Wednesday, September 30, 2020

黒ずむ、なずむ、はずむ -拡散と波動


<xx む>動詞をしつこく調べているうちに大発見をしたので、忘れないうちにまとめておく。<xxずむ>動詞に大和言葉にかくれた秘密があるようなのだ。まずは<xずむ>、<xxずむ>の語を調べておく。


くろ(黒)ずむ
(かすむ、くすむ)
しずむ
すずむ    <すずむ>は形容詞<すずし>関連語だろう。
たたずむ     立ち+ずむ(すむ)
なずむ
はずむ
ひずむ

<ずむ>は単独では意味をなさないが<すむ>は

住む
澄む
済む

がある。こじつけ的だが

住む: 人が<落ちついて生活する>。 <たたずむ>の<ずむ>はこの<すむ>か?

澄む: <黒ずむ>の反対現象で<黒ずんだ水>が黒が抜けて澄んだ水になる。<すむ>に濁点(濁り)がついて<ずむ>。これは偶然の一致だろうか。

済む: すべきことがなされる。成就。

以上のうち<しずむ>、<ひずむ>もおもしろいが、<黒ずむ>、<なずむ>、<はずむ>を中心に話を進める。すでに発見者がいるかもしれないので語源をネットでチェックしておく。

https://www.weblio.jp/content

三省堂 大辞林 第三版

1)黒ずむ 

くろ ず・む, 黒ずむ】

黒っぽくなる。黒い色を帯びる。 「すすで天井が-・む」 「 - ・んだ顔」

「黒ずむ」に似た言葉

類語 :くすむ、黒む、黒める、黒ばむ

” 

類語に :<黒める>があるが、<黒ずむ>は自動詞 <黒める>は他動詞。<黒まる>ならいい。

黒っぽくなる。

黒い色を帯びる。時間の経過を考慮すると ->黒い色を帯びてくる。

類語では、くすむ、黒(くろ)む、黒ばむ、はみな<xx む>動詞だ。<くすむ>が

く+すむ

であるとこのポストでは関係があることになる。似たような語に

くすぶる、かすむ

があるので< く+すむ  > は考えにくい。もとに戻って

黒っぽくなる。黒い色を帯びてくる。

は始めは黒くなかったものが時間の経過とともに<黒っぽくなる、黒い色を帯びてくる>で黒い色の時系列変化ととらえることができる。<黒ずむ>は大体長い時間がかかることが想像されるが、短時間で視覚的にとらえようとすると

水がはいった容器に墨(汁)をたらし、墨が時間の経過ともに水に混ざって薄まりながら広がっていくことに似ている。これは溶解というようだが、やまとことばでは<(とけ)混ざり広がり>がよさそう。英語では

diffusion (動詞は to diffuse

という。 <(墨の水との)(とけ)混ざり広がり>をもう少し詳しく表現すると

墨の濃度が時間の経過とともに四方八方(たて、よこ、ななめ、正確には3Dなので、<上下に>を含む)に薄れていく現象で、やや高等数学になるが diffusion の方程式あるいは等式がある。 正確な用語は拡散方程式 (Wiki)。 (注)。末尾の(注)で解説する。

ところで<すみ(墨、炭)>の語源は不明のようだが、思い切って

くろずむ -> くろずみ ->すみ

というのはどうか?

<黒ずむ>は見方を変えると、透明の水が<黒くなっていく>ことをとらえた表現ということができる。さらには<黒くなった状態>もさす。この水は黒ずんでいる。この布のこの箇所は黒ずんでいる。

他の色はどうかというと

白 - 白(しら)む   <白ずむ>も可能だろう。

黄色 - 黄ばむ      <黄ずむ><黄色ずむ>も可能だろう。

赤 - 赤みをおびる、おびてくる(いく)。赤む。赤まる。 <赤ずむ>もなんとかなりそう。

 

2)なずむ

なず・む なづむ  【泥▽む・滞▽む】

進行がさまたげらる。とどこおる。難渋する。「暮れ-・む」 「句ニ-・ム日葡」 「海処(うみが)行けば腰-・む/古事記 中」

こだわる。執着する。後略

なれ親しむ。なじむ。 「都会悪風に-・まぬやう/羹 潤一郎」

④⑤

漢字の<泥む、帯む>を<なずむ>と書ける人はもちろん読める人もごくわずかだろう。

例文を見てもわかるように<なずむ >はすでに古語に近い。<暮れなずむ>は聞いたことがあるが、これまで意味は知らなかった。意味(暮れようとしてなかな暮れない)が分わかって聞いている人は多くないだろるう。ここでは①と③だけ取り上げる。

「句ニ-・ム日葡」 「海処(うみが)行けば腰-・む/古事記 中」

<句になずむ>は<言葉になずむ>(言葉がとどこおる)。<言いなずむ>は古風だ(古くさい)が通じるだろう。

海処(うみが)行けば腰-・む/古事記 中」  は

<海に入り難渋しながら進んだ時に>という解説(ネット)があるので、<腰なずむ>は<歩きなずむ>、<動きなずむ>といった意味だろう。

あまり自信はないが

行きなずむ - 行こうとしてなかなか行かない

取りなずむ  - 取ろうとしてなかなか取らない 

とはいえるだろう。聞く方も多分意味が分かるだろう。<なずむ>を<な+ずむ>とすると、前半の<な>は<なる>だろう。これまで例を言いかえると

暮れなずむ  - <暮れ(ること)>がなかなかならない。

言いなずむ - <言い(言うこと)>がなかなかならない。 
行きなずむ - <行き(行くこと)>がなかなかならない。 
取りなずむ   - <取る(こと)>がなかなかならない。 

