Wednesday, September 30, 2020

黒ずむ、なずむ、はずむ -拡散と波動


<xx む>動詞をしつこく調べているうちに大発見をしたので、忘れないうちにまとめておく。<xxずむ>動詞に大和言葉にかくれた秘密があるようなのだ。まずは<xずむ>、<xxずむ>の語を調べておく。


くろ(黒)ずむ
(かすむ、くすむ)
しずむ
すずむ    <すずむ>は形容詞<すずし>関連語だろう。
たたずむ     立ち+ずむ(すむ)
なずむ
はずむ
ひずむ

<ずむ>は単独では意味をなさないが<すむ>は

住む
澄む
済む

がある。こじつけ的だが

住む: 人が<落ちついて生活する>。 <たたずむ>の<ずむ>はこの<すむ>か?

澄む: <黒ずむ>の反対現象で<黒ずんだ水>が黒が抜けて澄んだ水になる。<すむ>に濁点(濁り)がついて<ずむ>。これは偶然の一致だろうか。

済む: すべきことがなされる。成就。

以上のうち<しずむ>、<ひずむ>もおもしろいが、<黒ずむ>、<なずむ>、<はずむ>を中心に話を進める。すでに発見者がいるかもしれないので語源をネットでチェックしておく。

https://www.weblio.jp/content

三省堂 大辞林 第三版

1)黒ずむ 

くろ ず・む, 黒ずむ】

黒っぽくなる。黒い色を帯びる。 「すすで天井が-・む」 「 - ・んだ顔」

「黒ずむ」に似た言葉

類語 :くすむ、黒む、黒める、黒ばむ

” 

類語に :<黒める>があるが、<黒ずむ>は自動詞 <黒める>は他動詞。<黒まる>ならいい。

黒っぽくなる。

黒い色を帯びる。時間の経過を考慮すると ->黒い色を帯びてくる。

類語では、くすむ、黒(くろ)む、黒ばむ、はみな<xx む>動詞だ。<くすむ>が

く+すむ

であるとこのポストでは関係があることになる。似たような語に

くすぶる、かすむ

があるので< く+すむ  > は考えにくい。もとに戻って

黒っぽくなる。黒い色を帯びてくる。

は始めは黒くなかったものが時間の経過とともに<黒っぽくなる、黒い色を帯びてくる>で黒い色の時系列変化ととらえることができる。<黒ずむ>は大体長い時間がかかることが想像されるが、短時間で視覚的にとらえようとすると

水がはいった容器に墨(汁)をたらし、墨が時間の経過ともに水に混ざって薄まりながら広がっていくことに似ている。これは溶解というようだが、やまとことばでは<(とけ)混ざり広がり>がよさそう。英語では

diffusion (動詞は to diffuse

という。 <(墨の水との)(とけ)混ざり広がり>をもう少し詳しく表現すると

墨の濃度が時間の経過とともに四方八方(たて、よこ、ななめ、正確には3Dなので、<上下に>を含む)に薄れていく現象で、やや高等数学になるが diffusion の方程式あるいは等式がある。 正確な用語は拡散方程式 (Wiki)。 (注)。末尾の(注)で解説する。

ところで<すみ(墨、炭)>の語源は不明のようだが、思い切って

くろずむ -> くろずみ ->すみ

というのはどうか?

<黒ずむ>は見方を変えると、透明の水が<黒くなっていく>ことをとらえた表現ということができる。さらには<黒くなった状態>もさす。この水は黒ずんでいる。この布のこの箇所は黒ずんでいる。

他の色はどうかというと

白 - 白(しら)む   <白ずむ>も可能だろう。

黄色 - 黄ばむ      <黄ずむ><黄色ずむ>も可能だろう。

赤 - 赤みをおびる、おびてくる(いく)。赤む。赤まる。 <赤ずむ>もなんとかなりそう。

 

2)なずむ

なず・む なづむ  【泥▽む・滞▽む】

進行がさまたげらる。とどこおる。難渋する。「暮れ-・む」 「句ニ-・ム日葡」 「海処(うみが)行けば腰-・む/古事記 中」

こだわる。執着する。後略

なれ親しむ。なじむ。 「都会悪風に-・まぬやう/羹 潤一郎」

④⑤

漢字の<泥む、帯む>を<なずむ>と書ける人はもちろん読める人もごくわずかだろう。

例文を見てもわかるように<なずむ >はすでに古語に近い。<暮れなずむ>は聞いたことがあるが、これまで意味は知らなかった。意味(暮れようとしてなかな暮れない)が分わかって聞いている人は多くないだろるう。ここでは①と③だけ取り上げる。

