Sunday, July 18, 2021

とぐろを巻く

 

<とぐろを巻く>はたまに聞く程度だが、死語ではない。 <とぐろを巻く>の<とぐろ>は<と>(接辞)+<ぐるぐるまき>の<ぐる>か。だがこれでは何のことだかわからない。だが<とぐろを巻く>はヘビが、自分の体を<ぐるぐるまき>にして休んでいる、ことのようだ。これが比喩的に、何もしないでひとところにじっとしている、の意で使われてきたという(ネット語源辞典)。ヘビには気の毒だが、だいたいよくない意味で使われる。逆説的になるが、<とぐろを巻く>が安心して使われるのは<とぐろ>が何だかわからないからかもしれない。

さてここで問題にしたいのは、正確にはヘビが<とぐろ>を巻くのではなく、ヘビが自分の体を<ぐるぐるまき>にしてできるのが<とぐろ>、自分の体を<ぐるぐる巻いて>できるのが<とぐろ>であって、ヘビは<とぐろ>を作るわけではないことだ。ヘビに意識があるとすれば、ヘビは意識して<とぐろ>を作るわけではない。結果としてとぐろができるのだ。<とぐろ>状態になるには何かわけがあるだろうが、ここでは詮索しない。人の最善の防御方法として<自分の体を丸くする>があるので、ヘビが<とぐろを巻く>のは最善の防御方法なのかもしれない。人が<自分の体を丸くする>は言い換えると<丸(丸まる>で、できないことはない。昆虫で丸虫というのがいて、自分の体を丸くする。いづれにしても外界と接する表面積は最小になるので、道理はある。<丸虫が丸くなる>を言い換えると<丸虫が身を丸くする>、さらに大幅に言いかえると<<丸虫が団子を丸める>で、これは<ヘビがとぐろを巻く>にかなり近い表現だ。丸虫はヘビほどきらわれていないので、中立の表現ができる。<子供が公園のすみで団子を丸めている>。

同じではないが、似たような言い方を調べてみた(最近たまたまみつけたのが多い)。

腰をぬかす。

これは専門家か実際に<腰をぬかした人>にしか説明できないだろ。これは<腰をぬかそうとして>腰をぬかす人はいないといってよく(相当に苦痛をともないそうだ)、実態としては<腰がぬける>のだ。

骨を折る

<骨を折る>は比喩的に使われるところは<とぐろを巻く>に似ている。実際に<骨を折る>のではない。実際に折ろうとして<骨を折る>人はこれまたごくまれで、これまた相当に苦痛をともないそうだ。実際には<骨が折れる>で、相当に苦痛をともなうが、予期せぬ事故とし発生する。<骨が折れる>ももっぱら比喩的に使われる。

指を切る

も<骨を折る>に似たところがある。もちろん切ろうとして自分の指を切る人はまれで、予期せぬ事故とし発生する多くは<切りきず>を作る程度で、<指を切り落とす>の意味にはならないだろう。

 トゲを指す - これはかなり前にべつのポストで論じている。 

胃潰瘍(いかいよう)をおこす。(下痢(げり)をおこす)

<胃が潰瘍をおこす>は文法的に変ではない。

太郎が(は)胃潰瘍をおこして入院した。

これももちろん胃潰瘍になろうとして胃潰瘍をおこすわけではない。結果として胃潰瘍になるところは、ヘビが体をぐるぐる巻いて、結果としてとぐろになるのと一緒だ。 <下痢(げり)をおこす>も同類だ。

<おこす>は<起きる(起こる)>の他動詞形だが、どうも自動詞の意味<(結果として)xxになる>が強く残っている。

クルマがエンコ(エンジン故障)をおこす

以上は似てはいるが<とぐろを巻く>と同じ言い方ではない。

<のり巻きを巻く>という言い方がある。 ご飯をのりで巻いたものが<のり巻き>なので、<のり巻き>が<とぐろみたいなもの>なら<とぐろを巻く>と同じ言い方になる。だが大きな違いがある。<のり巻き>は<人がご飯のりで巻く>。一方<とぐろを巻く>は<ヘビが自分自身の体を巻く>ことだ。<とぐろを巻く>と同じになるためには<ご飯のりで自分自身を巻く>必要がある。

焼もちを焼く

<焼きそば焼く>とはいわないが(焼きそばは実際<焼く>というよりは<炒(いた)めるだ)、<焼きもちを焼く>と言い方がある。これまたなぜか使い方はほぼ比喩100%だ。 実際のもちなら<もちを焼く>だ。<もちを焼いて>できたのが<焼きもち>なので、これまた<焼きもち>が<とぐろみたいなもの>なら<焼きもちを焼く>は<とぐろを巻く>と同じ言い方になる。だがこれも人がもちを焼くので<とぐろを巻く>とは基本的に違う。

餃子(ぎょうざ)を包む

日本では餃子は作るもの(餃子を作る)だが、中国では<餃子を包む(包餃子)>という。これは具を餃子の皮で包んでつくる。出来上がったもの、結果として出来上がるものが餃子だが<包餃子)>という。この場合<包>は他動詞か、はたまた to become のような自動詞か?

折り紙を折る

 これは普通<折り紙細工作品を作る>と言う意味で、材料の<色のついた四角い紙を折る>の意味ではない。これは上の<<餃子を包む(包餃子)>ににている。

 

<ヘビがとぐろを巻く>、<丸虫が団子をつくる>は一種の<自動詞->他動詞>変換表現だ。

ヘビがとぐろになる。 <-  ヘビがその身をぐるぐる巻いてとぐろになる。
丸虫が団子になる。  <-  丸虫がその身をまるめてて団子になる。

これはイタリア語の再帰動詞用法による<他動詞->自動詞>変換に似ている。

 

sptt

 

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