Sunday, December 14, 2014

<届(とど)く>と<達する>


<届く>で<とどく>と読むが、これは純やまとことば。<達する>は漢語由来の日本語だ。ほとんど意識しないが使い分けがあるようだ。

 <とどく>は

1)手紙がとどく、荷物がとどく
2)棚の上の荷物に手がとどかない。たこたこ天までとどけ(<上がれ>はおかしい)。

1)と2)は日本語では同じだが、英語では1)は大体 to arrive 2)は to reach だ。

一方<達する>の方は

合格の70点に達する、達しない
限界に達した

と漢語との相性がいいようだ。こちらのほうは大体 to reach で to arrive では変だ。

どこが違うかと言うと

1)手紙がとどく、荷物がとどく

はモノが<やって来る>、人が関与しない。<太郎がとどいた>変だ。英語では Taro has arrived. でいい。いずれにしても純自動詞的だ。

 これに対して2)棚の上の荷物に手がとどかない(天までとどけ)、合格の70点に達する(達しない)、限界に達した、は目標のようなものに<やって行く>と言える。また人が関与してもおかしくない。

 複合動詞

とどけ出る  -> とどけ出
つけとどける -> つけとどけ


他動詞は<とどける>。体言(名詞)形は<とどけ>(命令形の<とどけ>とはイントネーションが違う。



 sptt



Sunday, November 30, 2014

かける, 掛ける、懸ける、 駆ける、賭ける、掻く、書く


このポストは大和言葉を<やまとことば>に換えた以外は sptt Notes on Grammar  <かける, 掛ける、懸ける、 駆ける、賭ける、掻く、書く>(初回2012・11・19)のコピー。やまとことばの特徴をのべているのと文法事項がほとんどないのでこちらペイストした。

<かける>は相当にいろいろ違った意味があり、調べるとまるでワンダーランドにはいり込んでしまったような感覚になる。

1.<かる>の<け>に イントネーションがあるもの (東京アクセント)

1)掛ける
2)懸ける
3)駆ける
4)賭ける
---
5)掻く
6)書く

<掛ける>と<懸ける>が同類のようだが、他は関係なさそう。<掻く>と<書く>が同類であるのは前回のポストで次のように書いた。


線を<かく、書く、描く>という言い方もあるが、この<書く>は曲者で、漢字で<書く>と書くとなにか文明を感じさせるが、もとはといえば<引っかく>の <掻(か)く>で、<引き><掻く>だ。<書く>と<掻く>は同源だろう。したがって、字を<書く>のも基本的な動作は<引く>だ。大昔は<引っ掻いて> 線や、絵や、字を<かい>たのだ。


ただし、<掻く>も<書く> 上記の<掛ける>、<懸ける>、<駆ける>、<賭ける>とは関係なさそうだだが、本当は深い関係がある。やまとことばのおもしろいところだ。ただし、かなり込み入っている。

1)掛ける <to hook>、2)懸ける <to hang>

 英語ではごく大雑把に <to hook>(掛ける) と <to hang>(懸ける)の区別があるようだ。

to hook  - 何か(鉤のようなものが代表)に<かけて>引く動作。引っかける。自動詞であれば<かかる>、<引っかかる>。

to hang  - 何か(鉤のようなものが代表)に<引っかけて>吊り下げる動作。自動詞ではれあば<かかる>、<吊り下がる>。<to hook>はなまって、あるいは耳で聞いた発音で日本語では名詞の<ホック>になっている。

<ホック>は鉤で<かぎ>と読むが、<かく>の関連語だ。鍵(かぎ)も関連語で<鍵をかける>という。においは鼻に<引っかかる>ので、<かぐ>も関連語か。

<吊り下げる>の反対語は<吊り上げる>だが、魚は<釣り上げる>だ。<吊る>も<釣る>も語源は同じで、何かに<引っ掛け>ないとできな作業、動作だ。これから見ても、<引っかける>さらには<かける>は極めて重要な動詞だ。

したがって、さらに大雑把に見れば、<to hook> も <to hang> も<かける>でよさそうだ。

例文はいくらでもある。

いすに腰を掛ける。 (座るでもよい)
橋を掛(懸)ける。 (座るではだめ。据えるならよさそうだ)
はしごを屋根に掛ける。
屋根を掛ける。

虹がかかる。 (虹は掛けるわけにはいかない。)
雲が山の上に掛かっている。 (雲も掛けるわけにはいかない。)

時計を壁に掛ける。 関連語:掛け時計。
(耳に)メガネを掛ける。関連語:掛けメガネ。
(鼻に)メガネを掛ける。関連語:鼻メガネ。
衣服をハンガーに掛(懸)ける。関連語:衣紋(えもん)掛(懸)け

<かけて(掛けて、懸けて)> 安定させる。 座り(すわり)をよくする。 to sit, to set, to place, to stabilize

---
手を掛ける。手を(引っ)掛ける。関連語:手がける。手掛かり。<手をかける>と<手がかかる>とは別の意味。
足を掛ける。関連語: 内掛け、外掛け、足掛かり。
首を掛ける。首が掛かる。(慣用) <首を懸ける(吊るす)>、<首を賭ける>に近い意味にもなる。
命を掛ける。命が掛かる。 <命を懸ける(吊るす)>、<命を賭ける>に近い意味にもなる。
釣り針に魚を掛ける。 釣り針に魚を引っ掛ける。 釣り針に魚が掛かる。

目を掛ける。 (慣用)
お目に掛ける。 関連語: お目に掛かる。
 xxを鼻に掛ける。(慣用)
思いを掛かける。 通常<思い掛けない>として使う。
<心を掛ける>はあまり聞かない。 xxを心に掛かける。 通常<心掛け>として使う。
<気を掛ける>もあまり聞かない。 xxを気に掛ける、xxが気に掛かる。 関連語:気掛かり

悪事 (ペテン、わな、いかさま、詐欺)にかける。ペテンにかける(かかる).

病気(風邪、心臓病、etc )にかかる。特別な場合を除き、<病気(風邪、心臓病、etc )にかける>とは言わない。<病気(風邪、心臓病、etc )になる>とも言う。

<かけて(掛けて、懸けて)>、(通常の、正常な)動きを止める、止めようとする。<かけ(掛け、懸け)>られて動きが止まる。いづれにしても、何かを<引っかける>、何かに<引っかかる>感じだ。

<医者にかかる>は少し違う。

---
声を掛ける。
気合を掛ける。
号令を掛ける。
気合を掛ける。 <気合を入れる>ではない。
口を掛ける。 (慣用)
目を掛ける。 (慣用)
息を(吹き)掛ける。  <息が掛かる>は慣用もある。
不意打ちを掛ける。

魔法を掛ける。

網を掛ける。 <網にかかる>とは違う。
紐(ひも)を掛ける。 (これは場合によっては、ものがばらばらにならないように<しばる>意がある)
縄(なわ)をかける。
ワナを掛ける。(ワナを<し掛ける>とも言う)
 
賞金を掛ける。

問題を会議に掛ける。
ふるいに掛ける。
はかりに掛ける。

願をか掛ける。
望みを掛ける。

磨きを掛ける。
よりを掛ける。

<かけて(掛けて、懸けて)>何かの効果を得ようとする。 さらに例を挙げて検討を続けてみる。

税金をかける。税金がかかる。
負担をかける。負担がかかる。
重さをかける。重さがかかる。(加わる)
力をかける。力がかかる。
圧力をかける。圧力がかかる。
電圧(電気)をかける。電圧(電気)がかる。

鍵をかける。鍵がかかる。
パーマをかける。 パーマがかかる。
ブレーキをかける。ブレーキがかかる。
エンジンをかける。エンジンがかかる。
電話をかける。電話がかかる。
ラジオ(テレビ)をかける。 ラジオ(テレビ)がかかる。
脅(おど)しをかける。  脅(おど)しがかかる。

上記の<かかる>は状況によって可能とも受身とも自発ともとれる。

効果を得るために何かすることだ。<何かする>とは対象に<働きかける> ことだ。ここが重要なポイント。英語を使えば、最重要動詞は <to apply> だ。 <する>だから<to do>や<to make> でもよさそうだが、<to apply>が適している。作用から効果を得るまでの過程がある。ここがやや複雑なところ。 しつこいようだが、次のようになる。

<魔法をかける>は<魔法にかける>という言い方もある。<かける>の使い方のいい例だ。 英語には to spell という動詞がある。

前述の<医者に掛かる>は<医者に掛ける>ではないが、これだろう。いい効果を期待するのだ。 

力をかけると --> 変位(移動)、変形が生じる。
鍵をかけると --> 戸締りが厳重になる。
パーマをかけると --> 髪が波打つ(美的)効果がでる。その他の効用もあるようだ。
ブレーキをかけると --> 車が止まる。
エンジンをかけると --> 車が始動する。
電話をかけると  --> 離れていても連絡がつく。
ラジオ(テレビ)をかけると --> 番組が聴ける(見られる)。

相手に脅(おど)しをかけると --> やってもらえる。

ある人に魔法を掛けると --> その人をコントロールできる。

次のように見ることも出来る。

力をかける --> 力を用いる(使う) --> 変位(移動)、変形が生じる。
鍵をかける --> 鍵を用いる(使う) --> 戸締りが厳重になる。
パーマをかける --> パーマを用いる(使う)--> 髪が波打つ(美的)効果がでる。
ブレーキをかける --> ブレーキを用いる(使う)--> 車が止まる。
エンジンをかける --> エンジンを用いる(使う)--> 車が始動する。
電話をかける --> 電話を用いる(使う)--> 離れていても連絡がつく。
ラジオ(テレビ)をかけと --> ラジオ(テレビ)を用いる(使う)--> 番組が聴ける(見られる)。
相手に脅(おど)しをかけと --> 相手に脅しを用いる(使う) --> やってもらえる。
ある人に魔法を掛けると --> 魔法を用いる(使う) --> 人をコントロールできる。


用いる(使う)は英語の to use, to utilize, to apply (適用する) が相当する。これは<かける>のかなりの一般化だ。

さらに、ますますしつこいようだが、 次のように見ることも出来る。

力がかからない --> 力が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
鍵がかからない --> 鍵が働かない(効かない) --> 効果が得られない。
パーマがかからない --> パーマが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
ブレーキがかからない --> ブレーキが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
エンジンがかからない --> エンジンが働かない(効かない)--> 効果が得られない。
電話をがかからない --> 電話が働かない(効かない)--> 効果が得られない。
ラジオ(テレビ)がかからない --> ラジオ(テレビ)が働かない(効かない)--> 効果が得られない。
相手に脅(おど)しがかからない --> 相手が働かない) --> 効果が得られない。
魔法がかからない --> 魔法が働かない(効かない) -->  効果が得られない。

少しおかしなところもあるが、これまたかなりな一般化だ。

英語の例

a) <エンジンがかからない>は英語では <The engine does not work.> だ。

b) to apply cream

これは<軟膏(cream )を塗る> こと。目に見えるのは<塗る>ことだが、目的は皮膚の不具合を治すことだ。治るまでには時間がかかる

to apply (force, etc) to get work, function; to make something work

---
手をかける。手がかかる。
手数をかける。手数がかかる。
手間をかける。手間がかかる。
時間をかける。 時間がかかる。
てまひまをかける。 てまひがかかる。
金をかける。金がかかる。

以上は<掛ける>、<懸ける>と関係なさそうだが、やはり何らかの成果、効果を得るために時間や手間を使うことだ。<無駄に時間をかける>、<かけた手間が無駄になる>ことはあるが、目的があってこその表現だ。上記のやや長い説明参照。

to use (time, effort) to get something

--- 
水をかける。 水がかかる。雨がかかる。
粉を(ふり)かける。
布団をかける。
カバーをかける。
汁をかける。 かけそば。
 税金をかける。税金がかかる。(こういう見方もある)
(人に)魔法をかける。 魔法がかかる。(こういう見方もある)。

迷惑をかける。迷惑がかかる。
疑いをかける。疑いがかかる。 

ほこりがかかる。

上記の<かかる>の場合は受身(被害)だ。 

以上の例はこれまた<掛ける>、<懸ける>と関係なさそうだ。むしろ、to cover (おおう、覆う)とか<かぶせる>いった感じだ。しかし、上記の悪事や病気からの連想ができないか。

<かけて(掛けて、懸けて)>、通常な、正常な動き、状態を止める。-- >状態を変える。-- >効果を得る。
<かけ(掛け、懸け)>られて通常な、正常な動き、状態をがとまる。-- >状態がかわる。-- >効果を得られる。

いい効果と悪い効果がある。

また、見方を少しかえると、<何かの目標の向かって、何かの効果を期待して、何かをする>。これまたいい効果と悪い効果がある。このばあい、大げさになるが to cover (おおう、覆う)というよりは、<空間>を越えて, 通して何かをして効果を得ることだ。

---
この事件の解決はあなたにかかっている。

<xxによる>とは<xxによりかかって>いることだ。 to depend on, to rely on

--- 
あなたはこの事件に(と)かかわっている。

関わる、関連するとは何かに<引っかかって>いることだ。 to related with

---
掛け算

英 語は multiplication。動詞は<to multiply>。日本では<九九>があり、あまり考えずに計算してしまうが、わりと複雑な計算だ。 この <to multi-ply> に <to ap-ply> の <-ply> があり、ある意味では同根。

