<かねる>と<かねない>はかなり複雑。
大は小をかねる。
これはたとえば、
子供の服は大人が着られないが、大人の服は子供が着られる。
これは<大は小を含む>に包含関係で説明できるが、<かねる>の意味からすると
大きな服は大人用にも子供用にもなる。
が正しい。
太郎は大会社の会長と社長を兼ねている。
次郎は零細企業の社長と平社員を兼ねている。
花子はOLと主婦を兼ねている。
が例で、これからすると<かねる>は<二つ以上の機能を果たす>。<二つ以上>なので<三っつ>、<四っつ>の機能を果たすことにも<かねる>が使えそうだが、大体は<二つだ>。たくさんの機能を果たすでは英語に multi-function, multi-functional (多機能)という言葉がある。聞こえはいいが、たいしたことはない。スイスアーミイナイフは寄集めで純多機能とは言い難い。
<かねる>の基本的な意味は上記のようになるが、日本語では<xx かねる>という言い方があり日常そこそこ使われる。
xx しかねる
xx とは言いかねる
その申し出は受け入れかねる
手もとの辞書で<諸般の事情でxxできないこと>というようなことが書いてあり、これでよさそうだが
それはできない
と
それはできかねる
の違いをどう説明したらいいのか。 例を続けると
見るに見かねて(助けてやった)待ちかねる
その説明はわかりかねる
そんな情報は知りかねる (知らない、知っていない、知ることができない、私とは関係ない、etc)
の<かねる>の説明もそう簡単ではない。さらにやっかいなのは<xx かねない>で
しかねない、やりかねない言いかねない 、言い出しかねない
家出しかねない 家出しかねる(ほぼダメ)
災害がおこりかねない 災害がおこりかねる(ダメ)
思わぬ事故がおこりかねない 事故がおこりかねる(ダメ)
こんな売り上げでは社長がおこりだしかねない。 社長がおこりだしかねる(ダメ)
待ちかねる -> 待ちかねない、 これでは一日中、一生待ちかねない。
見るに見かねて -> 見かねない(?) 見るに見かねることができない(?)
その説明はわかりかねる -> わかりかねない 誰かにわかってしまいかねない
そんな情報は知りかねる ->知りかねない 敵がその情報を知りかねない
手もとの辞書で<諸般の事情でそうなってしまう>というようなことが書いてあるが、イマイチだ。元の動詞<かねる>との関連がないのだ。
さて<それはできない>と<それはできかねる>の違い
<それはできない>は単純にそのまま解釈していいだろう。<それはできかねる>は
(できない諸般の事情があるので)できない。
というよりも
(それはできるが、できない諸般の事情があるので)できない。
のほかに
(それはできるが、、したくないので)できない。
の意味がありそうだ。 だがこれだと
できるのに<べきない>とはいったいどういうことだ?
と言われそう。答えるとすれば
できない諸般の事情があるのだ。
したくないのだ。
になるだろう。
もう少し考えて、<かねる>にもとの意味に関連して二者選択のジレンマ、二股膏薬(こうやく)=どっちつかず 、のような状況を考えてみよう。
その申し出は受け入れかねる。
は結局、つまるところは拒絶、
その申し出は受け入れない、受け入れられない。
なのだが<受け入れかねる>では<かねる>があるので、この場合はまったく表面に出てこない、意識もされないが
<受けれる>と<受け入れない>の間を行ったり来たりしている、言い換えると<受けれる>と<受け入れない>を<かねた>状態をしさしているのではないか?
その申し出は受け入れかねる。 ->その申し出は<受け入れる><受け入れない>をかねている。したがって結論は出ない。あるいは<受け入れない>のではないが、そうかといって<受け入れる>わけでもない、といった ambilalent (二股膏薬(こうやく)=どっちつかず)、ambiguous (あいまいな)な状態をしさしている。ちなみに ambi = both という説明がある。
さて次は<かねない>。<かねない>もこの<かねる>にもとの意味を考えれば、かなりすっきり説明できる。<かねない>は<かねる>の否定なので< ambilalent (二股膏薬(こうやく)=どっちつかず)あ>の否定だ。そうすると<どっちつかずの結論が出ていない>状態ではなく、どちらか(一つ)の方に大きく傾いた状態。どちらか(一つ)の方になる可能性が大きい、確率が高い状態、優勢。このような状態が<かねない>なのだ。英語で predominant という形容詞がある。チェックしてみると、most probable (可能性が大きい、確率が高い)というのもある。
sptt
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