<暮れなずむ>は時間が経過すると結局<暮れてしまう>が<言いなずむ>、<行きなずむ>、<取りなずむ >は時間が経過しても結局どうなるかわからない。

言う - 言わない 

行く - 行かない 行ったり来たりする、足(脚)を出したりひっこめたりする 
取る  -取らない  手を出したりひっこめたりする

この現象は、もう少し科学的(物理的)に見ると、<言う>、<行く>、<取る>に反対する力が働いて<言わない>、<行かない>、<取らない>となると言える。

進行がさまたげられる。とどこおる。難渋する。

とは反対する力が働いて進行がさまたげられる、とどこおる、難渋する。 

のことと言える。さらに話を進めると

次はこれらに対して<言う>、<行く>、<取る>の力が働く。そしてこのくり返しだ。これは初等数学の数式であらわせる。振動だ。いわゆるサインカーブになる。サインカーブは横軸を時間、縦軸を振幅とすると最大振幅(+)、最小振幅(-)の間を<行ったり来たり>する。末尾の(注)で再度解説する。

だが<暮れなずむ>と違って<落ち着くこと、ところ>がないように見えるが、結局は<落ち着くところに落ち着く>。この<落ち着く>現象は停止とも均衡(equilibrium)とも言える。

ところで<なる>が成就することとすると、<なずむ>はなかなか成就しないことだ。ところで、まやかしみたいになるが、この<成就>はやまと言葉にすると<すむ(済む)>だ。したがって、<なずむ>は<なりすむ>で<なすむ>で<コトが成る>になる。これは<なずむ>とは反対に近い。<ずむ>は<すむ>の濁音だ。だがこれは多分に<まやかし>だ。

なれ親しむ。なじむ。 「都会悪風に-・まぬやう/羹 潤一郎」  

<なじむ>は<なずむ>と似ていることもあって、混同がある。<なじむ>の<じむ>は<しむ ->しみる(染みる、沁みる)>由来だろう。もっともこの<しみる(染みる、沁みる)>も現象は diffusion (拡散)に通ずるものがある。

 

3)はずむ

次は<はずむ>。これが大発見。

” 

はず・む はづむ 【弾む】

( 動マ五[四] )

自動詞

 弾力のある物体が物にぶつかってはねかえる。 「このボールはよく-・む」

 喜び運動のため,呼吸鼓動激しくなる。また,うれしく気持ちうきうきする。 「息が-・む」 「電話の声が-・んでいた」 「胸が-・む」 「心が-・む」

 調子よく進む。勢いづく。 「久しぶり再会に話が-・んだ」

他動詞

気前よく多額の金を他人のために出す。 「チップを-・む」 「祝儀を-・む」

「弾む」に似た言葉

類語:跳ね上がる、跳躍、飛び跳ねる、飛び上がる、跳ねる

上記の類語に<はね上がる、飛びはねる、はねる>がある。<はずむ>の形成は

はねる + ずむ -> はね + ずむ -> はずむ

とする。 そうすると、<ずむ>を 

1)<黒ずむ>の時間の経過とともに四方八方(たて、よこ、ななめ)に薄れていく(拡散)現象

2)<言いなずむ>の<言う(言おうとする)><言わない>の反対する力が働いて進行がさまたげらる現象、そしてくり返しの振動現象

と関連づけられる。

<はねる>は上方に(人、動物、モノ、などが)<はね上がる>ことを指す場合が多い。<はね上がる>と最高点(頂点)をさかいに落ちて来る。これは高さがいったんは高くなるが、頂点をさかいに減少していく。少し無理があるが、これを言い換えると<はねが薄れていく(減っていく)>になる。

一方<はずむ> は上記のネット辞書の①にある<はねかえる>が第一義だ。<はね上がって、落ちて来た>人、動物、モノがふたたび<はね上がる>のを<はずむ>という。そして再び頂点をさかいにして落ちて来る。多くの場合この動きが繰り返される。これは<(言い)なずむ>の振動と似ている。そしてこの<はずみ>は長く続かず、いろいろな抵抗を受けて止まってしまうのが普通だ。この<止まってしまう>現象は上記のように停止とも均衡(equilibrium)とも言える。

以上が<黒ずむ>、<なずむ>、<はずむ>の<ずむ>の共通点、関連具合だ。 

古代人はどこを見て<はずむ>と言うようになったのか?

<はねがすむ(済む)>とすると 

1)<はね上がる>と最高点(頂点)をさかいに落ちて来る。

2)  <はね>は何度か繰り返されるが、長く続かず、いろいろな抵抗を受けて止まってしまう。

が考えられる。 

だが、<はずむ>現象で人の目が行くのは

上記のネット辞書の①にある<はねかえる>が第一義だ。

<はねかえる>時、ところだろう。これは<はねがすむ(済む)>では説明できない。むしろ<はね>が再び<始(はじ)まる>時、ところだ。この<始(はじ)まる>は昔は<<始(はじ)む>といっていた。<はじむ>と<はずむ>は一字違いで、しかも<じ><ず>は似かよった音だ。 

はねはじむ ‐> はねはずむ ー> はずむ

の変化は十分考えられる。だがこれは<似て非なるもの>だろう。 

おそらく、古代日本人はモノが<はねかえる>のを見て目に見えない力の働きを感じ、それを<はねずむ>と表現したのだろう。そうするとこの<ずむ>は何のことだかわからなくなる。 収拾がつかなくなってきたので、とりあえず収拾をつけておくと

上にあげた意味の候補のうちツジツマがあうのは

2)  <はね>は何度か繰り返されるが、長く続かず、いろいろな抵抗を受けて止まってしまう。

で、古代日本人の目はおおらかで、短時間の変化には向かず、このような現象を<はずむ>、すなわち

<はね>がくりかえしながら段々小さくなり、さらに進むと止まってしまう<済む> -> はねずむ

-> はずむ

 と言うようになったのではないか。

 

さて<はずむ>の名詞(体言)形は<はずみ>だが<はずみをつける>とか<はずみぐるま>という。

<はずみをつける>とは

勢いをあたえる、加速させる(ネット辞書)