興味と時間のある人は下記参照

http://spttejd.blogspot.hk/2012/11/elementary-algebra-in-japanese.html

---
かけるの複合動詞

複合動詞を調べてみる。

a) xxかける 

た だし<行きかける>、<言いかける>、<やりかける>の<かける>などの<xxし始める>、もっと正確には<xxし始めようとする>(まだ始まっていな い、行きかける)と<xxし始めて、現在進行中>(もう始まっている、やりかける->やりかけの)の意の<xxかける>は除く。

浴びせかける
うなずきかける
押しかける
切りかける
仕かける    関連語: 仕掛け  (ワナを)仕掛ける。 
突きかける
詰めかける
取りかける   関連語:取っ掛かり
投げかける
働きかける
走りかける  <走り><駆ける>ではない 。<走り寄る>に近いが<走り掛ける>はスピードがあるようだ。
話しかける  <言いかける>は普通<言い始める>の意。
吹きかける
振りかける   関連語: ふりかけ
ほほえみかける
見かける
笑いかける 

以 上は<引っ掛ける>感じの強いもの(取りかける、見かける)や、<近づく、寄せる>の感じの強いもの(押しかける、切りかける 、突きかける、走りかける )もあるが、総じて、対象に何らかの影響を与える、さらには影響を与えて、さらに何かの効果を得ようとする動き、動作、しぐさだ。
少し前 に、<このばあい、大げさになるが to cover (おおう、覆う)というよりは、<空間>を越えて, 通して何かをすて効果を得ることだ。>と述べたが、これと関連する。一昔前の<エーテルを通して力、声、電気、電波>が伝わるような表現が多い。うなずき かける、投げかける、働きかける、話しかける、吹きかける、笑いかけ。特に、<働きかける>はその代表だ。

立てかける
もたせかける

以上は<かけて>安定させるような意味だ。

b) xxかかる

襲いかかる
切りかかる
のしかかる。
飛び(跳び)かかる

降りかかる

以上は<かかる>は対象に急いで、<近づく、寄せる>動き、動作、しぐさだ。

もたれかかる
寄りかかる

以上は<かかって>安定させるような意味だ。

---
3)駆ける

 <駆 ける>は<走る>で大体(おおむね)代替できるが、<駆ける>の語源は<掛ける>、<引っ掛ける>だ。足を地面に<引っ掛け>て前に進むのだ。車も同じ。 タイヤが地面を<引っ掛け>て前に進む。英語で<トラクション>と言うがトラクターの<トラク>、すなわち<牽く、引く>だ。

小さなボートは櫂(かい)で水を<引っ掛け>て前に進む。アヒルは<水かき>で水を<引っ掛け>て前に進む。近代の大きな船はスクリュウで進む。

鳥は空気を<引っ掛け>て前に進むので<空を翔(かけ)る>のだ。ジェット機以前の飛行機はプロペラで空気を<引っ掛け>て前に進む。

いずれの場合にも、 何かに<引っ掛け>て引くことによって生じる力を利用して前に進むのだ。推(お)して進む推進力というよりは引進力、<引っ掛け>進力だ。

<引っ掛ける>は<掻く>と深い関係がある。 5)<掻く>で述べる。

---
4)賭ける

金を< 賭ける>場合、その目的は金を増やすことだ。これは<てこの原理>と同じで、労せずして大きな力を得ることと大差はない。<てこの原理>は物理法則で間違いなくはたらくが、金を< 賭ける>場合は原則として<てこの原理>は働かない。物理法則ではないのだ。
命を< 賭ける>場合、その目的は何かを、特に大きな、または困難なことを成し遂げることだ。効果を得るため、または効用を引き出すために何かすることには<かける>のひとつの用法。力(鍵、エンジン、電話、etc )をかける。

5)掻く

<掻く>という運動、動作、しぐさ。英語は to scratch が一部相当するが、やまとことばの動詞<かく>は上の<駆ける>で述べたが、極めて重要な働きがある。

<掻く>はふつう

かゆいところを掻く
あたまを掻く
鼻(鼻の頭)を掻く。

雪を掻く。 雪かき。 屋根に掛かった雪を掻き下ろす。
水を掻く。 水かき。

のようにつかわれるが、<掻く>に関連した複合動詞を見てみよう。

かき上げる (髪)  
かき揚げる (てんぷら)
かき集める (落ち葉、ごみ)
かき入れ時
かき切る --> かっ切る (口語) (のどをかっ切る)
かき曇(くも)る
かき消す
かき込む (ご飯)
かきさらう --> かっさらう (口語)
かき捨てる (ごみ、恥)
かき出す (雪、かまどの中の灰、耳垢)
かき立てる (意欲をかき立てる)
かきのける (ひと)
まきはらう --> かっぱらう (口語)
かき混ぜる
かき回す   かきたまご -scratched eggs ではなく scrambled eggs
かき乱す
かきむしる (髪)
かき寄せる ((落ち葉、ごみ)
かき分ける (人ごみ)
一回の<掻く>動作、2-3回の<掻く>動作、速く連続した<掻く>動作がある。

その他では次のような表現がある。

いびきをかく。
汗をかく。
恥をかく。
べそをかく。
欲をかく。 (欠くではない)

以上はすばやい運動、動作、しぐさではなく、直接<掻く>とは関係なさそう。別途検討。

さらには、

敵の裏をかく ?
あぐらをかく ?
嘘(うそ)をかく。 普通は<嘘をつく>、嘘つき、<嘘を言う>か。?

--- 
6)書く

<掻く>との関係ははじめの方に書いた。


2.<かける>イントネーションがとくにないもの。(東京アクセント)

<欠ける>は<ない>、<たりない>(不十分)、一部がこわれてない(ガラスがかける)の意だ。xx に欠ける。xx が欠けるの用に使う。自動詞。他動詞は<欠く>だ。 1.の<かける>、<かく>とは根本的に違うような気がする。

<かくす>、<かくれる>は同源だろう。



sptt


Monday, November 17, 2014

<どく>、<どける>、<のく>、<のける>について


<どく>、<どかす>、<どける>は関東方言で標準語は<のく>、<のける>だろう。<そこのけ、そこのけ、お馬が通る>と言う童謡らしいのがある。<取りのける>は聞くし言うが、<取りどける>聞かないし言わない。

<どく>は

ある場所をにある人(動物)が、その場所をあけるために移動する。

<どかす>、<どける>は

ある場所をにある人(動物)、モノを その場所をあけるために移動させる。

とでもなるか。いづれにしても単に人が動く(<どく>)、人、モノを動かす(<どかす>、<どける>)だけではない。 <場所をあけるため>という意味が2音節、3音節の中にあるのだ。

英語では<どく>は to give way (道をゆづる)か。<どかす>、<どける>は to put a thing away, to push a thing away, to pull a thing away, 脇へずらすような場合は to put (to push, to pull) a thing aside とでもなるか。英語の場合<その場所をあけるため>という意味は動詞にはなく away, aside の方に内包されている。


以上はドイツ語の einräumen という動詞に遭遇して考えたもの。

German - English Collins Dictionary  - Reveso



einräumen
   ein+räu•men      vt   sep  

a    [Wäsche, Bücher etc]   to put away  
[Schrank, Regal etc]   to fill  
[Wohnung, Zimmer]   to arrange  
[Möbel]   to move in (in    +acc   -to)  
Bücher ins Regal/in den Schrank einräumen      to put books on the shelf/in the cupboard  
er war mir beim Einräumen behilflich      he helped me sort things out,   (der Wohnung)    he helped me move in  

b    (=zugestehen)   to concede, to admit  
[Freiheiten etc]   to allow  
[Frist, Kredit]   to give, to grant, to allow  
jdm das Recht einräumen, etw zu tun      to give or grant sb the right to do sth, to allow sb to do sth  
einräumende Konjunktion      concessive conjunction  

Translation German - English Collins Dictionary  


追加

以前に<ぬく、ぬける、、ぬぐ、ぬげる、にげる、のける、のこる>という題のポストを書いたが、<どく>、<どかす>、<どける>に相当する標準語の<のく>、<のける>は、やまとことばの特徴だが、芋づる式に関連動詞が出てくる。

(なにぬねの順)

凪(な)ぐ 自動詞、<風が凪ぐ>
逃(に)げる 自動詞、xx から逃る、xx に逃る; 他動詞、xx を(うまく)逃る。
抜(ぬ)く 他動詞 - 抜ける  自動詞 <髪の毛が抜ける>、可能形でもある。<この釘は簡単にぬける>。
脱(ぬ)ぐ 他動詞  -  脱げる 自動詞、<靴が脱げる>、可能形でもある。小さい子が<自分で脱げる>と言う。
拭(ぬぐ)う  他動詞
逃(のが)れる 自動詞、xx から逃(のが)れる; 他動詞、xx を逃(のが)れる。
---

以下も関連ありそう。

除(のぞ)く  他動詞
凌(しの)ぐ  他動詞  - これは<凌ぐ >と書くと見えなくなるが、<する>の連用形<し>+<のぐ(のく)>だろう。

<どく>、<どかす>、<どける>関連では

<とく> 解く、溶く、説く、髪を梳(と)く、と書くと意味が違うように見えるが基本的な意味は同じ。
<とける>  解ける、溶ける
<とかす> 解かす、溶かす、髪を梳(と)かす 


sptt

Monday, November 10, 2014

シューベルトの<菩提樹>


シューベルトの<菩提樹>と言う歌曲がある。学校の音楽の教科書にあるので誰もが知ってるだろう。また、私のように音痴でも歌わされたはずだ。原詩(Wilhelm Müller)と日本語訳(近藤朔風)は次の通り。

Am Brunnen vor dem Tore
Da steht ein Lindenbaum;
Ich träumt in seinem Schatten
So manchen süßen Traum.
Ich schnitt in seine Rinde
So manches liebe Wort;
Es zog in Freud und Leide
Zu ihm mich immer fort.


泉に添いて 茂る菩提樹
したいゆきては うまし夢見つ
みきには彫(え)りぬ ゆかし言葉
うれし悲しに いとしそのかげ

Ich mußt auch heute wandern
Vorbei in tiefer Nacht,
Da hab ich noch im Dunkel
Die Augen zugemacht.
Und seine Zweige rauschten,
Als riefen sie mir zu:
Komm her zu mir, Geselle,
Hier findst du deine Ruh!

今日もよぎりぬ 暗きさよなか
まやみに立ちて まなこ閉ずれば
枝はそよぎて 語るごとし
来よいとし友 此処に幸(さち)あり

Die kalten Winde bliesen
Mir grad ins Angesicht,
Der Hut flog mir vom Kopfe,
Ich wendete mich nicht.
Nun bin ich manche Stunde
Entfernt von jenem Ort
Und immer hör ichs rauschen:
Du fändest Ruhe dort!

おもをかすめて 吹く風寒く
笠は飛べども 捨てて急ぎぬ
はるかさかりて たたずまえば
なおもきこゆる 此処に幸あり
此処に幸あり

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 この詞は日本語訳のように四行詩で、その方が脚韻がわかりやすい。

Am Brunnen vor dem Tore Da steht ein Lindenbaum;
Ich träumt in seinem Schatten So manchen süßen Traum.
Ich schnitt in seine Rinde So manches liebe Wort;
Es zog in Freud und Leide Zu ihm mich immer fort.

Ich mußt auch heute wandern Vorbei in tiefer Nacht,
Da hab ich noch im Dunkel Die Augen zugemacht.
Und seine Zweige rauschten, Als riefen sie mir zu:
Komm her zu mir, Geselle, Hier findst du deine Ruh!

Die kalten Winde bliesen Mir grad ins Angesicht,
Der Hut flog mir vom Kopfe, Ich wendete mich nicht. 
Nun bin ich manche Stunde Entfernt von jenem Ort
Und immer hör ichs rauschen: Du fändest Ruhe dort!


