<はぶく>はコンピュータワープロでは<省く>とでてくるが、何かしっくりしない。 <省>が強く<省略>や<反省>を連想させるからだろう。やまとことば<はぶく>は漢語<省略>で置き換えられると思うが、<はぶく>と<省略>では意味あるいはニュアンスに違いがありそうなので、思うが念のためチェックしてみる。
ネット辞書のWeblioでは
はぶ・く【省く】
[動カ五(四)]
2 全体から一部を取り除く。減らす。また、節約する。「手間を―・く」「時間を―・く」
3 分け与える。
[可能] はぶける
となっている。3)分け与える>は古語だが初めて知った。
<ぶく>がつく語を探してみる。
あぶく(名詞) - <ぶくぶく>という擬音語(擬態語か)がある。<吹く>が連想される。
いぶく(息吹く)
うそぶく(嘯く) - 漢字の<嘯く>が読める人、書ける人はそう多くないだろう。これも<吹く>が連想される。
はぶく
ふぶく(吹雪く) -<息吹く>からすると<ふぶく>は<吹吹く>ではないか?
やぶく
<はぶく>が関連ありそうなのは<やぶく>だけで、他は<吹く>関連だ。
意味にもどると
1 不要のものとして取り除く。「説明を―・く」
では<不要なものとして>が肝心だ。ただ<取る、取り去る>、<除く>ではない。<のぞく(除く)>一般的、中立的な意味をもつ。
2 全体から一部を取り除く。減らす。また、節約する。「手間を―・く」「時間を―・く」
これは
2-2 (あるいは独立させて) 3. 節約する。「手間を―・く」「時間を―・く」
と分けるべきだろう。
2-1 <全体から一部を取り除く>はかなり一般化された表現で、そのままでは<はぶく>にならない。
2-2 <手間をはぶく>、<時間をはぶく>は節約だろうか?<節約>は基本的に不具合、不便(ふべん)なしでメリット(多くは金銭的価値のメリット)が期待されるが、<手間をはぶく>、<時間をはぶく>はメリットが前面に出てこない。場合によっては相手、他人に迷惑がかかる。<はぶく>は節約する(to save)ではない。中国では<省時>という表現がある。これは to save time だろう。ここでも肝心なのは<不要なものとして>してだが、だれが<不要なものとして>と考えるかが問題だ。
太郎が(花子の作文を読んで)花子に<このところはぶいてしまえ。>と言った場合、太郎は<ある箇所を不要なものとして(考えて)>いるが、花子は往々ににして<(その個所を)不要なもの>とは考えていない。極端になるが世に中に<不要なもの>はないとすると<はぶく>は意味がなくなる。反対の極端はミニマリズムで、<不要なもの>をできるかぎり除いた(つまりは<はぶいた>)ところに美がある、と考える。したがって<はぶく>はミニマリズムのキーコンせプトだ。だが、これまた何を<不要なもの>と考えるかで段階がある。極端すぎると美をうしなう。ミニマリズムの美やエレガンスは<要-不要>の微妙なバランスが生み出す。
<反省>相当のやまとことばに<かえりみる>がある。<かえりみる>は<返り見る>だが、<かえりみる>はコンピュータワープロでは<顧みる>、<省みる>とでてくる。一方<かえりみない>は<反省しない>というよりは<無視する>、すなわち<考えない(考慮しない)、見ない>ことだ。ここで<はぶく>にもどると、不要なものとして -> 必要なものとして考えない(考慮しない)、見ない
はもちろん、もっと一般てきな
xx を考えない(考慮しない)、見ない、を適用すると
手間をはぶく = 手間を考えない(考慮しない)、見ない
時間をはぶく = 時間をを考えない(考慮しない)、見ない
とる。これはあきらかに<手間を節約する>、<時間を節約>ではない。
<はぶく>と似て非なるやまとことばとして<はしょる>と<きりつめる>がある。
<はしょる>は<端折る>、(長いモノの)<端を折る>で、端を折り取って短くすることだ。<話をはしょる>とか<はしょって話すと>のように使う。今は<簡単に話す><てみじかに話す>が優勢のようだ。
不要なところははしょって
はややおかしい。
不要と思うところははしょってあまり重要でないところははしょって
なら自然だ。これは<はぶく>でも同じだろう。
<きりつめる>は<切り詰める>で、(長いモノの)一部またはところどころを切り取り、さらに切り取ってあいたところは詰めて短くすることだ。こうすると連続がたもたれる。<はしょる>よりも高度な手法で(長いモノのを)短くする。<生活を切る詰める>、<家計を切る詰める>のように使うがかなり高度なやまとことばと言える。
sptt
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