ>と<しかる>ことができないわけではない。

 
現代北京語では<骂>が<叱る>に近い。この<骂>は口語で、日常頻繁に使われる。四声練習の
 
妈mā、麻má、马mǎ、骂mà
 
の<骂>だ。広東語では<骂>は使われず
 
鬧 naau (ナウ)
 
が使われるようだが、<しかる>よりは北京語の<>に近い。 大体大声を出すのだ。
大声を出して怒 (おこ、いか) る。
 
 
英語では to scold 以外に

to blame - 責める
to complain  - 文句を言う

がある。

<しかる>、<しかられる>は子供のころはよく聞き、かなり早く覚え、使い出す日本語だろう。大人になると<しかる>、<しかられる>は大人げないためか、使用頻度は減るようだ。
 
類語に<なじる>があるが、漢字では<詰る>と書く。ほとんど使わないが、<難詰する>、<<詰問する>という語がある。<なじる>の方は、<しつこく過失、間違いの責任を厳しく問いただす>感じで、やや陰鬱 (いんうつ) で<ねちねち>した感じだ。大抵は継続的。一方<しかる>は、ごちらかというと<からっと>していて<問いただす>感じは薄い。大抵は短期的だ。<なじられる>よりは<しかられた>方がよさそう。<なじる>の語源をチェックしたが、こちらもよくわからない。
 
<なでる、なぜる、撫でる>というやまとことばがあるが、 <なじる>とは意味がかなり違う。<なずむ、泥む>というやまとことばもあるが、<暮れなずむ>というめったに聞かない言い方があるが
 
日が暮れそうで、なかなか暮れないでいる。
物事がなかなかうまく進まなくなること
 
という意味のようだ。<なじる>と関連がないことはない。
 
漢語の難詰は<なんきつ>と読む。また非難 (ひなん) という言葉もあり

(なん) ずる -> 難(なん) じる ー>なじる
 
の単純変化ではないか?


 
sptt

 

Thursday, January 23, 2025

責める、攻める

<責任>は社会生活、会社生活はもとより、学校や家庭でも重要な働きをしている。<責任のがれ>は非難される。したがって

私が責任者です。
私が全責任をとります。
わが社は<責任のがれ>はいたしません。

などと言う。

一方<責任>の<責>は、日本語では <責める>に当てられている。<せめる>は<責める>以外に<攻める>がある。 <攻める>、<責める>は似たようなところがあり、語源は同じだろう。 <攻めたてる>、<責たてる>。さて<責める>の方だが、類語としては

なじる (口語)
とがめる

責めさいなむ

漢語では

非難する

英語は to blame が<責める>に近い。

 Don't blame me so much..

そんなに責めないでくれ。(故意にやったわけではない、誤解がある、 何かのまちがいだ)

<責め>がきついと、人によりけりだが

 悩んだり、苦しんだり、<いじめ>ととったりする。

<責める>の中国語は baike-baidu では

责备 zé bèi,指埋怨他人或自责

to blame

と出てくるが<埋怨他人、to complain other(s)>、<自责 to complain  oneself>とあるので、<責める>とズレがあるようだ。baike-baidu にある近义词に

责骂、责问、斥责、训斥、呵斥、责怪、喝斥、谴责、指责、批评 

がある。譴責 (けんせき) 、批评は日本語になっている。

斥>の字が出てくるが 斥(chì ),本义指驱逐(追い立てる)   で<攻める>に近い。<斥责>は<責、責任>を追及する。近义词の方は<責める>の意に近い。责问、指责の意味も容易に想像がつく。 

反义词

称誉, 赞美, 表扬, 称赞, 原谅, 安慰, 夸奖, 夸人

<赞美>は日本語になっている。<原谅>は<ゆるす>。

上で示した

そんなに責めないでくれ。(故意にやったわけではない、何かのまちがいだ、誤解がある)

は,最近携帯でよく見ている中国語字幕付き中国ドラマの中でしばしば字幕に出てくる。

别怪我 (不是故意的,有误会)

特に<責任のがれ>の言葉ということではない。 

<别怪我>の<>がクセモノなのだが、これは前回のポスト<怪我の功名>で少し説明した。

 

sptt

怪我の功名

<怪我の功名>という言い方がある。聞いたことはあるが、意味がよくわからなかったので、使ったことはない。<けがをして、(思いがけずに) 功名を得る>という意味の<けが>を誤解していいたのだ。例えば<ころんで、けがをして、(思いがけずに) 功名を得る>と何となく理解していたのだ。

今回、中国語の<不怪我>、<你怪我> の意味を調べる機会があり、でネットサーチすると日本語の<怪我、けが>が出てきた。<ころんで、けがをする>の<けが>以外に<過失、誤り>の意があるのだ。 

ネット辞典( https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%80%AA%E6%88%91/) の解説は