<はずみがつく>は勢いがあたえられる、加速する)

で<力>が大いに関係している。力は目に見えないのでわかりにくいが、力と加速度の物理式は

Wiki


force)の、最も初等的な定義は質量加速度の積を力とするものである。

{\displaystyle {\boldsymbol {F}}=m{\boldsymbol {a}}.}
ここで F物体に働く力、m は物体の質量、a は物体の加速度を表す。

加速度は

運動方程式を x に関する2階の常微分方程式に書き換えることができる。
{\displaystyle m{\frac {d^{2}{\boldsymbol {x}}}{dt^{2}}}(t)={\boldsymbol {F}}(t).}


ここで質量 m定数とした。 

x に関する2階の>は正確には< x に関する(時間の)2階の>で時間(t)の2階微分が出てくる。末尾の(注)参照。

----ー

<しずむ>は<静む>関連がありそうだが<した(に)ずむ>も考えられる。池に落とした石は水の抵抗を受けながら重力に引かれて下に落ちていく。

<ひずむ>は力を受けてモノが変形することで、力と大いに関係がある。押しても変形するが引いても変形する。<ひきずむ>-><ひずむ>は考えられる。

-----

末尾の(注)


基本的な拡散方程式(等式)と
波動方程式(等式)は似かよっている。

拡散方程式(Wiki)

方程式は一般に以下のように書かれる。

{\frac  {\partial \phi }{\partial t}}=\nabla \cdot {\bigg (}D(\phi ,{\vec  {r}},t)\,\nabla \phi ({\vec  {r}},t){\bigg )}

ただし、{\vec  {r}}は位置、tは時刻、\,\phi ({\vec  {r}},t) は拡散物質の 密度(関数)D(\phi ,{\vec  {r}},t)拡散係数(2階のテンソル量)、ナブラ \,\nabla は空間微分作用素である。拡散係数D が定数ならば、方程式は以下の線形方程式に帰着される。

{\frac  {\partial \phi }{\partial t}}=D\nabla ^{2}\phi ({\vec  {r}},t)

D が他の変数に依存する場合方程式は非線形となる。さらに、D正定値対称行列であれば方程式は異方的拡散となる。 

  

波動方程式 (Wiki)

波動方程式(はどうほうていしき、: wave equation)とは、次の式で表される定数係数二階線型偏微分方程式のことである[1]

{\frac  {1}{s^{2}}}{\frac  {\partial ^{2}u}{\partial t^{2}}}=\Delta u

波動方程式は音波、水面の波紋、電磁波などの様々な振動・波動現象を記述する際に基本となる方程式である。s は波動の位相速度 (phase velocity) を表す係数である。 

 

上記では似かよっているところがよくわからないが

2 = Δ  

なので Δu は 2u になる。u scalar function u = u (x1, x2, …, xn; t) of a time variable t.

波動方程式の方は左辺に時間(t)の2階微分が出てくる。

 

以上の拡散方程式波動方程式の説明はすでにわかっている人が読めばわかるが、初めて出あう人は何のことだかわからないだろう。だが拡散と波動が同じような式になるのはおもしろい。

 

sptt


 

Monday, September 14, 2020

気味が悪い、いい気味だ

 

前回のポスト<高みの見物、細身の体>でごく簡単に<気味。気み、ぎみ>について書いた。

気みが悪い (<疲れぎみ>の<ぎみ>は<きみ>か?)

という言い方がる。この<気み>は<気味>ではおかしい。<気>に味覚はない。

さらに例をあげて検討してみる。 

<気味が悪い>と対称的なのは<いい気味>。

使う機会は限られていて

ざまーみろ! いい気味だ。

のように使う。大体子供の時期に使うことが多く、大人になるとほとんど使わない。

意味は<気味が悪い>の反対ではなく

好きでなない、嫌(きら)っているやつが何かに失敗したのを見たとき、といった特殊な状況で、かなりねじ曲がった心理から発話される。<いい気味>なのは<発話者>で発話者の心理、感情、思いをそのまま表現したもの、といえる。先に結論を述べることになるが、この発話心理は<いい>と表面上は肯定表現になっているが、実際は<あまり好ましくない感情>表現で否定的といえる。

さらに例をさがしてみる。 

下(さ)がり気味 - <のぼり気味、上(あが)り気味>とはいわず<のぼり調子>

成績が下がり気味、落ち気味  - <成績が上がり気味>とは言わない。

手もとの辞書に<あがり気味>の例があるが、これは(舞台や人前では)<上がり気味>ということだろう。 さらに手もとの辞書には

疲れ気味
あせり気味
あわて気味

があげられている。

疲れ気味 - <元気気味>とはまず言わない。
遅れ気味  -<早まり気味>とは言いそうだが、中立またはこれまた否定的な状況で、中立または肯定的な状況では<早まりそう>と言いそう。
負け気味 - <勝ち気味>とは言わない。

上に書いたが、<気>に味覚はない、ので<気味>は<気み>だろう。ではこの<み>は何か?ということになるが、これは前回のポストでで少し調べたが、分析が難しい。

<気み>は<気持ち>に似ているが、<気持ち>が

気持ちがいい
気持ちが悪い

と中立であるのに対して<気み>は

<気みが悪い>も <気みがいい>も(上述のように)、さらには<下がり気み>、<疲れ気み>、<遅れ気み>、<負け気み>と否定内容の表現に使われる。

<下がり気み>などの否定内容の表現は別にして<きみ、ぎみ>は

その傾きを示す(手元の辞書)

と説明されている。

<その傾きを示す>は意味深長で、数学でいえば微分の変化率に相当する。微分の理解で肝心なのは<変化そのもの、変化の量>ではなく、微分は変化率の極限ということ。数学の細かいことは別として、言語は、口から出まかせやウソもふくめて心理(気持ち)の表現でもあること(上記の<いい気味>がいい例)をふまえて<気み>や<み>を考える必要がある。<み>は語尾だが一語で<気持ち>や物理現象(落ちる、遅れる)の変化の傾きを示す、のではないか?