この日本語の歌詞は音楽の教科書にあり、これを聴(き)いたり、歌ったり、歌わされたりするわけだが、<古い>言葉が多いのと、歌の歌詞のためやむをえないのだろうが、原詩のかなりの部分をはしょっており、おそらく意味がよくわからないのではないか? 私も<泉に添いて 茂る菩提樹>とあるので<菩提樹がたくさんある>と思っていた。原詩は ein Lindenbaum とあるので一本の菩提樹の木なのだ。<添いて>よりは<寄りて>、<茂る>よりは<立てる>、さらには時制を気にしなければ<立ちぬ>の方がソフトでいいだろう。この部分をかえてみると<泉に寄りて 立ちぬ菩提樹>で一本ので菩提樹の感じが出る。

<彫(え)りぬ>は<彫()りぬ>でも大きな影響はなさそう。<さよなか>は(やや早めの)<よなか>のことか。また<まやみ>は<まっくらやみ>のことだが、<さよなか>や<まやみ>は<耳で聞いたり<ひらがな>でよんだだけではすぐにはピンとこないだろう。

だが最大の問題は<此処に幸(さち)あり>ありだろう。 繰り返されるので印象が深く刻(きざ)まれる。Ruhe はこの詩の内容からしてけっしてに幸(さち)ではない。やまとことばとしては<やすらぎ>がいいようだ。<いこい>というのもあるが、少し軽い。幸(さち)は2音節、<やすらぎ>は4音節もあるので、そのまま置き換えはきかない。<ここにやすらぎあり>は字余り、音節合わせでは簡単に<ここにやすらぎ>でいいのだが残念ながら<ここに幸(さち)あり>にかなわない。


sptt

Friday, November 7, 2014

beauty のやまとことば


英語の beauty に相当するドイツ語の(die) Schönheit がでてくる詩に出くわした。日本語訳からやまとことば訳を試みたが、英語の beauty に相当するやまとことばをしばらく探しているがみつからない。漢語の美(び)は高度に抽象化されており beauty に近い。やまとことばの<うつくしい>は形容詞で英語では beautiful が相当する。<美しさ>という語が思いうかぶが<美しい>の度合、程度を示す名詞(体言)のようで、抽象化の方向がやや違うようだ。

http://franzpeter.cocolog-nifty.com/

Freundliche Vision, op. 48, no. 1

 好ましい幻影
Nicht im Schlafe hab' ich das geträumt,
Hell am Tage sah ich's schön vor mir:
Eine Wiese voller Margeriten;
Tief ein weißes Haus in grünen Büschen;
Götterbilder leuchten aus dem Laube.
Und ich geh' mit Einer, die mich lieb hat,
Ruhigen Gemütes in die Kühle
Dieses weißen Hauses, in den Frieden,
Der voll Schönheit wartet, daß wir kommen.
[Und ich geh' mit Einer, die mich lieb hat,
in den Frieden, voll Schönheit]

 眠りの中で私はそれを夢に見たのではなかった。
 明るい昼間に私の目の前に美しいそれを見たのだ。
 フランスギクでいっぱいの草原。
 緑の茂みの奥深くにある白い家。
 神像が木の葉の間から輝いている。
 そしてぼくは、ぼくを愛してくれる女(ひと)と行く、
 穏やかな心で
 この白い家の冷気の中へ、
 美にあふれて、ぼくらが来ることを待ちわびていた平和の中へ。
 [そしてぼくは、ぼくを愛してくれる女(ひと)と行く、
 平和の中へ、美にあふれて。]

詩:Otto Julius Bierbaum (1865 - 1910)
曲:Richard Georg Strauss (1864 - 1949)


<sptt やまとことば訳>


素晴らしいまぼろし

眠りの中、夢に見たのではないのだ。
昼間の光の中、目の前で確かに見たのだ。
雛菊咲き乱れる牧場(まきば)。
緑の木々の中に見える白い館(やかた)。
木の葉の中から輝く神々の姿。
そして僕は行く、僕に恋してくれてる乙女(おとめ)とともに、
満ち足りた思いで、この白い館のすがすがしさの中へ、
僕らが来るのを待っていた美しさに満ちたやすらぎの中へ。
( 僕は行く、僕に恋してくれている乙女とともに、美しさに満ちたやすらぎの中へ。)



Der voll Schönheit(the full beauty) の箇所で苦心した。まず文法的にこれが2格だか3格だかよくわからない。この場合の漢語の<美(び)>に相当するやまとことばがみつからないのだ。あとで示すように全方向的(あるいは求心的)な抽象化語尾の<み>をつけた<うつくしみ>というやまとこばがないのだ。

純形容詞の場合

赤い - 赤さ、赤み、<赤め>とは言うが意味がずれる(以下同じ)
青い - 青さ、青み、青め
白い - 白さ、<しろみ>は<白みがかる>と言う言い方があるが、普通は卵の<白身(み)>の意だ。白め
黒い - 黒さ、<黒み>は<黒みがかる>。黒め
大きい - 大きさ、<大きみ>は聞かない。大きめ
小さい - 小ささ、<小さみ>は聞かない。小さめ
近い - 近さ、<近み>は可能のようだが、ほとんど聞かない。近め
遠い - 遠さ、<遠み>は昔はあったようだ今は使わない。<遠め>はあまり聞いたことがないが可能。
速い - 速さ、<速み>は聞かない。速め
<はやい>には<まだ早い>の<早い>があり、この意の<早さ>はあまり聞かない。<早いこと>は、<遠い>の度合、程度というよりは<早い>ことそのものを表わしているようで、抽象化度合いが高いといえる。<早み>は聞かない。早め
遅い - 遅さ、<遅み>は聞かない。遅め
のろい - のろさ、<のろみ>は聞かない。のろめ
熱い - 熱さ、<熱み>は聞かない。熱め
冷たい - 冷さ、<冷み>は聞かないがよさそう。冷め
暑い - 暑さ、<暑み>は聞かない。<暑め>もダメ
寒い  - 寒さ、<寒み>は聞かない。<寒め>もダメ
明るい - 明るさ、明るみ、明るめ
暗い - 暗さ、<暗み>は聞かない。暗め
うまい - うまさ、<うまみ>はやや特殊か、独立化しているが名詞(体言)、<うまめ>はあまり聞かない。慣用用法がある。
まずい - まずさ、<まずみ>はない。<まずめ>もあまり聞かない。慣用用法がある。
厚い - 厚さ、厚み(抽象度が進んでいる)、厚め
薄い - 薄さ、<暗み>は聞かない。薄くても<厚み>なのだ。薄め
難(むずか)しい - 難しさ、<難しみ>は聞かない。難しめ
易(やさ)しい  - 易しさ、<易しみ>は聞かない。易しめ
優(やさ)しい - 優しさ、優しみはよさそうだあまり聞かない。優しめ

(まだまだあるが、キリはなさそうなので以上でやめる)

以上の純形容詞は動詞化しようとすると<形容詞の連用形>+<に>+<なる>(自動詞の場合)、+<する>(他動詞のばあい)

赤い - 赤くなる、する
大きい - 大きくなる、する
近い - 近くなる、する (あまり聞かないが、間違いではない。普通は<近づける>)
速い - 速くなる、する
早い - 早くなる、する (普通は<早める>)
遅い - 遅くなる、する
のろい - のろくなる、する
熱い - 熱くなる、する
冷たい - 冷たくなる、する
暑い - 暑くなる、<暑する>基本的にダメ
寒い  - 寒くなる、<寒くする>基本的にダメ明るくなる - 明るくなる、する
暗くなる - 暗く なる、する
うまくなる - うまくなる、する  慣用用法がある。
まずくなる - まずくなる、する   慣用用法がある。
厚い  - 厚くなる、する
薄い  - 薄くなる、する
難(むずか)しい - 難しくなる、する
易(やさ)しい - やさしくなる、する
優(やさ)しい - やさしくなる、する 

かなり文法的に法則化しているといえる。

---

動詞がモトと考えられる形容詞とその名詞(体言)。感情表現が多い。

動詞   -  形容詞  - 名詞(体言)

かなしむ - かなしい - かなしさ、かなしみ
くるしむ - くるしい - くるしさ、くるしみ
たのしむ - たのしい - たのしさ、たのしみ
ほほいえむ - ほほえましい - ほほえみ、ほほえましさ

よろこぶ - よろこばしい - よろこび、よろこばしさ

めざます(めざめる) - めざましい - めざめ、めざましさ
わずらわす - わずらわしい - わずらい、わずらわしさ

なげく - なげかわしい - なげき、なげかわしさ

おどろく - (おどろおどろしい)  - おどろき


形容詞の動詞化(形容詞がモトと考えられる)

形容詞  -  動詞  -   名詞(体言)

おそろしい - おそろしがる - おそろしさ
こわい - こわがる -  こわさ 
はずかしい - はずかしがる - はずかしさ 
おもしろい  - おもしろがる - おもしろさ、おもしろみ

(以上追加予定)

----

さて、美(び)の話にもどる。

上のチェック方法を<美しい>に当てはめてみる。


美しい -  () - 美しさ

<美しがる>という言い方は可能だが、一般的ではない。<美しみ>とい言い方はありそうで、ない。


この古い壷には美しさがある。
この絵の美しさの本質は色彩にあるのではなく構図にある。

この二つの例はよさそう。むしろ<この古い壷には美(び)がある>よりいい。この<美しさ>には度合、程度を示しているようでもあるが、さらに進んだ抽象化が感じられる。

それでは上記の詩のsptt訳

僕らが来るのを待っていた美しさに満ちたやすらぎの中へ

はどうか? これは<美(び)に満ちた>にかなわないのだ。 漢語の<美(び)>の方がさらに抽象化が進んでいるといえる。<うつくしさ>は抽象化が足りないのだ。<うつくしさ>を<うつくしみ>に変えてみる。

僕らが来るのを待っていた美しみに満ちたやすらぎの中へ


(追加)

最近(2015年4月)、同じような問題に出くわした。

Walt Disney のヒット映画Frozen (2014)のヒット曲<Let It Go、ありのままで>のドイツ語版。

Ich spüre diese Kraft, sie ist ein Teil von mir.
Sie fließt in meiner Seele und in all der Schönheit hier.
Nur ein Gedanke und die Welt wird ganz aus Eis.
Ich gehe nie mehr zurück, das ist Vergangenheit.

(訳)
力を感じるわ その力は私の体の 一部なの
その力は私の心とここにあるすべ ての美しさの中に流れ込む
想いだけで 世界がすべて氷でで きあがる
二度と後戻りはしないわ それは 過去のことなのよ

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ここにあるすべ ての美しさの中に>はいかにも翻訳調で日本語らしくない。


元の英語と日本語版(訳というか大意訳だ)(どちらもドイツ語版とは相当違っている)

My power flurries through the air into the ground
My soul is spiraling in frozen fractals all around
And one thought crystallizes like an icy blast
I'm never going back,
The past is in the past

冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる 想い描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい もう決めたの


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日本語版は、<Let it go>を<ありのままで>と訳すなど大成功だと思うが、 上記の<結晶>と<自由> の二つの漢語がぎこちない。 <世界>、<自分>、<大地>、<二度>、<信じ>は発音からしてもそのままでまあいいだろう。自由>の方は<思いのにまま>で置き換えられそうだが<結晶>は適当なやまとことばがみつからない。<結晶>の前の<氷(こおり)>は響きのいいやまとことばだ。 もっとも英語版の<crystallizes>も字あまりの感じだ。


日本語版全文

Let It Go ~ありのままで~ (エンドソング)
[Heartful ver.]
作詞:Tweet
作詞:Kristen Anderson-Lopez・Robert Lopez
日本語詞:高橋知伽江
作曲:Kristen Anderson-Lopez・Robert Lopez

降り始めた雪は 足跡消して
真っ白な世界に ひとりのわたし
風が心にささやくの
このままじゃ ダメなんだと
とまどい 傷つき
誰にも 打ち明けずに 悩んでた
それももう やめよう

ありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるの
何も怖くない 風よ吹け
少しも寒くないわ

悩んでたことが うそみたいね
だってもう自由よ なんでもできる
どこまでやれるか
自分を試したいの
そうよ変わるのよ わたし

ありのままで 空へ風に乗って
ありのままで 飛び出してみるの
二度と 涙は流さないわ

冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる 想い描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい もう決めたの

これでいいの 自分を好きになって
これでいいの 自分信じて
光あびながら 歩きだそう
少しも寒くないわ


 
sptt




Tuesday, November 4, 2014

<めまい>(眩暈、目眩)について


以前のポストで<見舞い>の語源に挑戦したが、今回は<めまい>の語源を検討してみる。<めまい>はコンピュータワープロでは眩暈、目眩と難しい漢字がでてくる。<めまい>の<め>はほぼ間違いなく<目>だ。したがって眩暈はめくらめっぽうの当て字で、<めまい>と読める人はあまりいないだろう。目眩も目の字はあるがこれまた<めまい>と読める人はあまりいないだろう。漢字をどうしても使いたければ半分妥協して<目まい>がいいようだ。<目舞>も目が舞を舞うわけではないのでダメだろう。ではこの<まい>はいったい何だ?

<見舞い>には<見舞う>という動詞形があるが<めまい>には<めまう>という動詞形はない。この<まい>のモトは<まわる>、<まわす>だろう。<めまい>と同じじような意味で<目がまわる>というのがある。実際かなりひどい<めまい>を経験した人なら<目がまわる>がどういうことかわかるだろうが経験のない人は想像するしかない。<目がまわるほど忙(いそが)しい>では<目がまわる>は体験できない。同じような表現に<目をまわす>というのがある。<花子は忙しくて目を回している>といえる。<まわす>は他動詞で、<目を>なので目は直接目的語だ。しかし意識的に自分の目をまわしているわけではない。これは、別のポストで幾度か書いたが、次のように解釈できる。日本語ではまずこうは言わないが、

忙しさが花子の目をまわしている。(花子は自分で目をまわしてはいない)
忙しさが花子に目をまわさしている。 (目を回すのは花子だが、使役形で花子の意思ではない)
誰か / 何かが忙しさで花子の目をまわしている。(花子は自分で目をまわしてはいない)
誰か / 何かが忙しさで花子に目をまわさしている。(目を回すのは花子だが、使役形で花子の意思ではない)

<まわる>、<まわす>以外では<まく>がある。<まく>は普通の<巻く>と<種を蒔く、播く>の<まく>がある。関係なさそうだが、<種を蒔く、播く>動作を思いうかべてみれば関連なくはない。半回りほど<巻く>動作は<蒔く、播く>動作に近い。もっとも一回転以上<蒔く、播く>動作も可能だ。

<目舞>の可能性も100%否定はできない。 <舞う>は、<見舞い>の語源でも書いたが、<おどり>、<おどる>という純やまとことばがあることから、漢語の舞(wu とか mo と発音する、した)の輸入とも考えられるが ma-u、 ma-ku、 ma-wa-ru (su) は似かよっている。 ma-wa-ru (su)は3音節だが、大昔は2音節の ma-wu、ma-u だった可能性がある。

一方<眩暈、目眩>に関連するやまとことばは<まどう>、<まどわす>、<まぎる(古語)>、<まぎれる>、<まぎらわす>でこれまた ma- がつく。さらには<まぐ(曲ぐ)、古語>、<まがる>、<まげる>、<むく>、<むける>もその動き、動作からして<巻く>関連動詞だ。<目くるめく>というのがある。<目がくるくるめくる>の意か。<まばゆい>と言うのもあるが、これははもともとどういう意味か? <ま>は<まなこ>、<まばたく>、<またたく間(ま)>と同じで目(め>のなまりだろう。

<巻く>は<まわす、まわる>と並んで回転関連の基本動詞といえるが、おもしろいのは<巻く>の反義語だ。<ほどく>、<ほごす>(古語は<ほぐ>か)などが考えられるが、<まく(ma-ku)> に似た発音の <めくる(me-ku-ru)>、<まくる(me-ku-ru)>が<巻く>の反義語に近いのだ。<太郎は布団に巻きついて寝る>、<布団をめくって(まくって)太郎をおこす>。これはどうしたわけか?

