微分、変化率のやまとことばは以前に考え、 どこかで書いたような気がするが、タイトルに微分、変化率がないので簡単に探せない。今回それらしき言葉に遭遇したので忘れないうちにタイトル ”微分のやまとことば<め>” として書いておくことにした。
前回のポスト ”<よわりめにたたりめ>と<なきめをみる>” で
”
弱る(よわる) - よわり(連用形の体言、名詞用法) + め
この形の造語には(少し探してみたが、多くはないようだ)
落ちる - 落ちめ
勝つ - 勝ちめ
泣く - 泣きめ
控える(ひかえる) - 控えめ
がある。共通点が見つけにくいが、. . . .
”
と書いた。気になったので、このあともう少しよく探してみた。今回は手もとの辞書(三省堂新明解6版)も利用した。重複するが、上の五つもふくめて並べてみる。
上がる - 上がりめ (辞書から) これは意味がよくわからない。
落ちる - 落ちめ
折る - 折りめ
変わる - 変わりめ(<季節の変わりめ>として辞書にもあった)
勝つ - 勝ちめ
効(き)く - 効きめ
(けつ?) - けじめ (けぢめ)
さける(割ける) - さけめ
死ぬ - 死にめ (辞書から)
つなぐ - つなぎ目
泣く - 泣きめ
抜く - 抜けめ <抜けめない>、<抜けめなく>は慣用句だ。
控える(ひかえる) - 控えめ
見(み)る - 見め、 見ため
結ぶ - 結びめ(辞書から)
弱る(よわる) - よわりめ
分かれる - 分かれめ 昔の紙芝居では<ここが運命の分かれめ>という口上があった。
割れる - 割れめ (辞書にもあった)
(追加予定)
例の数は増えたが依然共通点が見つけにくい。そこで手もとの辞書の<め>の解説の助けを借りると
”
め:造語(造語成分)
1)一見(比較的に)そういう傾向や性質を持っていいることを示す。
例: 長め、少なめ
2)他との区別や違いが目立つ時(所)
例: 上がりめ、死にめ、結びめ、割れめ
3)状況が転換する決定的な時点
例:落ちめ、カネの切れめ、季節も変わりめ、弱りめ、死にめ
4)そのものの存在が許される限界点
例: 文(あや)め、筋め、さかいめ、役目(やくめ)
”
1)一見(比較的に)そういう傾向や性質を持っていいることを示す。
例: 長め、少なめ
は形容詞についてと言える。
控える(ひかえる) - 控えめ
はこの造語タイプ<動詞連用形+め>だが、意味は<そういう傾向や性質を持っていいることを示す>だ。<控えた>が形容詞相当の修飾形。その語幹が流用された、と見る。
参照: sptt Notes on Grammar " <み>語尾の文法分析 ”。
2)他との区別や違いが目立つ時(所)
例: 上がりめ、死にめ、結びめ、割れめ
ここに<上がりめ>がある。 意味がよくわからなのでネットで調べてみると
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E4%B8%8A%E3%81%8C%E3%82%8A%E7%9B%AE/
”
2 物事の上がりはじめの時。また、そのような状態や兆候。<-> 下がりめ
”
という解説がある。これは大いに参考になる。<下がりめ>も<下がる - 下がりめ>で同じ造語方法だ。これにならうと、<登りめ、下(くだ)りめ>があってもいい。
<動詞連用形+め>ではないが、意味的にはこのグループにはいる<ふしめ(節め)>がある。
3)状況が転換する決定的な時点
例:落ちめ、カネの切れめ、季節の変わりめ、弱りめ、死にめ
2)で出てきた<死にめ>がここにも出てくるが、<状況が転換する決定的な時点>ではある。<カネの切れめ>、<季節も変わりめ>も<状況が転換する決定的な時点>でいいが、<落ちめ>、<弱りめ>は少しずれているようだ。前回のポストでは次のように書いた。
落ちる - 落ちめ (落ちがち、落ちる傾向にある。かなり落ちた状態)
よわりめ - 弱りはてた状態
”
いづれも<<状況が転換する決定的な時点>というよりは
落ちめ -かなり落ちた状態 -> 極限に近い落ちた状態
よわりめ - 弱りはてた状態 -> 極限に近い弱った状態
の方が意味がよく通じる。
4)そのものの存在が許される限界点
例: 文(あや)め、筋め、さかいめ、役目(やくめ)
<そのものの存在が許される限界点>はすごい定義だが、限界点は上の極限に近い。したがって<落ちめ>も<よわりめ>もこのグループに入れた方がよさそう。< 筋め、さかいめ>関連では<折りめ>、<割れめ>がある。これはは<2)他との区別や違いが目立つ時(所)>とも言える。
<3)状況が転換する決定的な時点>にある<カネの切れめ>は、<そのものの存在が許される限界点>ともいえる。一方<(肉、刺身、豆腐などに)切れめを入れる>とういうのがある。こちらの方は2)他との区別や違いが目立つ時(所)、がちかい。
<めいっぱい>の<め>はまさしく限界点だ。
<文(あや)め>はよくわからないのでネットで調べてみると、
”
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%96%87%E7%9B%AE/1 織物や木目 (もくめ)などに現れた模様。いろどり。あや。
2 (多くはあとに「知らず」「分かず」「見えず」などの語を伴って用いる)
㋐物の区別。見分け。けじめ。
㋑物事の筋。道理。条理。分別。
「何の―も知らぬ賤 (しづ) の男 (を) も」〈源・胡蝶〉
”
とある。 これからすると<あやめ>は<そのものの存在が許される限界点>に相当するものはない。むしろ手もとの辞書の
2)他との区別や違いが目立つ時(所)
が相当する。
<役目(やくめ)>も<そのものの存在が許される限界点>とはすぐに結びつかないので解説が必要だ。
<役め>の役は<役を務める>の<役>だ。<役を務める>とは言い換えると<役をはたらく>。<はたらく>、<仕事をする>以外に
この薬ははよく効(い)く。
と同じような意味で
この薬ははよくはたらく。
とも言える。<効く>はこの造語法で<効きめ>がある。<役め>は<はたらきめ>に相当するといえるのではないか?では<効きめ>とはどういう意味か。手もとの辞書の4っつの定義にあてはまらない。そのためか<効きめ>は例に出てこない。参考になるのは、ネット辞書の<上がりめ>の次の解説。
”
2 物事の上がりはじめの時。また、そのような状態や兆候。<-> 下がりめ
”
<効きめ>は<効き(効く具合、度合)>の<はじめの時、その状態や兆候>と言えないか?そうすると、<役め>は<役の務まり(具合、度合)>の<状態や兆候>となる。さて
3)状況が転換する決定的な時点
4)そのものの存在が許される限界点
は微分、変化率を連想しないか?