 

sptt






 

 


 

Sunday, September 13, 2020

高みの見物、細身の体

 

<高みの見物>はコンピュータワープロでこう出てくる。<高見の見物>ではない。一方<細身の体>はワープロでこう出てくる。<み>はよくわからない語尾だが意味がある。大体形容詞につく。<さ>と<め>という語尾もあるので並べて比較してみる。


高い - 高み - 高さ  - 高め
低い - 低み - 低さ  - 低め

深い - 深み - 深さ  - 深め
浅い - 浅み - 浅さ  - 浅め

遠い - 遠み - 遠さ - 遠め
近い - 近み - 近さ - 近め

大きい - 大きみ - 大きさ - 大きめ
小さい - 小さみ - 小ささ - 小さめ

多い - 多み - 多さ - 多め
少ない - 少なみ - 少なさ - 少なめ

長い - 長み - 長さ - 長め
短い - 短み - 短さ - 短め

速い - 速み - 速さ - 速め
のろい - のろみ - のろさ - のろめ

早い - 早み - 早さ - 早め
遅(おそ)い - 遅み - 遅さ - 遅め

暑い - 暑み - 暑さ - 暑め
寒い - 寒み - 寒さ - 寒め

あたたかい - あたたかみ - あたたかさ - あたたかめ
涼しい -  涼しみ -  涼しさ -  涼しめ (これは<xxしい>型形容詞。

熱い - 熱み - 熱さ - 熱め
冷たい - 冷たみ - 冷たさ - 冷ため

厚い - 厚み - 厚さ - 厚め
薄い - 薄み - 薄さ - 薄め

細い - 細み - 細さ - 細め
太い - 太み - 太さ - 太め

形容詞ではないが

やせた
太(ふと)った

がある。

暗(くら)い - 暗み - 暗さ - 暗め
明るい - 明るみ - 明るさ - 明るめ

強い - 強み - 強さ - 強め
弱い - 弱み - 弱さ - 弱め


ー----

白い - 白み - 白さ  <白(しら)む、(白まる)> - 白め
黒い - 黒み - 黒さ  <(黒む)、黒ずむ、黒まる> - 黒め
赤い - 赤み - 赤さ  <赤む、赤まる>  - 赤め
黄色い - 黄色み <黄み、卵の黄み> - 黄色さ - 黄色め
青い - 青み - 青さ - 青め

淡(あわ)い - 淡み - 淡さ - 淡め
濃い - 濃み - 濃さ - 濃(い)め   (酒の)コクはこの<濃い>由来

 ー----

甘い - 甘み - 甘さ - 甘め
辛い - 辛み - 辛さ - 辛め
塩辛い - 塩辛み - 塩辛さ - 塩辛め
しょっぱい - しょっぱみ - しょっぱさ - しょっぱめ
苦(にが)い - 苦み - 苦さ - 苦め
渋い - 渋み - 渋さ - 渋め

 ー----

たのしい - たのしみ - たのしさ - たのしめ <たのしむ>という動詞あり、<たのしみ>はこの動詞の連用形体言(名詞)用法。以下もこれと同じだろう。

うれしい - うれしみ - うれしさ - うれしめ   <うれしむ>はあまり使われない。

おかしい - おかしみ - おかしさ - おかしめ    <おかしむ>はあまり使われない。

悲しい - 悲しみ - 悲しさ - 悲しめ   <悲しむ>はよく使われる。

美しい - 美しむ - 美しさ - 美しめ    <美しむ>はほとんど使われない。

おもしろい - おもしろみ - おもしろさ - おもしろめ  <おもしろむ>は古語にはあるか。

おそろしい - おそろしみ - おそろしさ - おそろしめ  <おそろしむ>も古語にはあるか。

 -----

以上をざっと見ると<xxx さ>は問題なく、ほぼ完全な文法法則。意味は<程度>を表わすといっていいだろう。<xxx め>も大体OKで、意味は<比較して、現状、通常より xxx い>を表わすといっていいだろう。 <xxx め>も文法法則と言える。

さて<xxx み>だが、これは使えるのがかなり限られている。

高み - 高みの見物

低み - 手もとの辞書にはあるが(<低いところ>の意)聞いたことはない

深み - 深みにはまる、深みがある (深いところ)-比喩的

浅み - <浅いところ>は池、川、海では<浅瀬>というのが使われる。

あたたかみ - あたたかい<ところ>、対応 -比喩的

厚み - <厚み>がある。実際に厚さが大きい。<人間に厚みがある> -比喩的

細み - 細みのからだ。<細身のからだ>では<身>と<からだ>が出てきてなにか変だ。

明るみ - 明かるみに出る。暗いところとの比較がある。暗いところと明るいところがあり、そのうち明るいところ。

強み - 上と同じく、弱い、または平均的なところとの比較がある。全体では弱いところ、平均的なところ、強いところがあるがあり、そのうち強いところ。

弱み - <強み>と対称的になる。

白み - 卵の<白み>は<白身>でよさそうだが、<黄み>は<黄色身>とは言わない。<白み>は<白いところ>、黄みは<黄色いところ>。上の二つと同じく、卵には白いところと黄色いところがある。

<白みがかる>という表現がある。<黒み>は聞かないは<黒みがかる>という表現はある。話がこままくなってきたので、この意味の検討はは別のところでする予定。

赤み - 細み、細身と同じく魚や肉の<赤み>は<赤身>でもよさそうだが、赤、白その他の部分は一体になっていて、その<赤いところ(部分)>とも理解できる。 これを応用すると<あぶらみ>もとらえ方が違ってくる。

青み - <青みの肉>は聞かないが、<青みがかった>は聞く。

-----

甘み、辛(から)み、しょっぱみ、苦(にが)み、渋み

はよく使う。

甘さ、辛(から)さ、しょっぱさ、苦(にが)さ、渋さ

とくらべると、<xxx さ>が上記のように程度を示し

甘さ (辛(から)さ、しょっぱさ、苦(にが)さ、渋さ) - がたりない、過ぎる。

とよく使う。一方<xxx み>はすぐには説明がでてこない。使い方としては

甘み (辛(から)み、しょっぱみ、苦(にが)み、渋み) - がある、ない。

とよく使う。しかし

<甘さ> - がある、ない。
<甘み> - がたりない、過ぎる。

でも間違いではない。ではどこが違う?

