Monday, September 7, 2020

わずらわしさ、めんどう

 

前回のポスト<いやし、なごみ、おだやか>に続いて、反対語と思われる<わずらわしさ>について考えてみる。 

<わずらわしさ>も使われるが、形容詞の<わずらわしい>の方がよく聞く。動詞の<わずらう>から派生したものだろう。<わずらう>には<わずらい>という体言(名詞)形があり、いずれも<病気になる><病気>ほどではないがよく聞く。古いが<恋わずらい>という言い方がある。恋愛病よりはいい。<わずらわしさ>、<わずらわしい>は病気とは直接関係がなくなっている。

並べて示すと

わずらう - わずらい - わずらわしい 

その他では

いたむ - いたみ - いたましい

なやむ - なやみ  - なやましい 

も似たような関係だ。形容詞の意味が派生的になり、ズレがある。

<いたむ>は<(胃が)痛む>以外に<屋根が(椅子が、机が)いたんできた>、<屋根のいたみがひどい>といった言い方がある。

さらには

なげく - なげき - なげかわしい 

<なげかわしい>は少しだけ派生的になっているようだ。

くるしむ - くるしみ - くるしい (くるしましい>はない)

かなしむ - かなしみ - かなしい (<かなしましい>はない)

おしむ - おしみ(出しおしみ、負けおしみ) - おしい (<おしましい>はない)

<くるしい>、<かなしい>、<おしい>は派生的な意味になっていない。これらはむしろ形容詞から動詞、そして動詞から名詞(体言)-動詞連用形の名詞(体言)用法-が派生していったのだろう。古語は<くるし>、<かなし>、<おし>だ。


めんどう(面倒)

話がそれてきているので<わずらわしさ>にもどる。 <わずらわしさ>以上に使われるのはやまとことばではなく<面倒(めんどう)>。<めんどうをかける>という言い方もある。また <わずらわしい>以上に使われるのは<めんどうな>、<めんどうくさい>、<めんどくさい>だろう。この<くさい>は

うさんくさい
うそくさい

の<らしい>の意ではなく、いやなこと<めんどう>を<ののしる>言葉だろう。 <ののしり言葉>の少ないのが日本語の特徴だが、

くそいまいましい、くそにくらしい、くそ暑い (くそくらえ)

 の<くそ>は<ののしり言葉>だが、かわいいものだ。 

<ののしり言葉>ほどではないが、<くるしい(苦しい)>というのがある。

息(いき)苦ぐる)しい

は元の意味をのこしているが

あつくるしい
むさくるしい

の<くるしい>は<くるしさ>よりは不快感を示しているといえる。

話がまたそれだしているが<めんどう>にもどると、<やまとことばではなく>と書いたが、めんどう(面倒)の語源、由来を調べてみると、<面倒>は漢字の当て字で<めんどう>はもともとはやまとことばのようだ。ただし語源不詳。<めんどうをかける>、<めんどうをみる>という言い方もある。たしかに中国語で<面倒>は聞かない。<わずらわしい(形容詞>、<わずらわしさ(名詞>に相当する現代中国語はほぼ間違いなく<麻烦(煩)>だ。<麻煩>超高頻度使用語で、これを使わない人はまずいないし、使わない日はまずない。

前回のポストに関連させると<おだやか>な状態を乱すのが<わずらわしさ>、<麻煩>だ。<わずらわしさ>、<麻煩>があると<おだやか>な心はもちろん、平静な、さらのは普通の状態の心も乱(みだ)される。 

日本人も中国人も<わずらわしさ>や<麻煩>は他人が自分にもたらすものと考える。やや宗教的になるが

許せよ、さらば救われん。
善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや。

という逆説的な言葉がある。いろいろ解釈はできるが、

<わずらわしさ>や<麻煩>への対応策としては<気にしない>、<気にかけない>のがいい。だが何もしないのはよくなく、<気にしない>、<気にかけない>で対応するのがいい。

 

sptt

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