英語では to fold - to unfold、to roll - to unroll、to wind - to unwind となるが un- は何か<取って付けた>感じがする。 一方ドイツ語では wickeln - entwickeln が代表と思われるが entwickeln は元来の意味から発展して<発展する>の意味がある。entwickeln は他動詞で正確には<発展させる>の意で、自動詞形は再帰動詞の sich entwickeln となる。個人的な意見だがこの ent- は英語の un - 違って<取って付けた>感じはなく、むしろ wickeln と強く結びついている感じがする。


sptt

Monday, October 20, 2014

カンニング、<のぞく>、<うかがう>について


カンニングはもとの言葉(語源)は英語の cunning で、やまとことばとはいえないが、もとの意味からのかけ離れ具合からは<やまとことばもどき>と言える。

調べたわけではないがカンニングの意味は<学校での筆記テスト中にまわりの生徒の答案(用紙)の答えを盗み見をして自分の答案にコピーする>ことだろう。だろうと、思っていたが、辞書の解説はかなり一般化してもとの意味 cunning にかなり近くなっている。

三省堂新明解辞典の解説は次の通り。


cunning(ずるい)の日本語的用法。学生が試験の際に教えあったり、本やノートなどを見たりする不正行為。



私の理解では cunning =<盗み見>で、動詞で言えば<盗み見る>なのだが、<盗み見る>というのは実際あまり聞いたことがない。<盗み見る>が使われないのは<人聞きが悪い>ためだろう。<のぞく>という動詞がある。名詞(体言)形は<のぞき>きだが、これは<盗み見>以上に<人聞きが悪い>ようだがよく使われているようだ。<のぞく>に似た動詞に<うかがう>がある。<のぞく>と<うかがう>はおもしろい大和言葉なので検討してみる。

1.のぞく

<のぞく>は自動詞、他動詞の両刀使いだ。

これまた<人聞きが悪い>表現だが<スカートのすそから xx がのぞく>の<のぞく>は自動詞。<xx>が主語だ。一方<戸のすき間から xx をのぞく>の<のぞく>は他動詞で<xx>は直接目的語だ。


花子の顔に不安な様子がのぞく(のぞいている)。

<のぞく>は自動詞。主語<不安な様子>だ。

花子はその顔に不安な様子をのぞかせている。

この場合は花子は主語のようだが、そうとは言いきれない。なぜなら、花子が意識的に<不安な様子をのぞかせている>わけではないからだ。なにかが<花子不安な様子をのぞかせている>いるのだ。これは<のぞかす>は<のぞく>の未然形+<す>で使役形、あるいは他動詞形であることに由来する。見えない主語があるともいえる。日本語らしくなくなるが

<何かが花子その顔に不安な様子をのぞかせている>という意味なのだ。詳しく調べ、確認はしていないが、ドイツ語ではこのような言い方が普通のようだ。<何か>は非人称(不特定)代名詞の es になる。

例をもう一つ。

富士山は頂上が雲の上に見える。
富士山は頂上を雲の上に見せている。

一番目はもちろん、二番目の<富士山は頂上を雲の上に見せている>も富士山は主語ではない。なぜなら<富士山、意識的に、頂上を見せている>わけではないからだ。それではこの富士山はなにか。主題あるいは話題ともいえるが、上記のドイツ語の非人称(不特定)代名詞の es にならえば

なにかが(主語)富士山頂上を雲の上に見せている。

となる。

話が少しずれてしまうが、この問題を考えているうちに発見したことを、忘れないうちに、書いておく。末尾参照


2.うかがう

花子の顔に不安な様子がのぞく(のぞいている)、の<のぞく>を<うかがう>で入れ替えてみる。

花子の顔に不安な様子がうかがえる(うかがわれる)。
花子はその顔に不安な様子をうかがわせせている。

<うかがわす>は<xx を>と<を>をとり、また<未然形+す>で、他動詞だが、意味としては<xx が見える>で自動詞。 主語は<様子>だが、少し変だ。<何かが様子を見えるようにしている>感じがするのだ。これも、日本語らしくなくなるが

 なにかが(主語)花子その顔に不安な様子をうかがわせせている。

となる。<に>が重なるので語呂は悪いが、理屈にあう。

<うかがう>は他動詞で自動詞表現は<うかがわれる>で受身形になる。 <うかがう>は多義語だ。

1)となりの様子をうかがう    

うかがう=気づかれないように見る、で<のぞく>に近い意味だが、<人聞きの悪さ>はなく、むしろ<心配して>などの修飾が合うようだ。

 2)xx する機会をうかがう

この<うかがう>は<ねらう>の意だ。

敬語表現で発達しており、

3)これから<うかがって>もよろしいですか?

名詞形では

これから<おうかがい>してもよろしいでしょうか?

とかなり長くなる。意味は訪(たず)ねる、訪問する、だ。

 4) 少し<うかがい>たい、<(お)うかがい>したいことがあるのですが?

これは、<たずねる>でも<尋ねる>のほうで、質問する、の意だ。

-----

末尾

このドイツ語の非人称(不特定)代名詞の es について少し考ええみる。英語でも非人称(不特定)代名詞の it がある。ドイツ語の es ほどは活躍しないが、

It rains. It is raining.

という言い方があり、これは雨がふれば必ず使う、it の代表的なの使われ方だ。なぜ it  が使われるかというと、雨はふるものだが、何か、誰かが<雨をふらしている>と考えるのは決してとっぴな考え方ではない。何か、誰かは不特定だが存在しているのだ。to rain という動詞はこれで<雨がふる>の意がある。Rain でいいのだが、これでは複数の何か、誰かが主語になる。単数であれば、Rains となる。だが英語では叙述文は主語が必要なのだ。なぜ必要かというと、動詞は人称変化するのだ。<雨がふる>という意味だけをつたえるなら it はなくてもいいのだが必要なのだ。

以上は<忘れないうちに、書いておく>の前置き。 新たな発見は以下に書く。


英文法で受身形と言うのを必ず学ばされる。

1)This window was broken by Taro yesterday.

この窓はきのう太郎に(よって)こわされた。

2)This window was broken by the typhoon yesterday.

この窓はきのう台風でこわされた。

以上の二例はほぼ同じ構造。ただし

<この窓はきのう台風によってこわされた>とはいえるが<この窓はきのう太郎こわされた> とはいえないので、少し違う。

例1)の主語は<この窓>で、< 太郎に(よって)>の<太郎>は主語ではなく、(窓をこわした)動作主といわれる。
例2)も主語は<この窓>で、これも<台風で>の<台風>は主語ではなく、(窓をこわした)動作主といえそうだが、少しちがう。どこが違うかというと、太郎の場合は意識的(意図的)にしろ無意識的(意図なし)にしろ、人の意識は意図がからんでくるのに対して、台風の場合は基本的に意識は意図がからんでこない。ここに<台風こわされた>と軽く言える理由がありそうだ。

それでは次の他動詞<こわす>の受身形を自動詞<こわれる>で置き換え場合はどうか?

1)この窓はきのう太郎に(よって)こわされた。 --> この窓はきのう太郎に(よって)こわれた

2) この窓はきのう台風でこわされた。 --> この窓はきのう台風でこわれた

1)はまったくダメだが、2)は<こわされた>よりもむしろ自然な言い方だろう。
<この窓はきのう台風でこわれた>の解釈だが、自動詞<こわれる>が使われているが<自然に>こわれたのではなく、因果関係が示されている。因果関係の示し方はほかにもいろいろある。

この窓はきのう台風によってこわれた。
この窓はきのう台風があってこわれた。
この窓はきのう台風のため(に)こわれた。

などが普通に考えられるが、英語流に

The typhoon broke his window yesterday.

台風がきのうこの窓をこわした。

といえないこともない。しかし普通の日本人であれば実際にはまずこうは言わない。<この窓はきのう台風でこわれた>が一番普通だろう。英語の to break は自動詞形もあり、

The window broke by (due to, because of) the wind yesterday.

と言えるが、まずこうは言わないだろう。

話がまたそれてきそうなので結論(今回の新たな発見)に戻る。

<この窓はきのう台風でこわれた。>を細かく詮索してみる。

<りんごが木から落ちる> の<落ちる>は自動詞で、ニュートン並みの観察力、洞察力(見抜き力)がない凡人は<なぜ、りんごが木から落ちる>とは問わないし、<なにが / だれが、りんご木から落とす>と発想の転換もしない。凡人から少し飛翔して次のように考えてみよう。

この窓はきのう台風でこわれた

<この窓>は<こわれる>と言う自動詞の主語だが動作(能動)主ではない。<台風でこわれた>は<台風でこわされた>のでいわばど受動(作)主だ。この文は、自動詞文なので、動作(能動)主がないのだ。これはニュートンのまね、発想の転換をして、あるいは見方を変えて、次のように言い換えられる。

何(なに)かが / 誰(だれ)かが、きのうこの窓を台風でこわした

この文は動作(能動)主が不明(不定)だがある(いる)ことになる。実際このような発想は、ニュートンではなくとも、古代人はしていただろう。一神教、多神教にかかわらず、神または神のようなもの、悪いことの場合は悪魔とか物の怪(もののけ)が<なにか / だれか>に相当する。

 これが今回の新発見。さらに説明を加えれば、あるいは大げさにいえば<自動詞-他動詞位相変換公式>なのだ。

1)受身形の場合は動作(能動)主がない。
2)自動詞文のばい、主語はあるが、 動作(能動)主は示されない。
3) 同じ文を自動詞文から他動詞文にするには、隠れた(不明、不定だ) 動作(能動)主を<何か / 誰(だれ)か>を主語にする。自動詞文でに主語は直接目的語になり<を>をとる。



sptt







Friday, September 26, 2014

<笑いつける>と<微笑みかける>


前回のポスト ”<こじつける>について” で、<むりやり xx する>、さらに進めて<一方的に xx する>、さらには<相手の立場、意向に関係なく、一方的に xx する>という意味の<つける>の例をあげた。繰り返しになるが、主な動詞には

売りつける
送りつける
押しつける 
おどしつける
がなりつける
しかりつける
どなりつける
なぐりつける
投げつける
なすりつける
申しつける
呼びつける

がある。

一方<つける>関連の動詞でに<かける>があり、同じような表現がある。

追いかける (この<かける>は<走る>の<駆ける>のようだが、<駆けて(走って)追いかける>ともいえる)
押しかける
なぐりかかる(<なぐりかける>は<なぐりかけそうになる>のように使い意味が違う)
投げかける
呼びかける

<押しつける>と<押しかける>は違う。<押しかけ女房>という言葉はあるが<押しつけ女房>というのはない。<押しつける>より<押しかける>の方が、同じ<相手につく、近づく>にしてもソフトなのだ。<つける>は直線的、<かける>は英語の <xx(動詞)  over  to  yy>に相当し、投げたボールが放物線を描いて相手に<近づく>感じなのだ。<投げつける>、<投げかける>の違いもあきらかだ。

この意味で<言いかける>はなく<語りかける>、<話しかける>になる。<言いつける>はまた別の意味だ。<言いつける>以外にも、まえに別のポストで取り上げたが(sptt Notes on Grammar、<言う>のマイナスイメージ)、<言う>はいい意味ではあまり使われない。

言い合う --> 言い合い
言い争(あらそ)う
言い返す
言いかかる --> 言いがかり
言いくるめる
言い込める
言い過ぎる --> 言い過ぎ
言いすくめる
言い捨てる  --> 言い捨てならぬ>
言い立てる
言い散らす
言い繕(つくろ)う
言いつける
言い抜ける
言い逃(のが)れる --> 言いのがれ
言い囃(はや)す
言いふらす
言い紛(まぎ)らす、いい紛らわす
言いまくる
言いふらす

<呼びつける>と<呼びかける>もあきらかに意味が違う。

さて、<笑いかける>はどうか。悪くはない。しかし、

<醜女に笑いつけられる>と<美女にほほえみかけられる>とでは雲泥の差だ。醜女、美女は差別用語ではないだろう。


sptt






<こじつけ>の効用


<こじつけ>という言葉はいい意味ではほとんど使われない。また<こじつける>という動詞は名詞(体言)の<こじつけ>ほどには使われない。<こじる>もほとんど聞かないが<ねじ込む>ような動作のようだ。したがって<こじつける>は<ねじ込んで付ける>という意味にないりそうだ。<こじつける>の<つける>は<AをBに関連づける>の<つける>で漢字を使えば<付ける>が適当だろう。