味の形容詞は混乱があるようだ。<味>はやまとことばでは<あじ>と読むが音読みは<味覚(みかく)の<み>。これをあてはめると<しょっぱ味>を除けば

甘味、辛味、苦味、渋味

で湯桶読みになる。湯桶読み、重箱読みは基本的には例外。だから<湯桶読み>、<重箱読み>とわざわざ名づけられているのだ。何だかよくわからないやまとことば<み>とすれば

甘み、辛み、苦み、渋み

で湯桶読みではなくなる。つまりは漢字を使うが純やまとことばだ。

気みが悪い (<疲れぎみ>の<ぎみ>は<きみ>か?)

という言い方がる。この<気み>は<気味>ではおかしい。<気>に味覚はない。

 

とりとめがなくなっているが、さらに<み>をしらべてみると、上にもいくつか例を示したが、’動詞<xx む>の連用形とその体言(名詞)用法が<xx み>となる。

悲しむ -> 悲しみ

こばむ -> こばみ
なごむ -> なごみ

<赤める>、<赤まる>が昔<あかむ>だったとすると

赤む -> 赤み

となる。 これを<細み>に適用すると

 <細める>、<細まる>が昔<細む>だったとすると

細む -> 細み

となる。 これを<細む>の連用形の体言(名詞)用法とすると<細む>を体言(名詞)化したものになり、この場合は<細まること>、<細まった状態>と解釈できないか?


きりがないので、結論をいうと<細身の体>の<細身(み)>は<身(み)>でも、よくわからない<み>でもよさそうだ。結論が出ない、というのが結論。この<み>は文法的な観点からさらによく調べ、考えて sptt Notes on Grammar の方で気合を入れて書く予定。

 

 追記

今は便利なので(インター)ネット辞書の利用が多いが、従来の辞書にも効用がる。手もとの辞書(三省堂)の辞書で念のため<細身>を調べていたら、<細身>は<身>と漢字が使われ<幅がせまい>というような意味の解説がある。<細身の刀(かたな)>。ところがそのとなりに<細み>の解説があり、<細み>はなんと芭蕉(門下)の俳句世界の境地の一つなのだ。<わび、さび>と<軽(かる)み>は聞いたり本で見たことがあるがさらに<細み>というのがあるのだ。この<細み>はネット辞書で簡単に調べられる。

たまたま香港の友人から<わび、さび>とはなにか?と突然問われたので

<わびしい、さびしい>という形容詞由来で solitary と答えておいたが、友人は名詞化して <solitude か>と言ってきたので、<そうだ>と答えておいた。

sptt


Saturday, September 12, 2020

とうなす(唐茄子) / カボチャ

 前々回のポスト "<ののしり言葉>、あくたいをつく、<このくそったれ>" で


昔は<とうなす(唐茄子)>が<けなし言葉>だったように思う。子供のころ<ののしり、けなし言葉>の<このとうなす>というのを聞いた記憶がある。<なす>か当時まだ知らなかったが聞いたことのある<トウガン>のことかと思っていた。今回調べてみると<とうなす(唐茄子)>はカボチャのこと。そういえばこれまた子供のころ<とうなすカボチャ>というのも聞いた記憶がある。これを調べているうちに<唐茄子屋政談>という落語あるのがわかった。長いがおもしろい落語みたいな話だ。この話は主人公が重い唐茄子をかついで売りに出る話なので、唐茄子ではなくトウガン>でもいいがナスはだめだ。

<ののしり、けなし言葉>の<このとうなす>は<このカボチャ(野郎)>でもよさそう。 

と書いたが(一部変更、追加)、香港では統一がとれていて、簡単。


とうなす(唐茄子)/ カボチャ - 南瓜
トウガン - 冬瓜
スイカ (水瓜か) - 西瓜
キュウリ(黄瓜(うり)か、蔓性なので木瓜ではないだろ) - 青瓜 - 北京語では黄瓜
にが瓜 - 苦瓜
メロン - 蜜瓜

カボチャは<カンボジア>が語源のようだ。少しややこしいのは

なす -  茄子(kei chi)と発音
トマト - 番茄(fan kei と発音) - 北京語では西红柿
<番>は<外来のもの>を指す。

英語のketchup(ケチャップ)は広東語の茄汁(kei chap と発音)由来だろう。

ザクロ - 石榴(sek lau と発音)
グワーバ(Guava)- 番石榴(fan sek lau と発音)

果物は広東語では生果、北京語では水果。

唐茄子の<唐>は中国由来の意で、

唐辛子(とうがらし) - 広東語では辣椒(lat chiu)

 <ののしり言葉>というほどの言葉ではないが<とうへんぼく(唐変木)>、<朴念仁>とうのがある。

 

sptt

 


Friday, September 11, 2020

悪い、わるxxx

 

<わる>は形容詞<悪い>由来だが<悪いxxx>と形容詞語尾<い>のない<わるxxx>では意味が少しちがってくる。<悪いxxx>平板だが、<わるxxx>は

わるあがき
わるガキ(餓鬼)
わるだくみ
わる知恵(ぢえ)
わるびれ(る) (ネット辞書によると<ひれる>は<怯(おび)える>)
わるもの
わる酔い

性悪(しょうわる)

<わる>だけでも使われる。<悪い人>のことだが<ののしり言葉>的に使われる。

あのわるめ!

