Wednesday, September 9, 2020

<ののしり言葉>、あくたいをつく、<このくそったれ>

 

前回のポスト<わずらわしさ、めんどう>で<ののしり言葉>として<くそ>をとりあげたが、日本語の<ののしり言葉>を調べてみる。元来日本語には<ののしり言葉>がきわめて少ないといわれている。たしかにそのようだ。これにはいろいろ理由があると思うが、<需要と供給の関係>からするとこれは<ののしり言葉>の需要が少ないから、ということになる。これは悪いことではない。

<あくたいをつく>という言い方があるが<あくたい>は悪態、<つく>は<する>というよりは<言う>、<口に出す>だろう。 <悪態のかぎりをつくす>という表現があるが、これも<態>の字はあるが、これも<悪いことを言う、口に出す>の意だろう。簡易なネット辞典では類語、関連語を示しているが

https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%82%AA%E6%85%8B/

 

類語では誹謗、関連語の方は漢語が並んでいる。<あくたいをつく>に近いのは関連語の現代日本語ではほとんど使われない<雑言(をはく)>、<罵詈する><罵詈雑言(を言う、はく)>。隣りの中国では<ののしり、そしり言葉>が多そう。別のブログ<封神演義 (ほうしんえんぎ)>の ” <そしり言葉>と<ほめ言葉> ‐1(そしり言葉)” で相当数の四字成語<そしり言葉>を抜き出し検討している。<ののしり>と<そしり>は違うが、<そしり>が理性を失うと<ののしり>になるか?

悪態は和製漢語のようで、現代の中国語(恶态, etai)をネットで調べても出てこない。悪態は文字通りでは<悪い態度>になるが、<あくたいをつく>はこれでは説明がつかない。上記の類語のうち悪口(わるくち)、陰口(かげぐち)は<あくたい(をつく)>とはかなり違う。

 さて、やまとことばの<ののしり言葉>だが、前回のポストでは

 <ののしり言葉>の少ないのが日本語の特徴だが、

くそいまいましい、くそにくらしい、くそ暑い (くそくらえ)

 の<くそ>は<ののしり言葉>だが、かわいいものだ。 

と書いたが もう少し調べみた。実際調べて見ると<くそ xx>、<xx くそ>はかなりあるある。


くそいそがしい
くそ度胸(どきょう)
くそガキ(餓鬼)、くそじじい、くそばばあ
くそったれ
くそ力(ぢから)
くそ度胸
クソ坊主
くそまじめ

なにくそ (これは<ののしり言葉>からずれている)
へくそ (ヘクソカズラ)
へたくそ
ぼろくそ
みそくそ
めくそ、はなくそ (<めくそ、はなくそのように扱う>という言い方はありそう)

上記のうちでは<くそったれ>(<-糞を垂れる>が句になっている。(注1)そしてこれはやまとことばの<ののしり言葉>の代表だろう。

<へ(屁)>関連では

へっぴり腰

というのがあるが、これも<へっぴり>(<-屁をひる)で句になった表現だ。<このくっそたれ>があるので<このへっぴり>は第二のやまとことば<ののしり言葉>の代表になりそうだが、残念ながらこれは聞いたことがない。ついでに<へ(屁)>関連の表現をしらべてみる。

 へくそ (ヘクソカズラ) - <へくそ>だけでは使われないようだ。ちなみに、ヘクソカズラは、私の見た、嗅いだかぎりでは、地上をはう(這う)つる(蔓)性の雑草で、花だか、葉だか、茎だかをもみつぶすと<くそ>というよりは<へ>のような臭(にお)いがする。花は小さく、可憐(かれん)な花だ。したがってこの<へくそ>の<くそ>は<xx くそ>の類だろう。

へりくつ(屁理屈)

へのかっぱ
へとも思わない

 この二つは関連がある。似たような表現に

平気の平左(へいざ) - 韻を踏んでいる
へちまの皮 (とも思わない) - これは聞いたことがない。
キュウリのへた - ありそうなので、ネットで調べたがこの意味ではでてこない。だが<キュウリのへたとも思わない>で類推がはたらく。(注2)

いずれも<へ>の字が出てくるが偶然の一致ではないだろう。<へ>の字がつく言葉には

へこむ
へしあう(押し合い、へし合い)
へしおる
へたばる
へたる
へる(減る)

へぼ - へぼ将棋、へぼ医者、へぼ画家
へま

へそ - へそで茶をわかす

があり、<ののしり>ではないが、大体よくない意味だ。 これまた偶然の一致ではないだろう。ではなにかと言うと、これは<へ>という音に関連しているのだろう。

<え>列の音は

え、け、せ、て、ね、へ、め、(イェ)、れ 

げ、ぜ、で、べ、

だ。濁音の<げ、ぜ、で、べ>はだいたいよくない意味の語が多いと思われるが、これは濁音一般に言えることだ。もう少し調べてみる必要がある。


音に関していえば<ののしり言葉>では<くそ>もそうだが、<か>行と<さ>行の組み合わせが多いようだ。<くそ>以外にも

かす - みそっかす
くさ、ぐさ - ものぐさ、関西では<あほくさ>というのがある。
くず -人間のくず、ぼろくず
ぐず
くせ

こそドロ

腐(くさ)る
くすねる


これまたもう少し調べてみる必要がある。忘れていたが以前のポストで<くせ、くそ、くさい>というのがあった。その他の<のにしり言葉>では

このやろう
ばかやろう
この(ど)スケベやろう

<やろう>は野郎でこれは<夜郎自大>という中国の四字成語の<夜郎>まったく関係なく、<やろう(野郎)>は和製漢語か?<ばかやろう>は関東方言と思われるが(関西では<(ど)あほ(う)>が使われる)、かなりの高頻度使用語だ。野郎は男専用だ。

おろかもの
けだもの
なまけもの
(この)バカもの  (時代劇からは、昔は<このしれ者>といっていたようだ>
(この)まぬけ(もの)

<もの>は<者>でこれもだいたい男向けのようだ。同じく男向けでは<やつ(奴>があるが

おろかなやつ
バカなやつ
まぬけなやつ

で叙述的になり<ののしり言葉>にならない。 

女性向けでは<あま>がある。

あのあま(あ)、あのあまめ!