[名]
(スル)《「怪我」は当て字で、動詞「けがる」の語幹からかという》

  1. あやまってからだに傷を負うこと。また、その傷。負傷

  1. 思わぬ過ち。過失損失。「慣れないことに手を出して—をする」

思いがけない事態不測の結果。

  1. 「—と申しながら、面目もござない」〈咄・きのふはけふ・上〉

となっている。例文の

「慣れないことに手を出して怪我をする」

というような言い方はしたかもしれない。

《「怪我」は当て字で、動詞「けがる」の語幹からかという》

も新発見だ。「けがる」は<けがれる>と関連があろう。<けがれる>は自動詞で、少し改まった言い方で、日常語は<よごれる>。

別のポストで書いたが、<けがをする>と言う言い方は特殊で、<けがをしたくて><けがをする>ケースはごくまれ。 <財布をなくす>、<アキレス腱を切る>も同類。

偶然の一致だが

<けがれる>、<よごれる>、<けがす>、<よごす>は<不怪我>、<你怪我>の<怪我>と関連がある。

别怪我 ー 私を責めないで (くれ) 。 場合によっては私をうたがわなないで (くれ) 。
你怪我 ー あなたは私を責めている。
不怪你 ー あなたを責めているわけじゃない。 

と言う意味で、<怪>に<不当に責める、責任を負わせる>の意がある。<不当に責める>はある意味で<けがす>だ。

中国語の<怪>は<奇怪>、<很奇怪> としても日常よく使われる。<おかしい、変だ、わけがわからない>という意味。

日本語では<あやしい>を<怪しい>と書く。また妖怪の<怪>だ。


sptt

 



ほめる、けなす

 前回のポスト<ほまれ>で動詞<ほめる>についてふれたが、<ほめる>の反義語は<けなす>だろう。<けなす>の名詞 (体言) 形 は<けなし>だが、なぜか<ほまれ>ほどには独立して使われない。<ほめる>、<けなす>は次のように対比できる。

ほめる ー xxのことを良くいう
けなす ー xxのことを悪くいう

英語は、受験英語などでは

to speak well of
to speak ill of 

が出てくるが、聞いたことはない。もっと直接的に

to say / tell good things of (about)
to say / tell bad things of (about)\

で間に合うだろ。

to praise
to criticize

を使ってもいい。

上の対比は、多くの場合は

ほめる ー xxのことを実際よりも良くいう
けなす ー xxのことを実際よりも悪くいう 

と言える。これがキーコンセプトだろう。程度によりけりだが<うそをつく>に通じるところがある。

<ほめる>の方は

ほめあげる
ほめそやす
ほめたたえる
ほめちぎる

という言い方もある。 <ほめる>の類語、関連語としては

おだてる
もちあげる

漢語は改まった時用のようで、日常はあまり使わない。

称賛する

 

<けなす>の方は、類語、関連語として

やまとことば

類語
くさす (関西方言か)

関連語

あげつらう
あざける (嘲笑する、侮辱する)
おとしめる
ケチをつける
さげすむ (侮辱する)
せめる
そしる
とがめる
ののしる
見下 (くだ) して言う
見下 (さ) げて言う
悪口をいう

これ以外に漢語以来の

中傷する
批判する
誹謗する

名誉棄損

がある。<ほめる>よりは格段に豊富で、使用頻度も高い。

 

sptt


Monday, January 20, 2025

ほまれ

前回のポスト<羞耻と恥>に続いて、反義語とも言える<ほまれ>をチェックしてみる。<羞耻と恥>と<誉>は 雲泥の差だ。

<ほまれ>は響きのいいやまとことばで、古語の動詞<ほむ>由来だ。<ほむ>は今は<ほめる>になっていることもあって、すぐには<ほめる>ー><ほまれ>に結びつかない。最近携帯でよく見ている中国語字幕付き中国ドラマの中で、使われる場面が少ないが、<ほまれ>に相当する中国語はまず<荣 (栄) 幸>だろう。<荣幸>は róng xìng と発音する。これは比較的よく字幕に出てくる。だが大体は祝賀会のような場面でだ。<荣幸>は<羞耻と恥>と違って、日本ではなじみがない。<ご光栄>の<光栄>とか逆さにした<栄光>は仲間だ。偶然の一致かもしれないが<おほめ>とは言うが<ほめ>とは普通言わない。<荣幸>に次いで、時々だが出てくるのは<荣辉>。中国携帯電話ブランドの<Honor>は<荣辉 róng huī>だ。<誉 (ほまれ)>の字は、まだドラマで出くわしていないが、日本語になっているが<荣 (栄) 誉 róng yù>があるようだ。

<羞耻と恥>の方は不満、不安が心に内在するが<ほまれ>は心に満足が内在する。


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