「句ニ-・ム日葡」 「海処(うみが)行けば腰-・む/古事記 中」

<句になずむ>は<言葉になずむ>(言葉がとどこおる)。<言いなずむ>は古風だ(古くさい)が通じるだろう。

海処(うみが)行けば腰-・む/古事記 中」  は

<海に入り難渋しながら進んだ時に>という解説(ネット)があるので、<腰なずむ>は<歩きなずむ>、<動きなずむ>といった意味だろう。

あまり自信はないが

行きなずむ - 行こうとしてなかなか行かない

取りなずむ  - 取ろうとしてなかなか取らない 

とはいえるだろう。聞く方も多分意味が分かるだろう。<なずむ>を<な+ずむ>とすると、前半の<な>は<なる>だろう。これまで例を言いかえると

暮れなずむ  - <暮れ(ること)>がなかなかならない。

言いなずむ - <言い(言うこと)>がなかなかならない。 
行きなずむ - <行き(行くこと)>がなかなかならない。 
取りなずむ   - <取る(こと)>がなかなかならない。 

<暮れなずむ>は時間が経過すると結局<暮れてしまう>が<言いなずむ>、<行きなずむ>、<取りなずむ >は時間が経過しても結局どうなるかわからない。

言う - 言わない 

行く - 行かない 行ったり来たりする、足(脚)を出したりひっこめたりする 
取る  -取らない  手を出したりひっこめたりする

この現象は、もう少し科学的(物理的)に見ると、<言う>、<行く>、<取る>に反対する力が働いて<言わない>、<行かない>、<取らない>となると言える。

進行がさまたげられる。とどこおる。難渋する。

とは反対する力が働いて進行がさまたげられる、とどこおる、難渋する。 

のことと言える。さらに話を進めると

次はこれらに対して<言う>、<行く>、<取る>の力が働く。そしてこのくり返しだ。これは初等数学の数式であらわせる。振動だ。いわゆるサインカーブになる。サインカーブは横軸を時間、縦軸を振幅とすると最大振幅(+)、最小振幅(-)の間を<行ったり来たり>する。末尾の(注)で再度解説する。

だが<暮れなずむ>と違って<落ち着くこと、ところ>がないように見えるが、結局は<落ち着くところに落ち着く>。この<落ち着く>現象は停止とも均衡(equilibrium)とも言える。

ところで<なる>が成就することとすると、<なずむ>はなかなか成就しないことだ。ところで、まやかしみたいになるが、この<成就>はやまと言葉にすると<すむ(済む)>だ。したがって、<なずむ>は<なりすむ>で<なすむ>で<コトが成る>になる。これは<なずむ>とは反対に近い。<ずむ>は<すむ>の濁音だ。だがこれは多分に<まやかし>だ。

なれ親しむ。なじむ。 「都会悪風に-・まぬやう/羹 潤一郎」  

<なじむ>は<なずむ>と似ていることもあって、混同がある。<なじむ>の<じむ>は<しむ ->しみる(染みる、沁みる)>由来だろう。もっともこの<しみる(染みる、沁みる)>も現象は diffusion (拡散)に通ずるものがある。

 

3)はずむ

次は<はずむ>。これが大発見。

” 

はず・む はづむ 【弾む】

( 動マ五[四] )

自動詞

 弾力のある物体が物にぶつかってはねかえる。 「このボールはよく-・む」

 喜び運動のため,呼吸鼓動激しくなる。また,うれしく気持ちうきうきする。 「息が-・む」 「電話の声が-・んでいた」 「胸が-・む」 「心が-・む」

 調子よく進む。勢いづく。 「久しぶり再会に話が-・んだ」

他動詞

気前よく多額の金を他人のために出す。 「チップを-・む」 「祝儀を-・む」

「弾む」に似た言葉

類語:跳ね上がる、跳躍、飛び跳ねる、飛び上がる、跳ねる

上記の類語に<はね上がる、飛びはねる、はねる>がある。<はずむ>の形成は

はねる + ずむ -> はね + ずむ -> はずむ

とする。 そうすると、<ずむ>を 

1)<黒ずむ>の時間の経過とともに四方八方(たて、よこ、ななめ)に薄れていく(拡散)現象

2)<言いなずむ>の<言う(言おうとする)><言わない>の反対する力が働いて進行がさまたげらる現象、そしてくり返しの振動現象

と関連づけられる。

<はねる>は上方に(人、動物、モノ、などが)<はね上がる>ことを指す場合が多い。<はね上がる>と最高点(頂点)をさかいに落ちて来る。これは高さがいったんは高くなるが、頂点をさかいに減少していく。少し無理があるが、これを言い換えると<はねが薄れていく(減っていく)>になる。

一方<はずむ> は上記のネット辞書の①にある<はねかえる>が第一義だ。<はね上がって、落ちて来た>人、動物、モノがふたたび<はね上がる>のを<はずむ>という。そして再び頂点をさかいにして落ちて来る。多くの場合この動きが繰り返される。これは<(言い)なずむ>の振動と似ている。そしてこの<はずみ>は長く続かず、いろいろな抵抗を受けて止まってしまうのが普通だ。この<止まってしまう>現象は上記のように停止とも均衡(equilibrium)とも言える。

以上が<黒ずむ>、<なずむ>、<はずむ>の<ずむ>の共通点、関連具合だ。 

古代人はどこを見て<はずむ>と言うようになったのか?

