Wednesday, December 24, 2025

<たしなむ>と<たしなめる>


<たしなむ>と<たしなめる>は似ているが、意味は大きく違い、同じグループとは思えない。

<たしなめる> は<注意する>に近く、たいていは<xxしないようにたしなめる>で、<xxするようにたしなめる>は何かおかしいが、ダメではない。たとえば<もっと細かい点に注意するようにするようにたしなめる>は問題ない。しかしこの発話の背景には<これまで細かい点に注意しなっか>という、否定的、批判的な見方がある。

<たしなめる>は英語で言えばt o reprimand, to reproach というややかしこまった語があるが、to scold (しかる) , to blame (非難する)でもよさそう。

一方<たしなむ>だが、これは難しい。

酒をたしなむ   太郎は適度にたのしむほどに酒を飲む。

茶道をたしなむ  花子は適度にたのしむほどに茶道をする。

で<を>をとるので他動詞のようだ。だが積極的に対象に働きかけて酒を飲む、茶道をするわけではない。場合によっては

太郎は酒にたしなんでいる。
花子は茶道にたしなんでいる。

も可能ではないか? 古語をチェックしてみると

学研全訳古語辞典

たしな・む 【嗜む】

他動詞マ行四段活用

活用{ま/み/む/む/め/め}

① 好んで精を出す。心がけて励む。

出典徒然草 一八八

「いよいよよくしたく覚えてたしなみけるほどに」

[訳] ますます上達したくなって、好んで精を出していた間に。

② 心がけて用意する。

出典猫のさうし 御伽

「檀那(だんな)をもてなさんとて、煎(い)り豆・座禅豆をたしなみ置けば」

[訳] (僧が)信者をもてなそうと思って、煎り豆・座禅豆を心がけて用意して置くと。

③ 慎む。さしひかえる。

出典西鶴織留 浮世・西鶴

「惣(そう)じて女、たしなむべきは言葉なり」

[訳] だいたい女が慎むべきは言葉である。


① 好んで精を出す。心がけて励む。

は現代語とはずれている。むしろ

積極的に対象に働きかけて酒を飲む、茶道をする

に近い。だが、<xxに精を出す>、<xxに励む>で<に>をとる。

③ 慎む。さしひかえる。(近代語か?)

は<たしなみ>の意に近い。

 

<たしなむ>の語源は、諸説あるが、<たし>は欲望を表す助動詞「たい」。<なむ>は<なし>という説があるが、<なむ>は助詞で

学研全訳古語辞典

なむ

係助詞

《接続》体言、活用語の連体形、副詞、助詞などに付く。連用修飾語に付くときは連用形に付く。

①〔強意〕文中に用いられて、その付いた上の語句を強調する。文末の活用語は連体形で結ぶ。

出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち

「その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける」

[訳] その竹の中で、なんと根もとが光る竹が一本あった。

②〔余情〕「なむ」を受ける結びの「ある」「言ふ」「侍(はべ)る」などを省略した形で余情を表す。

出典源氏物語 桐壺

「かかる仰せごとにつけても、かきくらす乱り心地になむ」

[訳] このようなお言葉につけても、心が暗み取り乱した気持ちでございますよ。

とある。

②〔余情〕を応用すると、<xxしたい>+<余情>で、<xxしたいもの (だ)>で過度に、やみくもに、積極的に<したがる>のではなく<適度にたのしむほど (にする)>の意になり、かなりのこじつけけだが、つじつまが合う。

<たしなめる> に戻ると、<たしなめる>は<たしなむ>の使役で、過度に、やみくもに、積極的にしたがらずに、<適度にしたがるよう>にさせる、注意するで、これまたつじつまが合う。

ところで<たしなむ> の英語相当語を探して見たが、適当なのがない。一語ではムリだろう。

太郎は酒をたしなむ。 Taro moderately drinks Alcohol and enjoys it.. 

花子は茶道をたしなむ。 Hanako practices Tea Ceremony from time to time and enjoys it.. 

 

ところで、チェクしている時に、意外な発見をした。<たしなむ>が<日本人の美意識を反映している>というもの。Ai Overview で出てきたようなするが、更新されてもう出てない。

 

 sptt

 

 

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