<わるさ>は<わる>の程度ではなく<わるさをする>で<わるいことをする>の意だ。

 

漢語は悪(あく)。<あく>はやまとことばの発音になっているが漢語由来だ。かなりこなれていて<やまとことば>との混乱もある。

あくたれ <たれ>は<だれ(誰)>で人のことだろう。<くそったれ(くそを垂れる>からすると<悪を垂れる人>になる。<バカたれ>の<たれ>も人のことで<ばかを垂れる>と理解しにくいが、まったくダメというわけではなさそう。

悪行(あくぎょう)
悪政
悪性
悪玉 (あくだま、重箱読み)
悪どい -ネット辞書では下記の説明がある。


「あくどい」の通俗的な表記。 もともとは「アクが強い」すなわち「灰汁どい」を語源に持つとされるため、一般的に「悪どい」の表記は誤記とされる。 やり方が卑劣であったり非常識な手口であったりして、たちの悪いさまなどを意味する表現。 (「悪どい」の意味や使い方 Weblio辞書 www.weblio.jp )

「灰汁」は<あく>と読む。<灰汁抜き>で<悪抜き>ではない。
<たちの悪い、たちが悪い>は<性悪(わる)>(重箱読み)の純やまとことば表現だ。

悪党(あくとう、これは歴史的に意味が変遷している)

悪徳(商人) <悪徳>は<悪い徳>ではない。元来<徳>はいいもので<悪い徳>はない、ではどう解釈したらいいのか? これは<徳のない悪い>の意だ。そして<悪>は<悪い>意外に場合によっては<悪いこと、悪さの強調>の働きがある。したがってこれは<徳のないたいへん悪い(商人>というこになる。

悪人
悪魔

悪辣(あくらつ) 字ずらは<悪い、辛(から)い>の意味だが、<悪>も<辣>表面的な意味以外に強調の働きがあるようだ。<辛(辣、から)い>はここでは比喩的な意味だが、<辣>だけでは<悪>の意味はない、薄い。辣:辛辣(しんらつ)、辣韭(ラッキョウ)。

<あくなき>は<飽くなき>

<悪(あく)>の混乱は<悪(あ)し(き)>というやまとことばも関係しているか。

 

sptt

Wednesday, September 9, 2020

<ののしり言葉>、あくたいをつく、<このくそったれ>

 

前回のポスト<わずらわしさ、めんどう>で<ののしり言葉>として<くそ>をとりあげたが、日本語の<ののしり言葉>を調べてみる。元来日本語には<ののしり言葉>がきわめて少ないといわれている。たしかにそのようだ。これにはいろいろ理由があると思うが、<需要と供給の関係>からするとこれは<ののしり言葉>の需要が少ないから、ということになる。これは悪いことではない。

<あくたいをつく>という言い方があるが<あくたい>は悪態、<つく>は<する>というよりは<言う>、<口に出す>だろう。 <悪態のかぎりをつくす>という表現があるが、これも<態>の字はあるが、これも<悪いことを言う、口に出す>の意だろう。簡易なネット辞典では類語、関連語を示しているが

https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%82%AA%E6%85%8B/

 

類語では誹謗、関連語の方は漢語が並んでいる。<あくたいをつく>に近いのは関連語の現代日本語ではほとんど使われない<雑言(をはく)>、<罵詈する><罵詈雑言(を言う、はく)>。隣りの中国では<ののしり、そしり言葉>が多そう。別のブログ<封神演義 (ほうしんえんぎ)>の ” <そしり言葉>と<ほめ言葉> ‐1(そしり言葉)” で相当数の四字成語<そしり言葉>を抜き出し検討している。<ののしり>と<そしり>は違うが、<そしり>が理性を失うと<ののしり>になるか?

悪態は和製漢語のようで、現代の中国語(恶态, etai)をネットで調べても出てこない。悪態は文字通りでは<悪い態度>になるが、<あくたいをつく>はこれでは説明がつかない。上記の類語のうち悪口(わるくち)、陰口(かげぐち)は<あくたい(をつく)>とはかなり違う。

 さて、やまとことばの<ののしり言葉>だが、前回のポストでは

 <ののしり言葉>の少ないのが日本語の特徴だが、

くそいまいましい、くそにくらしい、くそ暑い (くそくらえ)

 の<くそ>は<ののしり言葉>だが、かわいいものだ。 

と書いたが もう少し調べみた。実際調べて見ると<くそ xx>、<xx くそ>はかなりあるある。


くそいそがしい
くそ度胸(どきょう)
くそガキ(餓鬼)、くそじじい、くそばばあ
くそったれ
くそ力(ぢから)
くそ度胸
クソ坊主
くそまじめ

なにくそ (これは<ののしり言葉>からずれている)
へくそ (ヘクソカズラ)
へたくそ
ぼろくそ
みそくそ
めくそ、はなくそ (<めくそ、はなくそのように扱う>という言い方はありそう)

上記のうちでは<くそったれ>(<-糞を垂れる>が句になっている。(注1)そしてこれはやまとことばの<ののしり言葉>の代表だろう。

<へ(屁)>関連では

へっぴり腰

というのがあるが、これも<へっぴり>(<-屁をひる)で句になった表現だ。<このくっそたれ>があるので<このへっぴり>は第二のやまとことば<ののしり言葉>の代表になりそうだが、残念ながらこれは聞いたことがない。ついでに<へ(屁)>関連の表現をしらべてみる。