3)状況が転換する決定的な時点 - 変化率がゼロになるところ。4)そのものの存在が許される限界点 - 限界点を極限とすると、微分は極限操作をする。
特に<変わりめ>の<め>は微分のコンセプトに近い。変化そのものではなく変化率に<目が行っていた>らすごい。
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追記
この<め>を調べているうちに、この<め>と<目>の混乱、あるいはオーバーラップがあるような語、言い方に遭遇した。コンピュータわワープロでは、例文、例語の<め>はほとんど<目>で出てくる。日本語のためには<め>と<目>は分けるべきだ。<目>は微分とはほとんどまったく関係がない。
<め>の解説文の中にもある。
<目立つ>
2)他との区別や違いが目立つ時(所)
の<目立つ>。<目立つ>は<目が立つ>ではなく<目に立つ>、<目に立って見える>だろう。モノが立てば<目立つ>。だが、<め>自体に<目立つ時(所)>の意があっても、いいだろう。<目立つ時(所)>が<立つ>となってしまうが、<め>の一語、一音節ではすぐには<目立つ時(所)>は思いうかばない。
<けじめ>
<あやめ>の解説に
㋐物の区別。見分け。けじめ。
がある。<けじめ>の語源はよくわからない。<け>+<しめ(る)>でも説明がつきそうだが、<けじめ>は<けぢめ>だろう。<動詞連用形+め>の造語法を使うと
(けつ?) ー>五段(4段)活用として<けち>+<め>で<けちめ>。これが<けぢめ>に変わった。だが<けつ>というやまとことばの動詞はすぐには思いうかばない。漢語では<決(けっ)する>の<決(けつ>がある。手もとの辞書の<め>解説に
3)状況が転換する決定的な時点
例:落ちめ、カネの切れめ、季節の変わりめ、弱りめ、死にめ
というのがある。 <決(けつ>は決定の<決>だ。<けぢめをつける>の意味と結びつく。だが<決<決(けっ)する>が<けち>となるにはかなりな飛躍だ。だが長い言葉の歴史でではまったく否定することはできない。
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見ため
<見ため>は外見のことだが、<見た目>では何のことかわからない。 <動詞連用形+め>の造語法を使うと
見(み) + め -> 見め
で<見め>は<見ため>と同じような意味になるが、現在では<見ため>に比べる使用頻度はかなり落ちる。<見る目>はまた違った意味になる。<見た>は<見る>に<過去、完了の助動詞>と言われる<た>がついたもの。<た>の連用形は<て>で<た>ではない。だが<め>を体言(名詞)とすると、<見ため>は<た>の連体形<た>に<め>がついたものと解釈できる。
めど(目途、目処、目度)
<めどをつける>の<めど>。この<めど>も<め>は<目>でない。このポストの<め>だ。手もとの辞書の
2)他との区別や違いが目立つ時(所)3)状況が転換する決定的な時点
4)そのものの存在が許される限界点
のいずれもが該当するスーパー<め>だ。 漢字の方は
め途(と)
め処(どころ)
め度(ど)
などがあるが<処(どころ)>はやまとことばだ。だが<ところ><どころ>が<ど>、あるいは<めどころ>が<めど>にになるだろうか? <め途(と)>、<め度(ど)>とすると、湯桶読みになり<めど>は純やまとことばでなくなる。<めど>は、おそらく、<めほど>の<ほ>が抜けたものだろう。<ほ>は気合を入れて発音しないと聞こえなくなる。
<め>+<ほど> -> めほど -> め(ほ)ど -> めど
<ほど>も重要なやまとことばで<かなり許容差のある特定の範囲>を示す。 微分とはむしろ対称的な概念で
かなり許容差のある特定の
2)他との区別や違いが目立つ時(所)
3)状況が転換する決定的な時点
4)そのものの存在が許される限界点
ということになり、<ほど>をかなり的確に説明できる。
目盛り
<目盛り>の<め>も<目>ではうまく説明がつかないが
2)他との区別や違いが目立つ時(所)
でうまく説明できる。したがって<め盛り>がいい。<めもり>だと<メモリ>と混同されるおそれがある。<め盛る>という動詞もある。<め盛りをつける>の意なので<盛(も)る>に<つける>の意があることになるが、これは変だ。ネット辞書で調べると
<盛る>には
sptt
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