Saturday, March 20, 2021

<考える>と<思う>

 

だいぶ前に ” <考える>の語源 ” というポストを書いているが、結論が出ていないので中間報告としている。純日本語(やまとことば)か漢語かポイントになっており、漢語ではないかの立場で話を進めているが、説得力のある説明になっていない

さてやまとことばの<思う>との対比を熟語動詞(複合動詞)で調べてみる。

考え上(あ)がる(まれ)- 思い上がる
考えあぐねる - 思いあぐねる(まれ)
考え当たる(まれ) - 思い当たる
考え起(お)こす(まれ) - 思い起こす
考え返す(まれ) - 思い返す
考えきる - 思いきる
考え込(こ)む - 思い込む
考え過ごす - 思い過ごす
考え立つ(まれ) - 思い立つ
考え出す - 思い出す
考え立つ(まれ) - 思い立つ
考えつく - 思いつく
考え尽(つ)くす - 思い尽くす(まれ)
考え続ける - 思い続ける
考え詰(つ)める(まれ) - 思い詰める
考えとどまる(まれ) - 思いとどまる
考え直(なお)す - 思い直す
考え抜く - 思い抜く(まれ)

考え残す(まれ) - 思い残す   <思い残す>は慣用表現で、 <思い残る>が正しいだろう。
考え悩む(まれ) - 思い悩む
考え始める - 思い始める

考えめぐらす(まれ) - 思いめぐらす

 (追加予定)

おもしろいのは<考えxxxx>と<思いxxxx>で同じ意味になるのがほとんどないことだ。 つまりは<考える>と<思う>はほとんどまったく違う意味を持っているということになるのか?また<思いxx>の複合動詞が多いのがめだつ。

まったく同じではないが、同じような意味になるのは

考えつく - 思いつく
考えめぐらす - 思いめぐらす

デカルトの

われ思う、ゆえにわれあり。

われ考える、ゆえにわれあり。

はほぼ同じトみていい。個人的には理屈っぽい哲学では<われ考える、ゆえにわれあり>の方がいいと思うが、なぜか<われ思う、ゆえにわれあり>が流通している。誰が訳者か知らないが、簡単なようで、実際はいろいろ考えた末の訳だろう。

したがって<考える>と<思う>は基本的に違うが、オーバーラップするところが少しありそうだ。ここでは詳しく検討しないが<思う>と少しオーバーラップするところがある<感じる>がある。こちらの方は<思う>よりもさらに感覚、感情に関連している。以前に ” 感覚動詞-<感じる>の語源 ” というポストを書いている。<感じる>はまちがいなく漢語の<感>由来の動詞だ。

<考える>、<思う>は自動詞か、他動詞かは大きな、おもしろい問題だ。文法事項なので、詳しくは別のところで検討するが、日本語では

日本語を考える。   <を>とる、<を>がとれるので他動詞。

日本語ついて考える。  自動詞

一方英語は

 to think Japanese はダメで、to consider Japanese ならいいことになっている。

to think about Japanese これはいい。そして to think は自動詞。また辞書によっては to think about を他動詞扱いにしている。

to consider Japanese の意味はほぼ to think about Japanese と同じだろう。

英語で次のような場合には他動詞とみなしている。

I think it easy. それはやさしいと考える
I think that this is easy.   それはやさしいと考える
What do you think ?   (君は)どう考える   How do you think ? というのも聞くが、何かおかしい。In what way do you think ? のように聞こえる。
I did not think how I should have done it. どうすべきかを考えなかった。

英語では to think は<自動詞と他動詞の間をふらふらしている>、<ときに自動詞ときに他動詞となる>ようだ。

 さて<考える>と<思う>の違いの話にもどると、<考える>を<思う>で入れ替えてみる。

日本語を思う。

日本語について思う。 

 となるがいづれも

<日本語を考える>、<日本語ついて考える>とニュアンス、さらには意味が違う。 

もし

あなたは日本語をどう思いますか?

と問われたら、どう答えるだろうか?

想定される答えは

(学ぶのが)むずかしい、やさしい言葉です。 

だろう。日本語に興味があれば

二音節が多い言葉です。二音節の名詞、動詞が多い言葉です。
助詞があり、この使い方が難しい言葉です。

と答えるかもしれない。

一方 

あなたは日本語をどう考えますか?

と問われたら、どう答えるだろうか?

想定される答えは、少し考えてから、少しあらたまって

すみません。あらたまって考えたことはありません。 

がかなり高い確度で考えられる回答だ。

考える - 頭を使う。ロジック(論理)を使う。理性による。
思う - 心、感情を使う。直観による。
感じる - 感覚、感情を使う(による)。 これはここでは検討しない。

という分類がある。

考える - 時間をかけて決定する(決める)。あれこれ考える。考え直すのには時間がかかることが多い。
思う - 短い時間で決定する(決める)。 思い直すには概してあまり時間がかからない。

という分け方も考えられる。 これと関係があると思うが

<考えた>、<思った>あとに判断や決定や結論がでてくる。普通の生活ではこのあとに<実行>がくるのだが、<考えても>実行されない、実行する必要がない場合が多い。一方<思った>あとの判断や決定は、意識的、無意識的に実行に結びつく場合が多い。これが一番大きな違いではないだろうか?これは<思う>が純やまとことば、<考える>はかなりの確度で漢語由来ということにねざしているのではないか。概して、理屈っぽい人は行動力に欠けることが多い。

sptt


 

 


 

 

英語は上と同じになるだろう。つまり to think は <考える>と<思う>を兼ねていることになる。

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