さて、<ねじ込んで付ける>は物理的にこうする場合もあろうが、ほとんどは比喩的に用いられ、<むりやり(AをBに)関連づける>といった意味だ。<むりやり>は<無理やり>と書くが、いわば<道理が通らないようなやりかたで>という動詞(動作)の様態を示す副詞だ。<つける>は多義語だが、最もよく使われるの<付ける、着ける>の意味でだ。<xx(動詞の連用形)+つける>は複合動詞になり、次のような例がある。

(あいうえお順)

当てつける、当てつけ
言いつける、先生に言いつける、おまえに言いつけておく、言いつけを守る
行きつける、1)よく(頻繁に)行く、行きつけの店 2)行きつく(行き着く)、の可能  xx 行きつける、< xx 行きつける>はダメ
痛めつける
植えつける
受けつける
打ちつける
う(生、産)みつける
売りつける
送りつける
押しつける
落ちつける、落ちつかす  
おどしつける
買いつける
かかりつける、かかりつけの医者   <xx をかかりつける>はダメ
かがりつける
嗅(か)ぎつける
書きつける
駆(か)けつける
かこつける (適当な漢字はないようだ)
飾りつける
貸しつける
片づける
がなりつける
通いつける、通いつけの塾  <xx を通いつける>はダメ
聞きつける
切(斬)りつける
くくりつける
食いつける(食べつける)、食い(食べ)つけたxx屋のラーメン、食い(食べ)なれた
くっつける
蹴りつける、けりをつける
こぎつける、 <-- こぎつく、の可能    <xx をこぎつける>はダメ
こすりつける
しかりつける
しつける
しばりつける
締めつける
吸いつける、1)<-- 吸いつく 、の可能、2)たばこを吸いつける
住みつける、住みつけた家、住みなれた
擦(す)りつける
染めつける、染付け
た(炊、焚)きつける
たたきつける
立てつける、立てつけが悪い
突きつける
照りつける
どなりつける
取りつける
なぐりつける
投げつける
なすりつける
なでつける
舐(なめ)つける
煮つける、煮付け
縫いつける
塗りつける
寝かしつける
飲みつける、飲みつけた、飲みなれた
乗りつける
はさみつける
はねつける
嵌(は)めつける
貼りつける
ひきつける (引く、牽く、弾く、轢く、挽く、惹く、曳く、退く)
ひっつける
吹きつける
ぶつける (ぶっつける)
踏(ふ)みつける
振りつける、振り付け
巻きつける
見つける
結びつける
申しつける
燃(も)やしつける、火をつける、
盛りつける、盛り付け
焼きつける
やっつける 
やりつける、やりつけた仕事
寄せつける
呼びつける
読みつける、読みつけた xx 新聞、読みなれた

上記例のうち意味の取り方にもよるが<こじつける> グループに入るものは

言いつける、先生に言いつける、おまえに言いつけておく、言いつけを守る
痛めつける
植えつける - 比喩的な言い方の場合
う(生、産)みつける
売りつける
送りつける
押しつける 
おどしつける
がなりつける
切(斬)りつける
蹴りつける
こすりつける
しかりつける
しばりつける
締めつける
擦(す)りつける
た(炊、焚)きつける - 比喩的な言い方の場合
突きつける
照りつける
どなりつける
なぐりつける
投げつける
なすりつける
なでつける
塗りつける
はさみつける
はねつける
嵌(は)めつける
貼りつける
吹きつける  - 比喩的な言い方の場合
踏(ふ)みつける - 比喩的な言い方の場合
巻きつける
申しつける
呼びつける
-----

物理的には

こすりつける
擦(す)りつける
なすりつける
嵌(は)めつける
貼りつける

が<こじつける>に近いが、<むりやり xx する>、さらに進めて<一方的に xx する>、さらには<相手の立場、意向に関係なく、一方的に xx する>という意味では


痛めつける
植えつける  - 比喩的な言い方の場合 (危険な思想を植えつける)
う(生、産)みつける
売りつける
送りつける
押しつける 
おどしつける
がなりつける
しかりつける
た(炊、焚)きつける - 比喩的な言い方の場合
照りつける (容赦なく照りつける)
どなりつける
なぐりつける
投げつける
なすりつける

はねつける (<撥ねつける>は<付ける>動作でなく、反対の<はなす、放す、離す> 動作で、この場合、<つける>に<付ける>の意味はなく、<相手の立場、意向に関係なく、一方的に xx する>の意になっている。

踏(ふ)みつける - 比喩的な言い方の場合
申しつける
呼びつける

-----

<こじつけ>、<こじつける>がいい意味ではほとんど使われないのは、売りつける、押しつける、なすりつける、のように、<相手の立場、意向に関係なく、一方的に xx する>の意があるからだろう。しかしながら、<むりやり(AをBに)関連づける>の意味を善意に解釈すると、常識にとらわれた見方を打ち破る(打破する、break through する)方法でもある。すなわち、常識ではAとBは関連がないが、<むりやりにAとBを、AをBに関連づける> -> <AとBを、AをBに、こじつけると>、常識では見えない関係が見えてくる。  

 

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Monday, September 15, 2014

<めざめる>目覚まし時計


認識関連の大和言葉で、<さとる>ほど哲学的ではないが、大和言葉らしいのに<めざめる>がある。関連語(表現)に<目が覚(さ)める>があるが、主語-動詞の組み合わせで一語の動詞ではない。他動詞を使うとは<目を覚ます>となる。これまた一語の動詞ではない。この<目をさます>はやや複雑で、他人の目をさます場合と自分の目をさます場合がありそうだが、他人の目をさます場合は<おまえ、そろそろ目をさましらどうだ>というが、発話者が相手の目をさまさせるわけではない。<相手の目をさまさせる>は<目をさまさせてやろう>と使役形になる。<目をさます>は結局のところ<自分の目をさます>ことで、これはまた結局のところ<目がさめる>ことになる。<目をさます>は英語は I wake up. だが、この to wake は自動詞で<(わたしは)目がさめる>に近いので、<目をさます>にはならない。では<目をさます>はどういうかと言うと、非人称主語(It rains. の it) it + 他動詞 to wake を使っておそらく It wakes me(you, him, her, tem) up. だろうが、イマイチだ。 It がなんだかはっきりしないのだ。The alarm clock makes me up every morning. ならいい。<私は、毎朝7時に、目をさます>は普通の日本語だが、<私は、毎朝7時に、目がさめる>とは明らかに違う。目覚まし時計を使ったとしても<毎朝7時に、自分で自分の目をさます>ことは出来ない。こう考えると、<目をさます>は特異な表現だ。

目覚まし時計というにがあるが、認識させるの意での<めざます>はあまり聞かない(手元の辞書には<良心をめざます>という例がある)。目覚まし時計と<さとり>は結びつかない。<悟りをひ開かす>ZEN時計があったら売れるかも知れない。

人にもよるだろうが、<めざめる> は me-za-me-ru で耳で聞いていいことばだ。ざわめき(za-wa-me-ki)も響きのいい大和言葉だ。目障り(me-za-wa-ri)、耳障り(mi-mi-za-wa-ri) も漢字で書くと、良くない印象をあたえるが、耳で聞けばいい響きだ。これは、ざ(za)音と m 音の組み合わせから来ているのだろう。

ところで<目をさます>の<さます>とはどういう意味か?<さます>は他動詞で、よく使われるのは<スープをさます>、<熱をさます>などで、<温度を下げる>意味だ。自動詞は<さめる><スープがさめる>、<熱がさめる>と対応する。これらはコンピュータワープロでは<冷ます>、<冷める>と出てくる。

<目をさます>、<目がさめる>の方はワープロでは<目を覚ます>、<目が覚める>と出てくる。これは覚醒の<醒>を使って<目を醒ます>、<目が醒める>でもよさそうだ。<覚醒>自体<覚>と<醒>並べた熟語だ。

<温度を下げる>、<温度を下げる>の意の<さます>、<さめる>と覚醒の方の<さます>、<さめる>は関連語か? さらには語源は同じか?<さめた見方>は<冷めた(クールな)見方>とも<覚(醒)めた見方>ともとれそうだ。<熱い視線をおくる>というのもある。

 <冷(さ)ます>、<冷(さ)める>は<寒(さむ)い>と関連があろう。<目を覚(醒)ます>、<目が覚(醒)める>は<澄(す)む>、<澄す)ます>が関連か。澄んだ目で見る。耳を澄ます。よく寝たあとの目覚めは澄んだ感じがないだろうか。


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Friday, September 12, 2014

<並(なら)ぶ>に見る<横並び思考>


<並(なら)ぶ>は面白い動詞だ。いくつかの意味があるが、英語の to line up(英国英語は to queue up)の訳語では<列に加わる>という原語に近い訳もあるが、日本語(大和言葉)らしいのは<ならぶ>だ。手もとの辞書によると<均(な)らすと同源か>という解説がある。

<ならぶ>と<ならす>はどこが同源か。

<ならす>は漢字では<馴らす>、<慣らす>、<均(な)らす>がある。<鳴らす>はイントネーションが違い意味もほんどまったく違う。<馴らす>、<慣らす>、<均らす>は意味が違うように見えるがいづれももっと一般化した<ならす>で、同源、同根と言うよりは同じ意味だ。それでは、もっと一般化した<ならす>とは何か。一般化した<ならす>は<あるモノ、ある人を通常は大きく支配的(一般的)な集団の特性に合わせる>といった意味で、社会性をおびている。

英語の to line up が<ならぶ>で訳されると、意味合いが違ってくる。 to line up や<列に加わる>ではあまり集団は意識されず、個人の行動に目が向いている。一方<並(なら)ぶ>は集団が意識されているようだ。<並(なら)ぶ>( to line up)のに、縦も横も斜めもないが、<横並び>という表現がある。<どれもこれもほぼ同じ>といった意味だ。<横並び思考(指向か)>は<集団に属していて、目立たないようにする>といった意味で使われる。

一方他動詞は<並べる>で、これまたいくつかの意味があるが、だいたい<比較的たくさんのモノや人を列状に置く>といった意味だ。<適当に並べておけ>では必ずしも<列状>である必要はなく、英語の to arrange がこれに相当するか?

<な(馴、慣、均)らす>関連では<習(なら)う>という動詞がある。人や動物を<な(馴、慣)らす>ためには<習わせる>必要がある。<ならわし>は集団思考(指向)の関連語。人の場合は自主的に<習う>こともある。

別途検討が必要だが、日本語の基本動詞の一つ<なる>も関連語だろう。

なる、なれる、ならす、ならう、ならわす、ならぶ、ならべる


sptt




Thursday, September 4, 2014

<でこぼこ>は何(なに)詞か?


<でこぼこ>は何(なに)詞か。

平らだ(OK)
でこぼこだ (OK)

平ら道(ダメ)、平らな道(OK)
でこぼこ道(OK)、でこぼこの道(OK)、でこぼこな道(これもOKのようだ)

平らがある(ダメ)
でこぼこがある(OK)

<平らな>で形容動詞といえるが(静かな、静かだ、静かで)、<でこぼこ>はいったい何(なに)詞なのだ?


sptt

Tuesday, September 2, 2014

図形のやまとことば - 2、次元


このポストは前々回のポスト ”図形のやまとことば -1、 うつる、うつす” と前回のポスト ”<きわだつ>、<きわだたせる>” の続編。前々回のポストの冒頭で

"

I must admit that the geometrical world in ancient Japanese (say more than 1,500 yeas ago) were very poor as compared with the Chinese and Western worlds. 

(中略)

0) 0D - point                     Chinese    点       Native Japanese め(me; 目 or eye)

1) 1D - line                       Chinese  線      Native Japanese すじ(su-ji; 筋 or stripes in muscles, veins)

2) 2D - surface or area      Chinese  面      Native Japanese おもて(o-mo-te; 面 or face)

3) 3D - solid or volume     Chinese  体(立体)  Native Japanese かたまり(ka-ta-ma-ri; 塊 or lump)


いわば大和言葉の幾何用語は貧弱なのだが、 ......