 へくそ (ヘクソカズラ) - <へくそ>だけでは使われないようだ。ちなみに、ヘクソカズラは、私の見た、嗅いだかぎりでは、地上をはう(這う)つる(蔓)性の雑草で、花だか、葉だか、茎だかをもみつぶすと<くそ>というよりは<へ>のような臭(にお)いがする。花は小さく、可憐(かれん)な花だ。したがってこの<へくそ>の<くそ>は<xx くそ>の類だろう。

へりくつ(屁理屈)

へのかっぱ
へとも思わない

 この二つは関連がある。似たような表現に

平気の平左(へいざ) - 韻を踏んでいる
へちまの皮 (とも思わない) - これは聞いたことがない。
キュウリのへた - ありそうなので、ネットで調べたがこの意味ではでてこない。だが<キュウリのへたとも思わない>で類推がはたらく。(注2)

いずれも<へ>の字が出てくるが偶然の一致ではないだろう。<へ>の字がつく言葉には

へこむ
へしあう(押し合い、へし合い)
へしおる
へたばる
へたる
へる(減る)

へぼ - へぼ将棋、へぼ医者、へぼ画家
へま

へそ - へそで茶をわかす

があり、<ののしり>ではないが、大体よくない意味だ。 これまた偶然の一致ではないだろう。ではなにかと言うと、これは<へ>という音に関連しているのだろう。

<え>列の音は

え、け、せ、て、ね、へ、め、(イェ)、れ 

げ、ぜ、で、べ、

だ。濁音の<げ、ぜ、で、べ>はだいたいよくない意味の語が多いと思われるが、これは濁音一般に言えることだ。もう少し調べてみる必要がある。


音に関していえば<ののしり言葉>では<くそ>もそうだが、<か>行と<さ>行の組み合わせが多いようだ。<くそ>以外にも

かす - みそっかす
くさ、ぐさ - ものぐさ、関西では<あほくさ>というのがある。
くず -人間のくず、ぼろくず
ぐず
くせ

こそドロ

腐(くさ)る
くすねる


これまたもう少し調べてみる必要がある。忘れていたが以前のポストで<くせ、くそ、くさい>というのがあった。その他の<のにしり言葉>では

このやろう
ばかやろう
この(ど)スケベやろう

<やろう>は野郎でこれは<夜郎自大>という中国の四字成語の<夜郎>まったく関係なく、<やろう(野郎)>は和製漢語か?<ばかやろう>は関東方言と思われるが(関西では<(ど)あほ(う)>が使われる)、かなりの高頻度使用語だ。野郎は男専用だ。

おろかもの
けだもの
なまけもの
(この)バカもの  (時代劇からは、昔は<このしれ者>といっていたようだ>
(この)まぬけ(もの)

<もの>は<者>でこれもだいたい男向けのようだ。同じく男向けでは<やつ(奴>があるが

おろかなやつ
バカなやつ
まぬけなやつ

で叙述的になり<ののしり言葉>にならない。 

女性向けでは<あま>がある。

あのあま(あ)、あのあまめ!

語源のよくわからない<あばずれ>はかなりの女性向け<ののしり言葉>だ。

 

わる(悪い)

<わる>は形容詞<悪い>由来だが<悪いxxx>とすると<ののしり言葉>にならないが<わるxxx>で<ののしり言葉>になるのがある。

このわる、あのわる
わるがき(餓鬼)
性(しょう)わる (重箱よみ)

 

さて、<くそったれ>は実際には往々にして

このくそったれ !
このくそったれめ !

のように使われる。上で

このやろう
このバカもの (関西では<この(ど)あほう>か)
(この)まぬけ(もの) 

も例にあげた。この<この>はなんだろう?

<この>は<こそあど言葉>の一つで

これ、それ、あれ、どれ
この、その、あの、どの

このくそったれ
あのくそったれ

は<ののしりことば>にるが

そのくそったれ、どのくそったれ

は基本的にダメだ。<ののしり>ではなく平板な叙述ならいいがほとんど使いそうもない。<このくそったれ>は直接相手に対する<ののしり言葉>。<あのくそったれ>は間接的だがやはり<ののしり言葉>だ。<こそあど言葉>は指示語(<これ、それ、あれ、どれ>は指示代名詞、<この、その、あの、どの>は指示形容詞か? だが直接相手に対していう<このくそったれ>の<この>は特に相手を指示しているわけではない。この<この>は<ののしり>の一部のようでもある。

この<この>とコンビでよく使われるもは最後に付け加える<め>だ。この<め>は語尾ではない。間投詞の類だろうが、あたまの<この>とコンビ、正確には<この xxxx め>のはさみ込みでよく使われるので、修辞(句)の一部ともいえる。上では

このくそったれめ !
あのあまめ!

しかあげていないが、一般的に使えるので文法法則といえる。

このバカものめ!
あのへぼ医者め!

だ。さらにこのはさみ込み<ののしり>修辞<この xxxx め>は<xxxx>の部分が<ののしり言葉>でなくても<ののしり言葉(句)>になる。

あの佐藤め!

動物名

このサルめ!
あのタヌキめ!
あのキツネめ! 