<はねがすむ(済む)>とすると 

1)<はね上がる>と最高点(頂点)をさかいに落ちて来る。

2)  <はね>は何度か繰り返されるが、長く続かず、いろいろな抵抗を受けて止まってしまう。

が考えられる。 

だが、<はずむ>現象で人の目が行くのは

上記のネット辞書の①にある<はねかえる>が第一義だ。

<はねかえる>時、ところだろう。これは<はねがすむ(済む)>では説明できない。むしろ<はね>が再び<始(はじ)まる>時、ところだ。この<始(はじ)まる>は昔は<<始(はじ)む>といっていた。<はじむ>と<はずむ>は一字違いで、しかも<じ><ず>は似かよった音だ。 

はねはじむ ‐> はねはずむ ー> はずむ

の変化は十分考えられる。だがこれは<似て非なるもの>だろう。 

おそらく、古代日本人はモノが<はねかえる>のを見て目に見えない力の働きを感じ、それを<はねずむ>と表現したのだろう。そうするとこの<ずむ>は何のことだかわからなくなる。 収拾がつかなくなってきたので、とりあえず収拾をつけておくと

上にあげた意味の候補のうちツジツマがあうのは

2)  <はね>は何度か繰り返されるが、長く続かず、いろいろな抵抗を受けて止まってしまう。

で、古代日本人の目はおおらかで、短時間の変化には向かず、このような現象を<はずむ>、すなわち

<はね>がくりかえしながら段々小さくなり、さらに進むと止まってしまう<済む> -> はねずむ

-> はずむ

 と言うようになったのではないか。

 

さて<はずむ>の名詞(体言)形は<はずみ>だが<はずみをつける>とか<はずみぐるま>という。

<はずみをつける>とは

勢いをあたえる、加速させる(ネット辞書)

<はずみがつく>は勢いがあたえられる、加速する)

で<力>が大いに関係している。力は目に見えないのでわかりにくいが、力と加速度の物理式は

Wiki


force)の、最も初等的な定義は質量加速度の積を力とするものである。

{\displaystyle {\boldsymbol {F}}=m{\boldsymbol {a}}.}
ここで F物体に働く力、m は物体の質量、a は物体の加速度を表す。

加速度は

運動方程式を x に関する2階の常微分方程式に書き換えることができる。
{\displaystyle m{\frac {d^{2}{\boldsymbol {x}}}{dt^{2}}}(t)={\boldsymbol {F}}(t).}


ここで質量 m定数とした。 

x に関する2階の>は正確には< x に関する(時間の)2階の>で時間(t)の2階微分が出てくる。末尾の(注)参照。

----ー

<しずむ>は<静む>関連がありそうだが<した(に)ずむ>も考えられる。池に落とした石は水の抵抗を受けながら重力に引かれて下に落ちていく。

<ひずむ>は力を受けてモノが変形することで、力と大いに関係がある。押しても変形するが引いても変形する。<ひきずむ>-><ひずむ>は考えられる。

-----

末尾の(注)


基本的な拡散方程式(等式)と
波動方程式(等式)は似かよっている。

拡散方程式(Wiki)

方程式は一般に以下のように書かれる。

{\frac  {\partial \phi }{\partial t}}=\nabla \cdot {\bigg (}D(\phi ,{\vec  {r}},t)\,\nabla \phi ({\vec  {r}},t){\bigg )}

ただし、{\vec  {r}}は位置、tは時刻、\,\phi ({\vec  {r}},t) は拡散物質の 密度(関数)D(\phi ,{\vec  {r}},t)拡散係数(2階のテンソル量)、ナブラ \,\nabla は空間微分作用素である。拡散係数D が定数ならば、方程式は以下の線形方程式に帰着される。

{\frac  {\partial \phi }{\partial t}}=D\nabla ^{2}\phi ({\vec  {r}},t)

D が他の変数に依存する場合方程式は非線形となる。さらに、D正定値対称行列であれば方程式は異方的拡散となる。 

  

波動方程式 (Wiki)

波動方程式(はどうほうていしき、: wave equation)とは、次の式で表される定数係数二階線型偏微分方程式のことである[1]

{\frac  {1}{s^{2}}}{\frac  {\partial ^{2}u}{\partial t^{2}}}=\Delta u

波動方程式は音波、水面の波紋、電磁波などの様々な振動・波動現象を記述する際に基本となる方程式である。s は波動の位相速度 (phase velocity) を表す係数である。 

 

上記では似かよっているところがよくわからないが

2 = Δ  

なので Δu は 2u になる。u scalar function u = u (x1, x2, …, xn; t) of a time variable t.

波動方程式の方は左辺に時間(t)の2階微分が出てくる。

 

以上の拡散方程式波動方程式の説明はすでにわかっている人が読めばわかるが、初めて出あう人は何のことだかわからないだろう。だが拡散と波動が同じような式になるのはおもしろい。

 

sptt


 

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