と書いたが、もう少し検討してみる。幾何学上、<点>は<大きさ>がなく、<線>は<はば(幅)>がなく、<面>は<厚み>がないことになっているが、ゼロ(0)もそうだが、これはまさに画期的なコンセプトで、言い換えればとんでもない世界。このコンセプトがない世界の方が普通だろう。大和言葉の幾何用語は貧弱さはこれに関係する。

点 - め(目)には当然ながら<大きさ>がある。<大きさ>はあるが(目に見える)が小さいものに、芥子粒(けしつぶ)がある。粒子とか素粒子というのもがあるが、この目で見たことがないのでわからないが、極限に近い小ささのようだ。小さくても大きさのある点を並べると線になる(0次元-->1次元変換)。


線 - すじ<筋>には当然ながら<はば(幅)>がある。

前回のポストでは次のように書いた。


<端(はし)> のやまとことばの関連語はかなりあり、なぜこうも多いのか自体おもしろい調査対象だ。

きわ(際)、へり(縁)、ふち(縁、めがねの縁、<淵>は意味が違うが、まったく関連がないとも言えないようだ)、がかなり<端(はし)>の意に近いが、さらに範囲を広げれば、すみ(隅)、かど(角)、はて(果て)、さかい(境)もある。



<はば(幅)>がある線を考えると、へり(縁)、ふち(縁)、さかい(境)が該当しよう。さかい(境)は特別で、二つの異なったモノ、場所が線状に合うところで、あえて線を引かなければ、線がなくても存在する(見える、見えるように感じる)。輪郭(outline)もこの仲間だ。<がっけぷち>の<ふち(縁)>は<さかい(境)>に似て、幅がない線と言えそう。細い線や糸は幅があまり意識されない。純粋の線は幅がないので横のいくら並べても面にならない、細いとはいえ幅のある糸は横にたくさん並べると面にはなる(1次元-->2次元変換)。


面 - おもて(面)は<当然ながら厚みがある>というわけではなさそう。

面は英語では area よりは surface, face, plane (発音が同じ plain も仲間だろう)が適当。中国語の<面>も face の意がある。 大和言葉の<おもて>は多義語で、顔(かお)以外に裏表(うらおもて)の<おもて(表)>の意がある。表面は<おもておもて>、裏面は<うらおもて>になってしまうが、このような意味で使われるのは聞いたことがない。<水面(みなも)>の<も>は手もとの辞書では<おもて>の略という解説があるが、<お>も<て>も接辞で、はさまれた<も>が<おもて>特に<面>の意があったのではないか。顔の縦に長いの馬面(うまづら)とも面長(おもなが)とも言う。紙は厚紙以外はうすく、裏面(うらおもて)は意識されるが、厚みはあまり意識されない。しかし、薄くても紙はたくさん重ねると立体になる(2次元-->3次元変換)。


体(立体) - 目、すじ(筋)にならうと、大和言葉のかたまり(塊)には必ず3方向(たて、よこ、かさ(高さ)、あるいは厚み)以外の大きさがある、ということになるが、これだと<第4次元目>を考えなくてはならないが、これはいわゆる常識的には存在しないのだ。しかたなく、進行方向を反対にして、立体を切る(切断)すると、面があらわれ、大和言葉では<きりくち、切り口>という。この<切り口>、元来は<切り口>の面のまわり(周囲、へり、ふち)を <くち、口>のようだと見たためだろう。だが、現在は<切り口>は立体を<切った>後の面といえる。これは<3次元-->2次元変換>と言える。かたまり(塊)は solid を連想させるが、液体でも入れ物(立体)に入れると立体になる。厚み以外に<かさばる>という動詞(自動詞、連体詞、かさばる本)がり立体と結びついている。体言(名詞)の<かさ>は<川の水かさが増す>というので、いわば<深さ>だ。立方体(直方体)でもいいがの二つの面が合うところは線になる(線がみえる)。これは大和言葉では<へり>が使われるようだ。この場合は<へり>でも <はば(幅)>がないといえ、<へり>か幾何学上の線にあたるが、面上に<へりを引く>とは言わない。一般性で線に及ばない。


動詞

線は<伸びる、伸ばす>、<ちぢむ、ちぢまる、ちぢめる>、面は<広がる、広げる>、<せばまる、せばめる>、立体は<ふくらむ、ふくれる、ふくらます、ふくらす>、<すぼむ、すぼめる>、<かさばる>と言う動詞が使われる。 名詞(体言)を調べてみる。

線 - 伸(の)び、ちぢみ
面 - 広(ひろ)がり、せばまり
立体 - ふくらみ、ふくろ(袋)、すぼまり、かさばり

線、面、立体のそれぞれに名詞があるが線、面、立体の代替はできない。


形容詞、形容動詞を調べてみる。

線 - 長い、短い、(まっ)すぐな(形容動詞)、曲(まが)がった(英語の過去分詞ガタ形容詞)
面 - 広い、せまい(狭い)、たいらな(形容動詞)、でこぼこな((形容動詞)。<たいら>、<でこぼこ>。<でこぼこ>は何(なに)詞か。平ら道(ダメ)、でこぼこ道(OK)。たいらがある(ダメ)、でこぼこがある(OK)。(次回検討予定)
立体 - 大きい、小さい、固(かた)い(solid)、かさばる(形容詞 / 連体詞、かさばる本)


以上の名詞(体言)を調べてみる。

線 - 長さ、(まっ)すぐさ、曲(ま)がり、曲(ま)げ (curve)
面 - 広さ、たいらさ、でこぼこ(さ)
立体 - 大きさ、固(かた)さ、かさ

<さ>は形容の度合いを示してしまうので、線、面、立体の代替はできない。<さ>をとってみる。

線 - 長(なが)、(まっ)すぐ、曲(ま)がり、曲(ま)げ
面 - 広(ひろ)、たいら、でこぼこ
立体 - 大き、固(かた)、か

線、面、立体に代替でき出来そうな語はない。

やはり線、面、立体は画期的なコンセプトなのだ。人によっては次元にかかわる大問題だ。言葉の上で、気がつきにくいが、おもししろいのは<さ>と<み>の違いだ。

点関連
大きい - 大きさ - 大(おお)み(ダメ) - 古代にはあったか?
小さい - 小ささ - 小(ちい)み(ダメ)

線関連
長い - 長さ - 長(なが)み(ダメ)
短い - 短さ -短(みじか)み(ダメ)
線に幅があったとして
太い - 太さ - 太(ふと)み(ダメ)
細い - 細さ - 細み(ダメ)

主に面関連

広い - 広さ - 広(ひろ)み(ダメ) - 古代にはあったか?
狭い - 狭さ - 狭(せま)み (ダメ)
面に<厚み>があったとして
厚い - 厚さ - 厚み
たいら - たいらな(形容動詞) - たいらみ (ダメ)

主に立体関連
高い - 高さ - 高(たか)み(ダメ)- 古代にはあったか?
深い - 深さ - 深(ふか)み

動詞関連の<xxみ>は連用形の体言化で、たまたま<み>が現れる。
ふくら(ふくらんだ) - ふくら 
(縮んだ) -縮(ちぢ)

形容詞関連では<さ>で名詞化するが、<さ>は形容<程度>を表わし、純抽象化されていない。例外は<あつみ>と<ふかみ>で、この二つは<厚さ>、<深さ>より抽象化されている。そして関連がある。類推すると<たかみ(高み)>が古代にはあったかもしれない。これはまた、面 - おもて(面)は<当然ながら厚みがある>というわけではなさそう、と関連があるかもしれない。

-----

以下、暇のある人は読み続けてください。

繰り返しのようになるが、


点 - 


線 - 大和言葉の<すじ>、<へり>、<ふち> には基本的に<はば(幅)>がある、<はば(幅)>をなくした極限の線と同等にはならない。糸、ひも、つな(綱)は線状だがモノから離れていない。線を切ると二つの大きさのある点になり、1次元-->0次元の関係がある。だが、この二つの点に注目する人は少ない。


 面 - おもて(面)には<当然ながら厚みがあるという>わけではなさそう。厚さにもよるが、ある程度厚くなると立体になってしまう。二つの厚みのない面がある角度で交差するところは線だ。また面を切ると、切断したところに二つの線がみえる。2次元-->1次元の関係がある。だが、この二つの線に注目する人は少ない。また面を二つにおると線ができる(見える)。 厚みがある二つの面がある角度で交差すると線ではなく面になる。


体(立体) - かたまり(塊)には必ず3方向(たて、よこ、かさ(高さ))の大きさがある。面を積み重ねると立体になりそうだが、厚みのない<おもて>や面(めん)いくらら重ねても立体にはならない。厚みのある面を積み重ねると立体になる。一方立体を切る(切断)すると、面があらわれる。3次元<-->2次元の関係がある。




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Monday, September 1, 2014

<きわだつ>、<きわだたせる>


このポストは前々回のポスト ”<言葉(ことば)>の<葉)>とは何か?” の続編-2で<はし>に関連した話だ。<端(はし)> のやまとことばの関連語はかなりあり、なぜこうも多いのか自体おもしろい調査対象だ。

きわ(際)、へり(縁)、ふち(縁、めがねの縁、<淵>は意味が違う)、がかなり<端(はし)>の意に近いが、さらに範囲を広げれば、すみ(隅)、かど(角)、はて(果て)、さかい(境)もある。

 <きわ(際)>は応用範囲がひろい。

場所 - 窓ぎわ
時間 - まぎわ、帰りぎわ、死にぎわ

複合語 - きわだつ(自)-きわだたせる(他)、きわまる(自)-きわめる(他)、きわめて(副詞)、きわどい(形容詞)

<きわ、ki-wa>は<かわ(皮、側、川)、ka-wa>と関連があろう。窓ぎわ-窓がわ

<きわだつ、ki-wa-da-tsu>、<きわだたせる, ki-wa-da-ta-se-ru>は意味だけではなく、<-a>音が多く、聞いてもいいやまとことばだ。<きわだつ>の意味は文字通り<きわ(際)>が<たつ(立つ)>で、<目立つ>の意に近いがニュアンスがちがう。英語に outstanding  という形容詞があるが(動詞は to stand out)、これはどちらかというと<目立つ>で<きわだつ>には及ばない。もっとも英語の outstanding は90%方良い意味で使われるが、日本語の<目立つ>は90%方悪い意味で使われるようだ。<きわ>は outline といえそうで outline を<目立たす>、<目だ立たせる> と<きわだつ>ことになりそうだが、少し違うようだ。個人的な意見だが、<きわだつ>はいいが<きわだたせる>は意図が感じられて<きわだつ>ほどはよくない。自然と、おのずから<きわだつ>のがいいようだ。そしてこれは努力なしで得ることは難しいようだ。

広告コピー(例)

きわだちの一品
際立ちをきわめた一品
香りがきわだつ xx コーヒー
目立たずに際立つ xx アイシャドウ、口紅(化粧品)
かすかに際立つ xx  ワイン(吟醸)の香り

などはどうか?


話は大和言葉から離れてしまうが、英語も<へり>関連の語が多い。ドイツ語はあまり分化が進んでいないようで、(das)Rand が<へり>関連の代表語で、独英辞典では

Rand: edge, rim, brim, margin, ring, verge (on the verge of xx), brink, outskirt

となっている。最後のoutskirt の skirt は女性がはくスカートとおなじで、男性はショートスカートの<へり>に目が行く。英語では以上の他に、frill, fringe というのもある。

ちなみに相良独和大辞典では

Rand: ふち、へり、きわ、はし、(Ecke)すみ、 かど、(Ende)きわみ、はて, が冒頭に記載されている。



sptt





Friday, August 29, 2014

図形のやまとことば - 1、うつる、うつす


<sptt やまとことばじてん>の英語版 sptt Native Japanese Dictionary の<Geometry in Native Japanese - 1 - Introduction>で次のように書いた。

I must admit that the geometrical world in ancient Japanese (say more than 1,500 yeas ago) were very poor as compared with the Chinese and Western worlds. 

(中略)

0) 0D - point                     Chinese    点       Native Japanese め(me; 目 or eye)

1) 1D - line                       Chinese  線      Native Japanese すじ(su-ji; 筋 or stripes in muscles, veins)

2) 2D - surface or area      Chinese  面      Native Japanese おもて(o-mo-te; 面 or face)

3) 3D - solid or volume     Chinese  体(立体)  Native Japanese かたまり(ka-ta-ma-ri; 塊 or lump)


1.図形の作成(図形をつくる)

いわば大和言葉の幾何用語は貧弱なのだが、今回は図形の大和言葉について考えてみる。図形(ずけい)は和製漢語だろう。 図(ず)は<え>、 形(けい)は<かたち>と言う和語があるが、<えかたち>はほとんど聞かない。<すがたかたち>は少し長いが響きのいいやまとことばだ。<描く>はほぼ間違いなく<絵(え)がく> だ。<かく>の方は<書く>と言うよりは<引っかく>の意の<かく>だ。もっとも<書く>自体<引っかく>由来だろう。<図をえがく>は<絵をえがく>というよりは<かたちをえがく>の方がいいようだが、あまり使われない。もっとも<えがく>自体に<絵(図)>があるので<えがく>だけでいいのだ。

2.図形の移動(図形を<うつす>)

図形の移動は<図形を移す>が一般的だが、 <図形を写す>、<図形を映す>も可能。 英語では<移す>は to shift、<写す>は to copy (コンピュータ操作では、to copy and paste と二段階になる)、<映す>は to reflect という対応がある。一方大和言葉ではいずれも発音は<うつす>で区別はない。これは日本語の<うつす>という動詞の特徴で、漢字で書けば<移す>、<写す>、<映す>の区別があるが、<うつす>という動詞にはこの区別はないのだ。図形に関していえば、<図形移動>は<図形移し>とはまず言わないが<図面の写し>はよく使う。あまり機会はないが鏡に<うつす>場合は<図面を映す>になるか。

ここで注意したいのは to shift、 to copy、 to reflect は動き、または移動をともなうが<元の図形(かたち)>は変わらないということだ。<うつす>はこの意味をたもっている。未分化とも言えるが一般化が進んだ語とも言える。

<元のかたち>は変わらないが、サイズが変わるのに、拡大、縮小がある。 拡大は<引き伸ばし>と言う語がある。縮小は<ちぢみ>だが、これは使われない。ゲンミツに言うと縮小は<元のかたち>は変わらないことが想像されるが、拡大はそうではない場合が多い。英語では拡大は to enlarge(動詞)、 enlargement(名詞)、縮小は to squeeze(動詞)(名詞も squeeze)。

回転移動も<元のかたち>は変わらないが、<まわしうつす>、<まわりうつる>はほとんど聞かず、<まわす>、<まわる>ですましている。

<元のかたち>は変わる場合は<変形>だ。<かたちがえ>、<かたちがわり>はまず聞かない。変形の英語には to transform, transformation, to deform, deformation がある。もっともやまとことばでは、私が好きなレッキとした物理用語で<ひずむ>、<ひずみ>というのがある。<たわむ>、<たわみ>というのもある。

to transfer, to transmit, to transport も大体<うつす>と訳せる。

日本語の<かわる(かえる)>も未分化の、または一般化が進んだ動詞で、変わる(える)、換わる(える)、替わる(える)がある。

<うつる>は時間次元でも活躍し<時はうつる>のだ。英語は<Time passes>と別の動詞を使う。変化がともなうと<時はうつりかわる>となる。<うつりかわる>、<うつりかわり>は4次元表現と言えるが、いい大和言葉だ。<うつす>は他動詞、<うつる>は自動詞。

<うつす>の否定形は<うつさない>。可能形は<うつせる>、その否定は<うつせない>。受身形は<うつされる>だが、日本語では被害、迷惑の意がある。<席を後ろの方にうつされる>、<写真をうつされる>、<風邪(かぜ)をうつされる>。使役は<うつさす>だが<うつさせる>も可か。<(だれだれ)の席をうつさせてください>。
<うつる>の否定形は<うつらない>。可能形は<うつれる>、その否定は<うつれない>。自動詞なので受身はないようだが、日本語では<うつらされる>がある。これも受身というよりは被害、迷惑の意がある。使役は<うつらさす>、<うつらさせる>が可能のようだが、ほとんど聞かない。間違いか?