語源のよくわからない<あばずれ>はかなりの女性向け<ののしり言葉>だ。

 

わる(悪い)

<わる>は形容詞<悪い>由来だが<悪いxxx>とすると<ののしり言葉>にならないが<わるxxx>で<ののしり言葉>になるのがある。

このわる、あのわる
わるがき(餓鬼)
性(しょう)わる (重箱よみ)

 

さて、<くそったれ>は実際には往々にして

このくそったれ !
このくそったれめ !

のように使われる。上で

このやろう
このバカもの (関西では<この(ど)あほう>か)
(この)まぬけ(もの) 

も例にあげた。この<この>はなんだろう?

<この>は<こそあど言葉>の一つで

これ、それ、あれ、どれ
この、その、あの、どの

このくそったれ
あのくそったれ

は<ののしりことば>にるが

そのくそったれ、どのくそったれ

は基本的にダメだ。<ののしり>ではなく平板な叙述ならいいがほとんど使いそうもない。<このくそったれ>は直接相手に対する<ののしり言葉>。<あのくそったれ>は間接的だがやはり<ののしり言葉>だ。<こそあど言葉>は指示語(<これ、それ、あれ、どれ>は指示代名詞、<この、その、あの、どの>は指示形容詞か? だが直接相手に対していう<このくそったれ>の<この>は特に相手を指示しているわけではない。この<この>は<ののしり>の一部のようでもある。

この<この>とコンビでよく使われるもは最後に付け加える<め>だ。この<め>は語尾ではない。間投詞の類だろうが、あたまの<この>とコンビ、正確には<この xxxx め>のはさみ込みでよく使われるので、修辞(句)の一部ともいえる。上では

このくそったれめ !
あのあまめ!

しかあげていないが、一般的に使えるので文法法則といえる。

このバカものめ!
あのへぼ医者め!

だ。さらにこのはさみ込み<ののしり>修辞<この xxxx め>は<xxxx>の部分が<ののしり言葉>でなくても<ののしり言葉(句)>になる。

あの佐藤め!

動物名

このサルめ!
あのタヌキめ!
あのキツネめ! 

はいずれも比喩的な言い方だが<ののしり言葉>だ。

まだ使われていないと思われるものを作ってみた。


あのハエめ!(なにかとうるさい人)
あのカタツムリめ!(なにかとやることがのろい人)
あのカマキリめ!(頭が小さく、三角っぽい人、おそろしそうだがたいしたことのない人)
あのミミズめ!(めったに地上にでこない、よくわからない人)
あのモグラめ!(地下で動き回る人)

このカブトムシ野郎!(かぶとを脱げないがんこモノ)
このナメクジ野郎! (ぬるぬるしてとらえどころのない人)
このスズメ野郎! (しょっちゅう餌(えさ)をあっさている人。近寄ってくるが逃げ足の速いひと)
このカラス野郎! (そうですか?、だめですか?と、とかく<か?>の多い人。香港では日本人のことを<カーツァイ(Ka-仔)>と言う。


(注1)

<あくたれ>の<悪を垂れる>ではなく、<あくたれ>の <たれ>は<だれ(誰)>で人のことだ。これからすると<くそったれ>は<くそ人>になる。 ” くそったれ>、<-糞を垂れる> ” は手もとの辞書(三省堂)の解説。<くそ>は垂れるが<ひる>もの、<ひって出す>ものだ。<くそを垂れる>はややおかしい。<たれる>は自動詞、他動詞兼用。<たらす>という他動詞がある。だが<たれる>は<垂れる>だけではない。<たれ流す>は<垂れ流す>ではないだろう。<たれ流す>は

無遠慮に(あたりかまわずに)流す

の意に近い。

あくたいをたれる
不平をたれる <不平をたらす>ともいうか。

の<たれる>は<あくたい><不平>を無遠慮に(あたりかまわずに)出す

の意に近い。

一方<このばかたれ>の<たれ>は<だれ>(人)のことだろうが、これまた<バカさ>を<無遠慮に(あたりかまわずに)出す>人も不可能のでない。

 

(注2)

野菜では<なす>も犠牲になっている。

おたんこなす
ぼけなす

その他では

蓮っ葉(はすっぱ)

昔は<とうなす(唐茄子)>が<けなし言葉>だったように思う。子供のころ<このとうなす>というのを聞いた記憶がある。<なす>か当時まだ知らなかったが聞いたことのある<トウガン>のことかと思っていたが調べてみると<とうなす(唐茄子)>はカボチャのこと。そういえばこれまた子供のころ<とうなすカボチャ>というのも聞いた記憶がある。これを調べているうちに<唐茄子屋政談>という落語あるのがわかった。長いがおもしろい落語みたいな話だ。<このカボチャ野郎>でもよさそう。

(追加予定)

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その他

ろくでなし
あばずれ

(追加予定) 

 

sptt

 

 

 

 

 

 




 

 

 

 

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