はいずれも比喩的な言い方だが<ののしり言葉>だ。

まだ使われていないと思われるものを作ってみた。


あのハエめ!(なにかとうるさい人)
あのカタツムリめ!(なにかとやることがのろい人)
あのカマキリめ!(頭が小さく、三角っぽい人、おそろしそうだがたいしたことのない人)
あのミミズめ!(めったに地上にでこない、よくわからない人)
あのモグラめ!(地下で動き回る人)

このカブトムシ野郎!(かぶとを脱げないがんこモノ)
このナメクジ野郎! (ぬるぬるしてとらえどころのない人)
このスズメ野郎! (しょっちゅう餌(えさ)をあっさている人。近寄ってくるが逃げ足の速いひと)
このカラス野郎! (そうですか?、だめですか?と、とかく<か?>の多い人。香港では日本人のことを<カーツァイ(Ka-仔)>と言う。


(注1)

<あくたれ>の<悪を垂れる>ではなく、<あくたれ>の <たれ>は<だれ(誰)>で人のことだ。これからすると<くそったれ>は<くそ人>になる。 ” くそったれ>、<-糞を垂れる> ” は手もとの辞書(三省堂)の解説。<くそ>は垂れるが<ひる>もの、<ひって出す>ものだ。<くそを垂れる>はややおかしい。<たれる>は自動詞、他動詞兼用。<たらす>という他動詞がある。だが<たれる>は<垂れる>だけではない。<たれ流す>は<垂れ流す>ではないだろう。<たれ流す>は

無遠慮に(あたりかまわずに)流す

の意に近い。

あくたいをたれる
不平をたれる <不平をたらす>ともいうか。

の<たれる>は<あくたい><不平>を無遠慮に(あたりかまわずに)出す

の意に近い。

一方<このばかたれ>の<たれ>は<だれ>(人)のことだろうが、これまた<バカさ>を<無遠慮に(あたりかまわずに)出す>人も不可能のでない。

 

(注2)

野菜では<なす>も犠牲になっている。

おたんこなす
ぼけなす

その他では

蓮っ葉(はすっぱ)

昔は<とうなす(唐茄子)>が<けなし言葉>だったように思う。子供のころ<このとうなす>というのを聞いた記憶がある。<なす>か当時まだ知らなかったが聞いたことのある<トウガン>のことかと思っていたが調べてみると<とうなす(唐茄子)>はカボチャのこと。そういえばこれまた子供のころ<とうなすカボチャ>というのも聞いた記憶がある。これを調べているうちに<唐茄子屋政談>という落語あるのがわかった。長いがおもしろい落語みたいな話だ。<このカボチャ野郎>でもよさそう。

(追加予定)

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その他

ろくでなし
あばずれ

(追加予定) 

 

sptt

 

 

 

 

 

 




 

 

 

 

Monday, September 7, 2020

わずらわしさ、めんどう

 

前回のポスト<いやし、なごみ、おだやか>に続いて、反対語と思われる<わずらわしさ>について考えてみる。 

<わずらわしさ>も使われるが、形容詞の<わずらわしい>の方がよく聞く。動詞の<わずらう>から派生したものだろう。<わずらう>には<わずらい>という体言(名詞)形があり、いずれも<病気になる><病気>ほどではないがよく聞く。古いが<恋わずらい>という言い方がある。恋愛病よりはいい。<わずらわしさ>、<わずらわしい>は病気とは直接関係がなくなっている。

並べて示すと

わずらう - わずらい - わずらわしい 

その他では

いたむ - いたみ - いたましい

なやむ - なやみ  - なやましい 

も似たような関係だ。形容詞の意味が派生的になり、ズレがある。

<いたむ>は<(胃が)痛む>以外に<屋根が(椅子が、机が)いたんできた>、<屋根のいたみがひどい>といった言い方がある。

さらには

なげく - なげき - なげかわしい 

<なげかわしい>は少しだけ派生的になっているようだ。

くるしむ - くるしみ - くるしい (くるしましい>はない)

かなしむ - かなしみ - かなしい (<かなしましい>はない)

おしむ - おしみ(出しおしみ、負けおしみ) - おしい (<おしましい>はない)

<くるしい>、<かなしい>、<おしい>は派生的な意味になっていない。これらはむしろ形容詞から動詞、そして動詞から名詞(体言)-動詞連用形の名詞(体言)用法-が派生していったのだろう。古語は<くるし>、<かなし>、<おし>だ。


めんどう(面倒)

話がそれてきているので<わずらわしさ>にもどる。 <わずらわしさ>以上に使われるのはやまとことばではなく<面倒(めんどう)>。<めんどうをかける>という言い方もある。また <わずらわしい>以上に使われるのは<めんどうな>、<めんどうくさい>、<めんどくさい>だろう。この<くさい>は

うさんくさい
うそくさい

の<らしい>の意ではなく、いやなこと<めんどう>を<ののしる>言葉だろう。 <ののしり言葉>の少ないのが日本語の特徴だが、

くそいまいましい、くそにくらしい、くそ暑い (くそくらえ)

 の<くそ>は<ののしり言葉>だが、かわいいものだ。 

<ののしり言葉>ほどではないが、<くるしい(苦しい)>というのがある。

息(いき)苦ぐる)しい

は元の意味をのこしているが

あつくるしい
むさくるしい

の<くるしい>は<くるしさ>よりは不快感を示しているといえる。

話がまたそれだしているが<めんどう>にもどると、<やまとことばではなく>と書いたが、めんどう(面倒)の語源、由来を調べてみると、<面倒>は漢字の当て字で<めんどう>はもともとはやまとことばのようだ。ただし語源不詳。<めんどうをかける>、<めんどうをみる>という言い方もある。たしかに中国語で<面倒>は聞かない。<わずらわしい(形容詞>、<わずらわしさ(名詞>に相当する現代中国語はほぼ間違いなく<麻烦(煩)>だ。<麻煩>超高頻度使用語で、これを使わない人はまずいないし、使わない日はまずない。

前回のポストに関連させると<おだやか>な状態を乱すのが<わずらわしさ>、<麻煩>だ。<わずらわしさ>、<麻煩>があると<おだやか>な心はもちろん、平静な、さらのは普通の状態の心も乱(みだ)される。 

日本人も中国人も<わずらわしさ>や<麻煩>は他人が自分にもたらすものと考える。やや宗教的になるが

許せよ、さらば救われん。
善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや。

という逆説的な言葉がある。いろいろ解釈はできるが、

<わずらわしさ>や<麻煩>への対応策としては<気にしない>、<気にかけない>のがいい。だが何もしないのはよくなく、<気にしない>、<気にかけない>で対応するのがいい。

 

sptt