名詞形は<連用形の体言化>の<うつし>、<うつり>でよく使われ、こなれた大和言葉だ。

抽象化が進んだ数学ではトポロジー(topology)というのがあり、日本語では漢字を五個も並べた<位相幾何学>が正式訳語のようであるが、トポロジーも位相もわかりにくい、というかピンとこない。上で述べたような<移す>、<写す>作用が多いようなので<うつし幾何学>としたらどうか?


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Wednesday, August 27, 2014

<はしたない>について


このポストは前回のポスト ”<言葉(ことば)>の<葉)>とは何か?” の続編で<はし>についての話だ。

 <はしたない>は<はした>+否定の<ない>の意味ではない。 手もとの辞書によると<はしたない>は<はし>+接辞の<た>+形容詞語尾の<ない>。<はし>は前回のポストで説明した<はしくれ>、<きれはし>、<かたはし(かたすみ)>、<東京のはし(*) (東京のはずれ)>などのように使われ、中心(やまとことばは<かなめ>か)の反義語で、<あまり重要でない>ところ、モノ、コトをあらわす<はし(端)>だ。これで<はしたない>という形容詞になる。

形容詞語尾の<ない(なし)>の例としては次のような形容詞がある。

きたない - これも<き>+接辞の<た>+形容詞語尾の<ない>で<き>に<きたない>の意があるのか? <きらう>の<き>、<きれはし>、<ぼろきれ>の<き>が関連あるかも。
あどけない - 語源不詳 (インターネットの語源由来辞典参照)
かたじけない  - 語源不詳 (インターネットの語源由来辞典参照)
かなし(い) - 語源不詳、というよりは純形容詞 (インターネットの語源由来辞典参照)
はかない(はかなし) 語源不詳。<はしたない>の<は>と関係がありそう。
----
むなし(い) - <む> +<なし>のようだ(インターネットの語源由来辞典参照)

(追加予定)


ところで否定の<ない> は文法書や辞書の文法説明では助動詞と説明されている。他の品詞との接続は

1)動詞につく場合は、動詞の仮定形につく。例) 行かない。

2)形容詞につく場合は<く>活用、<しく>活用のやはり未然形につく。ただし<く>、<しく>は連用形でもあり、<く>、<しく>を無理やり未然形としている感がある。例) 多くない。美しくない。

3)形容動詞は現代語の<だ>活用の場合は適当なのがない。しいてあげれば連用形の<で>につくが、文法的な法則性からすると<ない>は一般動詞とも見れる。(末尾参照) 例) 静かでない、綺麗(きれい)でない。古語では<静かならず>で<静かならば>とともに未然形につき文法的な法則性がある。


 (末尾)

ダ型活用 (wiki-Japan, 2014-08-27)

未然形 だろ
連用形 だっ・で・に
終止形 だ
連体形 な
仮定形 なら
命令形 ×







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<言葉(ことば)>の<葉(は)>とは何か?


<言葉(ことば)>は<ことのは>の略といわれているが、<こと>はごく一般的なモノ、コトのコトではなく<ひとこと>、 <かたこと>と言うように<こと>だけで<ことば>の意がある。<こと(koto)>は<かたる(kata-ru)>の音韻変化とも考えられ、関連語だろう。<かたこと>の<かた>は<かたほう(片方>、<かたはし(片端)>の<かた>で、<一方のはし(端)>の意味に近い。それでは<ことのは>の<は>はいったいなにか?<ことば>は漢字で書くと<言葉>で<言 の葉>、すなはち<ことの葉>となるが、<葉>は当て字だろう。<ことば>と<木の葉>は結びつきにくい。やまとことばの名詞の<は>には、葉以外に歯、刃が ある。歯は口にあるので物理的に、または人体器官で関係があるが、<こと>自体に物理的に、または人体器官とは関係のない<ことば>の意があるので、検討の余地がある。するどい言い方や、人を殺したり、傷つけたりする<ことば>もあるが、刃も<ことば>と結びつきにくい。ただし、葉、歯、刃がまったく関係ないとはいえない。もっとも<やまとことば>の特徴でいえば、葉(は)、歯(は)、刃(は)は元来(大昔)は同類だったのだ。

<はし>という言葉がある。<はし>は意味によって橋、端、嘴、箸の漢字が当てられる。最後の箸は東京アクセントではイントネーションが違う。嘴(はし)はほ とんど独立しては使われず、実際使われるのは<口ばし>の<ばし>ぐらいだ。長い<口ばし>は箸(はし)と同じよう役目をする。ところで、手もとの辞書に よると端の<はし>の<し>は接辞で<は>が端の意味をになっている。橋は、川の両岸にかぎらず、離れた二つの端(はし)-を結びつける役目があり、<橋 をつくる>ではなく<橋をかける>という言い方が普通で、<かけ橋>とも言う。<かけ橋>は長すぎるにで<はし>になったと考えられる。<はしけ>という モノがあるが、これは同じ辞書によると<はしけ>の<はし>は<橋>ではな<く端>の意、<け>は接辞という説明だ。話が少しそれたが、<はし>の元来の 意味は<端>の意で 、<し>が接辞であるので、<は>が<端>の意ということになる。<ことのは>の<は>はかなりの高確率でこの<は>だろう。

<はし(端)>は物理的には<線状のものの終わり、または終わりに近い部分>のことを指す。また<はしくれ>、<かたはし(かたすみ)>、<東京のはし(*) (東京のはずれ)>などのように使われ、中心(やまとことばは<かなめ>か)の反義語で、<あまり重要でない>ところ、、モノ、コトをあらわすようだ。こ の<はし(端)>が言葉の<こと>とどう結びつくのか? 実際に言葉を話す場合を考えると、

1)時間の経過とともにいった言葉は過ぎ去っていく。時間軸(線状)で考えれば、端の方へどんどん離れていく。おもしろいのは方向で、前の方でも後ろの方でも言いようだ。

2)面(2次元)、立体(3次元)で考えると、まわりの端の方へどんどん離れていく。

2) の場合は円状、球面状に離れていくのだが(出所からの距離は半径になる)、この場合は<はし(端)>というよりは<へり>というやまとことばがいいが、これ以外にも<ふち>、<まわり>、 <さかい>、<きわ>などがある。もっともこれは円状、球状にかぎらず、四方形、立法体の周辺にも使われる。<窓ぎわ>は<窓のきわ>ではなく、<窓があるきわ>の意で、窓は<きわ>にあるのが普通で、窓は内外(うちそと)の堺(さかい=きわ)になっている。<へり立つ>という言葉はないが<きわ立つ> はある。<きわ立つ>は<アウトラインが目立つ>で、<はっきり見える>ことだ。

あえて結論をいうと、<ことのは>の<は>は<あまり重要でない>ところ、モノ、コトをあらわす<はし>。<言葉の尻をとらえる>という言い方があるが、<言葉のはしをとらえる>ともいう。いい意味ではないが、上で述べた<かたこと>とともに言葉の特徴をうまくあらわている。言葉はウソも本当も伝える、伝えてしまうのだ。言葉は使い、役立てることができる反面使われてしまわれ、害をもたらす面もある。


 (*)<東京物語>(古いほう)の中国語版(ビデオ)を見たことがあるが、足立区か荒川区の住まいの場所<東京のはし>を<東京的橋>と訳していた。<端>は<橋>ほどの具体性がない。


sptt

Tuesday, July 29, 2014

<ひねり>、<ひずみ>、<ずれ>


前回のポスト<回転のやまとことば>で、<ひねる(ひねり)>も回転がらみだが、<ひずむ(ひずみ)>、<ひがむ(ひがみ)>など<ひ>がらみ言葉がおおいので別途検討予定、と書いたので検討してみる。


ひねる - to twist
ひねり - torsion

<ひねる>は物理的には、ふつう棒上のモノの両端を反対方向に回転させる動作だが、片方の端を固定させ、もう一方を回転させる動作も<ひねる>だ。また、<腰をひねる>は腰の下か上を固定させて上または下を回転させる動作だ。いずれにしても棒上のモノや腰は変形をうけるが、元に戻る場合もあれば、程度の差はあれ元に戻らず変形したままの場合もある。変形のやまとことば物理用語は<ひずみ>だ。<ひずみ>の英語は strain だが物理、力学用語で、stress があると普通 strain (ひずみ)が生じる。変形は deformation がよさそう。 constrain というのもあるが、これは漢語では制約、やまとことばでは<しめつけ>とか<しばりつけ>か。

<ひねる>については前々回のポスト”<ねる>動詞”で取り上げた。

うねる   u-neru
かねる       ka-neru
くねる         ku-neru
こねる       ko-neru
すねる       su-neru
つねる       tsu-neru
はねる       ha-neru
ひねる       hi-neru
まねる       ma-neru

<ひねる>や<ひずむ>の<ひ>は<引(ひ)く>と関連があろう。

反対方向に力を加える動作(ひねり-tortion)では<糸をよる>の<よる>という動詞や<縄をなう>の<なう>と言う動詞がある。現代人は<糸をよる>ことも<縄をなう>こともまずないが、<よる>は反対方向の回転というよりは、並行して反対方向に力を加えるようだ。二本以上の糸を両手に挟(はさ)んで並行して反対方向に力を加えると。二本以上の糸はらせん状にからみあって、一本の糸になる。糸の代わりに四角いモノの相(あい)対する両面を並行して反対方向に力を加える動作の<ずらす>がある。

英語の to shear はこの動作だが、物理用語は<(せん)断>で、やまとことばの<ずらす>、<ずらし>、自動詞の<ずれる>、<ずれ>はどういうわけか使われない。意味がやや違うようだ。<大きくずれる>という言い方があるが、これは<ずれる>が本来<小さくずれる>ことを意味しているようだ。<ずらす>、<ずれる>元の位置、本来在るべき位置から<少しはなす、離れる>ことを意味しているようだ。

一方<前にずれる、ずらす>、<うしろにずれる、ずらす>は間違いではないが、こうはあまりいわず、汎用的な動詞<動く>、<動かす>を使って<前に動く、動かす>、<うしろに動く、動かす>と言うようだ。一方<横、右、左>は<ずれる>、<ずらす>と相性がいい。<上、下>もまあいいようだ。<前、うしろ>と<横、右、左、上、下>はどこが違うかと言うと、少し離れたところを視点とすると、モノが動く(動かす)場合<前、うしろ>では角度は同じだが、<横、右、左、上、下>は角度が違ってくるのだ。<(せん)断>は四角いモノの相(あい)対する両面を並行して反対方向に力を加えた場合の角度の変化との関係を表わしているにで、<ずれ>でよさそうだ。<ずれ>があまり使われないのは、おそらく<ずれ>が本来あるべき位置から<少しはなす、離れる>と言う意味が強く、<角度が変わる>ことがあまり意識されないからだろう。

<ずれる>、<ずらす>は<ずる>由来だろう。<ずる>は五段活用のようだが<ずる>の複合動詞はごくわずかだ。

ずりおろす
駆(か)けずり回る
這(は)いずり回る
---
引きずる
引きずり回す 

<ずれる>は下一段活用だが、これも複合動詞はごくわずかだ。

ずれ込む

<ずる>は<する(擦る、刷る、掏る)>由来だろう。、<こする>は関連動詞だ。

<ずる>関連と思われるのに<じる>がある。

いじる、かじる、くじる-しくじる(し+くじる)、こじる(こじあける)、ねじる、ほじる、もじる(もじもじする)、よじる。

<じる>という動詞は現代語にはないが、昔はあったのだろう。上記の<じる>動詞は大まかにみると共通した意味がある。少し<ひねり>を加えて動かす動作だ。ねじる、ほじる、よじるは簡単な動作のようだが、前後、上下、斜めの直線運動に加えて回転運動が加わるのできわめて複雑な動作、動きだ。

ただし以下<じる>は現代語で、古語は<じる>と関係ない。

とじる - とず、とづ
なじる - なず、なづ
はじる - はず
まじる - まず、まづ
やじる - ?

 sptt





Sunday, June 29, 2014

回転のやまとことば


回転のやまとことばを調べてみる。

まわる - まわす   to rotate, to revolve, to spin(以上主に自転),
                                    to circulate, to orbit は通常一回転以上。
             to turn around は半回転か多くとも一回転。

<ひねる(ひねり)>も回転がらみだが、<ひずむ(ひずみ)>、<ひがむ(ひがみ)>など<ひ>がらみ言葉がおおいので別途検討予定。

回転椅子 - swivel chair

英語動詞の自他については英語辞書参照。

まわり    around, surround
めぐる   to go around  - めぐらす to surround, to encircle, to enclose

めくる    to turn (a page), to turn around
まくる  <めくる>の方言か。

まく    to wind, to roll
まき  ねじ巻き、 鉢(はち)巻、海苔(のり)巻き、渦(うず)巻き - whirlpool
 
こま <- こまわり      (a) top

まがる - 角(かど)をまがる  to turn
まげる - まがる   棒をまげる、 棒ががる    to bend

ぐるぐるまわす、まわる
ぐるぐるめぐる
ぐるぐるまく

くるくるまわる

くるまる - くるむ、くるめる、ひっくるめる  to involve, to wrap, to bundle

<くるまる>はおもしろい動詞で、<布団(ふとん)にくるまる>のように使うが、この動作を少し細かく言うと<わが身をくるめる>で他動詞<くるめる>を使った、いわば再帰動詞表現。これは大げさに言えば<他動詞->自動詞位相変換>になる。

まるまる - まるめる
まる    circle, ring
まるい round

むく(向く)     to turn
むくいる    to compensate, to return

まかす、まかせる、まかなう <- まく

以上言うまでもないが、回転関連のやまとことばには ma-、mu、me がからむ語が多い。

挿入

別のポスト<まく、巻く、撒く(蒔く)、相手を(煙)に巻く>からの引用

任(まか)す、賄(まかな)う、は漢字で書くと見えにくくなるが、まかす(ma-ka-su)、まかなう(ma-ka-na-u)で<まく(ma-ku)>と関連がある。この場合の<まく>は<巻く>の<まく>だ。<巻く>とはどういうことかというと、上述のように<あ るモノ(コト)のまわりを何かが一まわり以上する、何かで一まわり以上させる>ことで、特に他動詞の場合は<あるモノ(コト)の>に制限、拘束をくわえる ことを意味する。<巻く>を<(ぐるぐる)しばる、しめる>とすればこの意味が鮮明になる。但し、<しばる、しめる>や<巻きつける>にくらべると<巻 く>は制限、拘束の度合いが弱く、<あるモノ(コト)>は動く自由がある。動く自由があるが、制限、拘束をくわえれれている、ということだ。これは重要な ことで、大げさに言えば、法治国家、民主主義にかかわってくる。こう説明すれば、任(まか)す、賄(まかな)う、が<巻く>と関連があることが推測できよう。

任(まか)す - あるモノ(コト、ある人)にある程度の自由をあたえてxx させる、の意だ。
賄(まかな)う - あるモノ(コト、ある人)からにある程度の自由をあたえられてxx する、の意だ。

さ らに、少し想像力のある人には<ぐるぐる巻く>が<撒く>、<蒔く>の<xx を yy でおおう>と関連があるのは明らかであろう。もう少し想像力のある人には<まくる>、<めくる>、<めぐる>、<曲(ま)がる>、<曲げる>、さらには <向(む)く>、<向(む)ける>、またさらには<報(むく)いる>も<巻く>関連の語群と思えるのではないか。

<巻く>から離れるが、この意味では<囲む>も<巻く>に似ており、囲まれた<あるモノ(コト)>は動く自由がある。動く自由があるが、制限、拘束をくわえれれている。これは意識上、したがって言語上(言語は意識を反映している)の重要なコンセプトだと思う。

挿入終わり


ところで、英語の場合も発音上グループ化が出来そうだ。

to rotate, to revolve
around, surround
swivel  (chair)
to turn (a page), to turn around
to wind, to roll
whirlpool
to bend
to involve, to wrap, to bundle
circle, ring
round

以上の外(ほか)に

to swirl
to twirl
curl
rondo
(追加予定)

英語では ”r” がらみの発音が多い。英語の ”r” は<巻き舌>ではないが、スペイン語やイタリア語では<巻き舌>の”r” だ。

whirl、swirl、twirl, curl (名詞形もある)は明らかに発音上同じグループで<まわる>感じがある。


www.thefreedictionary.com のコピー

swirl  (swûrl)
v. swirled, swirl·ing, swirls
v.intr.
1. To move with a twisting or whirling motion; eddy.
2. To be dizzy or disoriented.
3. To be arranged in a spiral, whorl, or twist.
v.tr.
1. To cause to move with a twisting or whirling motion. See Synonyms at turn.
2. To form into or arrange in a spiral, whorl, or twist.

twirl  (twûrl)
v. twirled, twirl·ing, twirls
v.tr.
1. To rotate or revolve briskly; swing in a circle; spin: twirled a baton to lead the band.
2. To twist or wind around: twirl thread on a spindle.
v.intr.
1. To move or spin around rapidly, suddenly, or repeatedly: The pinwheel twirled in the breeze.
2. To whirl or turn suddenly; make an about-face: twirled in the direction of the noise.
3. Baseball To pitch.

curl (kûrl)
v. curled, curl·ing, curls
v.tr.
1. To twist (the hair, for example) into ringlets or coils.
2. To form into a coiled or spiral shape: curled the ends of the ribbon.
3. To decorate with coiled or spiral shapes.
4. To raise and turn under (the upper lip), as in snarling or showing scorn.
5. Sports To lift (a weight) by performing a curl.
v.intr.
1. To form ringlets or coils.
2. To assume a spiral or curved shape.
3. To move in a curve or spiral: The wave curled over the surfer.
4. Sports To engage in curling.
n.
1. Something with a spiral or coiled shape.
2. A coil or ringlet of hair.
3. A treatment in which the hair is curled.
4.
a. The act of curling: the curl of a meandering river.
b. The state of being curled.
5. Sports A weightlifting exercise using one or two hands, in which a weight held at the thigh or to the side of the body is raised to the chest or shoulder and then lowered without moving the upper arms, shoulders, or back.
6. Any of various plant diseases in which the leaves roll up.

ron·do  (rnd, rn-d)
n. pl. ron·dos
A musical composition built on the alternation of a principal recurring theme and contrasting episodes.


sptt

Monday, June 23, 2014

<ねる>動詞


<ねる>はアクセントが<る>、または平板アクセントでは<寝る>だが、アクセントが<ね>にあると<練る>になる。<ねる>がつく動詞を<あいうえお>順に列挙してみる。順に

うねる   u-neru
かねる       ka-neru
くねる         ku-neru
こねる       ko-neru
ごねる   go-neru      口語。 根拠のない不平をいう、to ne-go(tiate) のne-go (ネゴ)の倒置か?
すねる       su-neru
つねる       tsu-neru
はねる       ha-neru
ひねる       hi-neru
まねる       ma-neru

上記のうち<うねる >、<くねる >、<こねる >、<すねる >、<つねる >、<ひねる >は意味に共通したところ(ある種のまっすぐでない<行き来>の動きを示す)がある。偶然の一致ではないだろう。<ねる>に何か共通させる働きがあるようだ。<練る>(錬る、煉る)に一番近いのは<こねる>か。<こねる>は小さい<ねる>とも言えそう。

大きな計画をねる。
小麦粉水を加えてこねる。
下手(へた)な考えをこねる(こねまわす)。

<まねる>は上記の共通した意味のグループには入らない。<まねる>の<ま>は<まこと>の意の接頭辞か? ま顔、まこと、まじめ。そうだとすると、<ま>+<ねる>に意味が出てくる。<ま>を<ねる>、<ま>を<ねり出す>のだ。

前が二字になる<ねる>動詞はたくさんありそうで、あまりない。

あぐねる   a-gu-neru    言いあぐねる
おもねる   o-mo-neru   へつらう
かさねる        ka-sa-neru
くすねる   ku-su-neru   盗む
そこねる   so-ko-neru   損(そこ)なう。 いいそこねる
たずねる(尋ねる、訪ねる) ta-zu-neru
たばねる      ta-ba-neru
ゆだねる      yu-da-neru
(追加予定)

あまりいい意味でない語が多い。あぐねる、おもねる、くすねる、そこねる。これらは上記の<ある種のまっすぐでない動きを示す>と関連がありそう。

少し考えてみたが<前が二字になる<ねる>動詞はたくさんありそうで、あまりない>理由がよくわからない。例が少ないが、<ねる>は ne-ru で、u-, ku-, su-, tsu-, (a-) gu- , ku-su- のように、う(u-)列の語とくみあわせが多いようだ。大和言葉の大きな特徴だが、う(u-)列や(e-)列が多い語は大体いい意味でない。


創作やまとことば

あだねる - あだ(徒、空)にする
はばねる - 幅を持たせる、はばをきかす
 (追加予定)

はどうか?


sptt


Friday, June 20, 2014

<ゆする>、<ゆずる>、<ゆるす>は同源か?


<ゆる(yu-ru)>が root と思うが<ゆる>関連の言葉はおもしろい。思いつくまま、少し整理して、並べてみる。

1)ゆるぐ(yu-ru-gu) - ゆるがす (yu-ru-ga-su)  - to shake (自他)、 地をゆるがす

ゆるぎ(yu-ru-gi)  名詞(体言) 、普通は<ゆるぎない(yu-ru-gi nai)>で使う。

ゆるがせにする(yu-ru-ga-se ni su-ru)、普通は<ゆるがせにできない(yu-ru-ga-se ni de-ki nai)>で使う。

手もとの辞書によると<ゆるがせ(yu-ru-ga-se>は古語<いるかせ(i-ru-ka-se)>となっている。<かせ(枷、ka-se)>がゆるい(yu-ru-i)の意か?


2)ゆらぐ (yu-ra-gu) 自動詞  - to shake       自信がゆらぐ

ゆらぎ (yu-ra-gi))  名詞(体言)  信仰(良心)のゆらぎ。<心のゆらぎ>はシュールな表現だ。
ゆらゆら(yu-ra-yu-ra)  擬態語、副詞    ゆらゆらゆれる


3)ゆるまる(yu-ru-ma-ru) - ゆるめる(yu-ru-ma-ru)  -  to get (become) loose - to make (sth) loose

ゆるい(yu-ru-i)  形容詞 - loose
ゆるゆる (yu-ru-yu-ru)  擬態語、 ゆるゆるな(だ) 形容動詞 - loose
ゆるみ(yu-ru-mi)  名詞(体言) - looseness


4)ゆれる(yu-re-ru) - ゆらす (yu-ra-su) -  to shake (自他)

<ゆるぐ(yu-ru-gu)-ゆるがす (yu-ru-ga-su)>の縮小版。逆に言えば<ゆるぐ(yu-ru-gu)-ゆるがす (yu-ru-ga-su)>は<ゆれる(yu-re-ru)-ゆする (yu-su-ru)>の拡大版。

ゆれ(yu-re)  名詞(体言)  -  a shake


5)ゆする (yu-su-ru) 他動詞、 慣用あり  -  to shake (自他)

ゆすり (yu-su-ri) 名詞(体言) - 主に慣用  ゆすりたかり


6)ゆらめく (yu-ra-me-ku) 自動詞   旗がゆらめいている

 ゆらめき (yu-ra-me-k-) 名詞(体言)

 -----

<ゆずる(yu-zu-ru、譲る)>や<ゆるす(yu-ru-su、許す)>は以上の<ゆる(yu-ru)>関連語と関係があるのか? 

<ゆずる>、<ゆるす>は<ゆるめる>と意味的につながっている。だが<ゆるめる>は<ゆらし>たり、<ゆすっ>たりして<ゆるめる>だけとは限らない。したがって、<ゆる(yu-ru)>(loose)は<ゆれる、ゆらす>関連語(shake)とはモトが違う可能性もある。


A. <ゆずる>

<ゆずる(yu-zu-ru)>昔は<ゆづる(yu-dsu-ru)>と書いた(発音した)ようなので、同じような意味がある<ゆだねる(yu-da-ne-ru)>の関連語だろう。元は<ゆづ(yu-dsu)>か? <ゆだねる>の<ねる>はおもしろい語だが、ここでは関係なさそうなので別途検討とする。 <ゆずる>の英語にはto concede、to give away がある。

B. <ゆるす>

<ゆるす>に関しては、可能性の一つに<やる(ya-ru)>がある。 <やる>は多義語で、関連はあるが、いくつか違った意味がる。

a) <する>とほぼ同じだが、やや口語的。かなり前だが<JALPACK>は<やるPACK>と言うのがあった。

これ、どうやれ(すれ)ばいいの。

<やらす(ya-ra-su)>は<やる>の使役形だが、場合によっては<ゆるす(yu-ru-su)>の意味が生じてくる。

b)   <与(あた)える>

これ、君にやろう。
金魚に餌(えさ)をやる。

 <与(あた)える>の英語は to give だが、間違いや失敗を<ゆるす>は to forgive だ。

c) <(人を)送(おく)る、行かす>

A君を医者を呼びにやろう。
現場へはとりあえずB君をやっておこう。

d)   <移(うつ)す、動かす>

あれ、どこにやった。
この問題、やり場がない。

e) <あげる>とともに<やる>は助動詞的な働きがある。動詞の連用形に付く。


買ってやろう
<買ってやろう)は<買って><与えよう>ととれるが<君のために買う>の意もありうる。この場合<買う>は未来形と言える。

してやる
頼んでやる
運んでやる
話してやる
持ってやる
(いくらでもある)

以上は<君(あなた)のためにする、頼む、運ぶ、話す、持つ>の意があり、また未来形と言える。


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